金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『正しいカルーアミルクの飲み方』※ひかララ(29)の二次創作

 激甘ひかララ(29)SSです。

 宅飲み中、コーヒー牛乳をカルーアミルクだと偽り、泥酔した振りをするララが、ひかるさんに「ある取引」を持ち掛ける話。

 

※18禁行為の描写はありませんが、「そういうシーン」を示唆する描写はありますので、苦手な方はご注意ください。

 

(ひかララ(29)/百合/18禁ではない/6000字程度)

 

Kahlua and Milk.png
GFDL-no-disclaimers, リンク

 

 

 

『正しいカルーアミルクの飲み方』

 

「――ん~~~! やっぱりひかると飲むカルーアミルクは尊いルン!」

 

 空になったグラスを勢いよく置くと、隣に座るひかるは困ったように笑う。

 

「ちょっと、ララ、そろそろ飲みすぎじゃない?」

「平気ルン! わたしはもう大人ルン!」

「そう言って、いつもすぐに潰れちゃうんだから」

 

 ほら、ちゃんとお水も飲んで、とひかるがコップを手渡す。

 

「大丈夫ルン。今日のわたしはいつもと違うルン」

「ほんとに~? ララ、明日は仕事でサマーンに帰るんでしょ? 具合が悪くても、お世話してあげられないよ?」

 

 口元にコップをに運びながら、わたしはふふっとほくそ笑む。

 そう、今日のわたしはいつもと違う。正確に言うと、わたしが違うのではなく、カクテルの中身が違うのだ。

 わたしはほとんど水も飲まないまま、手元にあるカルーアのボトルに手を伸ばす。そのまま空いたグラスに注ぐと、次に牛乳を入れる。

 これで、カルーアミルクの完成だ――。

 と、ひかるは思っていることだろう。

 

「そういえば、ララの家族はみんな元気にしてるの?」

「元気ルン。この前、ひかるからもらったおにぎりを持って行ったら、みんな喜んでたルン。やっぱり、ひかるのおにぎりは『違う』って」

 

 手元のグラスに視線を落とす。

 これは、カルーアミルクとは『違う』。

 ただただ、コーヒーと牛乳を混ぜたもの――アルコール度数ゼロパーセントの、コーヒー牛乳なのだ。

 

「えへへ~。ララに美味しいものを食べてもらいたいな~って、いっぱい練習したからね」

「みんな、ひかるのおにぎりは何が違うんだろうって言ってたルン」

「うーん、そう言われると何だろう……? でも、やっぱり『準備』は大事かな~」

 

 わたしは相槌(あいづち)を打ちながらグラスを傾ける。ほんのりとした苦味と牛乳の甘みが口の中でひろがる。当然ながらお酒の味などしない。すべては、事前にしていた『準備』の成果だ。ひかるが仕事から帰って来るまでのあいだに、カルーアの中身をただのコーヒーに入れ替えていたのだ。

 わたしが再びコーヒー牛乳を口に運んでいると、ひかるが心配そうに口を開く。

 

「ララ、今日は本当にハイペースだね……? いつもみたいに、記憶、なくさないようにね……?」

 

 ルン、と言いかけて、わたしは考え直す。普段の自分なら、そろそろ酔っぱらっているはずだ。だとすれば、"酔っ払った振り"をしなければ怪しまれてしまう。

 

「だっ、大丈夫ル~ン! わたしはぜんぜん、余裕のよっちゃんル~ン!」

「どこで覚えたのその言葉……?」

 

 ル~ン、ル~ン、とわたしは無理矢理にテンションを上げながら言う。自然と顔が赤くなる。シラフの状態で酔ったテンションを演じるのは、相当恥ずかしいものがある。しかし、羞恥心から来る頬の赤みを、ひかるはお酒によるものだと勘違いしたようだ。「ほら、顔が赤くなってるよ?」と気遣いの言葉をかける。

 

 ――うまく騙せてるルン。

 

 わたしは安堵の息をつくと、そのままひかるにもたれかかる。

 

「……ひかる、酔ってるときのわたしって、どんな感じルン?」

「この前も言ったけど、酔ってる時のララはね……いつもより積極的で、とってもかわいくて、すっごくて、キラやば~☆だよ。普段なら恥ずかしがってやってくれないこともやってくれて……えへへ、この前の夜もすごかったなぁ……」

「た……たとえば、どんな感じルン? 覚えてないから、教えて欲しいルン」

「ええ~! だから、それは、秘密だよ」

 

 口に指をあて、楽しげに微笑むひかるを見ていると、胸がズキリと痛む。

 

