金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『猫にドーナツ』プルユニの二次創作

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 プルンスとユニのコンビ、いいですよね。

 

 数日前、こんな妄想ツイートをしました。

 

 

 それからいろいろ試行錯誤していたところ、気が付いたらプルユニの二次創作ができていました。

 

 正気を失いながら書いたので、正気を失っているうちに公開します。 

 コメディです。

 

(プルユニ/全年齢/コメディ/6000字程度)

 

 

 

猫にドーナツ

 

「ドーナツを食べたのはユニでプルンスな!」

 

 プルンスの悲痛な叫びが響き渡る。

 ロケットにいるのは、プルンスを除けばユニとフワの二人だけだ。

 
「わ、わたしじゃないわよ」

 

 ユニは否定するが、プルンスは眉間にしわを寄せながら食い下がる。

 

「ユニが食べてないなら、誰が食べたでプルンスか!」

「それは……」

 

 ユニはちらりとフワの方を見る。

 フワはテーブルの上で気持ちよさそうにうたた寝をしている。

 

「フワも……食べてないわ。フワもわたしも、食べてない」

「このロケットには他には誰もいないし、ハッチが開いた形跡もないでプルンス! となれば、ユニ以外には考えられないでプルンス! 許さないでプルンス!」

「だから、わたしじゃないって……」

「いい加減白状するでプルンス!」

「白状っていわれても......」
「返すでプルンス! 盗みをするのはユニ! ユニしかいないでプルンスっ!」
「……っ……」
「何とかいったらどうでプルンスか!?」

 

 ユニは顔をうつむかせ、震える声でつぶやくようにいう。


「プルンスは……わたしの事を信じてくれないのね」
「……えっ?」
「そりゃそうよね……だってわたしは……宇宙怪盗だから……」


 ユニは静かに席を立つ。

 表情を変えたユニを見て、プルンスは慌てるようにして、ユニの手を掴んだ。


「……ほ、本当に食べてないでプルンスか?」

「離して」
「ご、ごめんでプルンス……」
「離して」

「悪かったでプルンス……」

「離してっていってるでしょう」


 これ以上は無駄だと察したのか、プルンスはいわれた通り、手を離し――。

 そして、地面に頭をこすりつけた。


「申し訳なかったでプルンス」

 

 突然の土下座に、ユニも思わず立ち止まってしまう。

 

「ちょ、ちょっと……顔上げなさいよ……」

「謝るでプルンス……プルンスは……自分で勝手に決めつけて……ユニの心を傷付けてしまったでプルンス……」
「……プルンスは、わたしのことが嫌いなんでしょ」
「そんなことないでプルンス……!」

「わたしのことが嫌いだから、信用してないから、そうやってすぐに疑う」

「ち、違――」
「何が違うのよ」


 プルンスは沈黙する。


「ほら。いい返せない。やっぱりあなたは――」
「ユニ……」

 

 プルンスはユニのことを見上げていう。

 

「――もしかして、泣いてるでプルンスか?」
「なっ」

 

 ユニは目元をぬぐった。

 

「泣いてなんかないニャン!」

 

 近くにあったドアを開ける。

 顔を隠すようにしながら、ユニは勢いよくそのなかに転がり込む。

 すぐさまプルンスが追いかけてきたので、咄嗟にドアを閉め、自分の背中で押さえつけた。

 

「ユニ! 開けるでプルンス!」

 

 プルンスがドアを叩く音が鳴り響く。

 室内は光ひとつ入らない暗闇に包まれていた。

 手探りで鍵を探すも、見当たらない。

 しかたないので、背中でドアを抑えたまま、電気のスイッチを探す。

 

「その部屋はプルンスの部屋でプルンス! 早く開けるでプルンス!」

「ふーん……ここ、プルンスの部屋なのね」

「プルンスのお宝には触っちゃ駄目でプルンス~!」 

「お宝ね……」

 

 どうせマオのグッズでしょ、とユニは内心でつぶやく。 

 

 壁伝いに探っていくと、ようやく電気のスイッチらしきものを見つけた。

 カチッという音と同時に、部屋は目の眩むような光で満たされる。

 

「…………」

 

 目の前の光景に、ユニは一瞬、言葉を失った。

 うちわ、ポスター、写真、フィギア、キーホルダー、ペンライト……。

 予想は的中していた。

 プルンスのいうお宝は、確かにマオのグッズのことだった。

 

