金色の昼下がり

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スタートゥインクルプリキュア 38話 感想 全力考察 プリンセスは惑星レインボーを救わない説(前編)

 スタプリ38話、いや、その、なんというか、この巨大感情をどこに置けばいいのか分からないですね。私のライフはもう0です。素晴らしかったです。最高でした。

 

 この記事はスター☆トゥインクルプリキュア38話の感想考察(前編)です。38話のネタバレを含みますのでご注意ください。

 

※中編の考察はこちら

※後編の考察はこちら

 

 

  

ユニとアイワーンの類似点

 今回、ユニはアイワーンちゃんのことを「許す」と宣言しました。

 

 なぜ大切な仲間を奪った張本人であるアイワーンちゃんのことを許そうと思ったのかというと、それはユニが自分もアイワーンちゃんも「同じ」だということに気付いたからです。

 

 何が「同じ」なのか。大きく分けると、次の3つです。

  1. 大切なものを失い、「怒り」と「憎しみ」を感じていたこと
  2. 相手の大切なものを「奪い」、「傷付けていた」こと
  3. 大切なものを失い、「悲しみ」と「苦しみ」を感じていたこと 

 

大切なものを失った「怒り」と「憎しみ」

 まず、ユニは惑星レインボーという故郷の星をアイワーンちゃんに奪われ、同時にレインボー星人の仲間たちも全員、石化によって失いました。このことに対して、ユニは激しい怒りと憎しみを覚えていたことが今回のエピソードで明示されます。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

ハッケニャーン「大切な人々を失ったお前の、激しい怒り、憎しみが、わたしには見える」
ユニ「許せないニャン…みんなを石にしたあいつだけは…」

 

 次に、アイワーンちゃんは幼少期のころに周囲から捨てられていたことが明かされます。行く当てのないアイワーンちゃんにノットレイダーたちが居場所を与えてくれたわけですが、その居場所を今度はユニが奪っていたのです。バケニャーンに騙され、居場所を失ったアイワーンちゃんは、やはり激しい怒りと憎しみを覚えています。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

アイワーン「許せない…許せないっつーの…あたいの居場所をなくしたお前だけは…絶対許さないっつーの…!」

 

 ユニも、アイワーンちゃんも、相手のことを「絶対許さない」と強く想っていたことが分かります。

 

大切なものを「奪い」、「傷付けていた」

 しかし、今回、ユニは気付きます。自分もまた、アイワーンちゃんのことを傷付けていたことに。アイワーンちゃんを騙し、アイワーンちゃんの居場所を失わせ、アイワーンちゃんの大切なものを奪ったという事実に気付きます。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

ユニ「わたし…あなたのこと、傷付けてた…」

 

 アイワーンちゃんについては言うまでもないことですが、相手の大切なものを奪っていたのは、ユニもまた同様なのです。

 

 なぜユニがこの事実に気付いたのかというと、端的に言えば、それは想像力によるものです。

 

大切なものを失った「悲しみ」と「苦しみ」

 ユニはアイワーンちゃんの慟哭を目にして、ハッとなります。ここでユニは、惑星レインボーを失ったときに自分が流した涙と、居場所を失ったアイワーンちゃんが流す涙の本質が同じであることに気付くのです。

 

 ユニもアイワーンちゃんも、大切なものを失ったことで激しい怒りと憎しみを覚えていたわけですが、怒りや憎しみは表層的な感情であり、その裏には深層的な感情、すなわち「悲しみ」や「苦しみ」が隠れています。ユニもアイワーンちゃんも、なぜ怒り、憎んでいたかというと、それはひとえに、大切なものを失って悲しかったからであり、苦しかったからなのです。

 

 そしてユニは、アイワーンちゃんの「怒り」や「憎しみ」の裏に潜む、「悲しみ」や「苦しみ」を直視し、アイワーンちゃんに謝罪をするのです。

 

※愛の反対は無関心。アイワーンちゃん「憎しみ」の裏に潜む「悲しみ」という感情についての考察です。

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なぜユニはアイワーンに謝罪し、許したのか?