「でも……わたし、知りたいルン」

「どうして知りたいの?」

「それは……その……とっ、とにかく、知りたいルン! 教えて欲しいルン!」

「ん~、でもな~、どうしようかな~」

 

 ひかるが意地の悪そうな笑みを浮かべながら焦らすので、わたしはそこで、とっておきの切り札を見せる。

 

「教えてくれるなら、ここで、”同じことをしてあげる”ルン」

「……同じこと?」

 

 わたしはうなずくと、ひかるの体に両腕を回す。ぎゅっと抱きしめながら、ひかるの耳元で、もう一度ささやくように言う。

 

「昔のわたしがしてた”積極的なこと”を、もう一度、してあげるルン」

 

 ぞくっ、と。ひかるの体が震えるのが伝わり、わたしは内心でガッツポーズする。我ながら、いまのは会心の一撃だった。これでひかるも、教えてくれるに違いない。

 わたしの作戦はこうだ。

 過去の自分がどんなことをしているのかを聞き出すために、それと同じことをすると言う。『酔っ払っている』という口実があれば、シラフの自分でも頑張ればできるかもしれないし、明日になれば『記憶がない』と逃げることができる。

 まさに、完璧な作戦だった――この激しい羞恥心を耐え抜くことさえできれば。

 

「……もう。ララはズルいなあ」

「じゃあ、教えてくれるルン?」

「……そこまで言われたら、断れないよ」

 

  ひかるは苦笑すると、ゆっくりと体を離して、わたしの目を見つめる。

 

「これは、一昨日の居酒屋デートから帰ったあとのことなんだけどさ。ララは、ベッドの上で――」

 

 ゴクンと、唾を飲む。

 

 ――ベッドの上で、わたしは何をしたルン?

 

 胸をドキドキさせながら、ひかるの言葉を待つ。

 過去の自分は、いったいどんなことをしていたのだろう。

 それは、シラフの自分が耐え得るものなのだろうか。

 ひかるの唇が動く。

 

「――グラスをマイクにして、歌ってたんだ」

「…………歌、ルン?」

「そう。歌」

「その歌って……」

「『ドキドキ☆La・La・Lun TOUR』

「…………」

「『~29 years old version~』」

「…………」

 

 はい、とわたしの手元に、空のグラスが手渡される。

 

「……いま、歌うルン?」

「その約束だよ?」

「……オヨ」

 

 じっとグラスを見つめる。

 恥ずかしい。確かにこれは恥ずかしいし、やりたくない。

 何よりも、とわたしは内心でつぶやく。想像していたのと、なんか違うルン。

 

「あ、ララ、触角ダンス付きでね?」

「…………」

 

 ここまで来たら、やるしかない。

 わたしは覚悟を決めると、おもむろに立ち上がり、ベッドの上に乗る。そして、理性のスイッチを切ると、大きく息を吸いこんだ。

 

 ☆ ☆ ☆

 

「――いや~! キラやば~っ☆だったね! よっ! サマーンの歌姫! 芸達者! モノマネも良かったよ~!」

「……ありがとルン」

 

 けっきょく、わたしは一曲まるまる歌い終えたあと、アンコールにも応え、その後になぜか生徒会の書記の子のモノマネまでやる羽目になってしまった。

 げっそりしながらソファーにもたれかかる。酔っているときのわたしは、いったい何が楽しくてこんなことをしているのだろう。

 

「じゃあ、最後にもうひとつ……」

「も、もういいルン……わたしは、こういうのがしたかったわけじゃないルン……こういうのじゃなくて……」

「え~! 教えてって言ったのはララの方なのに! これで最後だから、ね?」

「……じゃあ、最後にひとつだけやるルン」

「わーい! あのね、これは酔っ払ったララがよくやることなんだけどさ、」

 

 ひかるはグラスを手に取ると、ニッコリと笑う。

 

「カルーアミルクを、飲ませてくれるの」

「……オ、オヨっ!? そっ、それは絶対だめルン!」

 

 慌ててひかるの手からグラスを取り戻す。いまここで飲まれたら、アルコールが入っていないことがバレてしまう。それだけは何としても避けたかった。

 

「え~……これはだめなの……?」

「だめルン! こ、これはわたしのカルーアミルクルン! ひかるは梅干しサワーを飲むルン!」

「しょうがないなあ……。じゃあ、こっちにしようかな」

 

 こっちルン? 

