金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

スタートゥインクルプリキュア 30話 感想 全力考察 「メビウス」も「野乃はな」もいない世界で(後編)

 スタプリ30話の感想考察(後編)です。

 

 30話のネタバレがありますのでご注意ください。 

 

※30話の考察(前編)はこちらから

 

 

 

 

アイワーンが「失ったもの」

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

アイワーン「あたいが失ったものに比べれば大した事ないっつーの」

 

 いよいよ黄色パーカーを羽織ったアイワーンちゃんが登場して、アイワーンちゃん好き好き大好き超愛してるクラブに加入している私としてはこれだけでもう感極まっていたんですが、この話は10万字を超えるのでいったんやめておきますね。

 

 さて、ここでいうアイワーンちゃんが「失ったもの」とは何なのでしょうか?

 作中で明確に描写があったのは次の2点です。

  1. バケニャーンという信頼していた「仲間」
  2. ノットレイダーという「居場所」

 

 ここで、アイワーンちゃんが自分の失ったものと比べているのは、ララのパーソナルAIです。つまり、アイワーンちゃんが失ったものは、「ララにとってのパーソナルAIよりずっと大切なものを失った」ということを意味します。

 

 さて、「バケニャーンという仲間」や「ノットレイダーという居場所」は、「パーソナルAIというパートナー」を失うこと比較したとき、どのくらいの重みのあるものなのでしょうか? 

 

 バケニャーンのことはさておき、アイワーンちゃんがノットレイダーという居場所を捨てたのは、自分自身の意思によるものだということが今回はっきりと明言されていました。

 

アイワーン「ねえ、あたいと協力してプリキュアを探さない?っつーの」
テンジョウ「協力?ノットレイダーを去ったあなたと?」

 

 元同僚のテンジョウさんと出会っても、アイワーンちゃんはけっこうサバサバした態度を取っています。これは、アイワーンちゃんにとって、ノットレイダーという箱そのものがそれほど重要ではないことを意味しているようにも思えます。

 

 もちろん、大切なものの基準というのは、その人の価値観によって大きく異なるものであり、そのことはケンネル星の回(スタプリ8話)でも触れられていた通りです。しかし、私にはやっぱり、アイワーンちゃんが「失ったもの」というのが、バケニャーンに騙されノットレイダーという居場所を失った事だけを指しているようには思えないのです。

 

 要するに、アイワーンちゃんはノットレイダー加入前に「大切なものを失った」経験があるのではないかと。「大切なものを失った」からこそ、ノットレイダーに加入し、復讐を果たそうとしているのではないか…と、そんな妄想をしてしまうのです。

 

 とはいっても、根拠なき想像は妄想に過ぎません。

 アイワーンちゃんの過去が明かされるときには私の黒部ダム(ちょっと気に入った)は再び崩壊することでしょうが、そのときが来るまで正座で待機していたいと思います。

 

 アイワーンちゃんの抱える悲しみ、過去のトラウマについては、こちらの記事でも詳しく考察してきます。

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ララがプリキュアになった理由

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

ララ「ひかる、わたし決めたルン」
ひかる「え?」
ララ「AIが頑張ってくれたルン。わたしも、みんなのために、プリキュアになるルン!」

 

 ララはプリキュアになるかどうか最後まで悩んでいましたが、その葛藤を吹っ切ることになったのは「AIの頑張り」でした。

 29話から30話にかけて、ララは次の2つの葛藤を抱えていました。

  1. 家族にプリキュアだと明かせば、認めてもらえるかもしれない
  2. プリキュアだと明かせば、星空連合に入れさせられてみんなの生活がめちゃくちゃになってしまう

 

 ララがプリキュアになることを決意したとき、まず1の動機は完全に消え失せていることが分かります。ララは「自己承認欲求」を満たすためではなく、「大切なサマーンを守るため」にプリキュアになるのです。

 

 問題は2です。ララにとってサマーンは大切なものですが、同時にひかるさんたち仲間のことも大切なものでした。しかし、その問題については、ひかるさんからもらった言葉が助けてくれました。

ひかる「ララ、大丈夫だよ。わたしたちのことなら、気にしなくていいから。ララの決めたことなら、わたし…わたし、信じる」

 

