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『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』アニメ12話(最終回)感想・考察

最終話、素晴らしかったですね。私は見事に飛びました。この作品に出会えたことに最大限の感謝をしたいです。

それでは今回も気になったところについて語っていきたいと思います。

 

雨と涙

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

アバン。いぶきとおそろいにするために取り置いてもらっていたピアスが売れてしまったという連絡を受けたぼたん。その顔には窓に反射した雨のあとが映り込み、まるでぼたんが涙を流しているような印象を受けます。雨を涙になぞらえ、キャラクターの心理を描写する手法は4話の郡上先輩(ぼたんがいぶきと抜け駆けして縁結びをしたあとのシーン)でも用いられていましたね。全米が好きなやつです。

 

サミュエル・L・ギャグソン

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

寒すぎてサミュエル・L・ジャクソンになった

サム・ペキンパーになった

アイ・アム・サム

サム・フォーティワン

早朝、宝登山ロープウェイにやってきたぼたんたち。ここでは″寒い″にかけたギャグが連発されています。一応元ネタをまとました。

 

■サミュエル・L・ジャクソン

アメリカ合衆国の映画俳優。「パルプ・フィクション」「スター・ウォーズ」などに出演。 

サミュエル・L・ジャクソン:プロフィール・作品情報・最新ニュース - 映画.com

 

■サム・ペキンパー

アメリカ合衆国の映画監督。「ワイルドバンチ」「コンボイ」など。

サム・ペキンパー:プロフィール・作品情報・最新ニュース - 映画.com

 

■アイ・アム・サム

アメリカ合衆国の映画。2002年に日本で上映。

I am Sam アイ・アム・サム

 

■Sum 41(サム・フォーティーワン)

カナダ出身のロックバンド。映画「ゴジラ FINAL WARS」の挿入歌「We're All To Blame」など。

 

空と山のメタファー

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

空と山が溶け合ってるみたいだ。この季節しか見られない光景か。この時間だけが、特別なんだね

一連のシーンでは、この時間たけが特別なんだねと語るいぶきに対して、ぼたんは何やら意味ありげ顔をしています。このときのぼたんは何を考えていたのでしょうか? すべては想像になってしまいますが、私の考えを書いてみたいと思います。

まずこの登山中、ぼたんは明らかに様子が変です。またこの時点までいぶきと会話らしい会話をした描写はありません。ぼたんは前回のショッピング(11話)で感じたいぶきとのギャップが心に残ったままで、恐らくその胸中に複雑さを宿したままなのでしょう。

そして注目すべきはいぶきのセリフです。いぶきにとっては山の風景を見ての言葉ですが、ぼたんにとっては違う意味にも捉えられます。空と山を、それぞれぼたんといぶきに置き換えてみましょう。すると、ぼたんといぶき、2人が溶け合うのは、今この時間だけ、という意味になります。

ぼたんはいぶきとこれからもずっと何度もお酒を飲む特別な関係になりたいと、そう願っていぶきと友だちをやめました(9話)。これはいぶきとの関係が、「今だけのもの」では嫌だという想いがあったからに他なりません。

つまり、ぼたんはいぶきのセリフを聞いてこんなふうに不安に思ったのではないでしょうか。空と山が溶け合う光景が見られるのがこの時間だけの特別なものであるように、自分といぶきの関係もまた今だけの特別なものではないだろうか、と。

 

繋がれない手

この後のシーンではようやくぼたんはいぶきと言葉を交わしあいますが、そのときの会話は「手、どうかした?」です。

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

手、どうかした?

直前にはジンランが郡上先輩に手を繋いだら暖かいよと誘うシーンがあるにもかかわらず、こちらのカップルは手を繋ぐことをしません。何やら手を胸元に掲げるぼたんのカットからも分かるように、このとき恐らくぼたんはいぶきと手を繋ぎたかったのだと思います。しかしいぶきが気にしてる様子はまったくありません。やはり2人の間には埋められない意識のギャップがある。そのことがひしひしと伝わってきます。

 

寒い季節と冬桜

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

今の時期は寒くて少し寂しいね。

前述したように、ぼたんが今の時間を自身といぶきの関係と重ね合わせているとすれば、このセリフにもぐっと重みが増します。今の時期は寒くて少し寂しい。つまり今の自分といぶきの関係は少し寂しいものだと、ぼたんは語っているわけです。

そしていぶきはぼたんに上着を貸すよと提案しますが、ぼたんはそれを断ります。すると代わりにいぶきが取り出したのは、お酒でした。そう、いぶきはけっきょくお酒なのです。このときのぼたんの微妙な表情と微妙な「ありがとう」からは、「あぁ…やっぱり私たちって、お酒だけの関係なんだな…」という心の声が漏れ聞こえてくるようですし、さすがにいぶきもぼたんの様子がおかしいことに気付きます。

 

しかし次のシーンでは、凡打続きだったいぶきがようやく(無自覚に)ヒットを打ちます。

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

見てぼたん! 冬の桜だって! ね! 寂しくないよ、冬!

