ヒープリ4話、視聴している時の私の頭の中は「キュアスパークルかわいい~!!」が99%を占めていました。かわいいは思考を停止する…。
この記事はヒーリングっど♥プリキュア4話の感想考察です。ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
プリキュアなんてどうでもいい
キングビョーゲン「今はとにかく地球を蝕め。我がヒーリングガーデンの女王よりも先に復活せなばならんのだ」
ダルイゼン「ま、いまんとこ出くわす場所限られてるし、焦んなくていいでしょ」
いいですね、いいですね。
何がどういいかって、このダルイゼン君の興味の無さです。今のビョーゲンズにとって、最優先すべきはキングビョーゲン様の復活であり、「地球を蝕むこと」です。そして、地球規模で考えた時、プリキュアがカバーしている範囲は極めて限られた場所――すなわち、すこやか市だけです。今の時点では、プリキュアを倒すことの優先順位はさほど高くないのです。
しかし。しかし、です。
この興味のなさそうな顔をしているダルイゼン君が、やがて、のどかさんという存在を無視できなくなる日が来るのかと思うと、私はゾクゾクが止まりません。前作・スター☆トゥインクルプリキュアでは、カッパードさんの中で、星奈ひかるさんの存在がどんどん大きくなっていましたが、のどかさんとダルイゼン君には、どのような運命が待ち受けているのでしょうか。ダルイゼン君の中で、のどかさんの存在感が大きくなったとき、彼はどんな顔をするのでしょうか。
楽しみでしかたありません(毎回言ってる)
「ビョーゲンズ」の定義
グアイワル「フン。蝕めるのは自然だけではないぞ」
今回、グアイワルの放ったナノビョーゲンは、鏡の中にいた光のエレメントさんを蝕み、ショッピングモール全体を赤黒く塗り潰していました。ビョーゲンズは「病原体」の象徴として描かれていますが、彼らが蝕めるのは自然だけではないようです。このことは、ビョーゲンズが細菌やウイルスなどの「病原体」よりも、さらに大きな概念の象徴になっていることを示しています。
ビョーゲンズが何の象徴として描かれているのか、一言で表すのは難しいですが、「蝕む」を辞書で引いてみると、次のような説明がされています。
1 虫が食って形を損なう。むしくいになる。
「―・んだような格子の柱に」〈三重吉・小鳥の巣〉
2 病気などで、からだや精神を少しずつ損なう。「大気汚染が健康を―・む」「心が―・まれる」
誰か/何かを損なわせること、それが「蝕む」ということです。
そう考えると、ビョーゲンズは「他のものを損なわせる存在」と定義できるかもしれません。
平光ひなたがプリキュアになった理由
ニャトラン「なあひなた、オレといっしょにプリキュアになんないか?」
ひなた「え、あたしもなれるの?」
ニャトラン「あの怪物、ビョーゲンズから地球を守るんだ」
ひなた「地球を、守る」
ニャトラン「そう、お前の中の好きなものや、大切なものを、お前の手で、守るんだよ。ひなた、お前ならできる。ていうか、オレはお前と組みたい!」ひなた「うん、分かった。やるよ、ニャトラン」
ひなたさんがプリキュアになると決め、ニャトランのもとに歩みを進めたとき、彼女の顔には眩い光が差し込みます。ひなたさんの心理が、「光」という舞台装置によって、見事に表現されています。
ところで。
のどかさんがプリキュアになったのは、「助けたいから」でした。
ちゆさんがプリキュアになったのは、「守りたいから」でした。
では、ひなたさんの場合は、どうだったのでしょうか?