 しかし、予想していなかったのはその量だ。


 室内には、おびただしい数のマオグッズが置いてあった。

 壁はびっしりとマオのポスターやカレンダーなどで埋め尽くされている。タンスの上はフィギアやライブの限定グッズ、コラボ商品などが飾られている。

 どこを見ても、マオのグッズが目に入る。

 

「プルンス……マオのこと好きすぎニャン……」 

 

 見上げると、天井にまでマオのポスターが貼ってあるのを見つけ、ユニは引きつった笑いを浮かべた。

 

 と、そのとき。

 

 背後から衝撃が伝わり、ユニは前のめりになって倒れた。

 プルンスが体当たりをして、無理やりドアを開けたのだった。

 

「プルンスのマオたんグッズを触るなでプルンス!」

 

 いてて、とユニは転んだ痛みで顔をしかめながら、プルンスを見る。

 プルンスは必死な形相で、マオのグッズを守ろうとしている。

 転んだユニのことなど見ていない。

 プルンスの目には、ユニのことなど映っていないのだ。

 

「……そんなに大切なの、これ」

 

 ユニは心の奥から込みあがる感情を抑えながら、壁に貼ってあったマオのポスターを指差す。

 

「それは……マオたんのサイン付きポスター……プルンスの宝物でプルンス……」

「これが、宝物?」

「プルンスは……マオたんから生きる気力をもらったでプルンス……プルンスは……マオたんのことが――」

「マオたんマオたん、うるさいのよ」

 

 感情を抑えきれなくなったユニは、壁を叩きながら言う。

 

「あなたはいつもマオのことばっかり。マオにはデレデレのくせに、わたしには全然優しくしてくれない。何かあればすぐにわたしのことを疑う……。よく分かったわ。あなたはわたしのことなんて、これっぽっちも見てない。見ようともしてない。見ているのはマオのことだけなのね」

「それは違うでプルンス!」

「だから、何が違うのよ!」

 

 プルンスは再び沈黙する。

 苦悶に満ちた表情を浮かべながらも、言葉を紡げずにいるプルンスを見たユニは、ぽつりと、つぶやくようにいった。

 

「……仲間になったと思ってたのは、わたしだけだったみたいね」

 

 ユニは部屋を出ようと足を踏み出す。

 終わりだ。

 もう、ここにはいられない。

 ドアに手をかけたとき、プルンスの触手がユニの足を掴んだ。

 

「……待つでプルンス」

「離して」
「ユニに……見て欲しいものがあるでプルンス」

「そんなに見せたければ、マオに見せればいいんじゃないの?」

「マオたんじゃなくて、ユニに見て欲しいでプルンス」
「何よ、それ……」

 

 プルンスは真剣な表情で顔を上げる。

 

「後悔しないでプルンスか?」
「えっ?」
「後悔しないか、聞いてるでプルンス」

 

 ユニは思わずドキっとしてしまう。

 プルンスの瞳の奥で、覚悟の炎が灯っているのを見たからだ。

 

「……何の話か、分からないんだけど」

「それは、オーケーということでいいでプルンスな?」

「……何でもいいわよ。好きにしたら?」

 

 プルンスは深呼吸をする。意を決したかのようにユニに向き直る。

 そしていった。

 

「ユニ、見て欲しいでプルンスーープルンスの、愛を」

 

 プルンスは壁にかかっている等身大のポスターに触手を伸ばす。何をするのかと思えば、そのまま引きはがしてしまった。

 

「――えっ?」

 

 ユニの目が大きく見開かれる。

 驚愕と混乱、羞恥と狼狽。

 理解が追い付かず、ユニはろくに声を出すこともできず、ただただ茫然とそれを見た。

 

「……これで、分かったでプルンスか。プルンスは、ユニのことを見てないなんてことはなかったでプルンス。むしろ、ずっとユニのことを見てたでプルンス」

 

 プルンスが引きはがした巨大なポスターの裏には、一面、寸分の隙間もなくびっしりと――ユニの写真が貼りつけられていた。

 

「何でわたしの写真が貼ってあるのよ!?」

 

 ユニがひとりでたたずんでいる姿、ユニが歌っている姿、ユニがパジャマを着て寝ている姿、ユニが寝ている姿、ユニがドーナツを持っている姿……。

 そこには、ありとあらゆるユニの写真があった。


「ま、ま、まさか……」

 