いぶきとの関係を今の季節に重ね合わせていたぼたんにとって、冬でも綺麗に咲き誇る冬の桜と、寂しくないよと満面の笑みで語るいぶきの言葉は、大きな安心を運んだことでしょう。「そうだよね」とつぶやくぼたんの顔には、ようやく柔和な笑みが浮かんでいます。

 

毎回本屋デート

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

てか毎回本屋付き合わせてごめんねー

Bパートの本屋デート。毎回、という言葉が示す通り、郡上先輩とジンランはもう何度も本屋デートをしていたことが分かります。私たちの知らないうちに、2人はどんどん仲を深めていたわけですね。しかもよくよく聞いてるとジンラン、いつの間にか郡上先輩の呼び方が「かなで」になってるし。はー。早く結婚してください。

 

フーコー、モース、小林秀雄

ジンランとのデート中、郡上先輩がいくつか固有名詞を口にしていたのでまとめてみます。

 

■ミシェル・フーコー

フランスの哲学者。「監獄の誕生〈新装版〉」など。

 

■マルセル・モース

フランスの社会学者。「贈与論」など。

 

■小林秀雄

文芸評論家。作中で引用されていた言葉は『様々なる意匠』より。

 

やっぱり迂遠な郡上先輩だけど

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

私は自分のことを話したり想いを伝えたりするのがあまり得意でないのだけど

知ってました。

そう、そうなんですよね。郡上先輩は。いぶきとのあれこれ(本当はいぶきが好きでだから一緒にお酒を飲みたいのになかなかそう伝えられず遠回りなことばかりしてたこと)もそうですし、ジンランとの映画トークでもこの人、よくよく聞いていると話の内容は「あれを観た」「監督は誰々で〜〜」ばかりで、映画のどこが好きだったのかとかそれを観てどう思ったかという自分自身の感想は全然述べてないんですよ。

それがまた明確に描かれていたのが美術館に行ったときのエピソード(10話)で、ぼたんやいぶきは「あれだいぶ好き。かわいくない?」「私はちょっと怖かった」と素直に感想を言い合うのに対して、郡上先輩は「事前知識がないとよく分からない」と補助線もとい予防線を張り巡らせるばかりだったんです。

そんな郡上先輩が、今回は「″自分の好きな映画監督″の撮った写真の絵葉書」をジンランに渡して、「あなたのことを教えてほしい」と頼むわけです。

う、う、迂遠だけどよく頑張った〜〜〜!

でも「上伊那ぼたん」という作品において、「理解」というワードはけっこう重要なテーマのひとつで、たとえば第7話はAパート(山登り)、Bパート(プラネタリウム)、Cパート(お風呂が沸きました)のすべてのパートが「理解」という言葉でまとめ上げられた話でしたし、第11話でもショッピングに行くときには知らないものばかりだったいぶきが、帰り道のときには「今日行った店の服、あそこに吊ってあったんだ、行くときは見えなかったな(意訳)」と自分の知らなかったものに対する理解をぼたんを介して深めていく描写がありました。

話を郡上先輩に戻しますと、いぶきからもらった日本酒を理解したいと願っていた郡上先輩(7話)はいつの間にか影を潜め、今や郡上先輩はジンランを理解したいという気持ちに傾いてきています。

さて、「事前知識がないとよく分からない」と言っていた郡上先輩は、その「事前知識」が十分に埋まり、ジンランを理解したとき、どんな想いを述べるのでしょうか。2期来て2期。

 

けっきょくお酒?

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

けっきょくお酒が…

ぼたんといぶき。2人は越後湯沢、新潟県まで旅行にやって来ました。今回の旅はいぶきが主導なようで、「この旅行は私がエスコートするからね」との発言もあります。前回のショッピングデート(11話)はぼたんが主導だったので、選手交代といったところでしょうか。

しかしぽんしゅ館を前に楽しそうにするいぶきとは裏腹に、ぼたんの胸中には黒いモヤが立ち込めます。楽しそうないぶきを見てほっとするぼたんは、何の「ほっ」なのかと自問し、けっきょくいぶきを楽しませるのはお酒なのかと考えます。

前回のショッピングデートでも同じような葛藤がありましたが、ぼたんにとってお酒は自分といぶきを結んでくれた恋のキューピットにして、いぶきを独り占めする恋敵でもあります。いぶきにぎゅっとしがみつくぼたんは、お酒にいぶきを取られまいと必死なわけですね。

 

その頃には…

ぽんしゅ館のお酒を全部飲もうと言ういぶき。それを聞いたぼたんは、あと何年かかるのか、その頃には自分たちは学生ではなくあの寮にも住んでいないかもしれないと考えます。このときのぼたんはいぶきとの将来に思いを馳せていますが、11話でも示されていたとおり、他のカップルも多かれ少なかれ同じような将来の悩みを抱えています。すなわち、郡上先輩はジンランとの今後、あかねは音楽を選ぶか就職を選ぶかどうか。

今はどのカップルもモラトリアムの期間と言えますが、もちろんそれは永遠には続きません。ぼたんといぶきもですが、その頃には他のカップルもどうなっていくのか…。2期頼みます2期。

 

そしてクライマックスへ

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

色々…したいね。いい?