ひなたさんの台詞をじっくり聞き返すと、彼女自身はどうしたいのか、直接的には口にしていないことに気付きます。もちろん、ニャトランからの「地球を守るんだ」「お前の中の好きなものや、大切なものを、お前の手で、守るんだよ」という言葉を受けて、ひなたさんは「分かった」と応じているため、「守りたい」が動機のひとつになっていることはうかがえます。とはいえ、その言葉を自らの口で発するか、発しないかというのは、それなりの「差異」があるように思うのです。
では、ひなたさんがプリキュアになった最大の理由が「守りたい」ではないとしたら、いったい何なのでしょうか。
のどかさんたちがプリキュアになるのを目にしたとき、ひなたさんはこう言っています。
ニャトラン「さあ、ひなたはここからどうでるニャ」
ひなた「きゃ~、かわい~!」
そして、プリキュアになったときの第一声も、
キュアスパークル「え~! めっちゃかわい~! すごい!」
というものです。
つまり、ひなたさんを動かしていたのは、「かわいい!」といった「感情」であることが読み取れます。
実際、4話のサブタイトルは、『カワイイ!なりたい!キュアスパークル誕生』です。ひなたさんの行動原理は「カワイイ!」といった「生の感情」に基づくものであり、それがうまくマッチしたからこそ、彼女はプリキュアになったのです。
一見すると、ひなたさんはちょっと子どもっぽく見えるかもしれません。
元気で、素直で、かわいい子――しかし、「平光ひなた」というキャラクターが私の目に魅力的に映るのは、彼女が「かわいいから」だけではありません。彼女の行動の裏には紛うことなき「思慮深さ」と「優しさ」があります。ニャトランが見世物にならないように、真っ先に「お兄」のところに連れていって判断を仰ごうとしたり、メガビョーゲンに吹き飛ばされたときに、真っ先にニャトランの安否を確認していたのが、何よりの証です。「子どもっぽさ」と「思慮深さ」という相反する要素を同居させることで、ヒープリは「平光ひなた」というキャラクターを、より立体的に、より魅力的に、そして、より生き生きと描くことに成功していると思います。
ひなたさんは「感情」に真っすぐな子ですが、言葉を変えれば、自分や他人の「感情(想い)」を大切にしている子だとも言えます。「めっちゃ」を多用しながら、自分の感情をめいいっぱい表現し、そして、自分や他人の「感情」を大切にする女の子――それが「平光ひなた」なのです。
ところで、ヒープリのメンバーをひとつの医療チームとして考えたとき、これはとてもバランスのいいチームだと思います。困っている人や苦しんでいる人を「助ける」ことを優先するのどかさん、大切なものを「守る」ことを優先するちゆさん、自分や他人の「感情」を優先するひなたさん。みんなそれぞれ、異なる役割を持っているのです。
(実際の医療福祉においても、様々な職種がそれぞれの専門性を活かし、チームとして連携することはとても重要です。これは「チーム医療」「多職種連携」と呼ばれるもので、積極的な推進がされています)
参考リンク:
「倒す」のではなく「浄化」する
スパークル「さあ、一気に倒しちゃお!」
ニャトラン「倒すんじゃない、浄化するんだ!」
プリキュアは、ひとつひとつの言葉の使い方にとても気をつけている作品です。一見すると似たような意味でも、実は本質的な意味が異なっていることが多々あります。
ここでは、ニャトランが「倒す」を「浄化」に訂正しています。「倒すこと」と「浄化すること」は違うのだと、このシーンでは明確に示されているわけです。
私は、『病原菌にとっての「浄化」とは殺菌であり、その「いのち」を奪うことを意味するのではないか』とヒープリ3話の考察で書きましたが、それは本質から逸れる考えだったと思い直しています。
では、ヒープリにおける「浄化」とは何なのでしょう?
その問いを考える前に、そもそも、「メガビョーゲンとは何なのか」という問題を考えてみたいと思います。
メガビョーゲンはナノビョーゲンが進化して生まれる「怪物」であり、他のものを蝕み、損なわせる存在です。メガビョーゲンを理解しようとするとき、分かりやすいたとえとなるのは、やはり「病気」です。 病気になると、得てして、私たちは心や体を蝕まれ、健康を損なうことになります。
さて、私たちはどういうときに「病気」になるのでしょうか。
私たちは「病原体」と聞くと、どうしてもインフルエンザウイルスといった「外部からやって来る侵入者」を想像しますし、「病原体」=「体に悪い」というイメ―ジがあります。
もちろん、それも間違ってはいないのですが、実は、私たちの体にはたくさんの細菌やカビ、ウイルスが常在しています。たとえば、私たちの皮膚には「表皮ブドウ球菌」という細菌が常在していますが、彼らは普段、外部から他の細菌等が侵入してくるのを防いだり、毒性の強い「黄色ブドウ球菌」(これも皮膚の常在細菌)の増殖を防いだりしてくれています。