 別のマオのポスターを引きはがすと、裏にはユニの写真が貼ってある。

 マオのうちわをひっくり返しても同様だった。


「……そのまさかでプルンス。すべてのマオたんグッズの背面や裏面には、ユニの写真が貼ってあるでプルンス」
「いつの間に撮ってたのよ!? っていうかあなたこれ盗撮よ盗撮! 何勝手に撮ってるのよ!?」

 

 プルンスははにかんで顔を赤らめる。


「……若気の至りでプルンス」
「あなたそんなに若いわけじゃないでしょ!」

「ユニはいくつ上までなら許容できるでプルンスか?」

「知らないわよ! 今そんな話してないでしょ!?」

「まあとにかく、これで分かったでプルンスか? プルンスはマオたんだけじゃなくてユニの事も大切に想ってるでプルンス」
「分かったも何も……理解不能ニャン……!」
「プルンスの心のなかでは、騙されたことによる激しい憎しみとそれでも捨てきれない高濃度の愛情とがぐちゃぐちゃに混ぜ合わされたことで感情の核融合反応が引き起こされたでプルンス。そしてついに、その感情は『極限の愛』《ラブ・マックス》に達したでプルンス。その結果がこれでプルンス」
「何冷静にわけわかんないこといってんのよ!?」
 

 もはやどこから突っ込めばいいのか分からず、ユニは頭を抱える。


「こんなの……知りたくなかった……」

 

 独り言のように、ユニはつぶやく。


「忠告はしたでプルンス」
「ドン引きニャン……」
「ユニ……泣いてるでプルンスか?」
「そうよ! 泣いてるわよ! こんなの見せられたら誰だって泣きたくなるわよ!」
「そういえばロケットにユニの部屋はないでプルンスな。この部屋を使うでプルンスか?」
「それ本気でいってるの……? 正気を疑うニャン……」
「もももちろんプルンスは別の部屋に行くでプププルンス。ままま間違いがあってはならないでプスルン」

「何どもりながらいってるのよ……間違いって何なのよ……語尾もおかしくなってるし……」
「ドーナツのこと、許してくれるでプルンスか?」
「もうドーナツのことなんて忘れてたわよ……」


 ユニが盛大なため息をつくと、突如として『コズミック☆ミステリー☆ガール』が流れ始めた。

 

『見える? 見つけられる? 本当のわたし』


 しかもそれはマオの歌ではなく、アイスノー星で披露したユニの歌だ。
 ユニにはもう、プルンスがこっそり録音していたことを咎める気力も残っていなかった。

 

「何よこれ……わたしを煽ってるの……?」
「部屋にいる人のため息に反応して、ユニの歌が流れるようになってるでプルンス。プルンスはこの歌に救われたでプルンス。今でも辛いときや悲しいとき、ついため息をついてしまったときに、この歌が流れるようにして、元気をもらってるでプルンス」
「あっそう……」

 

 ユニは呆れながらも、いい加減気恥ずかしくなり、ぷいとそっぽを向く。
 すると、プルンスの柔らかい触手が、ユニの肩をちょんと叩いた。


「何よ……」


 見ると、プルンスがドーナツをひとつ差し出していた。


「プルンスの特製ドーナツ……食べるでプルンスか?」
「……悪いけど、マタークッキーを食べたからお腹いっぱいなの」
「じゃあ、半分こにするでプルンス」


 プルンスがドーナツを半分に割ると、中から青色のクリームが顔を出した。


「え、何、それ……」
「ユニの色をイメージして作ったドーナツでプルンス。名付けてプルンユニドーナツでプルンス」
「勝手にわたしの名前を混ぜないで……。あと……見た目がちょっと……青色っていうのが……」
「あ、味はおいしいでプルンス! ほら、食べてみるでプルンス!」

 

 ユニは青いクリームのはみ出るドーナツを手に取ると、おそるおそる口のなかに運んだ。

 

「……ん!」

 

 次の瞬間、口内に耽美な甘みと挑発的な果実の香りがひろがった。

 

「これ……美味しい……」

「全宇宙の老若男女を魅力するマオたんをイメージして、癖のない耽美な甘みをつけたでプルンス。ただそれだけじゃなくて、ユニの尖っている感じも表現するために酸味のある三角のカリカリも入ってるでプルンス」

 

 プルンスのいうとおり、時折「カリッ」という食感がある。

 

「尖ってるは余計よ……でも、美味しいわ、これ」

「当然でプルンス。プルンスが愛をこめて作ったドーナツでプルンスから」

 

 プルンスは真っすぐな目でユニを見つめる。

 