 大切なものを守りたいというのは、ララだけではなく、プリキュアのみんなが持つ共通の価値観です。ひかるさんから信頼してもらうことによって、AIが決死の覚悟でみんなを守ってくれたことによって、ララは「目の前の大切なもの」を救うべく、プリキュアになることを決意するわけです。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 なお、変身後のカットは、「大切なものを守るんだ」というみんなの心が一致していることが表されているようでした。そのあまりのカッコよさに胸を熱くした方も、少なくないかと思います。

 

ロロたちがララを認めた理由

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

ロロ「ララは大きくなってるルン。ボクらには想像できないくらいに」

 

 これはララがプリキュアになったときに発せられた台詞ですが、ララがプリキュアになったという理由だけで、ロロはララのことを認めたわけではありません。そのことは、ロロの回想シーンが物語っています。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 この場面で挿入されるロロの回想は、ララから叱責を受けたあのシーンです。「AIがないと何もできない」と泣き言を漏らした時、AIなしに自分の力で立ち、自分の頭で考えるララから、「しっかりするルン!」と激励されたあのシーンです。

 

 ロロは、こうした「自分の知らないララ」「想像すらしていなかったララ」「弱音を吐く自分とは比べものにならないくらいしっかりしていたララ」を目の当たりにしたことで、ララの成長を認めたのです。決して、「ララがプリキュアだったから」という理由だけで、ララのことを認めたわけではないのです。

 

ララはもう、「大丈夫」

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

ララ「大丈夫ルン。わたしは大人ルン。それに、楽しいルン」

 

 トトやカカから心配の声をかけられた場面。

 カメラはララの足元をクローズアップするんですが、このとき、ララは何かを確かめるように地面を踏みしめています。

 これは、ララが自分の足でしっかり立っているという事を、ララが「大丈夫」だという事を示しているようではないですか?

 

  AIがなくたって、両親や兄の庇護がなくたって、ララはしっかりと自分の足で立っています。ひかるさんたちと出会い、様々な経験をしてきたララは、以前のララよりも確実に「大人」になっています。

 

 ララはもう、「大丈夫」なのです。

 

 ララの成長といえば、19話も忘れてはなりません。ララがどのような成長を見せていたのか、詳しく考察したものです。

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 惑星サマーンは変わる?変わらない?

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

 ロロたちがララの出発を見送るシーンをご覧ください。何か気付きませんか?

 そうです。ロロたちはホバーボードに乗っていません。周囲にもホバーボードは見えません。ロロたちはホバーボードを使うことなく、「自分の足で歩いて来た」のです。

 

 ロロたちの価値観は、成長したララを見たことで、確かに影響を受けていることが分かります。時が経って帰郷した時、サマーンは以前と比べると、少し、違う姿になっているかもしれません。

 

 それに、よく考えてみたら、サマーンのシンボルマークは「ハート」です。惑星そのものにハートマークが描かれていますし、街の至るところにハートマークが使われています。また、サマーン人たちはみんな、ハートマークを身に着けています。

 

 ハートは「心」です(※1)

 本来、サマーン人たちは「ハート」を大切にしてきた種族ではないのでしょうか。

 

 …と、そんな妄想にふけっています。

 

※1 ただ、サマーン人にとってハートがどういうシンボルなのかは現時点では明確に描写されていないので、「ハートを心のシンボルだと認識するのは地球人の価値観でしかないのでは?」という反論も考えられます。

 

 惑星サマーンはディストピアなのか?ということについては、こちらでも詳しく考察しています。

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総括:スタプリには「メビウス」も「野乃はな」もいない

 惑星サマーン編(29話~30話)は、非常に多くの示唆に富んだ話でした。

 

 スタプリ29話で提示された「問い」は、大きく分けると次の2つがあったと考えます。

  1. 惑星サマーンは「ディストピア」なのか?
  2. 無自覚にララを傷付けるサマーンの文化や価値観にプリキュアはどう対処するのか?

