金色の昼下がり

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ヒーリングっど♥プリキュア 9話 感想 全力考察 「かわいい」は病気を治さないけれど…

  ヒープリ9話、主人公の三人がとにかくかわいくて尊い回でしたね。前回の8話から続けて見ると、ヒープリは彼女たちを「三人組」として描こうとしているように感じました。

 

 この記事はヒーリングっど♥プリキュア9話の感想考察です。ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。

 

 

 

シンドイーネはオシャレがしたい

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出典:ヒーリングっど♥プリキュア 第9話(C)ABC-A・東映アニメーション

 キングビョーゲン様に好かれるためにオシャレをするシンドイーネ様。

 前回の「占いの練習」といい、今回の「オシャレ」といい、シンドイーネ様の人間的でかわいい描写が続いています。8話の考察でも書いた通り、これには、「ビョーゲンズも人間も同じように生きていて、生きてるって感じを求めている」ということを示す狙いがあると考えます。

 

シンドイーネ様たちビョーゲンズは、人間やヒーリングアニマルたちと同じように「生きてる」存在です。そして、彼らは彼らなりの「生きてるって感じ」を求めて奮闘しており、その点ついては、プリキュアたちと同様です。ヒープリは、ビョーゲンズとプリキュアの「違い」、ビョーゲンズとプリキュアの「同じところ」をそれぞれ描いていくことで、今後の展開に繋げていくつもりではないでしょうか。(ヒープリ8話の考察より)

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ひなたは「相手の気持ち」を大切にする

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ひなた「へー! のどかっちのかわい~! あ、でもいろんな色混ぜるんなら、いっそボリューム出しちゃえば? ほら、こんな感じ!」
のどか「ふわ~! いつも作ってるのと違う感じ~!」

(略)
ひなた「ちゆちーのはねー、シンプルに作るんなら、ワンポイント置くと、めっちゃかっこよくなるよ!」

 

 

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出典:ヒーリングっど♥プリキュア 第9話(C)ABC-A・東映アニメーション

ひなた「わ~! ちゆちー、大人っぽくていい~!」
ちゆ「そ、そうかしら…?」
ひなた「うんうん、めっちゃ似合ってるし!」

 (略)

のどか「なんかまとまりがない感じ」

ひなた「おっけー。だったら、ほら、お花畑でまとまったじゃん!」
のどか「ふわ~、すっごい素敵! ありがとう、ひなたちゃん!」

 

 ひなたさんの素敵なところは、二つあります。

 

 一つ目は、ひなたさんは、自分のこともそっちのけで二人に似合うものを考えてくれるその一生懸命さであり、もうひとつは、常に「相手の気持ち」を大切にしているところです。

 

 具体的に言うと、ひなたさんは、自分の考える「似合うもの」を押し付けるのではなく、二人がそれぞれ選んできたものを、少しだけアレンジすることによって、よりかわいいものにしていました。「相手の気持ちを尊重している」からこそ、ひなたさんは、「二人の選んだものをアレンジする」という手法をとっているのです。

 

 なお、ひなたさんが「人の気持ち」を大切にする女の子であるということは、ヒープリ5話でも描かれていました。一方、ちゆさんは「課題の解決」を優先的に考える女の子であり、そんな二人の考えがバッティングしてしまったのが、5話だったと言えます。 

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のどかにとっての「生きてるって感じ」とは?

 

 みんなで楽しんでいたところでしたが、人込みの中でもみくちゃにされて、のどかさんはフラフラになってしまいます。いったん休憩するために外へ出たとき、ひなたさんはのどかさんに、「ひとりでどんどん突っ走ってしまったこと」を謝罪します。

 

ひなた「ごめん、本当にごめん!だめだめだよね、のどかっちがつらかったのに、ぜんぜん気付かないで」
ちゆ「ひなた…」
のどか「ううん、そんな」
ひなた「も~あたしってば、ついまわりが見えなくなるっていうか、ひとりでどんどん突っ走っちゃって、これ飲んで落ち着いたら、帰ろ! ね、そうしよう?」
ちゆ「まあ、そうね…あまり無理しない方が…」

  

 ひなたさんが謝罪したのは、のどかさんに「つらい思いをさせてしまった」という罪悪感を覚えたからです。誰よりも「相手の気持ち」を大切にしているひなたさんだからこそ、余計、この罪悪感は強いものだったのでしょう。さらにいえば、自分の持っているこの特性について、ひなたさんは痛いほど自覚しており、4話でも同じように自責の念に駆られていました。ひなたさんは、「またやってしまった」と、自分自身を情けなく感じたことが読み取れます。

 

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出典:ヒーリングっど♥プリキュア 第9話(C)ABC-A・東映アニメーション

ひなた「は~やばい、またやっちゃった」
ちゆ「またって?」
ひなた「あたし、目の前のことでいっぱいになって、すぐ他のこと忘れちゃうんだよね」

  

