スタプリ36話、ちょっとユニがズルいくらいかわいかったですね。そしてアイワーンちゃんのアの字も出てこなかったにもかかわらず圧倒的な存在感をアッピルしていたアイワーンちゃん(大好き)
この記事はスター☆トゥインクルプリキュア36話の感想考察をしたものです。36話のネタバレを含みますので未視聴のかたはお気をつけください。
- スタプリはマザーAIを否定しない
- ユニの怪盗行為を否定した理由
- 「どっちもほんとだよ」の深さ
- サングラスは本音を隠す
- アンは映画の宣伝をする
- 「遅いニャン」は信頼の証:25話との対比
- ユニは本音を言うのが人より少し苦手なだけです
- スタプリ36話の感想考察まとめ(前編)
スタプリはマザーAIを否定しない
AI「報告があります。トゥインクルイマジネーションを探すため、以前共有したマザーAIのデータベースを調べたところ、宇宙マフィアのドン・オクトーが惑星レインボーの指輪を手に入れたというニュースを見つけました」
今回、会話の中でさり気なくマザーAIが登場していたのも良かったですね。
ララのパーソナルAIが惑星レインボーの指輪を見つけられたのは、「以前共有したマザーAIのデータベース」のおかげです。つまり、マザーとデータの共有していなければ、レインボーの指輪は取り戻せなかったかもしれないのです。
マザーAIの登場する惑星サマーン編(スタプリ29話~30話)は、主にララのパーソナルAIが活躍する物語であり、マザーAIはどうしてもその「負の部分」が目立ってしまっていたのですが(住民たちが頼り切りになりすぎていたり、アイワーンに乗っ取られるとサマーン人の生活がいとも容易く崩壊するなど)、スタプリは決してマザーAIを否定しているわけではありません(※1)
今回、会話の中で「マザーAI」の言葉が登場したのは、「ララのパーソナルAIの方がマザーAIよりも優れている」という図式を改めて否定するものでもあります。スタプリはそうした「単純な優劣」や「一方的な関係」を描くのではなく、一貫して、「互いに影響を与え合う関係」、すなわち「対話(価値観の共有)による相互作用」をストーリー全体を通して描いている作品です。
上記のシーンで「マザーAIがパーソナルAIにも良い影響を与えいたこと」を明確に示していたのには、改めてそのことを明示する意図があったのだと考えます。
※1 スタプリがマザーAIを否定していない理由、データの「共有」によってサマーンが救われた30話の考察です。
ユニの怪盗行為を否定した理由
ユニ「言いたいことがあるなら言えば?」
ひかる「最初に言ったよ! ドラムスさんのときもだけど、盗むなんて駄目だよ!」
ユニ「あれは惑星レインボーのものよ。それに、素直にお願いして返してくれる相手だと思ってるの?」
ひかる「やってみなくちゃわかんないじゃん!」
ユニ「やらなくてもわかるでしょ!」
ノットレイダー以外の人物の行動に対して「駄目だよ!」と言うのは、スタプリではけっこう珍しいことです。
「多様性」を描くうえで、「あなたの考えは駄目だ」という台詞を出すのは諸刃の剣です。下手な出し方をしてしまえば、作中における「多様性」が「特定の価値観に基づく恣意的なもの」に成り下がってしまいかねないからです。
しかし、今回、惑星レインボーの指輪を取り戻すために再び「怪盗」になろうとしているユニに対して、ひかるさんは「駄目だよ!」とハッキリと言い、他のメンバーたちもこれに同調しました。
ユニ「あなたたちも反対なんでしょう?」
えれな「うん」
まどか「良いやり方とは思えません」
ララ「ルン」
なぜ、ひかるさんたちはユニの怪盗行為を否定したのでしょうか?
