金色の昼下がり

子持ちのFP2級がプリキュア(スタプリ)について割と全力で感想・考察・分析するブログ。書籍や映画のレビュー、節約キャンペーン情報もあります

【スタプリ全力考察】アイワーンがユニ/バケニャーンに騙されたのは自業自得なのか?

 

 アイワーンちゃんはユニたちレインボー星人に対して、かなりえげつない悪事をはたらいてきたことで有名な、スター☆トゥインクルプリキュアに登場する敵キャラクターです。 ところが、やっていることは極悪非道なのに、そんなアイワーンちゃんのことが大好きになってしまった方も中にはいて、何を隠そう私自身がそのうちの1人です。

 

 もちろん、世論としてはアイワーンちゃんの極悪非道な行為を許せないと思う方も多いと思いますし、私自身も、アイワーンちゃんは相当酷いことをしているなと思います。

 

 では、アイワーンちゃんがバケニャーンに騙されたのは、自業自得なのでしょうか? ユニがアイワーンちゃんのことを騙したのは当然許されるべきもので、悪くないことなのでしょうか?

 ということについて、考察を交えて書いてみました。

 

 この記事は、スタプリ36話(2019年10月13日放送)を視聴した時点で書いたものです。

 

 

 

「ア」はアイワーンちゃんのア

 今回のスタプリ36話は、実質的にはユニとアイワーンちゃんの物語であったといっても過言ではありません。36話ではアイワーンちゃんの「ア」の字も登場しなかったにもかかわらず、アイワーンちゃんのことを想像せざるを得なかった方は少なくなかったでしょう。

 

 具体的にいうと、このシーンです。

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第36話(C)ABC-A・東映アニメーション

アン「せっかくなので言わせてもらうであります。盗みはよくないでありますよ。騙されたり、自分のものを盗られた人の気持ちを考えるであります」
ユニ「それはあなたも一緒でしょう。ここでスパイしてたんでしょう。正義のためなら変装して騙してもいいの? 理由があれば何をしてもいいんなら、そんなの、誰にでもあるんじゃない?」
アン「そ、それは…」
ユニ「今のは忘れて、自分に言ったようなものだから」

 

「騙された人の気持ちを考えるであります」というアン警部補に対して、ユニは「それはあなたも一緒でしょう」といい返します。アンは調査のためにスパイとしてマフィアのアジトに潜り込んでおり、それはまさしくマフィアたちのことを「騙す」行為です。騙されたマフィアは、さぞ不愉快な思いをすることでしょう。実際、星空警察と長年の敵対関係にあるドン・オクトーはアンがスパイだったことを知って激怒しています。

 

スタプリ、ドン・オクトー

出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第36話(C)ABC-A・東映アニメーション

ドン・オクトー「宇宙マフィアと星空警察は長年の敵対関係。お前もアジトに忍び込んでたのは一緒やろがい!」

 

 さて、スパイ行為によって傷付けられたのは、ドン・オクトーだけではなくアイワーンちゃんもまた同じです。ユニは惑星レインボーを救うためにバケニャーンとなり、スパイ行為をすることで、結果的にアイワーンちゃんを傷付けることになりました。ここでのユニの台詞は、アンに対する意趣返しでもあり、自分自身に対する皮肉になっているわけです。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第27話(C)ABC-A・東映アニメーション

アイワーン「自分が何かされたら、人を騙したりしていいんだ?すっげぇなぁ!」

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第27話(C)ABC-A・東映アニメーション

アイワーン「ふざけんなっつーの!」

 

 ここでユニは、「理由があれば何をしてもいいのか?」と自問しているわけです。

 

 愛の反対は無関心。

 アイワーンちゃんの憎しみの裏に潜む、愛と悲しみについての考察です。

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ユニに対する擁護論と反論

 そんなユニに対して、次のような擁護をすることもできます。

  1. ユニは惑星レインボーを救うという崇高な目的があるから許されるはず
  2. そもそも原因を作ったアイワーンの自業自得/自己責任である

 

 しかし、これらの擁護論には次のように反論することができます。 

 

 1について。もし惑星レインボーを滅ぼしたアイワーンちゃんにも「崇高な目的」があったとすればどうでしょうか。たとえば、アイワーンちゃんもまた、母星や全宇宙を救うために何らかの研究をしていたのだとすれば? そのためであれば、アイワーンちゃんの侵略行為は正当化されるのでしょうか?

