金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

『キスの日とバニーガール』※大人ひかララ 二次創作

キスの日とバニーガール

 朝、目覚めると隣にひかるがいる。

 ついこの間までは、それだけのことが羽衣ララにとっては奇跡以上の奇跡だった。何年も何年も望んだ再会。それだけでも十分な奇跡だったのに、それ以上のことを望んでは罰が当たるのではないかと思っていたララを、ひかるは一瞬で叶えてしまったのだ。

 それこそ、光の速さで。

 ララはその横顔に小鳥のような軽いキスをする。

「ひかる……ありがとルンっあっちょっひかるっ、んっ、ンッ、ん〜〜〜〜〜!?!?」

 光の速さでキスされ返された。

「ちょっとひかる、せ、せめて歯を磨いてから……!」

「えー、大丈夫だよ〜。私はもう磨いたし」

「えっ、ひかる今まで寝てたルン!?」

「ついさっき帰ってきたところで、ちょっと仮眠取ろうかな〜って思ってたところだからさ」

「ル、ルン……」

 そう。ひかるは今、宇宙飛行士として、そして人気タレントとして活動中で、泊まりがけの仕事も多くこなしている。

「でっ、でもっ、わたしは磨いてないルン!」

「そんなの気にしなくていいよ」

「きっ、汚いルン……!」

「ララの体に汚いところなんてないよ。ほら、この前なんかさ……」

「そっ、その話はやめるルン〜〜〜!!」

 恥ずかしい記憶が蘇るのを必死で掃除し捨てていく。ひかるとの思い出は大切だが、夜の記憶は基本的に忘れたいものばかりだった。

「ねえララ、今日が何の日か知ってる?」

「オヨ? きょ、今日は……」

 七月六日。ララの誕生日の前日である。が、ひかるの質問の意図とは異なるだろう。他に何かあっただろうか。

「今日はね、インターナショナルキスデーっていうんだよ」

「い、いんたーなしょなるきすでー……ルン……?」

「簡単にいえばキスの日ってやつ。日本だと有名なキスの日は5月23日だけど、インターナショナルキスデーはイギリスが起源で、世界的なキスの記念日として認められてるんだ〜」

「キスの日……だから朝っぱらからキスしてきたルン?」

「もうララったら、朝っぱらキスしてるのはいつものことじゃん。ちょっと仮眠しようかなって思ってたらララが誘ってきたんだもん。乗らないわけにはいかないよ〜」

「あっ、あれはだって、寝てると思ったルン……! もうっ、恥ずかしいからやめるルン〜〜!」

「誰も見てないんだからそんなに恥ずかしがらなくていいのに〜」

「この宇宙にはカップルがイチャイチャするところを見て栄養にするカップル星人もいるルン! もしかしたら地球にも来てるかもしれないルン!」

「またそんなこと言っちゃって〜」

「とっ、とにかくっ! 朝ごはんにするルン!」

 ララはバタバタとダブルサイズのベッドから出て、朝の支度をしていくのだった。

 

 ※

 

「あ、そうだ、ララごめんっ」

 朝食を終えたところでひかるが急に謝った。

「今日、テレビの収録でさ。帰るのけっこう遅くなりそうなんだ。たぶん日付が変わる前には帰れると思うんだけど……」

「ル、ルン! 仕方ないルン! ひかる、お仕事がんばってルン!」

「ごめんね、その代わり明日はオフだからデートしようね」

「ルン!」

「じゃあそろそろいってきまーす」

「いってらっしゃいル……ンッ、あっ、んむっ、あっ」

 行ってきますのキスをたっぷりした後で、ひかるは行ってしまった。

 残されたララはひかるが帰ってくるまでどうしようかと考える。明日は自分の誕生日だ。きっとひかるは明日のデートで色々なサプライズをしてくれるだろう。毎日がどんなに忙しくても、そういうところは欠かさないのがひかるだ。

