スタプリ13話、ひかララがとにかく尊くて、カッパードさんがとにかくカッコいい神回でしたね(毎回神回っていってる気がする)。
見所は他にもたくさんあって、たとえばプリキュアらしい秀逸な心理描写や、スタプリのテーマの1つでもある「多様性の受容」などについても触れられていたりと、実に濃密な30分でした。
この記事は、スター☆トゥインクルプリキュア第13話の感想や考察、分析について書いたものです。ネタバレありですので、ご注意ください。
※記事が長くなりそうなので、今回は前編(割と真面目な考察)と後編(ひかララがいかに尊かったかなどについての考察)で分けたいと思います。
- 執拗なまでに描かれる周囲の視線
- 星奈ひかるは誰よりもララを見ている
- 坂の下にいるララ、坂の上にいるひかるの対比構造
- 本当に大切なことは何か?:異文化理解は目的ではなく手段
- ララの正しい救い方
- ララ、えれな、まどかの類似点
- スタプリ13話の感想考察まとめ(前編)
執拗なまでに描かれる周囲の視線
今回は、ララの不安に説得力をもたせるために、周囲の視線が執拗なまでに描写されていたのが印象的でしたね。
特に、天宮えれなと香久矢まどかは観星中の太陽と月として慕われる存在ということもあり、そんな二人と仲良く話しているララは、図らずも好奇の的になってしまいます。
そして、度重なる失敗。
姫ノ城さんからは直接的に叱られてしまい、掃除で水を零したときにはみんなの視線がララに向けられました。
恐怖は思考を停止する
未知なる領域に足を踏み込むと、ただでさえ異端な存在は目立ちます。そこで何か失敗をしたときには、周囲の視線が一斉に向けられてしまいます。
その視線には、敵意や悪意が込められているかもしれない。ひかるたちにも迷惑をかけてしまうかもしれない。
そんな「歪んだイマジネーション」をしてしまうと、自分を奮い立たせていた勇気はしぼみ、好奇心は立ち消え、たちまち「恐怖」という感情に支配されてしまうことでしょう。
スタプリ第1話では、みんな大好きカッパードさんが「恐怖は思考を停止する」といいましたが、今回のララの脳内でも似たようなことが起きていたわけです。
ララを恐怖から救い出せるのは一人しかいない
ララの本来の目的は、「みんなと楽しくなりたかった」というものであり、そのための手段が「学校に通うこと(地球の文明を知ること)」だったはずです。
しかし、恐怖に支配されたララは、「学校に通う」ことそのものが目的化してしまい、本来の目的を置いてけぼりにしてしまったのです。
また、今回ララを支配した恐怖は、「大切な友達に迷惑をかけてしまう」というものでした。
これは、第10話から第11話にかけて星奈ひかるを支配していた恐怖と同種のものともいえるでしょう。
- 自分のせいでスターカラーペンを奪われてしまった(第10~11話のひかる)
- 自分のせいで友達が変な目で見られてしまった(第13話のララ)
第11話で星奈ひかるを救い出したのはララでした。
ならば、今回落ち込んでしまったララを救うのは、彼女しかいないでしょう。
誰よりもみんなのことを見ている、我らがピンク、宇宙に輝くキラキラ星。
星奈ひかる、君の出番だ。
星奈ひかるは誰よりもララを見ている
星奈ひかるさんが誰よりもみんなのことを見ているということは、コミュ力の塊のような天宮えれなさんも認めた事実です(第7話)。
そして、ひかるは誰よりもララのことを見ています。このことは、作中でも明確に描写されていました
ひかるがララのことを見ているのは、何も今回に限った話ではなく、たとえば第12話のときも同じでした。映画の撮影がうまくいかず、みんなの表情に暗雲が立ち込めていたときのことです。
このとき、ララのことを心配して真っ先に見たのはひかるであり、ララを見たのはひかるだけでした。
ひかるはいつだって、ララのことを見ているのです。
坂の下にいるララ、坂の上にいるひかるの対比構造
ひかる「ねぇララ、今日学校楽しかった?」
ララ 「う…うん。AIのおかげで失敗しなくてほっとしてる」
ララの表情からは、昨日までの笑顔が消えている。
そのことに気付いたひかるは、帰宅途中の坂道で、ララに声をかけます。
この時、ララは坂の下にいて、ひかるは坂の上にいました。
ララが坂の下=低いところにいたのは、ララの「落ち込み」を暗に示す心理描写です。
また、坂道は「そこを上ることの困難さ」を表現しているといえるでしょう。ララの抱えている悩みは気軽に解決できるものではなく、落ち込んでいる状態から這い上がるのはそう簡単ではないのだと示されています。
さらにいうならば、ひかるはララと同じ高さのところに立っていません。
ララは、異星人の集まる学校にたった一人で通っています。その勇気を、その恐怖を、その不安を、ひかるは気軽に「分かるよ」といえる立場にいるでしょうか? ララの気持ちは、すごく分かるよ、と?