 

 36話の考察(前編)でも述べたように、「どれだけ崇高な目的があったとしても人の大切なものを奪っていい理由にはならない」というのがひかるさんたちの価値観です。この理論によって、ユニの怪盗行為(惑星レインボーの宝を取り戻すために盗みをする)は、少なくともひかるさんたちから明確に否定されており、最終的にはユニもその批判を部分的に受け入れました。よって、1の擁護はあまり意味をなさないものになってしまっています。

 

 2について。そもそもの原因を作ったのがアイワーンちゃんによる侵略行為によるものであり、アイワーンが惑星レインボーを滅ぼしていなければ、ユニがバケニャーンとなってスパイ活動をする必要もなかった、したがってこれはアイワーンの自業自得によるものだ、とする擁護論です。

 

 この擁護論は直感的にはとても納得しやすいものですが、実はひとつの危険性を孕んでいます。それは、「ユニも私たち視聴者も、アイワーンちゃんの事情を知らない」という点です。たとえば、アイワーンちゃんの母星が、その昔レインボー星人によって騙されて大切なものを失う経験をしていたらどうでしょうか? もしそうなら、アイワーンちゃんの侵略行為には正当性が与えられるのでしょうか?

 

 その可能性についてはいったん横に置いたとしても、要するに2の擁護論は、「やられたら(多少は)やり返してもよい」というものです。これを認めてしまうと、何らかの事情を抱えていると思われるアイワーンちゃんや、母星を理不尽にも奪われてきた事情を持つノットレイダーたちの侵略行為にも、一定の「妥当性」を認めざるを得なくなる可能性が出てきます。

 

 実際、カッパードさんはスタプリ11話でこんなことを言っています。

 

カッパード「わたしは星を奪われた! だから同じく奪うのみ!(※1)」

 

「やられたらやり返してよい」というのは、まさに「負の相互作用の連鎖」を生み出します。相手の事情を知ろうとすることもなく、そうやって復讐の連鎖を重ねていく世界は、果たして「キラやば~☆」なものなのでしょうか?

 

 もちろん、これらの問いに対する「正しい解答」というのは存在しないでしょう。

 だからこそ、「絶対的な正義」の存在しないこの広い宇宙のなかで、ユニはいま、必死にその「回答」を考えているのです。

 

(正義という言葉に対して過敏に反応するユニ)

アン「本官が捕まるなんて情けないであります。これからたくさん正義のために活躍する予定だったのに」
ユニ「正義ね」
アン「何であります?」
ユニ「別に」

 

※1 もっとも、「奪われた恨みをまったく無関係な人たちにやり返す」 ことと「奪われた相手にやり返す」ことはまた別だろう、という反論もできるかと思います。が、やはりこの場合においても、「奪われた相手にやり返すのはいいの?」という問題にぶち当たりますし、万が一ノットレイダーたちが奪われた原因の一端が星空連合などにあるのだとすれば、問題はさらに複雑なものになるでしょう。

 

キャラクターとしてのユニの役割

 さて、4人のメンバーは、異文化や他人の価値観に対して非常に寛容です。そのことは、一見するとディストピア感の溢れる惑星サマーンなどの文化でさえ、一切否定せず受容してきたことからも分かります。

 

 しかし、何でもかんでも無条件に受容してきたわけではありません。その象徴たる存在が「ノットレイダー」です。スタプリは「ノットレイダーの価値観」を真っ向から否定してきました。そうすることで、プリキュアたちの「正当な価値観」を強調し、物語の車輪を回していたわけです。

 

 その車輪にストップをかける「異物」たる存在が、ユニというキャラクターです。

 

 スタプリは、物語の構成として、1話から25話(OPにユニ不在)を前半部、26話以降(OPにユニが加わる)を後半部に分けることができます。1話から25話にかけては、視聴者がユニを含めたプリキュアたちに肩入れしやすいように構成されており、視聴者の子どもたちは自然とプリキュアや途中で出会った異星人たちの考え方が「正しい」と、ノットレイダーたちの考え方は「間違っている」と感じるようにつくられています。

 

