天宮えれな、香久矢まどかは、スター☆トゥインクルプリキュアに登場するプリキュアです。
天宮えれなさんは「観星中の太陽」、香久矢まどかさんは「観星中の月」と称されているように、二人は対比された存在として描かれています。
この記事は、そんなえれまどの対比構造に触れつつ、二人の類似点と相違点、そして天宮えれなさんの弱みとは何か? えれなさんを救えるとすれば誰なのか? ということについて考察・分析したものです。
- 完璧超人・天宮えれなの弱みとは何か?
- 天宮えれなと香久矢まどかの対比構造
- 天宮えれなの正義:宇宙平和<目の前の友達の笑顔
- 天宮えれなはとうま君への攻撃を躊躇する
- 過ぎた自己犠牲:自分の笑顔と他人の笑顔、どちらを選ぶのか?
- 天宮えれなを救えるのは誰か?
- まとめ
完璧超人・天宮えれなの弱みとは何か?
天宮えれなさんは完璧超人として描かれてきましたが、とうま君といざこざが起きたときおいてもそのポジションが揺らぐことはありませんでした(スタプリ14話)
むしろ、過去の挫折経験(うちの家族は変なのでは?)も経て精神的な成長をしていることがうかがえたことから、完璧超人レベルは以前よりも高いといわざるをえないでしょう。
そんなえれなさんの弱みとは何なのか?
プリキュアになる前は、テンジョウたちノットレイダーを前にして足を震わせていましたが(スタプリ4話)、けっきょくその恐怖も乗り越えてフワたちを助けに飛び込んできましたし、決定的な弱みとはいいがたいでしょう。
依然として作中描写から明確な答えを導き出すのは困難ですが、ひとつ、気付いたことがあります。
それは、天宮えれなさんは「他者に対して意識が向きすぎている」ということです。
スタプリ14話の振りかえりはこちらからどうぞ。
天宮えれなと香久矢まどかの対比構造
この2人は「太陽」と「月」と称されていることからも分かる通り、対比の目立つキャラクターです。
えれなの弱みについて書く前段階として、えれなとまどかのどういったところが類似していて、どういったところが違っているのかについて、考察していきたいと思います。
類似点 「やりたいこと」が家庭環境によって阻害されている
天宮えれなさんは学校が終わると誰よりも早く帰り、家の仕事の手伝いや、妹弟たちの世話をしています。
そのため、部活動もしていませんし、放課後に誰かの遊ぶといったことあまりしていません。
一方、まどかさんは父親・冬貴の強い干渉を受けており、自分のやりたいことをするのではなく、父親にいわれたことをするという生活を歩んできました。
そのこともあってか、ひかるに連れていかれるまで商店街に遊びに行ったこともありませんでした。(スタプリ9話)
つまり、両者とも家庭環境が原因で「自分のやりたいことができていない」という点が同じなのです。
なお、一見するとえれなさんは家族想いの優しい女の子だな、と思わなくもないですが、自分の時間のほとんどを家族のために費やしている中学生って、健全かといわれるとあまり健全ではないような気がします。
えれなさんが「(自分が)これをやりたい!」ということはほとんどありません。えれなさんはいつも周囲のことを最優先に考えています。
まどかさんもまた、父親・冬貴の「こうしなさい」「これは駄目だ」という指示に従って生きてきました。そのため、自分のやりたいことはやれなかったでしょうし、そもそも「自分のやりたいことは何か?」なんてほとんど考えたこともないはずです。
まどかさんがはじめて商店街に行ったときの回。
星奈ひかるさんがまどかさんの手を引いてくれたおかげで、まどかさんはスタードーナツの美味しさに感動することができました。
この回がなければ、スタプリ15話のオークションで、まどかさんが大逆転することもできなかったでしょう。そう考えると、大変感慨深い回です。
相違点①えれなは積極的でまどかは消極的
えれなさんが家族の手伝いを積極的に行っているのに対して、まどかさんは父親の指示に従って消極的に行動しているという点が異なります。
