金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『猫と悪魔』 ひかユニの二次創作

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 昔、こんな呟きをしました。 

 

 

 まだユニが「ユニ」だと名乗っていないときに呟いたものです(なので「ひかブル」になってる)

 

 あれからしばらく、この呟きについて妄想を巡らせていたんですが、試行錯誤を続けるうちに、気が付いたらひかユニの二次創作ができていました。

 

 正気を失いながら書いたので、正気を失っているうちに公開します。

 

 ただひたすら、ひかユニがいちゃいちゃするだけの話です。

 

(ひかユニ/百合/全年齢/6000字程度)

 

 

 

『猫と悪魔』


 悪魔は、人の心を弄ぶという。


 ユニが変化していることを知った人は、たいてい「騙された」といってユニを罵倒した。その星によって様々な罵詈雑言を浴びせられたものだが、なかでも印象深いのは「悪魔」という言葉である。

 悪魔は、人の心を弄ぶという。

 ピッタリといえばピッタリね、とユニは思う。
 アイドルとして、宇宙怪盗として、スパイとして。
 意のままに人の心を惑わしてきたユニにとって、その言葉はひとつの称号のようにすら思えた。


☆ ☆ ☆


「――あとは、こうして、こうすれば……」

 ユニは尻尾をワンピースのなかに隠す。問題となるのは耳だが、部屋を物色したとき、白い帽子を見つけたので、今回はそれを拝借することにする。

「――できたニャン」

 ロケットのガラスに映る自分に向かって、ユニは満足げにつぶやく。
 色白の肌に、頭部から伸びる二本の触覚。
 白いワンピースと、黄色っぽいパーカーもしっかり羽織っている。尻尾も見えなければ、耳も見えない。どこからどう見ても、惑星サマーンの少女にしか見えないだろう。 

「いえ、違うわね……」

 こほん、と小さな咳ばらいをして、ユニはいい直す。

「これで、完成ルン」


☆ ☆ ☆


 ユニの狙いはひかるだった。
 先日、ひかるは罪を犯した。ユニが書いていた日記を勝手に見ていたのだ。それはユニにとって許しがたい悪行であり、万死に値するといっても過言ではない……というのはいいすぎだが、裏切られた気持ちでいっぱいになったのは紛れもない事実である。


 恥辱で化膿した傷を癒すには、相手に同様の思いを味わわせるのがもっとも手っ取り早い。
 そういうわけで、ユニはひかるの心を弄ぶべく、ララの姿に変化したのだ。


「――さてと」


 ユニはひかるを事前に呼び出していた。
 場所は観星町の街並みを見下ろせるあの丘の上だ。人通りもほとんどないので、邪魔も入りにくい。
 ひかるは大の字になって寝転がっていた。


 まさか眠っているわけじゃないわね、とユニは若干の不安を抱きつつ近付くが、その心配は杞憂に終わった。
 鼻歌が聞こえてきたからだ。

 聞き覚えのある曲――いや、それはユニにとって思い入れ深い曲だった。

 音程は無茶苦茶だし、リズムもひどいものだったが、それでも、その曲がユニの、宇宙アイドルマオの代表曲だということは、聞き間違えようがなかった。

「……何うたってるルン」

 おもむろに近寄ったユニは、努めて冷静な口調で声をかける。
 本当は自分の歌をうたってくれていることが嬉しくて、尻尾が上がりそうになるのを必死にこらえているのだが、こういうとき、ララだったらむしろ不機嫌な顔をするに違いないという確信があった。

「ユニの歌、わたし好きなんだ」

 ひかるはユニに手を振って答える。

「特に好きなところはね、『見える? 見つけられる? 本当のわたし』っていう歌詞なんだ。ミステリアスな感じがキラやば~って感じ!」
「……ルン」


 ユニはぷいとそっぽを向く。
 ララならこうするはず……という思惑もあったが、単にひかるに褒められて照れてしまったという理由の方が大きかった。

「あっ、そういえば、話って?」

 ひかるはユニの目をのぞき込むようにして見る。
 どこまでも真っすぐで、何も知らないような瞳。
 大きく息を吸って、ユニは口を開く。


「ねえ、ひかる……ひかるは、わたしのこと、どう思ってるルン?」
「えっ? それはもちろん――」

 にこにこ笑いながら答えようとするひかるに、ユニは釘を刺す。

 

