大学進学をしている方は、20歳~22歳までの国民年金の支払いを学生納付特例により免除してもらっている場合が多いでしょう。
実際、厚生労働省の報告書を見ると、学生の66.0%が学生納付特例を利用していることが分かります。*1
では、学生納付特例を追納するなら、いつ追納するのが一番お得なのでしょうか?
まず注意すべき点は、社会人1年目に追納すると損する可能性が高いということです。
- 1.社会人1年目に追納すると損する理由
- 2.社会人何年目で追納するのが良いのか?
- 3.子どもが生まれたときに追納すれば、保育園の料金を安くできる!
- 4.年利0.5%以上で運用できるなら、10年後に追納する方がお得
- 5.まとめ
1.社会人1年目に追納すると損する理由
学生納付特例の追納をする場合は、支払った金額を所得から控除することができるので、所得が多いほど、控除による節税効果が期待できます。(社会保険料控除)
つまり、どうせ追納するなら、所得が多い年に追納した方がいいということです。
さて、所得の計算は、その年の1月1日~12月末日までを1クールとして考えます。
大学を卒業するのは3月なので、その年に社会人として収入を得られる期間は4月~12月までの9か月間です。
したがって、社会人1年目に得られる所得は、
1月~3月のバイト収入+4月~12月の9か月分の給料
となります。
よって、社会人2年目よりも所得が少ないことが予想されるため、社会人1年目には追納すべきではないという結論になります。
2.社会人何年目で追納するのが良いのか?
学生納付特例の追納ができるのは、遡って10年前までの分です。
よって、追納するなら10年以内にする必要があります。
給与が高いときに追納した方が節税メリットを得られるのであれば、社会人10年目のときに追納するのがもっとも良いとも言えます。
しかし、それは社会人10年目に至るまで、右肩上がりで給与が増加する場合に限られます。途中で結婚や子育てといったライフイベントが発生するなどして、転職や退職、時短勤務などになると、給与がダウンしてしまう時期も生じるでしょう。
(実際、国税庁の発表しているデータを読むと、男性の場合は50代前半まで平均給与が増加していますが、女性の場合は25歳頃がピークで、その後は緩やかに減少していきます。これは、女性が結婚や子育てといったライフイベントによって、給与増を阻害されている可能性が示唆されています)
というわけで、自分自身のライフプランを見つめながら、「社会人になってから10年間でもっとも給与の高い時期を見極めたうえで追納する」というのが、賢い追納方法になります。
しかし、ここで注意しておくべき点があります。
3年目以降に追納するときには、経過期間に応じた加算額が上乗せされてしまうということです。(1か月分につき数十円~数百円程度、詳しい金額はこちらのページが参考になります)
将来上がっているかどうか分からない給料(もしかしたら転職や子育て等で下がってるかもしれないし、何らかの事情で無職になってるかも)をあてにして、社会人10年目になるのを待ってから追納するのは不確定要素がありますし、いちいち節税額と上乗せ額を比較するために計算するのも手間です。
一方で加算額は確実に上乗せされていきます。
したがって、自分の給与を将来的に増やしていけるか不安な人、厳密に節税額を計算するのが面倒な人は、社会人2年目に追納しておくのが分かりやすくてお得かもしれません。
…しかし、ちょっと待ってください。
私は社会人2年目に追納しましたが、現在、そのことについて後悔しているとタイトルに書きました。
今度は、その理由について述べたいと思います。
3.子どもが生まれたときに追納すれば、保育園の料金を安くできる!
保育料は応能負担であり、その世帯の所得が高いほど、料金も高くなるシステムになっています。
このときに参考にする「世帯の所得」とは、社会保険料控除等の控除を行った後の所得を指します。
お判りでしょうか?
子どもが保育園に入園するタイミングで追納すれば、保育料を安くすることができるのです。
住んでいる自治体にもよりますが、こうすることで保育料を月額数千円ほど減額することができます。
月額数千円なので、年額にすると数万円。
これはインパクトの大きい数字です。
この方法に気付いた私は、社会人2年目に追納せず、子どもが生まれてから追納すれば良かったと激しく後悔しています。
皆さんも、近々子どもをもうける予定があるならば、そしてその子を保育園に入れる予定があるならば、追納はそのときに行うのがもっともお得だと思います。
もっとも、子どもが生まれるタイミングというのは予期できないものであり、妊娠しても無事に生まれてきてくれるかは分からないため、過信はできません。
しかし、もし子どもを保育園に入れる予定がなかったとしても、次のような場合には、10年後ギリギリのタイミングで追納するのがいいかもしれません。
4.年利0.5%以上で運用できるなら、10年後に追納する方がお得
仮に、10年前(平成20年)分の追納する場合のことを考えてみましょう。
当時の保険料1か月分は14410円です。
10年後に返す場合、上乗せ額は1か月あたり750円ですので、15160円に増えます。
これは、別の見方をすれば、10年間だけ借金をしているともいえます。
しかも、その金利は約0.5%。
借金にしては格安といえる値です。
そのため、もし年利0.5%以上で運用できるのであれば、10年間そちらの方法で運用した後に追納した方がお得といえます。
あるいは、もし年利0.5%以上の借金を他にしているなら、追納は後回しにして、そちらの借金の返済に使った方がお得ですね。
5.まとめ
この記事の要点をまとめると下記の通りです。
- 社会人1年目に追納してはいけない
- 考えるのが面倒な人は社会人2年目に追納しておけばOK
- 子どもを保育園に入れる予定があるなら、そのときに追納するのがお得
- 年利0.5%以上で運用できるか、他に年利0.5%以上の借金をするくらいなら、10年後に追納するのがお得
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