「……わたしも何か、サプライズするルン」

 何か良いアイデアはないか。ひかるからのらったスマホで検索してみるが、いまいち使い勝手が悪い。やはりここは、

「AI、地球で恋人にサプライズするならどんなものがあるルン?」

「ララ様。地球、恋人、サプライズで検索したところ、『勝負下着』というものが検出されました」

「しょ、しょーぶしたぎ、ルン……? 詳しい画像を出すルン」

「申し訳ありません。ブロック機能により、画像を映し出すことができません。ララ様にはまだ少し早いと思われます」

「何でルン!? わたしはもうとっくの昔から大人ルン!?」

 なぜかAIは頑なに勝負下着の画像を見せてくれない。仕方なくララは友達の異星人に連絡してみることにする。

「ユニ、今暇ルン?」

「暇か暇じゃないかでいうと暇じゃないけど、どうしたの?」

「ショーブシタギってどんなのルン?」

「…………」

「ユニ? 聞こえてるルン?」

「あ、うん、ちょっと待ってニャン……」

 何やら小声で会話が聞こえてくる。ねえアイワーン、勝負下着って何かってララから聞かれたんだけど。あ? そんなことも知らないっつーの? いや、知ってる知らないとかの話じゃなくって……。天才科学者のあたいも昔発明したことがあるっつーの。え、そうなの? 地球のバニーガールっていう衣装から着想を得た勝負下着で、意外とこれがノットレイダー女子部の中でも好評で……って、ユニ、その目は何だっつーの!? 絶対着ないっつーの!

「ご、ごめんララ、ちょっとバニーガール……じゃなくて、急用ができたからまたニャン!」

 通話が切れる。

「ユニ、忙しいそうだったルン……でも、ヒントは得たルン! バニーガールって言ってたルン! AI、バニーガールの衣装を今すぐ取り寄せるルン!」

「エマージェンシー! エマージェンシー!

「オヨ〜っ、びっくりしたルン!」

「ララ様、バニーガールというのは少々刺激が……」

「問題ないルン! サプライズなんだから、ちょっとくらい刺激があった方がいいルン!」

「……かしこまりました、ララ様」

 地球の文明は惑星サマーンと比べると異なる部分も多いが、注文した商品が当日に届くサービスがあるのは同じだった。夕方になると、ドローン宅配が商品を運んできてくれた。

 中身を見たララはさっそく着てみる。が、その姿を見て、ひとり激しく悶絶する。AIが止めていた理由が少し分かった。

「で……でも、これが地球人のサプライズなら、やるしかないルン! ひかるのためルン!」

 バニーガール姿になりながら決意を新たにする。

 ひかるが帰ってきたとき、この姿を見せてびっくりさせてやるのだ。

 あとはどのようにしてこの姿を見せるかだが……。

 ララは思案する。

 帰ってきたときにこの姿で出迎えるのもありだ。だがサプライズにするなら、ベッドに入っておくのもありかもしれない。寝たふりをしておきつつ、同じベッドに入ってきたときにこの姿を見せるのだ。

 ララは先にお風呂に入って鏡を見ながら全身をチェックする。どこか変なところはないか。触覚の調子も良好。よし、大丈夫ルン。……多分。

 風呂を出たララは赤面しつつバニーガールの衣装を着る。胸元には少しスペースが空いており、油断するとペロンと剥がれてしまうのが余計に恥ずかしい。だがこれが勝負下着なのだ。サプライズなのだ。恥ずかしいなどと躊躇している場合ではないルン! ルルルル! ルンルンルン!!

 時刻は十時。ひかるからの連絡が来ていた。十一時頃には家に帰れそうとのことだ。

 ソワソワしながら、ララはあることに気付いて、

「AI、電源を切ってもいいルン?」

「どうしてでしょうか、ララ様」

「え、えっと、ど、どうしてって……」

「今までの分析によると、ララ様が電源を切るタイミングに共通するのはひかる様が帰ってくる夜である確率が100%となっています。ララ様、私の電源を切っている間にいったい何を……」

「も、も〜〜〜〜! AI、わざと言ってるルン!?」

「何のことだかさっぱりわかりません」

「い、いいから電源を切るルン〜〜〜〜!!!」

「かしこまりました、ララ様。ひかる様とお楽しみくださいませ」

 AIの電源が切れたことを確認する。あとは部屋の窓も閉めておく。アロマを炊いて、雰囲気も作っておく。そして自分はバニーガールの衣装を着ている。よし、完璧ルン!

 電気を消し、ベッドの中に潜り込んで寝たふりをしていると、やがてドアの開く音がした。ひかるだ。ひかるが帰ってきたのだ。

 ひかるとララの住む部屋は1LDKである。ダイニングの電気をつけたひかるは、リビングの方にあるベッドの中の大人一人分の膨らみに気付いたのか、こちらの電気までは付けずにひたひたとゆっくりこちらにやってきた。ララが眠っていると思っているからだろう。すぐ近くまで、ついにひかるが来た。