残酷かもしれませんが、無理な話でしょう。
異星人であるララの悩みや苦しみの辛さは、ララにしか分かりません。
それはきっと、ひかるも分かっていたはずです。
だからこそ、ひかるは浅はかな共感や、知ったかぶりの寄り添いは、決してしませんでした。
では、どうしたかというと。
ララの悩みの深刻さを察したひかるは、その場で無理に解決しようとするのをやめました。
ひかるはいったん家に帰ってから、自分には何ができるかをじっくり考えます。そして、自分の力だけでは足りないと判断すると、えれなやまどかに手伝いを頼むのです。
いや、もう、涙ですよ。
ちょっと前までのひかるなら、事前にえれなやまどかに相談することを考えついたでしょうか?
自分の考えを事前に説明することが苦手で、本当は他の人のことを考えていても、誤解されてばかりだったひかる。
そんなひかるが、12話を経てここまで成長したのです。
今回の星奈ひかるの一連の動きは、非の打ち所がなく、何よりその成長ぶりには感涙せざるを得ませんでした。ほんと大好きですこのピンク。
本当に大切なことは何か?:異文化理解は目的ではなく手段
ひかる「ララ、どうして学校に行きたいって思ったの?」
ララ 「それは地球の文明を知るために…」
ひかる「ほんとに?」
ララ 「楽しそうだったルン。わたしも みんなと楽しく…なりたかった… ルン…」
学校に行きたいのはなぜ? と聞かれた時、ララは「地球の文明を知りたかったから」と答えた後で「学校が楽しそうだったから」と本音をこぼします。
このシーンは、「多様性の受容」をテーマのうちの1つとするスタプリにおいて、非常に重要な意味を含んでいます。
他者の価値観、他の文化を知ろうとすることは、多様性を受容するうえでは欠かせないことでしょう。
しかし、スタプリはあろうことか、その「他の文化を知りたかった」という動機に疑問符を投げかけるわけです。
ほんとに?
問われたララは、一呼吸おいて、答えます。
楽しそうだった、と。わたしも みんなと楽しくなりたかったのだ、と。
そうです。
他文化を知ること、未知なる存在に手を伸ばすことの強い原動力となるのは、「ワクワクする気持ち」「みんなと楽しくなりたいという気持ち」なのです。
ララは、みんなに迷惑をかけまいとするあまり、その気持ちを押し殺してしまった。みんなと楽しくなりたいと思っていたのに、自分自身が楽しむことを放棄してしまった。だからこそ、その表情から笑顔が消えてしまった。
凡庸な作品であれば、「異文化を理解することは大事ですよ」というメッセージを発信するだけで終わっていたことでしょう。
しかし、スタプリはそうではありません。
他の文化を理解することも大事だけど、何よりはまず、ワクワクする気持ちを大切にしてあげようね、何のために他文化を理解しようとしていたのかを忘れないでね、とスタプリは子ども達にいいます。
異文化の理解、多様性の受容は、あくまでも手段であり、目的ではないのです。
ララの正しい救い方
落ち込み続けるララに救いの手を差し伸べたのは、大親友の星奈ひかるでした。
この一連の会話が、またすごかったんですよ。
ひかるがララにかけた言葉を引用抜粋してみます。
- 別に失敗したっていいじゃん
- そんなの本当のララじゃないよ
- どうして学校に行きたいって思ったの?