「真剣に答えて欲しいルン」

 

 ひかるの表情から、笑みが消える。

「わたしのいってる意味、分かるルン? ただの友達とか、そういう意味で聞いてるわけじゃないルン」

 じゃれ合いや冗談の類ではないと理解したのだろう。ひかるは沈黙を守りながら、ユニの目を見つめ続ける。


 真剣に言葉を選んでいる様子のひかるを見て、不意に、ユニは何ともいえない罪悪感に苛まれた。さすがにやりすぎたかもしれない。自責の念が膨らんでいく。事の発端はひかるが勝手に日記を見たことだが、この仕返しはちょっと度を過ぎている。

 

 ――やりすぎだよ。

 

 そういって涙するひかるを想像して、ユニの胸はきゅっと締め付けられる。

 嫌われたらどうしよう。ユニは今更そんな心配をする。でも、悪いのはひかるだ。勝手に日記を見たひかるだ。いや、違う。悪いのはわたしだ。他人の姿に化けて人の心を弄ぼうとしたわたしだ。いや、違う。違わない。違う。違わない……。


 やっぱり、やめよう。
 今ならまだ間に合うはずだと決心し、ユニは口を開こうとする。
 が、ひかるの方が、一瞬だけ早かった。

「――あのね」

 ひかるの手が、ユニの体に触れる。
 思わず素の声を漏らしそうになるのを、ユニは寸前のところで押しとどめる。

「そこまで聞くなら、いうけどね……」

 ひかるの手が腰のあたりに伸びていく。
 ユニは身をよじって逃れようとするが、ひかるは手を緩めようとはしない。


 やめて、とユニは叫ぼうとするが、微かな吐息が口から漏れるだけだ。代わりに手を前に出してガードしようとするも、ひかるに掴まれ、そのまま押し倒されてしまう。
 ひかるは真剣なまなざしで、ユニを見つめる。その視線から逃れたくて、ユニはぎゅっと目を瞑る。

 このときになって、ユニはようやく気付いた。

 ひかるがララのことを誰よりも大切に想っているのであれば、自分はもう、ひかると二人で過ごすことはできなくなるのだということに。

 そして何より、自分は今から、ひかるが大切な想いを込めた言葉を――ララのための言葉を聞かなければならないのだということに。


 残酷な、あまりにも残酷な事実を前にしてユニは愕然となるが、すぐさまもう一人の自分が反論する。


 ――そうじゃないでしょう? 残酷なことをしているのは、誰なのよ。


 悪魔は、人の心を弄ぶという。
 あなたが悪魔なら、断罪されるそのときまで、悪魔らしくするのよ。
 

 目を開く。
 ひかるの顔が浮かび上がる。
 ユニは覚悟を決め、零れそうになる涙を堪えながら、処刑が執行されるときを待つ。
 そして、ついに、ひかるが口を開いた。


「わたしは大好きだと思ってるよ――ユニ?」


 その言葉に、ユニの頭は真っ白になる。
 停止した思考は、すぐには動き出さない。
 瞬きすることもできず、ただただ、ユニは呆けるようにしてひかるを見返す。

「ど、どうして……?」

 ようやく口にできたのは、陳腐な問いかけだった。
 ひかるは返事をする代わりに、ユニのワンピースのなかに手を入れた。

「にゃっ!?」
「ほら、やっぱり、ユニだ」

 尻尾をつかみながら、ひかるは誇らしげにいう。

「い、いったいいつから――」
「最初からだよ」

 と、ひかるは当然のことのように答える。

「わたし、変化したユニのこと、一度もララって呼ばなかったよ」
「何で……分かったの……?」
「ユニは、何でだと思う?」


 間近に迫りながら、ひかるがいう。
 距離にして、およそ二センチ。いまにも顔と顔がくっついてしまいそうだ。
 顔が熱い。心臓が高鳴るのが自分でも分かる。


「は、離して――」
「離さないよ。返事を聞くまでは」


 ユニはこの場から逃げ出すことは諦め、どうすればこの状況を打開できるか思考を巡らせようとする。
 しかし、ひかるは攻撃の手をゆるめず、ユニに迫り続ける。

「ねえ、ユニ」

 ひかるは問いかける。

「わたしの気持ちはいったけど、ユニはわたしのこと、どう思ってるの?」
「わ、わたしは……」


 その目に見つめられると、何も誤魔化せなくなってしまう。冷静な判断ができなくなってしまう。
 あなたはいつもそう、とユニは心のなかでつぶやく。そうやって、本当のわたしを見つけてしまうんだから。
 心に被せていた蓋が、音を立てて外れる。