「ただいま、ララ。もう寝ちゃったかな?」

「……ね、寝てないルン」

「あ、起きててくれたんだ。遅くなってごめんね」

「ぜ、全然平気ルン……あの、ひかる」

 いつもありがとルン、そう言って、布団をめくる。薄暗い光の中で、ひかると対面する。

 ひゅっ、と息を呑む音がした。

 ひかるは何も言わずに固まっている。

「……ひ、ひかる……? や、やっぱり何か変、ルン……?」

「えーと、ちょっと待ってねララ、言いたいことが今頭の中で大渋滞を起こしてて、言葉が全然出てこないんだけど……いや、もう、いっか」

「る、ルン?」

「言葉にするの、諦めてもいい?」

 返事をするよりも早く、唇を塞がれた。

 頭の中が真っ白になり、とろけるような甘い味が口の中に広がる。

「んむっ、あっ、あむっ、んんっ、んむっ……」

 なぜひかるはこんなに甘いのだろう。不思議に思って聞いたことがあるが、そのときはララの方がもっと甘いよと返されたことを思い出しながら、ララはその甘美な果実にむしゃぶりつくようにキスをする。舌を入れると優しく吸われる。心が、そのまま吸い込まれていくような感覚に陥り、体がびくびくっと反応する。

「んっ、んむっ、んあっ、あっ、あむっ……」

 舌と舌が絡まり合い、もう解けない。そのまま何秒も、何分も、長い、長い、長い間、ただひたすらキスを続けた。……キスだけを。

「あっ、ひ、ひかるっ」

 首筋をつつーっとキスされる。そのまま下に行ってほしい。しかしララの望みは叶わなかった。今度は耳だった。耳の外側からくるくると丁寧に口付けされる。焦らすように、ゆっくりと。穴の中に舌が入ったときには、電流が流れ、甘い声が漏れた。最後は触覚だ。チロチロと尖らせた舌で触覚を舐められていると、それだけで果ててしまいそうになる。もう声は我慢できなかった。早く。早く。次を……。

「ひ、ひかるっ……も、もう……」

「なあに、ララ?」

「…………さ、触ってほしい、ルン」

 いつもならもう触ってくれている。しかし今日はやけに焦らす時間が長い。胸の炎はとっくにパチパチと音を立てているにも関わらず、肝心なところに触れられず、ただキスだけが繰り返されるため、なかなか燃え上がらない。

「だーめ」

 ひかるは優しい、けれど意地悪な声で、

「だって今日はキスの日でしょ? キスだけしか、しちゃダメなんだよ」

「る、ルン……!? んむっ、ああっ、あむっ……!?」

 キスは気持ちいい。でももうキスだけでは我慢できない。でもひかるはキスしかしてくれない。どうして。キスの日だから。なんで。そんなのおかしいルン。言いたいことは無限にあった。しかし唇を塞がれていては、言葉にすることすらできない。

「んむっ、あむっ、んんっ、もっ、もうっ、無理ルン……っ……ひかる……ひかるぅ〜……」

「可愛い、ララ」

「〜〜〜〜〜〜っ」

 触覚に吸い付くようなキスをされた途端、ビリビリと耐え難い電流が流れる。

「あぐっ、あっ、あっ、あっ、うあっ、……あぁぁぁぁぁぁ」

 今度は口の中に指を入れられて、みっともない声が隙間から漏れていく。

「もしかしてララ、今ので……」

「い、言わないでルン……もう、ひかるの、いじわる……」

「ごめん、でもララがかわいすぎるのが悪いんだよ? こんなのも着ちゃってさ」

「こ、これは……地球の文化に沿って、用意した……ルンっ……! んんっ、ああっ、もう無理ルン、ひかる、ひかるっ、もう触って欲しいルン〜〜〜〜!」

 ぐずぐずと涙が出てくる。上目遣いにひかるを見ると、爛々と煌めく目と目が合った。夜、ひかるはときどきこうなるルン。そ、そんなひかるも嫌いじゃないけどルン……。

 と、そのときだった。

 不意にひかるが時計を見て、にこっと笑った。

「ララ、よく頑張ったね」

「る、ルン……?」

「お誕生日おめでとう、ララ」

 見ると、時計の針が一番上を指していた。終わったのだ。七月六日が。キスの日が。

 ということは、つまりーー

「じゃ、キスの日も終わったことだし……」

「る、ルン……! やっ、やっぱりちょっと待つルン、ひかるっ、なんか目がいつもと違っ……んん〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」

 こうしてララとひかるの長い長い夜は、二回戦に突入していくのだった。

 

 

 

あとがきと雑感

お久しぶりです。十五年ぶりくらいにひかララの妄想を書いた気がします。

X(Twitter)で過去の自分の妄想が時々リポストしていただくことがあるんですが、今回はそれに乗っかって形にしてなかった妄想を生誕祭にかこつけて形にしてみた形です。形形やかましいな。

 

でもやっぱり良いですねひかララ。これもう死ぬまで言ってるんだろうなとすら思いますが、ひかララは激甘の甘々お菓子なんですよ。死ぬまでずっと食べていたいですね。これがスタートゥインクルプリキュアに狂わされた人間の末路……。

 

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