- わたしね ララのこと学校で友達って紹介できるの 楽しみだったんだ
- この学校でララと一緒にこれから色んなことをするのが楽しみなんだよ!
- みんながね 最初の日直をわたしと一緒にやれば ララも安心だと思うって
分かるでしょうか?
まず、ひかるはララの気持ちを否定することは一度もしていません。
ありがちな励まし言葉としては、「気にしすぎだよ」「そんなふうに思わなくていいよ」といったものが挙げられますが、それらはその人の悩む気持ちを否定するものでもあります。
もっというならば、「あなたの悩んでいる原因は(良かれ悪かれ)あなたにある」ととられかねません。
星奈ひかるは、そのような誤解を与えかねない言葉は決して使わず、ララがどのような苦悩を抱えているのか、真摯に向き合います。
どの励まし言葉も、「(自分やみんなが)ありのままのララを認めている/受け入れている」ことを伝えようとしている点が共通しています。
ひかるはそうして、ララに突き刺さっている棘を、一本ずつ優しく抜いてあげるわけです。
そしてみんなから向けられていた視線が、悪意や敵意によるものではなく、心配によるものなのだと気付いたララは、そこでようやく笑顔を取り戻すわけです。
ララ、えれな、まどかの類似点
ララ、えれな、まどかの三人は、他人のことを大切に想うがために、自分のことを蔑ろにするという点が共通しているんですよね。
- ララは学校を楽しむことよりみんなに迷惑をかけない方を選んだ
- えれなは自分のことより兄弟の世話や家の仕事を優先している
- まどかは自分のことより父親の意向を優先している
今回、みんなに迷惑をかけてしまうと心配するララを、えれなとまどかが無言で見つめるシーンがありました。しかも1度ではなく、2度もです。
なぜ、えれなとまどかの2人の無言の表情が、2度もアップにされたのでしょうか?
これは私の推測ですが、あの表情には、ララを心配する気持ちだけではなく、ララの気持ちが分かるあまり、返す言葉を見つけ出せずにいる二人の複雑な心境も表現されていたのではないか、と思うのです。
えれなもまどかも、こんなことは口が裂けてもいえなかったはずです。
ララは、ありのままのララでいいんだよ。
自分のやりたいようにやればいいんだよ。
だなんて。
えれなやまどか自身、できていないのですから。
3人とひかるの相違点
ちなみに、ひかるについては無言の顔をアップされる描写はありませんでした。ひかるは明らかに、3人とは対照的な存在として描かれています。
そもそも、ひかるは他人のことを思いやれる優れた想像力の持ち主でありますが、自分のやりたいことも大切にしていますよね。
つまり、その点に関しては、ララ、えれな、まどかの3人とひかるは対比構造にあるのです。
そう考えると、今回のララを救えたのは、やっぱりひかるだけだったのだな、と思うのです。
スタプリ13話の感想考察まとめ(前編)
- 執拗なまでに描かれる周囲の視線の描写が秀逸
- ひかるは誰よりもララを見ている
- 坂の下にいるララ、坂の上にいるひかるの対比構造がお見事
- 今回ララを恐怖から救い出せたのはひかるだけだった
- 異文化理解よりも大切なことがある
- ひかるのララの救い方が非の打ち所がなくて尊い
- ララ、えれな、まどかは他者のことを想うあまり自己を蔑ろにする点が共通している
先週のスタプリ第12話の感想や考察、分析をした記事です。
運命に抗う星奈ひかるさんの勇姿には、涙せざるを得ませんでした。
www.konjikiblog.com
バケニャーンの正体について、設定や作中描写から考えた記事です。
徐々に正体が明かされつつあるようにも思いますが、次の出番が楽しみですね。
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