 ユニがアイワーンちゃんのことに謝罪したのは、自分もまたアイワーンちゃんのことを傷付け、苦しめていたことに気付いたからであり、同じ「罪人」であることを自覚したからです。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

ユニ「ごめんニャン」
アイワーン「何…謝ってるんだっつーの…」
ユニ「今ならわかる…あなたの気持ち…」
アイワーン「何が分かるんだっつーの!?」
ユニ「苦しかったんでしょ…アイワーン! わたし…わたし、決めたニャン。あなたを…許す!」

 

 ここで、ユニはアイワーンちゃんに謝罪すると同時に、アイワーンちゃんのことを「許す」と言います。

 なぜそんなことを言うのか、と問うアイワーンちゃんに対して、ユニはこう答えます。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

アイワーン「何で…何でそんなこと言うんだっつーの!」
ユニ「過去だけを見るんじゃなくて、前に進んでいきたい。あなたと一緒に。自分だけじゃなくて、わたしはみんなと一緒に未来に行きたい!」

 

 ユニはアイワーンちゃんと一緒に「前に進んでいきたい」と言います。憎み続けるということは過去を見続けるということであり、そうしている限り、一緒に未来に行くことはできません。

 

 ユニは自分もアイワーンちゃんも同じように傷付いてきた存在であることを知り、だとしたら、憎しみ合うのではなく、ともに手を取り合うこともできるのではないかと思い至ったわけです。

 

ユニの方から許した意義

 今回、ユニの方からアイワーンちゃんのことを許したわけですが、最初に大切なものを奪ってきたのはアイワーンちゃんの方じゃないか、だったら最初に謝るべきなのはアイワーンちゃんじゃないのか、という意見もあるかもしれませんし、それはそれでもっともな考えだと思います。

 

 しかし、ひとつ留意すべき点は、アイワーンちゃんは幼少期の時点で、既に大切なものを失っていたということです。それは紛うことなき「理不尽」であり、たとえどのような理屈を立てたとしても、幼少期のアイワーンちゃんに責任をなすりつけるのは難しいはずです。

 

 理不尽によって大切なものを失った幼少期のアイワーンちゃんに「謝罪」できる存在は、おそらくもういないでしょう。謝罪されることなく生きてきたアイワーンちゃんは、謝罪することを知らないでしょうし、その大切さも知らないのです。

 

 また、怒りや憎しみの連鎖は、「A→←B」という単純な図式で完結するものであればまだしも、実際にはもっと複雑です。連鎖に連鎖を重ねて、そのスパイラルはぐるぐると周囲を巻きこみながら回り続けます。

(現に、ユニはアイワーンちゃんに大切なものを奪われたことにより、最近までは怪盗ブルーキャットとなって無関係な人々の大切なものを奪っていました)

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第15話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 もしユニがアイワーンちゃんのことを憎しみ続けていれば、いずれその怒りと憎しみは他の人に対しても波及し、そしてその人の怒りと憎しみが別の人に波及し……と、終わることのない「負の相互作用の連鎖」を生み出します。

 

 こうした「負の相互作用の連鎖」を食い止めるには、回り続ける車輪に誰かが「異物」を挟みつけるしかないわけで、その異物たる存在が、ユニであったわけです。

 

※アイワーンちゃんがバケニャーンに騙されたのは自業自得なのか?という考察です。

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アイワーンに芽生えた「想像力」

 ユニとアイワーンちゃんの因縁の物語は、まだ「終着点」にはたどり着いていません。ユニにとっての物語は、アイワーンちゃんに「謝罪」し、アイワーンちゃんを「許す」ことによって、ひとつの「着地」を見せましたが、アイワーンちゃんの物語はまだ「着地」していないからです。

 

 しかし、アイワーンちゃんの物語は、今回のエピソードで「折り返し地点に来た」と言えるでしょう。その根拠は次のカットです。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

