ヒープリ5話、ちゆさんとひなたさんの距離が近付いていて最高でした。この二人の関係性、好きです……。
この記事はヒーリングっど♥プリキュア5話の感想考察です。ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
- プリキュアの存在はイレギュラー
- 「課題の解決」が先か、「不安の解消」が先か
- ちゆは「課題の解決」を優先する
- ひなたは「不安の解消」を優先する
- どちらのアプローチが「優れている」のか?
- 光合成に必要なものは3つ
- 締め方がヒーリンGOOD
- 終わりに:花寺のどかという「調停者」
プリキュアの存在はイレギュラー
キングビョーゲン「忘れるな…プリキュアの存在は、今、我々に単独で抵抗できるヒーリングアニマルがいないという証。まずは我が体を取り戻す方が先決だ」
ヒープリはキングビョーゲン様の登場のさせ方がうまいなあと思います。毎回のように登場させることで、強大なボスの存在を印象付けるとともに、キングビョーゲン様とビョーゲンズたちの会話を通して、ヒープリの世界観が間接的に分かる仕掛けになっています。
今回分かったことは、ヒープリの世界観では、「プリキュアはイレギュラーな存在」であるということです。キングビョーゲン様から言わせると、「我々に単独で抵抗できるヒーリングアニマルがいない」からこそ、「プリキュアが存在している」わけです。
この台詞から類推するに、もともと、ビョーゲンズとヒーリングアニマルはある程度の均衡を保っていたのでしょう。ただ、今回それが崩れてしまった。ビョーゲンズがやや優勢となり、それに抵抗できるヒーリングアニマルが不在になったからこそ、ヒーリングアニマルは「伝説の戦士プリキュア」を探すことになったのです。
こうして考えると、ヒープリにおけるプリキュアは、まさに「医者」のような存在であることが分かります。私たちと病原体とのバランスが崩れ、病原体に天秤が傾いたとき、私たちは「病気」になります。そうしたときに、薬や手術等の「お手当て」を通じて、「調和の取れた状態にする」のが医者です。両者のバランスが「均衡に保たれている」ときには、医者は必要とされません。ヒープリにおけるプリキュアもまた、同様です。「地球」はいま、ビョーゲンズという名の「病原体」が優勢になっており、それを「お手当て」することで「調和の取れた状態にする(浄化する)」のが、今作のプリキュアなのです。
「課題の解決」が先か、「不安の解消」が先か
ちゆ「急いでメガビョーゲンを探しましょう! 被害が大きくなる前に」
ひなた「待ってよ、ペギタン見つけるのが先でしょ」
ちゆ「でも…」
ひなた「ペギタンだってちゆちーを探してるよ! ひとりで心細くて泣いてるかも!」
ちゆ「メガビョーゲンが現れたのよ! 放っておくわけにはいかないじゃない!」
メガビョーゲンを探すのが先か、ペギタンが探すのが先か。
ちゆさんとひなたさんはそのことで口論するわけですが、私としては、二人の口論を次のような対比として解釈しました。
- (ちゆ)「どうすれば課題を解決できるか?」
- (ひなた)「どうすれば目の前の不安を解消できるか?」
ちゆは「課題の解決」を優先する
まず、ヒープリ5話におけるちゆさんの台詞を追っていくと、そのどれもが「課題の解決」に焦点を当てたものだということがうかがえます。
たとえば、このシーン。
ちゆ「プリキュアのことは秘密って言われたでしょう?」
ひなた「ああそうだった! ごめ~ん。何言ってよくて、何がだめだったのか、分かんなくなっちゃって…」
のどか「そうだよね~。だって、今まで知らなかった世界のことだもん。
ちゆ「…分かったわ。今後のためにも、一度みんなでおさらいをしましょう。放課後、集合ね」
ここでは、「何を言ってよくて何が駄目なのか分からない」というひなたさんの「課題」を解決するために、ちゆさんは「みんなでおさらいをする」という提案をしています。
また、次のシーンでは、
ちゆ「覚えるのが苦手なら、メモを取るといいと思うの。書くと頭に入るし、読み返せば思い出せるでしょう?」
ひなた「ああ…ごめーん。そうだよね…えへへ」
ひなたさんの「覚えるのが苦手」という「課題」に対して、「メモを取る」という解決方法を提案しています。
さらにさらに、こちらのシーンでは、
ちゆ「わたし、ひなたの力になりたくてアドバイスしてるのに、なんだか怖がらせちゃってるみたいで」