「そうよ……わたしは……」

 これ以上、本心を隠すことはできなかった。
 溢れ出る感情を、勇気を出して、そのまま言葉にしようとする。

 

「わたしは、あなたのことが――」

 

 震える声を懸命に絞り出しながら、ユニは続けようとした。

 ――しかし。


「っ!?」


 ユニは、最後までいうことができなかった。
 怖くなったり、恥ずかしくなったりしたからではない。
 物理的に、口を塞がれたせいだ。


「っ~~!? っん~~~~!!」
 暖かな感触と、電流が走るような衝撃。
 快楽よりも驚愕が、喜びよりも困惑が心を占領し、ユニは反射的にひかるの体を突き飛ばした。


 強制的に止められていた呼吸が、荒々しい音を立てて繰り返される。
 世界が、再び、動き出す。

 

「なっ、なっ、なにを……何をしたのよっ……!?」

 

 慌てふためきながら、ユニは自分の口を押さえる。フワフワした体毛の感触が手に伝わる。極度の混乱と羞恥心からか、ユニの変化は無意識のうちに解けていた。

 

「いや~ユニがあんまりかわいいから、つい」
「『つい』じゃないわよ、『つい』じゃ! あなた、自分が何をしたか分かってるの!?」
「何って……」

 

 ひかるは自分の唇に人差し指を当てて、にっと笑う。

 

「惑星レインボーでは、いまのは、何ていうの?」
「知らないわよっ!」


 ユニはありったっけの催涙弾を手に取る。ひとつ使えば効果としては十分なはずだが、それでもユニが大量の催涙弾を取り出したのは、何が何でもこの状況から逃れたいという意思表示に他ならない。


 追い詰められたユニの決死の反撃は、しかし、不発に終わった。
 ひかるがユニの体に飛びつき、ぎゅっと抱きしめたのだ。


「ちょっ、ちょっと――!」
 たったそれだけで、ユニは催涙弾のピンを抜くことができなくなる。
「……やっぱり、ユニは優しいね。この距離だと、わたしも無事じゃ済まないかもって、心配してくれたんでしょ?」
「ちっ、違――」
「何が違うの?」


 余裕の微笑を浮かべながら、ひかるは問いかける。
 ユニはようやく負けを認める気になった。この子と張り合っても駄目だ。悔しいけれど、勝ち目がない。
 全身から、力が抜けていく。


「……分かったわよ。わたしの負けよ。認めるから……ひとつだけお願いを聞いて」
「何?」
「香水を使わせて欲しいの。この姿は、あまり見られたくないから」
「わたしはユニのその姿、大好きなんだけどな~……」
「……でも、わたしは見られたくないの」
「うん。分かった」


 意外にもひかるはあっさりとうなずき、ユニを抱きしめていた腕の力を緩める。
 ユニは自分に香水をかける。瞬く間に、ユニの姿はブルーキャットのそれに変化する。

「ねえねえ、その代わりといったらなんだけど、わたしのお願いも聞いてもらってもいい?」

 嫌な予感はしたが、退路のないユニには、その申し出を聞き入れるしか選択肢がなかった。

「……わたしに何かするわけじゃなければ、いいわよ」

 一応の安全策は講じるも、ひかるはまるで気にしていない。


「わたし、ユニの嫌がることはしないよ」
「……よくいうわね。さっき、わたしにあんなことをしておきながら」
「え? だって、さっきはユニ、嫌がってなかったよ?」
「……っ」


 もう何もいうまい、とユニは心に誓った。


「あ、でね。わたしのお願いなんだけど、二つあって……」
「ふ、二つも?」
「一つ目は、こんなことをした理由を教えて欲しいんだ。ユニ、何の理由もないのに人に変化したりはしないでしょ? 何か理由があったのかな~って」

 一つじゃ済ませないところもひかるらしいが、そこで他人の心情を想像するところもひかるらしい。

「それは……だって、あなたが……わたしの日記を見たから……」
「日記?」
「とぼけないでよ……荷物入れの奥に隠してた日記、あなたが取り出してるのを見たんだから……」
「あっ……あれは……」
「言い訳するつもり?」
「うーん……そうじゃなくて……」