アイワーン「えっ…」 

 

 トゥインクルイマジネーションの力によって、アイワーンちゃんの脳裏には、大切なものを失い、悲しみの涙を流すユニの姿が映ります。このとき、アイワーンちゃんの想像力が、ユニの心の一端に触れるのです。

 

 そして、アイワーンちゃんは気付いたのです。ユニが感じている深い悲しみが、自分の抱いていた感情とまったく「同じ」であることに。

 

 その証拠に、プリキュアの技でアイワーンロボ23号を浄化させられた直後、アイワーンちゃんは「怒り」でもなければ「憎しみ」でもなく、「悲しみ」でもない、何かに「気付きかけている」ような表情を浮かべています。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第38話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 おそらく、アイワーンちゃんはまだ「それ」が何なのかまでは分かっていないものの、あともう少しで理解できそうになっている段階なのでしょう。その意味において、アイワーンちゃんの物語は「折り返し地点」に来ていると言えます。

 

 アイワーンちゃんの想像力がユニの心の奥に届いたときが、アイワーンちゃん(とユニ)の物語が「着地」するときであり、そのときになってようやく、二人の新しい物語が「始まる」のです。

 

スタープリンセスの発言の真意について

 これまで、スタープリンセスたちは「惑星レインボーを元に戻せるのか?」というユニの問いに対して、あまり誠実とは言えない対応をしてきました。

 このことから、私としては、「もしかしてプリンセスの中に黒幕がいるのでは?」という邪念すら浮かぶこともあったのですが、今回のエピソードを見ると、スタープリンセスたちが何を考えていたのかが何となく見えてきたような気がします。

 

 とは言っても、まだはっきりと明示されているわけではないので、これから書いていくことは、少ない情報から導き出した、憶測まみれの妄想です。その点、ご留意ください。

 

スタープリンセスの過去の発言のおさらい

 まず、スタープリンセスがユニに何を言っていたのかをおさらいしてみます。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第21話(C)ABC-A・東映アニメーション

ユニ「惑星レインボーは…レインボーは プリンセススターカラーペンを集めれば元に戻るの?」
おひつじ座「星座の力 そしてフワの力があれば 宇宙に平穏が訪れます」 

(中略)

おうし座「イマジネーションの力が集まれば奇跡が起こります 必ず星も戻るでしょう」

 

 プリンセスとユニの会話は、一見すると普通の問答に見えますが、注意深く見てみると、プリンセスはユニと問いに対して正確な回答を示していないことが分かります。

 

 プリンセスが答えている事実は次の3つです。

  1. 星座の力とフワの力があれば宇宙に平穏が訪れる
  2. イマジネーションの力が集まれば奇跡が起こる
  3. 必ず星も戻る

 

 これを聞いたユニは、「ペンを集めれば惑星レインボーを救える」のだと認識しますが、プリンセスは一言も「ペンを集めれば惑星レインボーを救える」とは言っていません。プリンセスはここで「ペン」という言葉を用いていないのです。しかも、星座とフワの力があったとしても、「宇宙に平穏が訪れる」だけであり、「惑星レインボーが救われる」とは言っていません。

 

 次に、「イマジネーションの力があれば奇跡が起きて星も戻る」とプリンセスが言うわけですが、イマジネーションの力=「ペンが集まることで発揮される力」だとは言っていません。また、プリンセスは、「平穏が訪れる」「奇跡が起こる」という、どことなく「他力本願」な言い回しをしており、「私たちが宇宙を救う」「私たちが惑星レインボーを救う」というような言い方はしていません。

 

 では、プリンセスたちはここでいったい何を言おうとしているのでしょうか?

 

トゥインクルイマジネーションとは何か?