「なんだ、表皮ブドウ球菌、いいやつじゃん」
そう思うかもしれませんが、問題がないのは、それぞれの細菌と私たちの「バランス」が保たれているときだけです。「バランス」が壊れたとき――たとえば、免疫機能が低下したときなど、それまでは仲良くやっていた表皮ブドウ球菌も、私たちの体を蝕み、様々な感染症を引き起こします。同じく常在細菌である黄色ブドウ球菌についても同様で、私たちが「健康」でいるときには特に悪さをしませんが、「バランス」が壊れると、彼らも様々な感染症を引き起こします。
つまり、私たちが「病気」になるのは、私たちと病原体とのバランス(調和)が崩れたとき――病原体側に天秤が傾いたときなのです。
以上のことを踏まえると、「メガビョーゲン」とは、私たちと病原体とのバランス(調和)が崩れた状態を指していると考えられます。つまり、ヒープリの戦士たちが行う「浄化」とは、そのバランス(調和)を整えることを意味するのです。
とはいえ、どこでそのバランスが均衡するのかは、実際に競り合ってみなければわかりません。私たち生物は、病原体を含めた他の生物との熾烈な生存競争を経ながら、それぞれが「ちょうどいいライン」を見つけることで、種として存続してきました。そして、ビョーゲンズとプリキュアは、まだその「ちょうどいいライン」を見つけていません。
であるなら。
ヒープリは、プリキュアとヒーリングアニマル、そしてビョーゲンズとの調和の境界線を探す物語になるのかもしれません。
※表皮ブドウ球菌などの常在細菌は、私たちと「共生」している存在ですが、たとえばインフルエンザウイルスなんかは私たちにとっては厄介な外敵です。とはいえ、インフルエンザウイルスの自然宿主はカモなどの渡り鳥(水鳥)であり、そこではウイルスは発症しません。水鳥たちにとってインフルエンザウイルスは無害であり、インフルエンザウイルスは水鳥を介して様々な生物に感染していくのです。そういう意味では、水鳥とインフルエンザウイルスは「共生」していると言えるかもしれません。(水鳥側にメリットがあるかは分かりませんが)。
参考リンク:
「インフルエンザの総括」北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター統括 喜田 宏氏
終わりに:沢泉ちゆの困惑
ヒープリ4話は、「平光ひなた」と「ニャトラン」のお披露目会としての側面もあり、二人の魅力が遺憾なく発揮されていましたが、一方で、今後の展開への布石が随所で打たれていました。
具体的に言うと、ちゆさんとひなたさんの「一方通行な関係性」です。ひなたさんは、出会って間もないのどかさんとも、それほど接点があったわけではなさそうなちゆさんとも、親しい友達のように接しますが、ちゆさんはその距離感の近さにやや困惑している様子です。まずは次のカットをご覧ください。
ひなた「でね、さっき拾った猫なんだけど」
ちゆ「気のせいよ! 猫はしゃべらない!」
ひなた「ちょ、何? ちゆち!、怖い~」
ちゆ「ちゆちー…?」
ちゆさんはここで、あだ名で呼ばれることに困惑しています。さらに続きのカットでは、
ちゆ「そういえばひらみつさん、友達との約束はもういいの?」
ひなた「やだな~ひなたでいいって」
と提案されていますが、けっきょく、ちゆさんが彼女のことを「ひなた」と呼ぶことはありませんでした。
また、メガビョーゲンを倒したときも、 にこやかに笑うのどかさんとは対照的に、ちゆさんは複雑な表情です。
ひなた「勝ったの? やったー! あたしいすごーい! おつかれー! おつかれー! いえいいえーい!」
のどか「えへへ、お疲れ様!」
ちゆ「浄化できたんだもの。これでいいのよね」
これはラストシーンも同様で、やっぱりちゆさんだけは微妙な顔をしています。(よく見ると眉が下がっている)
ニャトラン「これからもオレと一緒に、お手当てしてくれるよな?」
ちゆ「いいよ、だってみんな困ってるんでしょ?」
つまるところ、ちゆさんはひなたさんのような人物と接した経験がなく、性格が真逆なところからも、やや引いている状態なのでしょう。そして、次回予告では、そんな二人がなんやかんやしてなんやかんやするシーンが流れていました。ちゆさんとのどかさんの名前呼びイベントは難なく終わり、二人は既に良好な関係を築いていますが、ちゆさんとひなたさんはこれからなのです。
いや、めっちゃ楽しみですね。(それだけ)
前回のヒープリ3話の考察です。献身と自己犠牲、勇気と無謀の違い。
スタプリの印象的なエピソードを振り返った記事です。(後編は書いている途中です)
<宣伝です>
いよいよスター☆トゥインクルプリキュアのコミックス2巻の発売日(2020年3月13日)が近付いてきました。超絶尊いことで有名なコミックス版ですが、ちなみに1巻は、FUN!FUN!ファンタイム!ファンタジック!でした。生きてるってキラやば~☆