えれなさんは自ら進んで家の手伝いや弟妹の世話をしています。
えれなのパパやママは、そうすることをえれなに強要しているわけではありません。
一方、まどかさんは、父・冬貴からの命令や指示に従っている面が強いです。
確かに、まどかさんとえれなさんは「自分のやりたいこと」が家庭環境によって阻害されているという点では同じです。
ただ、まどかさんは父親からの強い干渉によってやりたいことを阻害されているのに対して、えれなさんの場合は自ら進んでそうしている節があるのです。
変わることがより難しいのはえれなさんの方かもしれません。
相違点②えれなは他人のことで、まどかは自分のことで余裕がない
えれなさんは常に家の仕事の手伝いや弟妹の世話=他人のことで余裕のない状態が続いています。
一方、まどかさんは「毎日が綱渡り」のようだともいっていましたが、完璧を求めすぎるあまり、自分のことで余裕がない状態が続いています。
えれなさんは他人のことで、まどかさんは自分のことでいっぱいいっぱいなのです。
天宮えれなの正義:宇宙平和<目の前の友達の笑顔
スタプリ8話では、「てんびん座」のスターカラーペンが「聖なる骨」として崇められており、えれなさんはそれを無理矢理取ってしまうかどうかの苦渋の選択を迫られます。
最終的に、えれなさんは「みんなの笑顔を奪うことはできない」といって、「聖なる骨」を取ることはしませんでした。
えれなさんは「スターカラーペン(宇宙の平和)」ではなく、「聖なる骨(目の前の友達の笑顔)」を選んだわけです。
最終的にはうまいこと話が進み、ペンを手に入れることができましたが、えれなさんが何よりも大切にしているのは、「目の前の友達の笑顔」なのだということが分かります。
言い方を変えれば、「目の前の友達の笑顔」を犠牲に何かをすることは、えれなさんの正義に反するわけです。
スタプリ8話はシュールなギャグ回の裏で、さりげなく重要なテーマについて語られているスタプリらしい素敵な回でした。
天宮えれなはとうま君への攻撃を躊躇する
スタプリ第14話の戦闘シーンにおいて、天宮えれなさんはさそり座のプリンセスカラーペンを手にするまで、とうま君のことを一度も攻撃しませんでした。
それは、えれなさんのとうま君に対する想いの強さゆえの躊躇でしょう。
とうま君による1度目の攻撃は避けたものの、2度目は直撃を受け、3度目はその場で立ち尽くしていたところをキュアスターの反撃によって助けられています。
そこに、いつもの頼れるえれなさんはいません。
確かに、実の弟が怪物化したという現実はあまりにも非情であり、そう簡単には受け止め切れないものでしょう。困惑する気持ちも分かります。
しかし、たとえばひかるの大好きな遼じいがノットリガーにされたとき(スタプリ6話)、ひかるは割と躊躇なく遼じいを攻撃しています。
えれなさんは、自分の行為が大切な人を傷付けてしまうかもしれないと感じたとき、動けなくなってしまうようです。
スタプリ6話は遼じいがアイワ―ンのダークペンによってノットリガーにさせられた回です。大人を自認するララがひかるたちに助けを求めた素晴らしい回でした。
過ぎた自己犠牲:自分の笑顔と他人の笑顔、どちらを選ぶのか?
えれさんの標榜する正義、「目の前の友達の笑顔を大切にする」というのは機能不全に陥りやすいともいえます。
具体的には、下記のものをてんびんにかけた場合にジレンマが生じることでしょう。
- 「みんなの笑顔」と「目の前の友達の笑顔」のどちらかを選ぶとき
- 「友達Aの笑顔」と「友達Bの笑顔」のどちらかを選ぶとき
- 「自分の笑顔」と「みんなの笑顔」のどちらかを選ぶとき
- 「自分の笑顔」と「目の前の友達の笑顔」のどちらかを選ぶとき
スタプリ8話の「宇宙平和」か「聖なる骨」か問題においては、間接的に1の問いかけがされていたとも捉えられます。このとき、えれなさんは「友達の笑顔」を選びました。
みんなのためであれば、友達の笑顔を奪ってもいいか?