 次に、トゥインクルイマジネーションとは何かについて考えてみます。トゥインクルイマジネーションが輝いたタイミングは、現在のところ次の2つです。

  1. ひかるさんが姫ノ城さんのことを知りたい/自分のことを知って欲しいと強く想ったとき
  2. ユニがアイワーンちゃんのことを想像したとき/ともに前に進んでいきたいと強く想ったとき

 

 ひかるさんもユニも、ただ純粋に、相手のことを「想像」し、「分かり合いたい」と思ったときに、トゥインクルイマジネーションが輝いていることが分かります。

 

 これらの事実から推測すると、トゥインクルイマジネーションとは「分かり合いたいという想い」が具現化したものだと捉えることができます。

 

 ただし、トゥインクルイマジネーションが輝いたとき、「実際に分かり合えたかどうか」は問題になっていないということは念頭に置いた方がいいでしょう。トゥインクルイマジネーションは「分かり合えた」ときに輝くものではなく、「分かり合いたい」と強く想ったときに輝くものなのです。「結果」ではなく、その「過程」が大切なのです。

 

  スタプリ33話の考察です。トゥインクルイマジネーションとは何かについて、ほとんど情報がなかったときに考えた記事です。

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スタープリンセスは惑星レインボーを救わない

 つまり、プリンセスたちが言っていた「イマジネーションの力」というのは、「分かり合いたいという想い」によって生まれる力を指していると考えられます。

 

 「分かり合いたいという想い」があれば、それまで特に仲がいいわけではなかった身近なクラスメイトと友達になれるかもしれませんし、それまで憎み合っていた宿敵と一緒に前に進むことができるかもしれません。

 

 そして、なんと奇遇なことでしょう。

 ユニが憎んでいた宿敵は、非常に優れた科学力を持っているのです。

 

 ここまで考えたとき、もしかしたら、と私は思うのです。

 スタープリンセスは、惑星レインボーを救わないのかもしれない、と。

 惑星レインボーを救えるのは、スタープリンセスたち自身でもなければ、トゥインクルイマジネーションそのものでもなく、ユニの「分かり合いたいという想い」が引き寄せた人物、すなわち、アイワーンちゃんに他ならないのではないか、と。

 

 だって、石化することができたのなら、元に戻すことだってできるはずです。

 なぜなら、アイワーンちゃんは、「超天才科学者」なのですから。

 

 ※過去(2019年7月26日)にはこんな考察もしています。スタープリンセスは味方なのか、敵なのかについて。

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スタプリ38話の感想考察まとめ(前編)

  • ユニとアイワーンちゃんは似た者同士
  • 罪を自覚したユニは謝罪し、前に進むためにアイワーンちゃんを許した
  • アイワーンちゃんに芽生えた想像力が尊い
  • スタープリンセスは惑星レインボーを救わない説

 

 前回のスタプリ37話の感想考察(前編)です。カッパードさんの抱える「トラウマ」と「苦しみ」について。 

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  意外とかわいいアイワーンちゃんの抱える矛盾と3つの予想について、2019年4月20日、スタプリ11話時点で書いた考察です(大昔)

 このときはまだ、こんなにアイワーンちゃんのことが好きなると思っていなかったので、「意外とかわいい」なんて表現なっています。今? アイワーンちゃん好き好き大好き超愛してる倶楽部に入ってます。

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 ユニとアイワーンちゃんが一緒に温泉に入る日も近づいてきましたね(誇大妄想) 

 こんな感じで、ときどき我慢できずに二次創作を書いています(小声)

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 一般的に泣ける作品というのは、初回がいちばん泣いて、繰り返し観ているうちにだんだん冷静に観られるものなんですが、スタプリ38話にいたっては、繰り返し見るたびに涙の量が多くなっている気がします。

 

 今回の記事では38話で描かれていた「主題」や「概要」の一部しか書けなかったので、後編の記事ではもう少し細かい描写や演出、過去のエピソードとの対比などについても言及できたらと思っています。

 

 以上、スター☆トゥインクルプリキュア38話の感想考察(前編)でした。

 後編の記事は書きあがり次第アップする予定です。

 →と思ってたら中編、後編の三分割した記事になりました。

 

→中編の記事です。

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→こちらは後編の記事です。

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