スタプリ17話、ワクワクもんでしたね。
ブルーキャット(マオ)の登場する回は普段とは違った緊張感があり、プリキュアメンバーもいつもとは違う顔を見せたりするので、とても好きです。
この記事はスター☆トゥインクルプリキュア17話の感想や考察、分析をしたものです。ネタバレ注意です。
※記事が長くなったので、今回も分割します。
- プリキュアが変身する理由
- プリキュアにとっての敵とは?
- 逡巡の時:わたしはプリキュアに変身すべきか?
- プリキュアの正義とは何か?
- 天宮えれなの正義:8話と17話の対比構造
- プリキュアはドラムスの人格を否定しない
- 異文化理解:ドラムスは金の亡者か?
- ドラムスは「思いやり」という異文化を知る
- スタプリ17話の感想考察まとめ
プリキュアが変身する理由
(ドラゴン兵団には勝てないという話の中で)
マオ 「でもプリキュアに変身すれば勝てるかも」
まどか「それは駄目です 悪者でもない方々を やっつけるわけにはいきません」
マオ 「あっそう」
プリキュアは何のために変身するのか?
それは「悪者」を相手にするためであり、「悪者ではない人」をやっつけるために変身するのは駄目だ、とまどかさんはいいます。
ドラゴン兵団はマオやみんなのことを追いかけていますが、それはあくまでも「ドラムスとの勝負」における彼らの責務であり仕事です。敵ではありません。
敵ではない者と戦うつもりはない。
戦う必要がないので、変身もしない。
では、プリキュアにとっての「敵」とは誰のことを指すのでしょうか?
プリキュアにとっての敵とは?
今回、スタプリのメンバーはノットレイダー達ではない相手を前に変身しました。
それがこの人。宇宙一の大富豪、ドラゴン家のドラ息子、ドラムス様。
なぜスタプリのメンバーは、ドラムスを相手に変身したのでしょうか?
それは、メンバーがドラムスのことを「悪者」と認定したからにほかありません。
では、なぜドラムスは「悪者」と認定されたのでしょうか?
それは、ドラムスがマオの「大切なもの」を壊そうとしたからです。
スタプリ17話にて、惑星レインボーの宝はマオにとって特別なものであることが明かされました。
しかし、ドラムスはそれを容赦なく壊そうとします。
奪われるくらいなら潰す、といって。
マオの大切なものを壊されてしまう。
そのことを瞬時に悟った星奈ひかるさんは、みんなにプリキュアに変身するよう呼び掛けるわけです。
※余談ですが、「(宝の価値も分からない者に)奪われるくらいなら潰す」って強烈ですよね。ヤンデレちっくなドラムスさん好き。
ちなみにドラムスさんの再登場については、ドラムスさん初登場のスタプリ15話で考察していましたが、意外と早かったですね。
逡巡の時:わたしはプリキュアに変身すべきか?
しかし、星奈ひかるさんがみんなに変身しようと呼び掛けたとき、ララやえれなさん、まどかさん達は即答はしません。
彼女たちは戸惑い、逡巡します。
それもそのはず、心のなかで、彼女たちはこう自問していたのです。
わたしは本当に変身すべきなのか?と。
このタイミングでプリキュアに変身するということは、ドラムスのことを「悪者」だと認定することを意味します。
前述したとおり、悪者相手でなければ変身しないのだまどかさんはいっています。
ドラムスと戦うということは、マオのことを助けるということを意味します。
しかし、マオは怪盗です。
これまで、人々の「大切なもの」を盗んできた存在です。
ドラムスは「悪者」ではないのでは?
どちらかというとマオが「悪者」なのでは?
このような考えが頭の中を駆け巡ったことでしょう。
単なる間と呼ぶにはあまりにも長い、意図的に引き延ばされた沈黙。
そして出した結論。
それは、力強くうなずき、プリキュアに変身するというものでした。
プリキュアの正義とは何か?
なぜスタプリの4人はこのとき変身したの?
なぜスタプリの4人はこのとき戦う決意を見せたの?