 そう問い直すよりも早く、ひかるの顔を近付いてくる。あっ、と声を出した次の瞬間には、唇を重ねられていた。

 抵抗できたのは最初の数秒だけだ。すぐに顎の力が抜けて、だらしなく口が開いてしまう。ひかるの舌が優しく動くたびに、ビリリと頭に電流が走る。我慢しようとしても、できるものではなかった。わずかに空いた隙間から、甘い息が漏れる。体がどんどん火照ってくる。わたしはひかるを求め始めていた。もっとひかるを感じたい。もっとひかると重なりたい。もっとひかるを――。

 と、その矢先、ひかるの顔がすっと離れてしまう。

 

「ひかる……?」

 

 何でやめるルン、とひかるに抱き着く。再び顔を近寄せる。上目遣いで見つめながら、唇を差し出して、

 

「……わたし、もう我慢できないルン」

「ふふっ。今日のララは、なんだか積極的だね」

「……酔っ払ってるから、しかたないルン」

「ララはお酒に弱いもんね」

「ルン」

「ノンアルでも酔っ払っちゃうくらいだもんね」

「そうルン……ノンア……」

 

 ノンアルルン?

 わたしは混乱した頭で、必死で言葉をかき集める。

 

「な、何言ってるルン……? ノンアルコールじゃさすがにわたしも――」

 

 すると突然、ひかるはカルーアのボトルを手に取る。そのまま口に運んだかと思うと、ゴクゴクとラッパ飲みしていく。

 わたしは唖然としながら、その光景を眺めるしかない。

 

「――"さすがにわたしも"、なあに?」

 

 ボトルから口を離すと、ひかるはニッと笑う。

 そのとき。わたしは確かに、自分の心臓が爆発する音を聞いた。

 

「え……いや……これは……ちっ、違うルン……これは……」

「何が違うの?」

「ル……ルルルンルン! ルルルッルルルルルル!」

「慌てすぎてサマーン語出ちゃってるし」

「ルルルルルン! ルルッ! ルルルルルルルルルルルッ!」

「わかったよララ、落ち着いて、落ち着いて……ね?」

「落ち着いてなんかいられないルン! いつから分かってたルン!?」

 

 ひかるの体をポカポカ叩きながら言う。

 

「う~ん……最初から?」

 

 ひかるはわたしの攻撃を物ともせず、首に両腕を回してくる。数センチ先まで迫ってきたひかるの瞳に、わたしの体は縫い付けられ、動けなくなってしまう。

 

「……何で、分かったルン」

「確信したのはさっきだよ。キスしたとき、カルーアの味がしなかったから」

「じゃあ、最初からって言うのは……?」

「見てたら分かるよ。ララのことなら、わたし、誰よりも知ってるから。……もしかしたら、ララよりもね」

 

 ひかるは手を這わせながら、わたしの耳をくすぐる。

 

「やっ、ちょっ……ひかる……」

「ごめんね、からかっちゃって。でも、何でこんなのことをしたの? 酔ったふりなんてさ」

「それは……い、言えないルン」

「教えてくれないの?」

「ル……ルン……んっ……!」

 

 ひかるがもう片方の手でわたしの触角をきゅっとつねる。ぞわりとする感覚とともに、体が縮みこまる。

 

「ねえ、ララ、教えてよ」

「や……やめ……っ……ルン……!」

 

 耳と触角を同時に触られていると、わけが分からなくなってくる。交錯する二つの強い刺激に、頭の中が支配されていく。

 

「わっ……わかったルン……んっ……教えるルン……!」

「ごめん、今なんて?」

「だから……あっ……教える……ルン……! だからやめ……やめっ……」

「う~ん、よく聞こえなかったから、もう一回言ってもらってもいい?」

「教えるっ……教えるから……かる……もう……ひかる~~~!」

 

 最後の力を振り絞って、何とかひかるを突き放す。乱れた呼吸を整えると、ぷうっと頬を膨らませて、ひかるを睨みつける。

 

「ひかるは……意地悪ルン」

「ご、ごめんね……ララがかわいくって、ついやりすぎちゃった」

 

 目頭に滲んでいた涙を、ひかるはそっと拭い取ってくれる。そして、「ごめんね」と繰り返す。

 

「でも、どうしてもララのことが知りたくて……」

「……それは、わたしも、いっしょルン」

 

 何かが弾ける音がする。

 それは、これまで抑えつけていたものが、ついに限界を迎えた音だ。わたしの口からは、情けない声音とともに、ため込んでいた言葉が四散していく。

 