 

 ひかるはいいにくそうに続ける。

 

「ユニの日記ね……実は、ロケットに落ちてたのをプルンスが拾ったんだ。それで、プルンスが自分だと誘惑に負けて見ちゃいそうになるから、代わりに仕舞って欲しいって頼まれて。プルンスも中身は見てなかったみたいなんだけど……」
「……えっ?」
「わたしもなかを見るつもりはなかったんだけど、挟んであったメモ用紙が落ちちゃって……それを元に戻してるところを、見られちゃったのかな」
「……嘘よ、そんなの……」
「うん……ちょっと嘘ついた」

 

 ひかるは苦笑いを浮かべる。

 

「本当のことをいうと、プルンスは1ページだけ誘惑に負けて見ちゃったんだって。でも、すぐに罪悪感を覚えて日記を閉じて、わたしを呼んだんだ」
「…………」
「プルンスのためにも黙っておこうと思ったんだけど……やっぱり駄目だった~! ごめんねプルンス~……でもユニ、プルンスはすぐに見るのをやめたっていってるから許してあげて……」

 

 この通り、とひかるは両手を合わせていう。

「…………」

 ひかるの話は、おそらく本当だろう。ひかるはプルンスまで巻き込んで嘘をつくような子ではないし、あとでプルンスに今の話が本当か確かめれば、ひかるがどこまで真実を語っているのかはだいたい分かる。
 何より、誰よりも嘘を吐いてきたユニの本能が、「今の話は本当だ」といっている。


 ユニはため息をつく。
 それまでため込んでいた感情をすべて出すかのような、長い、長い、ため息だ。
 すっきりした表情になったユニは、おもむろに口を開いた。


「……分かったわよ。もういいわ」
「ユ、ユニ~……!」
「だから、ちょっと離れて」

 ぐい、とユニはひかるの体を突き放す。

「え~……もっとくっついてたいのに……」
「駄目」
「そんなに嫌なの?」
「嫌」
「メモ用紙に、わたしの名前いっぱい書いてたのに?」
「みっ……見てるじゃないの!」

「だって落ちちゃったんだよ~見ようと思って見たわけじゃないよ~」

 ユニの顔が朱色に染まる。すぐにいい返そうとするが、これ以上何をいっても醜態をさらすだけだと考え直してやめる。
 黙り込んでいると、ひかるはにやにや笑い、ユニのことを肘でつつく。


「ねえねえ、ユニは何で、わたしの名前をいっぱい書いてたの?」

 
 ユニのなかで、なにかが切れる音がした。
 すっと立ち上がり、そのまま振り向きもせず帰ろうとする。


「あれ、どこ行くの?」
「知らないわよ! あなたのことも、何もかも、もう知らない!」


 ユニは地面を蹴り、走り出す。
 しかし、即座にひかるに手を掴まれ、逃走を阻まれてしまう。


「は、離しなさい!」
「離さないよ。二つ目のお願いを聞いてくれるまでは」

 ひかるの手を力ずくでほどく。バランスを崩しそうになりながらも、ユニは懸命に走った。

「――にゃっ!?」

 しかし、次の瞬間には、ユニの体はロープでぐるぐる巻きにされていた。

「あのときの仕返しだよ」


 いつの間に取られていたのか、得意げに笑うひかるの手にはユニのロープが握られている。
 どれだけ力を込めても抜け出すことはできない。ここまでしっかり束縛されると、プリキュアでもない限り自力での脱出はまず不可能だ。そのことは、持ち主のユニが誰よりもよく知っている。


「二つ目のお願いなんだけどね。さっき、ユニはわたしのことなんて知らないっていったけど――」


 ひかるがユニの目をのぞきこむようにして見る。
 どこまでも真っすぐで、何も知らないようで――すべてを見透かすような瞳。
 ゆっくりと、その目が近づいてくる。


「わたしはユニのこと、もっともっと、知りたいな」


 ユニは確信する。
 自分は悪魔などではない。目の前の少女こそが、正真正銘の悪魔なのだと。


 ひかるとの距離が縮まり、ゼロになったとき、ユニの変化は再び解けた。

 


 了

 

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 今回はひかユニでしたが、ひかララも大好きです。こんなひかララも書いています。

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