それは、ドラムスのことを「大切なものを奪う存在」だと認定したからです。
それは、マオが大切にしている惑星レインボーの宝をドラムスから守ろうとしたからです。
プリキュアの強さの源は「大切なものに対する想い」です。
逆にいえば、プリキュアは「大切なものに対する想い」を守るために戦うのです。
プリキュアにとっての敵は、「大切なものに対する想い」を踏みにじろうとする存在であり、このときのドラムスはまさに「敵」でした。
同時に、「大切なもの」を壊されようとしているマオは「守るべき存在」であったわけです。
マオが盗みという悪行を重ねてきた宇宙怪盗だとしても、人々の「大切なもの」を奪ってきたブルーキャットだとしても、そんなことは関係ありません。
心に抱く「大切なものに対する想い」が本物であるなら、その人が怪盗だろうが何だろうが関係ない。誰であろうと、その「想い」は守り抜く。
これこそが、スタプリにおける正義であるわけです。
天宮えれなの正義:8話と17話の対比構造
ところで、マオは盗んだ宝を貧しい者に分け与えているようですが、だからといってえれなさんはマオの盗みを認めたりはしません。
たとえ宇宙平和のためであろうとも、誰かの「笑顔」を奪うことは許されない。
それがえれなの正義です。(スタプリ8話)
同じく、盗人だろうが何だろうがえれなは「笑顔」を守る。
それがえれなの正義です。(スタプリ17話)
えれなさんの正義は「みんなの笑顔」を守ることであり、その「みんな」には、盗みという「悪いこと」=「人の大切なものを奪う」ことをしている宇宙怪盗すら含まれているのです。
スタプリ8話と17話は対になっています。
8話があったからこそ…いえ、8話があったにもかかわらず17話でえれなさんがマオの本当の笑顔を救おうとしたからこそ、私たち視聴者は大いなる感動を覚えざるを得なかったわけです。
※ちなみに、スタプリ8話も17話も土田豊氏が演出等を担当しています。道理で色々と「すごい」わけです。
プリキュアはドラムスの人格を否定しない
と、ここまで書きましたが、訂正があります。
私はプリキュアがドラムスのことを「悪者」「敵」と認定した、と書きましたが、これは分かりやすさを追求したもので、正確さに欠ける表現でした。
勝負がすべて片付いたとき、スタプリのメンバーはドラムスと普通に会話しています。
確かに、プリキュアはドラムスのことを「大切なものを奪う存在」「大切なものに対する想いを踏みにじる存在」として描かれましたが、スタプリのメンバーはドラムスの存在そのものを「許しがたい敵」と認定したわけではありませんし、ドラムスのことをやっつけようとしたわけでもありません。
プリキュアが拒んだのは、ドラムスの人格ではなく、「大切なもの」を壊そうとするドラムスの行為です。
プリキュアはドラムスを倒そうとしたわけではなく、マオの「大切なもの」を守ろうとしただけです。
だからこそ、すべてが終わったあと、スタプリのメンバーは何の躊躇いもなくドラムスに近づき、にこやかに会話を交わすわけです。
罪を憎んで人を憎まず。
プリキュアは誰かを倒すために戦うのではありません。
大切なものを、大切なものに対する想いを守るために戦うのです。
私はスタプリのこういうところが大好きです。
ちなみに、「罪を憎んで人を憎まず」の精神はスタプリ11話でも見られました。
カッパードさんたちノットレイダーに精神攻撃を受け、地球を侵略してやろうといわれながらも、星奈ひかるさんの放った言葉は「許さない!」ではなく、「嫌だ!」「守る」でした。
ここに、スタプリの目指す終着点が示されているような気もします。
異文化理解:ドラムスは金の亡者か?
ドラムスさんは事あるごとに「金にものをいわせて」という言葉を使っていました。そしてプリキュアに助けられた直後、真っ先に彼が発したのは「いくらだ?」です。
ドラムス「助けてもらった礼をする いくらだ?」
金、金、金。
宇宙一の大富豪たるドラムスさんは、執拗なほど「金」の話をします。
しかし、そんなドラムスさんのことを「金の亡者」と表現するには、やや疑問を覚えずにはいられません。
というのも、確かにドラムスさんは物事を「金」で解決しがちですが、それは彼の思想というよりは、ゼニー星で共有されている一種の「文化」だからです。
宇宙星空連合に属さないゼニー星は、金がものをいう無法地帯です。
無法ということは、法の支配を受けていないということです。
法の支配を受けていないということは、国民は法律ではない別のものに支配されているということです。
では、別のものとは何でしょうか?
