『あの娘にキスと白百合を』がついに完結しました。してしまいました。
ひとまずは缶乃先生、長きにわたる連載、お疲れ様でした。
もともと缶乃先生のことは、『サイダーと泣き虫』で知りファンになりました。
なので、長編漫画『あの娘にキスと白百合を』の存在を知ったときは、もううれしくてうれしくてしかたありませんでした。
どっぷりはまり、ドラマCDも買ったほどです。
この記事は、『あの娘にキスと白百合を』の簡単な感想と紹介を書いたものです。
ネタバレなしです。
『あの娘にキスと白百合を』の魅力
魅力的で多種多様な19人の主要キャラクターが紡ぐ群像劇
この作品はいわゆる「群像劇」でありまして、各々のキャラクターたちがそれぞれの物語を紡いでいく形式になっています。
(もちろん、他のキャラ同士の接触もあります)
なんといっても、その魅力的で多種多様なキャラクターの数々!
主要なキャラクターは19人、カップリングは9組という。
その規模はまさに異次元百合級。
しかもそれぞれが全然違う性格をしていて、カップルの関係性も異なるので、自分ですら知らなかった「これこれ!」ポイントを新たに発掘させられます。
私はこの作品に出合い、「面倒くさい×無神経」の秘めるパワーはこんなにも強大なのかと思い知りました。(※5巻参照)
逆にいうと、「私はこういう関係性が好きなんだけど、なかなかそういう作品ってないんだよな~」というマイナーなストライクポイントですら見事に打ち抜かれることでしょう。
シリアスな場面も多いが全体的に明るい作品
コメディ満載の作品でなく、キャラクターたちの真剣な友情・恋愛模様が描かれているので、そこには当然シリアスな場面も多々生じます。
三角関係も出てきます。
しかし、重苦しい雰囲気のまま終わることはありません。
また、この作品では、いわゆる「百合が一般的な世界」を描いているため、「同性を好きになる苦悩や葛藤」といった要素は一切ありません。
これらのこともあり、作品全体の雰囲気は、シリアスな場面はありながらも不穏さはなく、総じて明るいものとなっています。
尊すぎて悶える
とにかく尊さが半端ではないこの作品。
どれくらい尊いかと申しますと、胸を切り開き取り出した心臓をゴリマッチョに握りつぶされるレベルです。
ひとつひとつ説明していては軽く10万文字を超える大長編になりかねないので自重しますが、メインの2人を例を挙げてみます。
秀才の白峰あやか(左)と、天才の黒沢ゆりね(右)の2人です。
1巻の表紙をご覧になると分かりますが、黒沢ゆりね(右)から白峰あやか(左)に対する好意的な感情がうかがえますが、一方で白峰あやか(左)はそれに戸惑っている様子です。
黒沢ゆりね(右)の表情も、好意的であることは確かですが、それがどういう類のもの(LOVEかLIKEか?)かまでは判別するのは難しいです。
それが10巻。
ついに出た最終巻の表紙はこれです。
いや、控えめにいって神じゃないですかね。
この信頼しきった顔。
そして背景に描かれた溢れんばかりの花々。
もうこの表紙を見るだけでどのような物語を歩んできたのか、想像するだけでも昇天しそうなものですが、ご安心あれ。本編は天を突き抜け宇宙までいきます。
最終巻を迎えてしまったことについては一抹の寂しさも覚えますが、引き伸ばしもなく、広げられた物語が綺麗にまとめられており、大満足の最終巻でした。
また新しい物語が出るのを楽しみにしています。
『サイダーと泣き虫』缶乃著 もまた至高の百合短編集
もともと缶乃先生のことは、『サイダーと泣き虫』という短編集で知ったというのは最初にも書いた通りです。
とにかくキャラクターが魅力的で、多種多様な人物を自由自在に描くその技量の高さと百合レベルの高さ、そして物語の構成力にはため息が出るばかりで、ページを読み進めるたびに頬がにやついていたのを覚えています。
未読の方はぜひ。
オチが秀逸な「シンデレラ」、不安定で危なっかしい思春期特有の関係性を見事に描いた「花丸ハッピーエンド」「畢竟デッドエンド」などなど、珠玉な作品がめじろ押しです。
【こんな百合もあります】