 しかし、26話からはそうもいきません。

 29話~30話(惑星サマーン編)では、視聴者は「ある種の嫌悪感」を抱きかねない価値観をぶつけられますし、32話ではガルオウガ様の事情(母星を失ったことについての詳細)が語られますし、34話ではえれなさんが異星人のサボローを無自覚に傷付けてしまっています。

 

 中でも特に大きなターニングポイントとなっているのは、アイワーンがユニの抱える矛盾と鋭く指摘し、それに気付いてすらいないプリキュアたちの誤謬、すなわち「想像力の欠如」を痛烈に批判したスタプリ27話です。

 

 視聴者の子どもたちは、それまでは概ねプリキュアが正しいと思っていたところに、「本当にそうなの?」という疑問符をぶつけられます。が、27話ではその問いに対する回答は得られません。そして今回の36話で、アン警部補という「(表面上の)正義の執行者」を登場させることにより、「正義」とは何なのか、ユニの行いは正しかったのかということが、改めて掘り下げられる内容となっています。

 

 ユニというキャラクターによって、スタプリという作品は複雑な世界を複雑なまま描くことに成功しているとも言えるでしょう。

 

※スタプリ26話では、第1話ぶりにカッパードさんと宇宙空間での戦闘が勃発しましたが、これもまた、26話がスタプリという作品におけるひとつのターニングポイントとなっていることを示しているようです。

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「想像力からはじまる」

 スタプリは、この複雑で多様な世界を単純化することなく描いている作品です。時には表側から、時には裏側から世界を見ることで、それまで見ていた景色とはまた違った色が見えてきます。

 

 しかし、私たちは神ではありません。表側と裏側を見たとしても、他のすべての面を余すことなく見ることはできません。世界のすべてを俯瞰できる視点を持ち合わせていない私たちは、どう足掻いても世界のすべてを見て知ることはできないのです。

 その事実は絶望かもしれませんが、希望がないわけではありません。

 

 それは、「想像力」という名の希望です。

 

 ひかるさんたちは、想像力をもって知らない世界へとダイブしていきます。知らないものに想いを馳せ、知らないものを知ろうとしながら、自分のことも知ってもらおうとしていきます。

 

 分かり合えないこともあるかもしれない。

 しかし、そうして分かり合えたとき、キラやば~☆なものがきっとあるのだと、スタプリは言うのです。

 

出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第35話(C)ABC-A・東映アニメーション

キュアスター「きっと、そこからきっと生まれるんだ。キラやば~☆なものが!」(スタプリ35話)

 

 果たして、ユニとアイワーンちゃんは分かり合えるのでしょうか?

 プリキュアとノットレイダーたちは、分かり合えるのでしょうか?

 

 もっとも、「許し合う」だけが「分かり合う」ことではないでしょうし、「同情する」ことだけが「理解する」ということでもないでしょう。スタプリという物語がどこに終着するのか、私はとても楽しみです。

 

 きっとそこからキラやば~☆なものが生まれる。スタプリ35話の考察です。

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終わりに

 この記事では、「ユニのスパイ行為に対する擁護論」に対する反論を一部でしていますが、だからといってアイワーンちゃんの侵略行為が「正当化」されるものではないことは、改めて断っておきます。

 

 ユニはユニで自身のスパイ行為の是非について自問しているように、アイワーンちゃんはアイワーンちゃんで自身の侵略行為の是非について自問する必要があるでしょう。あるいは、まったく反省の素振りを見せることなく、今後も悪党のまま突っ走っていき、悪党のまま散る…というのも、それはそれで好きな展開ではありますが、スタプリは単純な勧善懲悪を描こうとしていない物語ですので、そういう展開になる可能性は低いのかな、と今のところは思っています。

 

 スタプリ36話の考察(後編)を書こうとしていたら、ユニとアイワーンちゃんの話だけで無駄に熱く語ってしまいました。

 36話の考察(後編)はまた改めて書きたいと思います。

 

  こちらはスタプリ36話(前編)、ユニの怪盗行為を否定したことについて考察しています。

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  惑星サマーン編のときも同様で、書きたいことがありすぎてこんな記事を書いています。惑星サマーンはディストピアなのか? という考察です。

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  プリキュアドリームステージの感想をネタバレなしで語っています。童心に返りすぎて胎児になりました(意訳:すごくおもしろかったです)

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