金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『膝の上の猫』※ひかユニの二次創作

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KatinkavomWolfenmondによるPixabayからの画像

  

 先日、心不全を起こしかけました。

 というのも、Twitterでフォローさせて頂いている神絵師さんのお一人が、星奈ひかるさんがユニに膝枕をするイラストを公開されていまして、その絵があまりにも尊くて好きすぎて、心臓にグサグサと突き刺さったためです。

 

 それからと言うものの、寝ても覚めても膝枕ひかユニのことを考え続けていたのですが、そうこうしているうちにひかユニの二次創作ができていました。

 

 膝枕を巡るひかユニの短編です。

 

(ひかユニ/百合コメディ/全年齢/3500字程度)

 

 

 

『膝の上の猫』

 

 夢にまで出てこないでよ、とわたしは言った。

 

 ひかるは不思議そうに首を傾げるが、わたしはこれが夢であることを知っている。現実のひかるは、こんなに優しく、思わず喉を鳴らしてしまいそうになるほど気持ちよく頭を撫でられるわけがないからだ。

 

 プリキュアとして仲間になった当初、ひかるはわたしの尻尾や耳をやたらと触ってきたが、とにかく触り方が荒かった。イエティや宇宙ケルベロスを触るときと変わらないのだ。

 だから、分かる。これは夢だ。単なるわたしの妄想に過ぎないのだ。

 

 と。

 そう、思っていたのに。

 

「――おはよ、ユニ」

 

 わたしは返事をする代わりに、手を伸ばしてひかるの頬をつねる。「痛いよ」とひかるが言う。

 

「……夢じゃないニャン?」

「うん。......でも、普通は自分のほっぺたをつねるんだよ?」

 

 ひかるが苦笑しながら言う。 

 だとすれば、とわたしは思考を巡らせる。

 温かくて柔らかい、この感触は――

 

「……ッ!?」

 

 わたしは飛び跳ねるようにして、ひかるの太ももから離れる。

 

「あ、あなた、何してるニャン……!」

「え? ユニに膝枕をして、頭を撫でてただけだけど」

「何でそんなことするのよ!」

「何でって……ユニが寝てきたから」

 

 ベッドに座っていたひかるは、足を崩しながら言う。

 

「わたしが……あなたの膝に……?」

「ほら、昨日の夜、地球のマタタビを食べたのは覚えてる?」

「...…何となく」

「その後のことは?」

「……覚えてない」

「ユニには地球のマタタビは刺激が強すぎたみたいで、酔っぱらっちゃったんだね。フラフラになりながら、すっごい甘えてきて、キラやば~☆ だったんだよ!」

 

 そう言って、ひかるはにやにや笑いを浮かべる。

 わたしはいったい何をしたのだろう。ひかるの顔を見ていると、心臓がバクバクと飛び跳ねる。記憶を失っているあいだに自分が何をしたのか、確かめたい気持ちはあったが、それを知ってしまったら、たぶん、もうまともにひかるの顔を見られなくなるだろう。

 

「じ、事情は分かったわ……色々迷惑かけて悪かったわね」

 

 そういうわけで、これ以上深入りするのはやめておくことにする。

 

「迷惑だなんて思ってないけど……あ、でも、」

「え?」

「今度はユニが膝枕してよ」

「なっ、何でそうなるニャン!?」

「だって、ユニばっかりズルいよ! 次はわたしも膝枕して欲しいな~」

「それは……」

「ね、駄目?」

 

 ひかるはキラキラと目を輝かせながらくっついてくる。反射的に離れようとするが、すぐに体を寄せられてしまう。ひかるの体温が、わたしの胸をさらに熱くする。

 

「……ズルいのはどっちニャン」

「え? 今、何か言った?」

 

 何でもないわよと言って、わたしはキョロキョロとあたりを見回す。ここはひかるの部屋だ。カーテンもドアも閉まっているから、突然みんなに見られることはないだろう。

 

「……ほら、これでいいんでしょ」

 

 わたしは恥ずかしさを堪えながら、ベッドの上で正座する。

 

「わーい! さすがユニ~!」

 

 無邪気に喜びながら、ひかるはわたしの膝に頭を載せる。

 

「キラやば~☆  ユニの足、すべすべだ~!」

「ちょ、ちょっと触らないでよ!」

「あ、でもレインボー星人の姿だったら、それはそれでフワフワしてて気持ちよさそう!」

「ならないわよ!」

「わたし、膝枕してもらうのなんて初めてだよ~!」

  