のどか「怖がってるってことはないと思うけどな」
ラビリン「そうラビ。ひなたはちゆに怒られてると思って凹んでるだけラビ」
のどか「ちゆちゃん…」
ちゆ「怒ってるつもりはないの。ただわたし、ひなたみたいなタイプ、はじめてで。正直、どうしていいか分からなくて」
「どうすればひなたの力になれるのか」という「課題」に対して、「解決方法が分からない」とちゆさんは悩んでいます。
ひなたは「不安の解消」を優先する
一方、困難にぶつかったときのひなたさんのアプローチ方法は、「課題解決」ではなく、「目の前の不安の解消」です。たとえば、先ほども引用したこのシーン。
ちゆ「覚えるのが苦手なら、メモを取るといいと思うの。書くと頭に入るし、読み返せば思い出せるでしょう?」
ひなた「ああ…ごめーん。そうだよね…えへへ」
ちゆさんから指摘を受けて、真っ先に「ごめん」と謝っています。この「ごめん」は、ちゆさんに迷惑をかけていると思っているからこそ、みんなの気持ちを考えているからこその「ごめん」です。ひなたさんは、ちゆさんが覚えている「不安」に「謝罪」で応じています。「謝罪」は、目の前の課題を直接的に解決するための方法ではなく、相手方の不安や怒り、そして自分自身の罪悪感といったマイナス感情を和らげるものです。
また、こちらのシーンでは、
ひなた「ちゆちー、きっとあたしのこと怒ってるよね」
のどか「そうかな~、そんなふうには見えなかったよ」
ひなた「あたし、プリキュアやめたほうがいいのかも」
(中略)
のどか「ひなたちゃん、なんでそう思ったの?」
ひなた「あたし、物覚え悪いし、おっちょこちょいだし、このままだと迷惑かけちゃうなって」
みんなに迷惑をかけるなら、プリキュアをやめた方がいいのかもと言っています。ひなたさんは、プリキュアをやめることで、みんなが抱いている「不安」、自分自身の抱いている「不安」を解消しようとしているのです。(※1)(※2)
※1 ところで、ひなたさんがプリキュアになった理由のうちのひとつとして、「みんな(ニャトランたち)が困っている」から協力する、というのが挙げられていました。(ヒープリ4話)。こう考えると、自分がプリキュアになることで、余計にみんなを困らせてしまうくらいなら、プリキュアにならない方がいい――ひなたさんがそう考えるのも、納得がいきます。
※2 ひなたさんが「めっちゃ」以外によく使う言葉として、「優しい」があります。ひなたさんは「人の優しさ」に敏感ですし、自分自身もまた「優しく」あろうとしています。これは、ひなたさんが、「目の前の不安を解消する」ことに重きを置いている表れでもあると思います。
では、これらのことを踏まえて、改めてメガビョーゲンを探すのが先か、ペギタンを見つけるのが先かを巡る口論を見てみます。
どちらのアプローチが「優れている」のか?
ちゆ「急いでメガビョーゲンを探しましょう! 被害が大きくなる前に」
ひなた「待ってよ、ペギタン見つけるのが先でしょ」
ちゆ「でも…」
ひなた「ペギタンだってちゆちーを探してるよ! ひとりで心細くて泣いてるかも!」
ちゆ「メガビョーゲンが現れたのよ! 放っておくわけにはいかないじゃない!」
ひなたさんの台詞で注目したいのは、「(ペギタンが)ひとりで心細くて泣いてるかも!」です。要するに、ひなたさんはペギタンの抱いている「不安」を解消するのが最優先だ、と主張しているのです。
一方、「急いでメガビョーゲンを探しましょう! 被害が大きくなる前に」と言っている通り、ちゆさんは「メガビョーゲンが害をなそうとしている」状況を「課題」と捉え、それを解決すべく、「メガビョーゲンを探そう」と提案していることが分かります。
二人のこうした傾向は、シンドイーネ様と対峙したときにも表れています。ペギタンを人質に取るシンドイーネ様に対して、「どうすればペギタンを解放してくれるのか(この危機を解決する方法は何か)」と問いかけるちゆさんに対して、ひなたさんは真っ先にペギタンのもとに駆け寄ります。おそらく、ひなたさんは「危機を解決する方法を考える」よりも、「ペギタンの不安を解消する」ことを優先してた結果、考えるよりも先に体が動いたのでしょう。
さて、ここでは、ちゆさんとひなたさん、どちらのアプローチが優れているかという話をするつもりはありません。ヒープリもまた、「どちらがより優れているのか」を描こうとしているわけではないでしょう。なぜなら、二人の口論の最中、のどかさんが「どっちも探そう!(どっちも大事だよ!)」と言っているからです。