「もう帰ろう」というひなたさんの提案に対して、ちゆさんもまた、「そうね…あまり無理しない方が…」とうなずきます。「人の気持ちを大切にする」ひなたさん、「課題の解決を優先する」ちゆさん、二人の考え方はここでピタリと一致したわけです。

 

 …が、その提案に対して、のどかさんは「NO」を告げます。

 

のどか「ひなたちゃん…わたし、まだ帰らないよ。だって、こんなにドキドキするくらい楽しいんだもん。帰りたくないよ。(水を飲む)…ぷはっ…生きてるって感じ!」

 

 確かに、体調のことを考えたら、のどかさんは家に帰った方がいいのかもしれません。しかし、のどかさんにとっての「生きてるって感じ」とは、「体調を最優先に考えて好きなことをしないこと」ではなく、「適度なストレスを感じながらも楽しいを体験すること」であります

 

 これは、前回の8話でも語られていたテーマです。

 8話のちゆさんもまた、ペギタンからは「練習しない方がいいい」と言われていましたが、最終的には、「私は飛びたい」というちゆさんの「想い」が尊重されました。ヒープリは、傍から見ている人が、その人の「方針」を「一方的に決定する」ことはせず、あくまでも、本人の「自己決定」を尊重するのです。

 

 なぜ、「本人の自己決定を尊重する描写」がたびたび登場するのかというと、それはまさに、ヒープリが「生きてるって感じ」とは何か? ということを主題のひとつにしている作品だからだと考えます。「生きてるって感じ」は、決して、他人から一方的に与えられるものではありません。それは、自らの意思で決めることによって生じるものなのであり、人それぞれ、異なるものなのです。

 

 

一人で突っ走ってしまうのは欠点?

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出典:ヒーリングっど♥プリキュア 第9話(C)ABC-A・東映アニメーション

ひなた「ニャトラン、行くよ! 」
ニャトラン「おいおい、その前に2人を連れて来ようぜ!」
ひなた「そんなの待てないって! 今すぐここを守んなきゃ、あたしひとりで何とかするし!」
ニャトラン「だけどよぉ…」
ひなた「ほら、ニャトラン!」
ニャトラン「分かったよ」

 

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出典:ヒーリングっど♥プリキュア 第9話(C)ABC-A・東映アニメーション

シンドイーネ「おーほっほっほ。や~ね~、プリキュア三人だって大して強くもないくせに、たったひとりでどうにかしようなんて、ほんと考えなしなんだから」
ひなた「あたし…また…。また…やっちゃった…」

 

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ひなた「ごめん…ごめんね。あたしまたひとりで突っ走っちゃって。今日のイベントもそうだし、いまだって、こんなことに…」
のどか「スパークル。さっき、最後まで言えなかったけど、今日ずっと、自分のことそっちのけで、かわいいアクセサリーとか、わたしたちに似合うの見つけてくれたよね。わたし、もう楽しすぎて、胸がいっぱいになっちゃった」
ちゆ「わたしも…わたしも、最初はドレスで写真なんてって思っていたけど、その…ワクワクしたわ。それに、突っ走ってしまったのは、あなたが一生懸命だったからでしょ。いまだって、ここを守るため」
のどか「ありがとう。わたし、そんなスパークルが好き」
ひなた「そ、そんなふうに言われたら、あたし…もう照れる~!」

 

 この一連のシーン、あまりにも尊すぎて、気付いたら息の根が止まっていたのですが、私の息のことはどうでもいいんです。勝手に止まってればいいんです。

 

 さて、今回の9話では「ひなたの欠点」として、「ひとりで突っ走ってしまうこと」が描かれていました。これは9話に限ったことではなく、たとえば1話の初登場シーンでは、突っ走っていたところ「のどかさんと衝突」していましたし、4話ではニャトランを助けるために奔走していたところ、友達との約束を忘れていました。ひなたさんのこうした特性は、当初から示され続けていたものです。

 

 では、ヒープリは、ひなたさんのこうした特性に対して、どのような「回答」を見せたのかというと、これがまた、素敵な回答でした。

 

 のどかさんとひなたさんの台詞をよく聞いていると、二人はひなたさんが「ひとりで突っ走ってしまうこと」に対して、一切、これっぽっちも、「否定的な発言」をしていません。「行動変容を求める言動」も、していません。二人は、ひなたさんのこうした特性を、そもそも「欠点」として考えておらず、むしろ、「素敵なところ」なのだ、そういうところが「好き」なのだと言っています

 

 わたし、そんなスパークルが好き。

 

 それは、「あなたはあなたのままでいい」「あなたの存在を肯定します」というメッセージでもあります。自分自身の特性を「欠点」として考えていたひなたさんは、この言葉によって、救われるのです。このシーンは、自分自身の「特性」に対して、自信がなかったり、気にしたりする子どもたち(と大人)にとっても、「見方を変えれば、それは素敵なことでもあるんじゃない?」という、あたたかいエールになったのではないでしょうか。