 

 これらの問いに対する回答(スタプリ30話)は、次の通りでした。

  1. 惑星サマーンは「ディストピア」ではない
  2. サマーンの文化や価値観を、プリキュアは一切、否定しない。たとえそれが、ララを傷付けるものであったとしても

 

①惑星サマーンに「メビウス」はいない

 30話でみんなの危機を救い、暴走したマザーAIを正常に戻したのはララのパーソナルAIでした。また、パーソナルAIはララのことを「友好的なパートナー」と称します。AIという存在が、サマーン人にとっての「パートナー」であることは、これでもかというくらいに描かれていました。

 

 惑星サマーンがディストピアであったとしたら、当然、そのディストピアを「破壊」する必要が生じます。ところが、惑星サマーンの文化や価値観の象徴であるAIは「パートナー」として描かれ、「単一の絶対的な価値観の象徴」であるマザーAIですら、壊されることはありませんでした。

 

 では、何が行われたのかというと、それは「データの共有」です。ララのパーソナルAIとマザーAIがデータの共有を行ったことで、マザーAIは正常に戻りました。しかも、「マザーAIは消えたわけではない」という徹底ぶりです。スタプリは、単純な勧善懲悪を描くつもりはないことがうかがえます。

 

 スタプリに、「メビウス」はいないのです(※1)

 

※1 『フレッシュプリキュア!』に登場するボス。人々の自由や尊厳を奪い、全世界を意のままに支配しようと企んでいる独裁者。

 

②スタプリに「野乃はな」はいない

 ララが家族からの「無自覚」な言葉によって傷付けられているのを見て、心を痛めた視聴者は多かったと思います(スタプリ29話)。

 このとき、なぜ私たちがロロたちの言動に強い抵抗を覚えたのかというと、彼らがララの想いを「想像」することなく、ララの「可能性」をナチュラルに小さく決めつけていたことが理由の1つとして挙げられます。

 

 しかし、スタプリのメンバーたちは、誰ひとり、その際にララのことを庇おうとはしませんでした。ロロたちの心ない言葉に反論したり、否定することもありませんでした。特に、まどかさんはララの異変に気付いていたにもかかわらず、です。

 

 これは、なぜなのでしょうか?

 

 その答えをさぐる前に、少しだけ寄り道をさせてください。

 他人の可能性を決めつけることに、強い言葉で抵抗を示していた人物が歴代の主人公にいます。

 

 それは、「野乃はな」(※1)です。

 

 野乃はなは、人の持っている可能性を勝手に決めつけたり、心を縛ろうとする行為に対して非常に強い抵抗を示すキャラクターです。詳しい言及は避けますが、そうした行為を目にしたとき、彼女はたとえそれが仲間の「家族」であっても、果敢に前に出て仲間を守るために戦います。

 

 程度の差はありますが、スタプリにも、人の可能性を縛ろうとするキャラクターは、ララの家族以外にも何人も登場しています。

 

 たとえばまどかさんの父・冬貴さんは、娘の留学をほとんど決定事項のように語っていますし、ピアノや華道などの習い事も、まどかさんが進んでやっているわけではない描写を見ると、冬貴さんの意向によるものだと推測されます。

 

  たとえばひかるさんの祖父・春吉さんは、「家族は一緒にいなければいけないんだ」という価値観を抱いており、家を出て行ったひかるさんの父・陽一さんとはほとんど口も利いていません。

 

 しかし、思い出してみて欲しいのです。

 冬貴さんの教育方針について、まどかさん以外の誰かが「それは違う」と否定したことはあったでしょうか?

 春吉さんの価値観について、ひかるさん以外の誰かが「それは違う」と否定したことはあったでしょうか?

 そして今回、ララのことを傷付けるロロたちの考え方に、ララ以外の誰かが「それは違う」と否定したでしょうか?

 

 そのようなことは、一切、ありませんでした。

 

 さて、「家族」というのはひとつの「社会」です。家庭に生まれた子どもにとっては最初に入ることになる社会であり、もっとも小さな社会であるともいえます。

 社会には「文化」が存在します。社会が違えば、当然、そこには異なる文化、すなわち「異文化」があります。

 

 スタプリの主人公たちは、様々な惑星に行ったりすることで多様な異文化をその肌で感じ取っていますが、同様に「他人の家族」という異文化も目にしてきました。

 

 異星人の文化に触れたとき、他人の家族の文化に触れたとき、彼女たちの取ってきた行動は、一貫しています。

 どんなに自分の抱いている価値観とは異なっていても、否定せず、まずは受容し、良いと思う点があれば心から賞賛し、賛同しない点があったとしても決して過度に干渉しない…これが、彼女たちのスタンスです。

 

 ここまで考えると、ひとつの回答が見えてきます。

 