ひかるさんたちがユニの怪盗行為を否定した今回の展開は、物語の初めの方から宿命づけられていたとも言えます。ここで、いま一度、ケンネル星のエピソードを思い出してみましょう(スタプリ8話)
ケンネル星で描かれていたことは、ざっくり言ってしまえば「どんな理由があっても人の大切なものを奪っていい理由にはならない」というものです。えれなさんは「宇宙平和」という崇高な目的よりも、「聖なる骨」を大切にするドギーたちの想いを尊重しました。
この考え方は、ノットレイダーたちに対するアンチテーゼであると同時に、ユニの怪盗行為に対するアンチテーゼでもあります。ユニの怪盗行為に対してメンバーたちが「NO」を突きつけるのは、起きるべくして起きたことなのです。
※ブルーキャットの犯した罪について考察です。
こちらはスタプリ8話、プリキュアが示した正義とは何か?という考察です。サムネは功利主義を体系化したジェレミ・ベンサム(1748年-1832年)です。
「どっちもほんとだよ」の深さ
ユニ「分かったわ。だったら無理に付き合わなくてもいい。ここまで来れただけで十分だし、あとはわたし一人でやるから」
ひかる「待って、一人は危ないよ」
ユニ「どっちニャン!」
ひかる「どっちもほんとの気持ちだよ。反対するのも、心配するのも。ユニは、ほんとにそれがいいって思ってるの?」
ユニの怪盗行為を否定しながらも、一人で行かせようとしないひかるさんに対して、ユニは我慢できずに「どっちニャン!」と苛立ちます。それに対するひかるさんの回答は、「どっちもほんとの気持ちだよ」というものです。
ここでの二人の会話は、何を意味していたのでしょうか?
まず、ユニが怒った理由を考えてみます。ユニとしては、怪盗行為を否定されて面白くないと思っているところに、今度は自分を心配する言葉を投げかけられて、「どっち」なのかと怒っています。
想像するに、ユニは怪盗行為を否定されたとき、「自分の価値観を否定された」と感じたのではないでしょうか。だからこそ、いったんは否定された後に、今度は肯定的な言葉を受け、「どっち」なのかと苛立っているわけです。
それに対して、ひかるさんは、「どっちもほんとだよ」と言います。
ここでひかるさんが伝えようとしているメッセージは、「あなたのすることには反対だけれど、あなたのことは大切なんだよ」というものです。要するに、ひかるさんはユニの価値観を否定しつつも、ユニの存在を肯定しているわけです。
ここで注目すべきは、自分とは相容れない価値観を持つユニのことを「大切な仲間」だとひかるさんが考えている点です。
スタプリは、これまでのエピソードにおいて、「異なる価値観を持っている者同士は決して分かり合えない」という言説を否定してきました(サボローの登場するスタプリ34話など)。ひかるさんもまた、ユニの怪盗に関する考え方については反対の意見を持っていますが、だからといってユニの存在そのものを否定したり、離れていったりすることはありません。そういう意味では、ひかるさんたちの言動(怪盗行為を否定しつつユニと仲良くする)は一貫しています。
「どっちもほんとだよ」という言葉には、物事を単純化しようとする人間の心理に抗い、複雑な想いを複雑な状態のまま受け入れるひかるさんの「深み」が如実に表れてたと思います。
サングラスは本音を隠す
ひかるさんから、「ユニはほんとにそれがいいと思ってるの?」と問われたとき、サングラスの奥の瞳がカメラに映ります。これまでの話でもそうでしたが、ブルーキャットのサングラスは彼女の本心を隠すための小道具になっており、今回も同様の使われ方をしています。
36話において、ユニのサングラスが透ける場面はもう1度ありました。それが次のカットです。
アン「せっかくなので言わせてもらうであります。盗みはよくないでありますよ。騙されたり、自分のものを盗られた人の気持ちを考えるであります」
アンの台詞を受けて、ユニは前半パートでひかるさんから言われたこと、「盗みはだめだよ」という言葉を思いだします。このシーンでは、アンの台詞はユニの心に突き刺さったことが表現されています。