 初めて、という単語に耳がピクリと反応する。

 見下ろしてみると、思いのほかひかるの顔が近いことにびっくりする。慌てて顔を上げると、今度は鏡に反射する自分と目が合う。

 わたしは、ひかるに、膝枕をしている。

 改めてその事実を認識させられ、顔が熱くなる。

 しかし、逃げ出そうにも、ひかるが頭をのせているせいで、動くこともできない。

 

「い、いつまでやればいいのよ、これ……」

「そうだね~、わたしが寝るまで?」

「じゃああなたが寝たらすぐにやめて叩き起こすわね」

「それはひどいよ……! せめて五分くらい寝かせて……!」

「はいはい。分かったわよ」

 

 しぶしぶ了承すると、ふふ、とひかるは微笑む。

 

「ねえねえ、ユニ」

「何よ」

「こっち見て?」

「嫌」

「え~! 何で!」

「……何でもよ」

 

 そっぽを向きながら答えると、頬に何かが触れた。

 見ると、ひかるが人差し指を伸ばして、わたしの頬をつついている。

 

「えへへ。やっと見てくれた」

 

 ひかるがニコっと笑って言う。

 咄嗟に目を逸らしそうになったが、ぐっと堪える。いい加減、振り回されるのは嫌だった。

 

「あ、あなたね……」

 

 わたしが声をかけると、ひかるは腕を下ろし、目を閉じる。

 かと思うと、そのまますうすう寝息を立て始めた。

 

「…………」

 

 膝を小さく揺らしてみるが、ひかるは目を開けない。

 わたしは改めて部屋を見回す。時計の針は7時を指している。カーテンの隙間からは太陽の光が漏れているので、まさか夜の7時ではないだろう。

 

 今は、早朝なのだ。

 

 その事実を知ったとき、ようやくわたしは気付いた。今が午前7時であるなら、ひかるはいつからわたしのことを膝枕してくれていたのだろう?

 もしかしたら、マタタビで酔っぱらったわたしが寝ているあいだ、ずっと膝枕してくれていたのかもしれない。

 でも、たぶん、ひかるのことだ。聞いたとしても、ニコニコ笑うだけで、本当のことは教えてくれないだろう。ひかるはそういう子だ。

 わたしはひかるの寝顔をじっと見つめる。目の下には小さなクマができている。それはきっと、酔っぱらったわたしを長いあいだ介抱してくれた証なのだ。

 

「…………」

 

 時計を見ると、 五分という時間はあっという間に過ぎていた。

 一応、約束の時間が来たこともあり、わたしは聞こえるか聞こえないかくらいの声で、「ひかる」と囁いた。

 当然、そんな小さな声では起きないと分かっていたが、それでよかった。要するにわたしは、声をかけたという既成事実を作りたかっただけなのだ。

 しかし、そんなわたしの予想に反して、ひかるは小さな声で返事をした。

 

「ユニ……」

 

 一瞬、起こしてしまったのかと慌てるが、どうやら寝言のようだ。ひかるは目を閉じたまま、寝息を立てている。

 おそらく、夢でも見ているのだろう。

 わたしは想像する。ひかるがわたしの名前を呼んだということは、ひかるの夢の中にわたしが登場しているということだ。もしわたしが出ているなら、夢の中のわたしは、ひかるにどんなことを言っているのだろうか。素直に、恥ずかしがらずに、自分の思っていることを伝えられているだろうか。

 

 おそるおそる、わたしはひかるの頭を撫でる。

 すると、ひかるはくすぐったそうに頬を緩めてつぶやいた。

 

「好きだよ」

 

 息が止まる。 

 咄嗟に手を離し、もう一度ひかるの顔を凝視する。ひかるは目を閉じたままで、起きた様子はない。地球の猫がそうするように、わたしの体に顔をすりすりと擦り付けたりしながら、安らかな表情で眠り続けている。

 

 本当にこれは現実なのだろうか。

 不安になったわたしは、自分の頬をつねろうとする。が、寸前のところで止めた。

 もしこれが夢なのだとしたら、覚めて欲しくないと、そう思ったのだ。

 

 もぞもぞと、ひかるは何かを探すように手を動かす。

 わたしはためらいがちにその手を握る。そして、ひかるの耳元に口を近付けると、小さな声でそっとつぶやいた。

 

「……わたしも」

 

 

 

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 謝辞 膝枕ひかユニを描いてくださった神絵師さんがいなければ、この話は書けませんでした。いつも素敵なイラストをありがとうございます。深く感謝申し上げます。