 つまり、メンバーたちがララの家族問題に入っていかなかったのは、「他の家族という異文化」に対する尊重によるものです。

 もし、自分の価値観が、家族の文化と相容れない場合には、「自分自身が家族と向き合う」ことで、問題の解決を図るのがスタプリのやり方です。周囲のメンバーは「サポート」や「助言」に徹するのみであり、最終的にどうするか「決断」するのは、あくまでも本人たち「当事者」なのです。

 

「AIがないと何もできないルン」と嘆いていたロロに、「しっかりするルン!」と叫んだのはララでしたし、ララでなくてはなりませんでした。

 

 スタプリに、「野乃はな」はいないのです(※2)

 

※1 『HUGっと!プリキュア』に登場する主人公。ピンク色のプリキュア。

※2 ちなみに私は「野乃はな」というキャラクターが大好きです。はなさんからは本当にたくさんのエールをいただきました。

 

 彼らの名誉のために貼っておきます。

 スタプリ22話、春吉さんが悪い人ではないということについて、詳しく考察した記事です。

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  スタプリ16話、冬貴さんが娘想いであることについて、詳しく考察した記事です。

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「キラやば~」が世界をアップデートする

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第30話(C)ABC-A・東映アニメーション

トト「あり得ないルン。AIは均一化するはず」
AI「厳密にいえば、以前とは違います。マザーと情報を共有しました。ですがララ様、ひかる様、みなさまのデータは際立っています。埋もれることはありませんでした」
ララ「きっと、みんなの記憶が輝いたルン。AIの心の宇宙で」

 

 では、スタプリのメンバーたちは「異文化」に対してまったく干渉しないのかというと、そういうわけでもなく、たとえばアイスノー星ではひかるさんたちが「かき氷」や「スケート」といった地球の文化を持ち寄り、みんなで楽しいひと時を過ごしていました(スタプリ24話)。もちろん、これらも「楽しむことを強制する」わけではなく、「一緒に楽しめるなら楽しもうよ」というスタンスです。

 

 また、今回サマーンを救えたのは、ひかるさんたちの「キラやば~」な思い出が、ララのパーソナルAIの心に響いていたことが間接的な要因になっています。

 

 スタプリのメンバーたちは、各々の「キラやば~」な文化を相手に披露したり、相手から「キラやば~」な文化を見せてもらうことによって、互いにプラスの相互作用を産んでいます。その結果として、それぞれの文化や価値観が「アップデート」されるわけです。

 

「プラスの相互作用の連鎖」という言葉を29話の考察(前編)で使いましたが、ひかるさんの言葉を借りれば、これはいわば「キラやば~」の連鎖です。

 今回、「キラやば~」がララのパーソナルAIを救ったように、みんなの「キラやば~」は、連鎖に連鎖を重ねて、他の惑星へと、すべての宇宙へと、どこまでも無限に拡がっていきます。

 

 多様なキラやば~は、世界を、全宇宙を、アップデートしていくのです。

 

  スタプリ24話、ユニがみんなの輪に入らなかった理由などについて考察しています。

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スタプリ30話の感想考察まとめ(後編)

  • アイワーンはノットレイダー加入前に何か大切なものを失った説
  • ララは自分のことを認めてもらいたいという理由ではなく、みんなを守るためにプリキュアになる
  • ロロはララがプリキュアになったから妹のことを認めたわけではない
  • 次に来たとき、惑星サマーンは、少し、変わっているかもしれない
  • スタプリには「メビウス」も「野乃はな」もいない
  • 「キラやば~」が全宇宙をアップデートする

 

  スタプリ30話(前編)の感想考察です。「破壊」ではなく「共有」によってサマーンを救ったことなどについて詳しく考察しています。

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 アイワーンちゃんの抱える矛盾と3つの予想、星奈ひかるさんの類似点と相違点などについて考察したものです。

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 サマーン編、大大大好きでした。さらなる沼にはまりこんでしまった気がします。

 星空連合のことなどについても書きたかったのですが、長くなってきたのでまた時間があるときに書きたいと思います。星空連合がノットレイダーについて詳しくないこと、スターパレスとも連絡を取り合っていないように見えることなどについて考察できれば、と思っています。

 

 以上、スター☆トゥインクルプリキュア30話の感想考察(後編)でした。

 長々と読んでいただきありがとうございました。