「……ひかる、よく言ってるルン。酔ったわたしは積極的で、かわいいって。……き、昨日の夜は、すごかったよって。でも、わたしは酔ってるときの記憶がほとんどなくて……。ひかるだけ、ズルいって思ったルン。わたしは何も覚えてないのに、ひかるは全部覚えてて。わたしだって、全部ちゃんと、覚えていたいルン。ひかるの声とか、ひかるの体温とか、ひかるの感触とか……全部、全部、忘れたくないルン。でも、お酒を飲むと忘れちゃうし、お酒を飲んでないと恥ずかしくて、酔ってるときより、たぶん、わたし、積極的にできてないから……。だから、知りたかったルン。酔ってるときのわたしが、どういう感じなのか。ひかるが、どういうことを悦んでくれるのか――」

 

 知りたかったルン、とわたしは言葉を結ぶ。

 鼓動がうるさい。突然訪れた静寂が怖くて、苦しくて、恥ずかしくて、ひかるの顔を見ることができない。

 すると――。

 

「……そっか。そうだったんだね」

 

 ぽん、と。頭の上に、ひかるの手がのせられる。

 

「ごめんね、わたしの言い方がよくなかったよね。ララは酔ってるときじゃなくても、いつだって、とってもかわいいし、わたしはどのララも、大好きだよ」

「……ルン」

「ごめんね。余計な不安を抱かせちゃって」

 

 そう言いながら、ひかるはわたしの頭を撫でる。たったそれだけで、感情でぐちゃぐちゃになっていた心が鎮まっていく。

 

「……でも、酔ってるときの方が、積極的ルン?」

「う~ん……それは……まあ……その……ごめん……」

「……謝らなくていいルン」

 

 思わずくすっと笑ってしまう。こういうとき、ひかるは嘘をつけない。

 

「……ひかる。さっき、カルーアミルクを飲ませてって言ったルン?」

「え? ああ、うん。言ったけど……」

「アルコールの入ってないカルーアミルクだけど、それでもいいルン?」

「うん。どうせなら、お砂糖もちょっと欲しいな」

「ルン。作ってあげるルン」

 

 わたしはカルーアのボトルと牛乳を手に取り、空っぽのグラスに注いでいく。黒と白、二つの液体が交じり合い、マーブル模様を描いていく。最後に、スティックの砂糖を入れる。

 

「できたルン」

「ありがと。……あ、かき混ぜるから、マドラーも借りてもいい?」

「混ぜながら飲めばいいルン」

「うん……? え? 混ぜながら?」

 

 わたしはグラスを手に取り、自分の口に運ぶ。そして、そのまま飲み下すことなく、頬の中に留めた状態で、無防備なひかるの唇に押し付けた。

 

「~~~~っ!!」

 

 頭に手を回して、逃げられないようにしながら、口の中の液体をひかるの方に流していく。舌を動かすと、互いの中にある液体がかき混ぜられ、ミルクの濃厚な風味がひろがる。時折、ざらりとした食感がするのは、溶け切らなかった砂糖の塊だ。押し付けるようにして潰すと、永遠に浸っていたいような、耽美な甘みが味覚を刺激する。すべてが飲み下されてからも、どこかに残りはないかと、ひかるの中を探し続ける。

 

「……ぷはっ」

 

 やがて、唇を離したわたしは、ひかるの顔を見る。ひかるは珍しく赤面しながら、茫然としたように、自分の唇を手の甲で押さえている。

 

「――ひかる。”アルコールの入ってないカルーアミルク”は、美味しかったルン?」

「……うん。とっても」

 

 ひかるははにかむように笑うと、わたしの頬に触れる。

 

「ねえ……ララ、わたし、まだ飲み足りないな」

「おかわり、欲しいルン?」

 

 ひかるはうなずくと、わたしの背中にもう片方の手を回す。

 

「ララがこんなことするから……わたし、今日は抑えられないかも」

「抑えなくていいルン。……でも、その代わり、ひとつだけ約束ルン」

 

 わたしは体を預けると、その瞳を見つめながら言った。

 

「今日は、忘れたくても、忘れられないくらい、して欲しいルン」

 

 そのときのひかるの表情を、わたしはこの先、忘れないだろう。

 いつもは余裕たっぷりにエスコートしてくれるひかるが、少しだけ乱暴な手つきで、わたしの体を押し倒す。

 

「ララ。先に言っておくけど――」

 

 頬を上気させながら、ひかるはわたしに体を重ねる。生温かい息が、わたしの耳元に絡みつく。

 

「――やめてって言っても、やめないからね」

 

 その声に、胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、わたしは「ルン」とうなずいた。

 

 ☆ ☆ ☆

 

  次の日、職場に遅刻の連絡をすることになったが、ロロから理由を問われたとき、わたしはひとこと、「寝坊ルン……」と答えた。

 

 

 了

 

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