ユニのサングラスがいかに素晴らしい演出となっているのかについては、こちらの記事でも書いています。スタプリ20話、30分が3秒のような回です。
アンは映画の宣伝をする
アン「早く任務を終わらせて、辺境で希少種を狙うハンターや、宇宙怪盗ブルーキャットみたいなブルーキャットをばんばん捕まえに行きたいであります」
早く希少種を狙うハンターやブルーキャットを捕まえに行きたいと言うアン。両方の願いがあと数日ほどでいっぺんに叶いそうで何よりです(※1)
ちなみに後半パートでは、名状しがたいミラクルライトのようなものを取り出していましたが、あれはいったい何だったんでしょうね。うーん、謎です。
※1 スタプリの秋映画、2019年10月19日(土)ロードショーです。
皆さんはもう前売り券を購入しましたか? 私は買いました。早く観たくてしかたないです。ワクワク。
参考リンク:
ストーリー | 映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて
「遅いニャン」は信頼の証:25話との対比
捕らえられたお仕置き部屋の扉が開くとき、震えるアンを見たユニはつぶやきます。
ユニ「お仕置きの時間かしらね」
しかし、ドアが開いた先にいたのは、ドン・オクトーではなく、ひかるさんたちでした。
このときのユニの反応がまた良かったですね。自分を助けに来てくれたひかるさんたちを前にして、まずは驚き、次に嬉しさを、最後に素直ではない言葉を返します。
ユニ「遅いニャン」
ここで思い出すのは、ひかるさんたちが自分のことを助けに来るなんて想像だにしていなかったころのユニです。スタプリ25話、夏祭りの回では、ユニはまだひかるさんたちの輪に入りきっていません。ひとりで夏祭りを抜け出したところでテンジョウさんとエンカウントし、ピンチに陥ってしまいます。その際、ひかるさんたちが助けに来たときには、助けに来てもらえるとは思っていなかったという反応を示しています。
ユニの心境は下記のとおりだと思われます。
- プリキュアメンバーが助けに来るとは思っていない(スタプリ25話)
- プリキュアメンバーが助けに来ると信じている(スタプリ36話)
ユニの「遅いニャン」という言葉には、メンバーたちが助けに来ることを信じていたことの何よりの証であり、「助けに来てくれてありがとう」という言葉を素直に口にできないからこそ、「遅いニャン(助けに来てくれるのを信じて待っていたわよ)」という言葉を用いたのでしょう。
36話のこのシーンは、25話との対比にもなっているのです。
ユニは本音を言うのが人より少し苦手なだけです
テンジョウ「あらあら、優しいこと。でも、甘いわね。バケニャーンのときは食えない相手だったけど、プリキュアといるうちに、弱くなったんじゃない?」
テンジョウさんから盛大にディスられたユニは、一瞬、言葉を失います。
そんなユニに代わって反論したのが、4人のメンバーたちです。
スター「優しくて何がいけないの?」
ララ「あなたたちが気付いてないだけルン!」
ソレイユ「コスモはね、誰よりも他人を思いやる心を持ってる! 素直じゃないけどね」
ユニ「はあ...?」
セレーネ「本音を言うのが人より少し、苦手なだけです!」
ユニ「ちょっと...!」
スター「とにかくコスモは、誰よりも優しくて、とっても、とーっても、良い子なんだ!」
ユニ「ニャン…」
メンバーたちから褒められまくったユニは思わず赤面してしまいます。このときのユニの表情がとてもとてもかわいいのでちょっと見てください。
いや~反則ですね
ちょっとユニさん、かわいすぎてズルいです。
スタプリはテンジョウを否定し、那須ゆみかは否定しない
ユニのかわいさと魅力について語り始めると長くなりそうなのでいったん置いて、ここでララの発言に注目してみます。
ララ「あなたたちが気付いてないだけルン!」