のどか「どっちも探そう!(ここで重々しいBGMが消える)ペギタンはわたしたちの大事なお友達だし、それに、メガビョーゲンを見つけても、ペギタンがいないと、ちゆちゃんプリキュアになれないでしょ? ね? 早く見つけてお手当てしよう!」
これは、実際の医療においても同じです。
ひなたさんのアプローチの方法は、不安でいっぱいの患者さんの心のケアに結び付きますし、ちゆさんのアプローチの方法は、どうすれば病気を治療していけるかといった課題解決に結びつきます。前者が欠けては、患者さんが医者に対して不信感を持ったり、適切な治療を拒んだりすることになりかねませんし、後者が欠けては、病気を治すための適切な方法に辿り着けない可能性があります。
ひなたさんのアプローチ方法も、ちゆさんのアプローチ方法も、どちらも同じくらい大切なのです。(※1)
※1 ちなみに、ひなたさんとちゆさんのアプローチ方法は、福祉分野における相談援助技術の手法と共通項があるようにも感じます。具体的に言うと、ひなたさんのそれは「危機介入アプローチ」、ちゆさんのそれは「課題中心アプローチ」と呼ばれるものとちょっと似ている…?と個人的に思いました。が、ヒープリの話から逸れてしまう恐れがあること、こじつけ感も若干否めないことから、今回は省きます。興味のある方はこちらをどうぞ。個人ブログですが、イラストもあり、要点がまとまっていて、とても分かりやすいです。
参考リンク:社会福祉:ソーシャルワーク相談援助技術「○○アプローチ」を解説! | 保育士試験対策クイズ
光合成に必要なものは3つ
そしてもちろん、ひなたさんとちゆさんの二人だけではなく、のどかさんもまた重要な存在です。二人の異なる意見を調和させたことで、見事、ペギタンを助け、メガビョーゲンを浄化し、人々を守ることにも成功しました。この三人のうち、誰かひとりでも欠けていれば、結果は違っていたかもしれません。
実際、ペギタンを救出する際にも、「三人がいたから助けられた」ということが明確に描かれています。ひなたさんがシンドイーネ様に立ち向かい、放り出されたペギタンをのどかさんがヘディングし、最後にちゆさんがペギタンを受け止める連携プレー。ひとりでも欠けていれば、ペギタンを助けられなかったかもしれないのです。
ヒープリは、のどかさん、ちゆさん、ひなたさんの三人が揃うことで、大きな力を生み出せるということを示しています。ラスト、三人が一緒に笑顔になっているカットを見たとき、私は、前半パートにおける「光合成」の説明を想起しました。
ちゆ「光合成に必要なものは、水、二酸化炭素、それから太陽の光です」
先生「その通り。光合成は陸の上の植物だけでなく、海の中も植物も行っている。だから、海の中にも酸素はたくさんあるんだぞ。そして、その酸素で、海の生物も生きている」
光合成に必要なものは、水、二酸化炭素、太陽の光の3です。3つが揃うことによって酸素が生み出され、私たちや海の生物が生きられるように、ちゆさん、のどかさん、ひなたさんの三人が揃うことで、大きな力を生み出せることが暗に描かれていたのではないでしょうか。
(泡のエレメントさんが助け出されたことで、水中の植物が光合成によって酸素を生み出している。これによって、魚たちは生きることができる)
締め方がヒーリンGOOD
ちゆ「ひなた、ちゃんと聞いてる? 今日はたまたまうまくいったからいいようなものの、これからは、ああいう無茶は慎んでよね! 分かった?」
ひなた「これから…?」
のどか「うん! これからも、三人でがんばろうね!」
ひなた「…もっちろん!」
ちゆ「…そうね!」
ヒープリ5話は締め方も良かったですね。
何がいいかって、最後のシーン、よく見てみると、ひなたさんは「ごめん」と言っていないのです。前半パートで、「プリキュアのことは秘密って言われたでしょう?」「覚えるのが苦手ならメモを取るといい」と言われた際、真っ先に「ごめん」と謝罪していたひなたさんが、ラストシーンでは、一切、謝罪の言葉を発していません。
これには、次の2つの意味が込められていると考えられます。
- ひなたが完全に間違っているわけではない
- ひなたとちゆの距離が縮まった
1つ目。