「さっきは……ごめんでプルンス」

「ドーナツのことでしょ。それなら――」

「そうじゃなくて、ドアをこじ開けたとき、ユニを転ばせちゃったでプルンス。怪我はしてないでプルンスか?」

 

 プルンスは心配そうに尋ねる。

 思いもよらなかった言葉に、ユニは何と返したらいいのか分からなくなってしまう。

 

「……大丈夫よ」

 

 けっきょく、当たり障りのない返事をする。

 

「なら……よかったでプルンス」

 

 プルンスは心から安堵するようにいう。

 そんなプルンスを見ていると、ユニは何ともいえない気持ちになる。

 その気持ちの正体がなんのか、ユニは自分でもよくわからなかったが、少なくとも悪い気はしなかった。


「プルンスは、ユニのことが好きでプルンス」

 

 唐突に、プルンスはいう。


「……知ってる」
「友情や恋愛といった次元を超越したレベルで好きでプルンス」
「……それも知ってる」
「ふっ……ユニは何でもお通しでプルンスなあ……」
「嫌でも伝わるわよ……これだけ写真とかイラストをベタベタ飾られてたら」
「ユニはプルンスのことをどう思ってるでプルンスか?」
「それ、このタイミングで聞く……?」


 ユニは嘆息する。
 すると再び、ため息に反応して歌が流れた。

 

『好きよ。嫌いよ。どっちが本音?』

 

「……どっちが本音なんでしょうね」
「え? 何ていったでプルンスか? 聞こえなかったでプルンス」
「何もいってないわよ」


 ユニが部屋を後にすると、プルンスが慌てて追いかけてくる。

 

「ど、どこに行くでプルンスか……?」
「心配しないで。なんだかもう色々どうでもよくなったから、あなたのことは許してあげる。わたしを疑ったことも、写真を撮ってたのも、不問にしてあげる」
「ほ、本当でプルンスか……!」

「でも、もう隠し撮りはやめてよね」

「わかったでプルンス! 今度からは許可を取るでプルンス!」

「二度と許可は出さないけどね……」

「ええ~!? それは困るでプルンス~!」

 

 当たり前でしょ、とユニは半分怒りながら、半分笑いながらいう。

 プルンスは涙目でぐじぐじつぶやいているが、無視することにする。


「その代わりといったらなんだけど……」

 

 ユニはプルンスに顔を近づける。

 

「わたしの犯した過ちも許して欲しいの」
「も、もちろんでプルンス! ひとつでもふたつでも三兆でも許すでプルンス!」

「……本当ね?」


 その言葉を聞いたユニは、にやっと悪戯な笑みを浮かべる。


「ドーナツを食べたの、本当は、わたしニャン」

「……え?」

「最初に泣いたように見せたのも、プルンスをからかうための演技だったニャン」

「............」

「じゃ、そういうことだけど、約束通り許しくれるのよね?」
「…………」

「プルンス、チョロすぎニャン」

「…………」

 

 プルンスの触手から、静かに、ドーナツが落ちる。

 
「……ぜ」

「ぜ?」

「ぜっ......ぜっ......」

「ぜっぜっ?」
「絶対に、絶対に絶対に許さないでプルンス~!!」

 

 プルンスは全身を震わせ、文字通り真っ赤になりながら怒鳴り散らす。

 

「よくも騙したでプルンス! プルンスの愛を返すでプルンス!」

 

 追いかけてくるプルンスから逃げながら、ユニは思わず笑いだしてしまう。

 

 ――本当に、プルンスはチョロすぎニャン。

 

 このとき、ユニは二つ、嘘をついた。

 

 一つ目の嘘。

 ドーナツを食べたのは、ユニではない。

 フワがこっそりドーナツを食べているところユニはちゃんと見ていた。

 ただ、ドーナツを食べて幸せそうに寝ているフワを見ていると、つい守りたくなってしまったのだ。

 

 そして、二つ目の嘘。

 それは――

 

「待つでプルンス~!!」
「ふふっ……待てといわれて待つ愚か者がどこにいるのよ」

 

 こんなふうに馬鹿なことをして笑うのは、いつ以来だろう。
 心のなかで、ユニはそっとつぶやく。

 

 ――馬鹿みたいだけど、悪くはないニャン。

 

 二つ目の嘘。

 プルンスから疑われたとき、思わず流れ出たあの涙。
 あれは決して、嘘ではなかった。 

 

 

 

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 素晴らしいイマジネーションを分けていただいているスタプリには感謝しても感謝しきれません…。ありがとうございます…。ありがとうございます…。