それは、力です。
もっというと、それは権力であり、財力。金です。
法の支配のない世界で取引をするには、何か他のもので信頼を得なければなりません。手っ取り早く、保存性もあり、流通性もある「信頼」、それこそが金であり、だからこそ金がゼニー星を支配しているわけです。
つい、私たち地球人(日本人?)は「金=汚いもの」という見方をしてしまいがちですが、ゼニー星において、 金は「唯一信頼できる証」なわけです。
これはある意味、ゼニー星の文化ともいえましょう。
注意深く見ていると、スタプリのメンバーたちはみな、ドラムスさんのことを「金の亡者」「汚い」というような否定的な発言はしていませんし、「いくらだ?」というドラムスさんに対して嫌悪感を抱く描写もありません(あまりの金持ちぶりに驚きを通り越して呆れることはありますが)。
また、ドラムスさんの「いくらだ?」という言葉も彼にとっては素の発言であり、私たちが値札のついていない商品を指差して「いくらですか?」と問いかけるのと同じテンションです。そこには醜悪さが含まれないよう配慮されていることが分かります。
金のやり取りを重視するゼニー星人のドラムスを「金の亡者」と蔑むことは、ゼニー星の文化を批判することにも繋がり、「異文化理解」というスタプリのテーマに真っ向から反対するものになってしまいます。
お金は汚いものではないですし、ドラムスさんは金の亡者ではないのです。
ドラムスは「思いやり」という異文化を知る
さて、そんなドラムスさんですが、彼はここでプリキュアたちと交流することで、異文化に触れることになります。
それは、「思いやり」という文化です。
今回、お金のやり取りではなく、心のやり取りを知ったドラムスさん。
プリキュアたちの思いやり、そして優しさという異文化に触れたドラムスさんは、そこでどのようなことを感じ取ったのでしょうか?
ひとつ確かなのは、文化も人種もすべて異なるひかるさんたち地球人とドラムスたちゼニー星人が、「星座のように繋がった」ということです。
スタプリはこうして少しずつ、しかし確実に、異文化と手を繋ぎ、星座を作っていきます。
最後にできる星座。それはきっと、素敵なものになるでしょう。
私はその星座を見られるのが、楽しみでしかたありません。
スタプリ17話の感想考察まとめ
- プリキュアが戦う=変身するのは「大切なものに対する想い」を守るため
- プリキュアにとっての敵は「大切なものを奪う」存在
- 自分は変身すべきかと逡巡する描写があまりにも秀逸
- スタプリ8話と17話が対比になっていてすごい
- えれなさんの正義は敵をも含めた「みんなの笑顔」を守ること
- ドラムスさんの金に対する想いはゼニー星の文化
前回スタプリ16話の感想や考察、分析です。
注意深く見ていくと、まどかパパがあまりにも尊くてしにかけました。
一見すると分かりにくいまどかパパの魅力をぜひ堪能してほしいです。
マオの正体が気になる方はこちらの記事をどうぞ。
作中描写を紐解き、徹敵的に考察したものですが、今回の話で色々と明るみになったこともありますね。後日、答え合わせと新たな考察もしたいと思います。
あ、ところで、ずっと我慢していたことをいってもいいですか?
スタプリ、神回多すぎ!
何なんですかね、スタプリのこの「すさまじさ」は。
スタプリ17話に至っては、「プリキュアの戦う意味とは?」というシリアスど真ん中ストレートの球を投げつつ、全体的にはギャグのある楽しい話に仕上がっていますし、テンポもよくスピード感もバツグンでしたし、今後に向けた伏線も張り巡らされていて、もう言葉も出ません(出てる)
17話については、まだまだ語り足りないことが無数にあり、キーボードをたたく音が一向にやむ気配を見せません。
スタプリ17話の感想考察(後編)を書きました。(2019年5月28日)
マオを救う決め手となるのは星奈ひかるさんだと予想しつつ、ブルーキャットとまどかさんの対比構造についても考察しています。
長々と読んでいただき、誠にありがとうございました。