テンジョウさんの「あらあら優しいこと。(中略)プリキュアといるうちに弱くなったんじゃない?」という台詞に対して、ララは「気付いていないだけ」だと指摘しています。何がどう「気付いていない」のかというと、こういうことだと思われます。
<テンジョウの主張>
- 「バケニャーンのときは強かったが、プリキュアといるうちに優しくなり弱くなった(=バケニャーン時代は優しくなかった)」
<ララたちの主張>
- 「テンジョウたちが気付いていないだけで、ユニはもともと優しい心を持っている(=自分たちと一緒にいることで優しくなったのではなく、もともと優しい心の持ち主である)」
ひかるさんたちが怪盗行為を行うユニのことを大切な仲間だと考えているのは、ユニの持っている「優しい心」を理解しているからなのでしょう。
ところで、テンジョウさんの問いかけを聞いたとき、まどかさんに対して「勝つために友達なんていらない」「あなた弱くなったね」と言った女の子のことを思いだした方もいるのではないでしょうか。
それは、那須ゆみかさんです(スタプリ16話)
スタプリ16話は、「最後に頼れるのは自分だけ」だという現実の側面を描きつつも、「みんながいてくれたからこそ、(まどかは)最後まで自分のことを信じることができた」ということが描かれた物語です。
16話の「弱くなった(by那須)」と36話の「弱くなった(byテンジョウ)」は、一見すると同じような意味にも見えますが、両者の扱いには差異があります。実際、まどかさんは那須さんのことは否定しない一方、テンジョウさんのことは強く否定しています。この違いは何なのでしょう?
まず前提として、まどかさんたちスタプリのプリキュアは、「他人を想う気持ち」≒「想像力」を何よりも大切にしており、これを否定する人物(ノットレイダー)に対しては強い抵抗を示してきました。
今回のテンジョウさんの主張は「他人を想うことが駄目」=「優しさの否定」です。
一方、那須さんの主張は「他人に頼ろうとすることが駄目」=「甘えの否定」であり、人の想いそのものを否定するものではありません。
要するに、スタプリがテンジョウさんの価値観を否定したのは、テンジョウさんがユニの「他人を想う気持ち」を否定したからであり、逆に那須さんの価値観を否定しなかったのは、那須さんが「他人を想う気持ち」そのものを否定しているわけではなかったからだと考えられます。
※スタプリ16話、那須ゆみかの吐いた嘘などについての考察をしています。
スタプリ36話の感想考察まとめ(前編)
- スタプリはマザーAIを否定しない
- メンバーはユニの怪盗行為を否定する
- サングラスは本音を隠すアイテム
- ユニの「遅いニャン」は信頼の証で25話と対になっている
- スタプリはテンジョウを否定し、那須ゆみかは否定しない
前回のスタプリ35話、カルノリくんを軸として物語が動いていたことなどについての考察です。
ブルーキャットの正しい救い方についての考察です。まだユニの名前が判明する前に書いたものなので、いろいろ外していることもありますが、改めて読み返すと自分でも「こんなこと考えてたんだな~」という気持ちになります。
今回も記事が長くなったので二分割しています。
後編の記事では、
- アの字も出さずに圧倒的な存在感を放っていたアイワーンについて
- マフィアのボス、ドン・オクトーは悪人なのか?
- ユニとノットレイダーは何が違うのか?
- 怪盗としてのユニの名前はなぜ「ブルーキャット」なのか?
- 10年間のボランティア:「償い」という名の「取引」
- ひかるとユニの「手」に関する尊すぎる対比
- レインボーの指輪がラストで「黄色」に光った理由
- レインボーの指輪の存在意義とは?
などについて考察できれば、と考えています。
書きたいことが多すぎて笑えてきますね(苦笑)
果たして37話が始まるまでに書き終えられるのかどうか…(善処します)
→書きました(2019年10月18日)
→書きました(10月20日)
以上、スター☆トゥインクルプリキュア36話の感想考察(前編)でした。