ついに来ました。今までいつするの? 今でしょ! っていや、しないんかい! というやり取りを幾度となく繰り返してきた2人が、ようやく、ようやくその気になってくれました。な、な、長かった…。と思いきや、

あの、待って…。その、私、準備が…ひっく。

あれだけイチャイチャしといてまだ準備できてないんかい!

いやいやいぶきさん、さすがにそれはいくらなんでも…とこちらが心配になるのも束の間、ぼたんの堪忍袋の緒が切れます。

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

なんだ。準備ができてたのは、私だけか…。いぶき、私たちは友だちをやめていったい何になったの…?

言葉の端々から、友だちをやめて恋人になれたと思っていたのは自分だけだったのかというぼたんの怨嗟が聞こえてくるようですが、まあそれはそうです。恋人といえば体の関係を結ぶのはごく自然なことですし、何だったらこのとき、二人ともウェルカムドリンクでお酒を飲んだ後なんですよ。いぶきはしゃっくりをしていて、ぼたんもげっぷをしているので、そのことが分かります。お酒も飲んで、いい感じに酔って、ベッドもくっついてる素敵な部屋で二人きり。ぼたんとしてはすべての準備が整ったタイミングだと思ったのでしょう。しかし返ってきたのは「準備が…」です。いや、これだけ準備整ってるのに? これ以上の準備って逆に何? 私たちってどういう関係なの? そうぼたんが思うのも納得です。

やっちまったいぶきがどうするかと思えば、取り出したのはなんと売り切れていたはずのピアスです。このピアスは2話でぼたんがおそろいでつけようと提案したものですが、実はいぶきが買っていたのでした。ありがとういぶき。やるときはやる女…。

思えば、これまでぼたんがグイグイいく場面は多々あれど、いぶきからいく場面はあまりなかったように思います。ピアスももともとはぼたんがつけましょうよ!とお願いしていたものですしね。しかしそれがまた、ぼたんにとっては不安の材料のうちのひとつだったのではないかなとも思います。自分ばかりがグイグイいってるけど、今すぐ焦がれたいと思ってるのって自分だけでは…?と。

だからこそ、いぶきからのピアス孔あけよという誘いは、ぼたんにとってようやくいぶきから来てくれた特別な誘いであって、今すぐ焦がれたいと思っているのは自分だけではなかったのだという発見でもあったわけです。

初めてのピアス孔をあけあう2人。詳しい描写はありませんが、これはもう″そういう行為″の暗喩と言っても過言ではないでしょう。やーらし。ご結婚おめでとうございます。

ちなみによく見るとOPのラストではぼたんの耳にピアス孔があることが分かります。最初からOPで明かされていたとは…。

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』OPより引用

 

ED

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』12話より引用

EDではぼたんといぶきが5年後に受け取れるメモリアル焼酎を購入したことが明かされます。これは実際にあるお酒で、店頭限定で受け付けしているようです。

メモリアル焼酎 「面向未来」 ご購入から受け渡しまで | 雪室 |魚沼の里

 

しかし5年後といえば恐らく大学も卒業しており、その頃にはそれぞれどこに住んでいるか分かりませんよね。…と思っていたら、

それぞれ、じゃないでしょ

い、い、イケメンすぎる〜〜〜!

完全に覚醒してますねいぶき。これには全米もニッコリ。かくして百合の花は満開に咲き誇ったのでした。

 

おわりに

上伊那ぼたん、全編を通して素晴らしい作品でした。全体的に奥ゆかしいというか、侘び寂びがあるというか、郡上先輩流に言うと「迂遠」な表現が多く、見る人の想像力をふんだんに刺激する作品だっとも思います。またその奥ゆかしさを逆手に取って「私たちは友だちをやめていったい何になったの…?」とぼたんに言わせるのはやはり天才の所業だと思いましたし、そのアンサーとしていぶきがぼたんに初めてをプレゼントするくだりも素晴らしかったと思います。

私はこれから原作の続きを読んでいきたいと思いますが、いくところまでいったぼたんといぶきがこの先さらにどうなっていくのか…楽しみと同時にどうにかなってしまうのではないかと恐れ慄いています。あかねとやえかもどうなるのかも気になりますし…。そして何よりみんな大好き郡上先輩は幸せを掴み取れるのか!?

ちはみに現在Kindleでは原作漫画のセール(半額〜)もやっているので、未購入の方はこの機会にぜひ。

11話の感想↓

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