前半パートにて、ひなたさんが謝罪していたのは、「自分がみんなに迷惑をかけている」「自分のせいでみんなを不安がらせている」ことに負い目を感じていたからでした。誰よりも「人の気持ち」を慮っているひなたさんからしてみれば、それは耐え難い罪悪感だったことでしょう。
しかし、ラストシーンでは、ひなたさんは謝りません。なぜなら、ひなたさんは自分の手法――すなわち、「目の前で不安を感じている人のケアを最優先する」というアプローチが完全な誤りだとは考えていないからです。
もし、ひなたさんがここで「ごめん」と言ってしまえば、あたかも、「ひなたの考え方は完全に間違っており」、「ちゆの考え方こそが正しい」という印象を鑑賞者に与えかねません。それは脚本の本位ではないはずです。5話で描かれていたのは、それぞれ異なる三人の考え方や行動が「調和」したときに、大きな力を生み出すというものであり、そこに「優劣」はないのです。(※1)
2つ目。
前半パートまでのひなたさんは、ちゆさんに対して「過剰なほど」気を遣っていました。たとえば、イルカショーを観に行きたいという本心を我慢して、「ちゆちーの行きたいところに行こ?」と言ったのもそうです。親しき仲にも礼儀ありですが、遠慮がありすぎると、その距離はなかなか縮まないものです。
しかし、若干距離のあった二人は、ラストシーンで、一緒に満面の笑みを浮かべる関係になりました。もう、ひなたさんは、ちゆさんに「過度に」気を遣うことはありません。ひなたさんは、ちゆさんが単に自分に「怒っている」わけではなく、課題解決のための「アドバイス」をしてくれていることを理解したのです。
※1 とはいえ、シンドイーネ様に突っ込んでいったひなたさんの行動が「100%正しい選択」だったのかはまた別の話です。シンドイーネ様と交渉しようとしていたちゆさんについても、同様です。どちらかが完全に間違っているわけではないのと同じように、どちらかがの選択が「100%正しい」ものでもありません。その点については、ヒープリは一定の含みをもたせています。
終わりに:花寺のどかという「調停者」
5話におけるのどかさんは、正反対の特性を持つちゆさんとひなたさんをうまく調和させる役割を担っていました。 しかも、のどかさんの「うまい」ところは、二人の想いに寄り添い、そのいずれも尊重しながら方針を決めている点です。例えばこのシーン。
のどか「ねえねえ、最初どこいく?」
ひなた「あ! あたしイルカ…う、ううん。ちゆちーの行きたいところに行こ?」
ちゆ「わたしはどこでもいいわよ」
のどか「じゃあねえ、わたしイルカ見たい! ね~ラテ~」
ひなたさんは明らかにイルカを見に行きたいと思っていますが、ちゆさんに遠慮して、その想いを隠してしまいます。…が、そんなことは、のどかさんにはお見通しです。のどかさんは明らかにちゆさんの想いに「気付いて」います。だからこそ、のどかさんは「イルカが見たい!」と言いつつ、「ね~ラテ~」と流すことによって、「押しつけがましい感じ」を和らげています。
ちゆさんとひなたさんが互いの距離感を掴めずにすれ違っていたときも、ペギタンかメガビョーゲンのどちらを先に探すのか口論していたときも、そして、ラストシーンでも、のどかさんは二人の想いに寄り添いながら、両者の仲を取り持ち、「調和」させようと試みていました。そう考えると、「花寺のどか」というキャラクターは、ヒープリの世界における「調停者」としてデザインされているように思えます。
私はどうしても、妄想してしまうのです。
花寺のどかという「調停者」が、ヒーリングアニマルとビョーゲンズ、人間、そして地球に「調和」をもたらす未来を。
※前回のヒープリ4話の考察です。ひなたさんがキュアスパークルになった理由。
※サンタさんがインフルエンザでも休めなかったどうなるの?という話。ヒープリを見ていたからこそ書いた記事ですね。(プリキュアに日常を染められてる図)
以上、ヒーリングっど♥プリキュア5話の感想考察でした。
※過去のプリキュアの感想、考察記事については、このページのいちばん下にある「プリキュア考察」のボタンか(スマホ版)、いちばん上の「プリキュア感想 考察」のボタン(PC版)から移動できます。
<宣伝です>
いよいよスター☆トゥインクルプリキュアのコミックス2巻の発売日(2020年3月13日)が近付いてきました。超絶ハイパー尊いことで有名なコミックス版です。ちなみに1巻は、FUN!FUN!ファンタイム!ファンタジック!な内容で、無事、致命傷で済みました。生きてるってキラやば~☆