否、断じて否である、とえれなさんは表明しました。
では、2の場合はどうでしょうか?
おそらく、えれなさんなら、たとえどんなに難しくても、両方の笑顔を守るために動こうとするはずです。優れた頭脳を持ち、機転の利くえれなさん場合、実際に両方の笑顔を守れるような気もします。
問題は、3、4の場合です。
えれなさんは、自分を犠牲にして「みんな」や「目の前の友達」の笑顔を守ろうとするんじゃないでしょうか。
「自分を犠牲にすれば大切な人の笑顔を守れる」という選択肢があったら、えれなさんは何の躊躇もなくそれを選ぶのではないでしょうか。
この、「過ぎた自己犠牲」ともいえるえれなさんの特性。
これこそが、えれなさんの「弱み」ではないかと考えるのです。
現に、えれなさんは自分の時間の大半を使い、家の手伝いや弟妹の世話をしています。プリキュアのメンバーで集まることはあっても、たいていはペン探しであったり、ロケット修理であったり、「何かのため」「誰かのため」であることがほとんどです。
えれなさんは、「自分のため」に時間を使わないのです。
天宮えれなを救えるのは誰か?
さて、本題です。
何事にも限度というものがあり、過ぎた自己犠牲は賛美されるべきものではありません。*1
しかし、天宮えれなというキャラクターは、他人のための過ぎた自己犠牲をしてもおかしくない人物です。
天宮えれなさんが自分を犠牲にして誰かを救おうとしたとき、「もっと自分を大切にして」といえるのは誰でしょうか?
えれなさんが誰かのことを大切に思っているように、えれなのことを大切に思っている人がいるのだと教えられるのは誰でしょうか?
スタプリのメンバーには、余裕のない自分と向き合い、必死で模索し続けている女の子が一人います。その子は、自分と向き合い続けているからこそ、自分のことを大切にしない女の子のことを放ってはおかないはずです。
我らが紫。夜空に輝く神秘の月明かり。
私は、香久矢まどかさんこそが、えれなさんを救える人物ではないかと思うのです。
まとめ
- えれなもまどかもやりたいことが家庭環境によって阻害されている
- えれなは他人のことでいっぱいいっぱい、まどかは自分のことでいっぱいいっぱい
- えれなの掲げる正義は過ぎた自己犠牲に走る危険がある
- えれなを過ぎた自己犠牲から救えるのはまどか説
私はひかララが好きです。ひかララがこれまで育んできた友情の軌跡を解説しながらまとめました。
バケニャーンとマオの正体・関係性・目的について作中描写から徹底的に考察した記事です。考察しすぎて頭が頭痛で痛いです。
天宮えれなさんはメキシコ人のハーフということが判明しましたが、作中描写や様々な統計データから、えれなさんはスペイン・ペルー・アルゼンチンのハーフではないかと予想していました。供養のために置いておきます。よかったら見てください。
ここまでいろいろ書きましたが、天宮えれなさんは本当に完璧超人すぎるんですよね。完璧な姉ゆえに、いちばんのお兄ちゃんであるとうま君との対立が激しいものになるかという妄想もしていたんですが、スタプリ14話ではえれなさんは綺麗に解決してくれました。
天宮えれなさんが今後作中で弱みを見せることがあるか、挫折することがあるかどうか分かりませんが、いずれにしろ、ここまでくるとえれなさんの完璧超人っぽさ「わざと」であるように思えます。
まだまだ考察の余地がありそうなので、また何か思いついたら追記するか新しく記事にしたいと思います。
長々と読んでいただき、誠にありがとうございました。
*1:自己や災害が起きたとき、私たちが最優先ですべきことは、「自分の身を守る」ということです。自分の身も満足に守れない状況で他人を助けにいこうとすると、危険な状態にある人間が増えてしまい、救助がより困難なものになってしまったり、二次災害のおそれも生じます。