 

 益子道男君の回(7話)でもそうでしたが、ヒープリは、一見するとネガティブなものとして考えてしまいがちなものについて、見方を変えることによって、ポジティブなものに捉え直しています。これは、「生きる」=「存在していること」を肯定するヒープリのテーマにも、深く繋がっていくものだと思います。

 

 わたし、そんなヒープリが好き。

 

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もちろんちゆは気付いてる

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ひなた「あっ、そうだ。のどかっち、それあそこに飾ったらいいじゃん。のどかっちの部屋の、写真コーナー」
のどか「ひなたちゃん、ひょっとして…」
ちゆ「ひなた、最初っからのどかのために写真撮りに来たんでしょ?」
ひなた「や、やだ、なんでわかんの? ちゆちー天才?」
ちゆ「あなたが分かりやすいのよ」
のどか「ひなたちゃん…」
ひなた「はいっ!」
のどか「ありがとう」
ひなた「も、もう~!」

 

 ひなたさんは、のどかさんの写真コーナーを充実させたくて、今日の遊びの提案をしていたことが明かされます。のどかさんはこのときになって気付いたようですが、ちゆさんについては、最初から分かっていたようにも見えます。その根拠は、ひなたさんの提案を聞いたときのちゆさんの表情です。

 

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出典:ヒーリングっど♥プリキュア 第9話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 何か企んでいるのね、という表情に見えませんか?

 ヒープリは、こういう「暗黙の親密感」を表現するのがうまいなと思います。8話のときも、のどかさんとひなたさんは、別に照らし合わせていたわけではなく、自然とちゆさんのところに集まって、ちゆさんを元気付けようとしていました。三人のこういう空気感が、私は好きです。

 

終わりに:「かわいい」は病気を治せないけれど…

 ところで、ひなたさんは「かわいい!」を大切にしている女の子でもあります。

 今回のエピソードでもそうですが、7話では益子道男君に対してファッションの話を記事にしたらどうかと提案していましたし、初めてプリキュアに変身した4話では、のどかさんとちゆさんのプリキュア姿を見て、「かわいい!」とはしゃいでいました。(4話のサブタイトルは『カワイイ!なりたい!キュアスパークル誕生』です。)

 

 しかし、よく考えてみると、「お医者さん」をテーマにした作品に、なぜ「かわいい」という医療とは一見関係なさそうなものが含まれているのでしょうか?

 

 それは、「かわいい!」こそが、「生きてるって感じ」に繋がる要因のうちのひとつだからだと考えます。(※1)

 

 たとえば、「メイクセラピー」といったものがあります。これは、介護施設に入所している高齢者などに、「メイク」をすることによって、高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)を向上させることを目的とした活動です。

 

「看護学生が『認知症患者の方に、マニキュアを塗るメイクセラピーをしてあげたい』と言ってきたんです。最初は、本当に効果があるのかと疑問視していました。ところが、日ごろは活気のなかったその方が、きれいになった自分の爪を見た瞬間から、別人のようにイキイキとした笑顔になって。『ああ、この方はもともと明るくて笑顔がすてきな方だったんだ』と気付き、ハッとしました」

出典:メイクセラピーを介護・医療の現場に普及し 「最期まで自分らしく生きる」ためのケアを | HELPMAN JAPAN

 

 こうした活動は、直接的に病気を治療するものではないでしょう。

 しかし、 ヒープリ9話でも描かれていたように、「かわいい!」は人を笑顔にする力があります。「かわいい!」は、確かに、私たちに「生きてるって感じ」を与えてくれるのです。

 

 私たちが、プリキュアというコンテンツから、「生きてるって感じ」をもらっているのと同じように。

 

 

※1 もちろん、「生きてるって感じ」に繋がる感情は、「かわいい!」だけではなく、「かっこいい!」や、「美しい!」などなど、いくらでも挙げれるものであり、「それ」がどのようなものであるかは、人によって異なることでしょう。ヒープリの場合は、そういった感情の中から、メインターゲットの子どもたちに刺さりやすい「かわいい!」を挙げているのだと思われます。

 

※ヒープリ1話の考察です。「生きてるって感じ」とは何か?

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  前回のヒープリ8話の考察です。

 シンドイーネ様が占いの練習をする理由について。

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 エイプリルフールのネタ記事です。

 スタプリ50話の妄想考察。実在しないエピソードの考察をするのはとても楽しかったです。(一瞬でも信じてしまった方がいらっしゃったらご迷惑おかけしました。申し訳ございません)

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 スタプリの感謝祭がDVD、Blu-rayになります。とにかく「すごい」ステージでした。スタプリ好きで行けなかった方はぜひ(もちろん行った方も)