スタプリ45話、カパひかの決着回であり、神オブザ神回でしたね。もう、涙が止まりませんでした。泣き崩れながら視聴していました。無限に余韻に浸っていたいです。
この記事はスター☆トゥインクルプリキュア45話の感想考察です。ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
雨、浮かないひかる、ユニの部屋
ひかる「トゥインクルイマジネーション…」
アバン(冒頭)。
最初にカメラに映し出されるのは雨です。ざあざあと降り止みそうにない雨は、ひかるさんの「不安」や「悩み」を示す心理描写でもあります。ぽつり、と「トゥインクルイマジネーション」とつぶやいていることから、その不安の正体はトゥインクルイマジネーションに関することだと分かります。
そのあと、母・輝美さんからララが来ていると声をかけられ、ひかるさんはロケットに移動します。
そこで何をしているかと思えば、ひかるさんはユニのためのルームプレート作りをしていました。「惑星レインボーに戻るまでの間だけニャン」、とユニは言いますが、これまでずっと野宿生活をしていたユニがロケットに住むようになったのは、改めて、ユニとみんなの絆が深いものになったことが示されています。
ひかるさんの作ったネームプレートがみんなから褒められて、ひかるさんはにっこりと微笑みます。
しかし、明るいBGMが消えるのと同時に、ひかるさんは細めていた目を元に戻し、「んっ」という何とも形容しがたい吐息を漏らします。
そう、ひかるさんは確かににっこりと笑っている…笑っているんですが、このときのひかるさんが、「褒められたのが嬉しくて笑っているだけ」ではないのは確かです。暗雲の垂れ込める空模様、降り止みそうにない雨、自宅での不安そうな表情、明るいBGMの消失、表情の変化、「んっ」という吐息。これらが複合的に合わさることで、鑑賞者はひかるさんが複雑な心理状態に陥っていることを察するのです。
星奈ひかるは「一人」になる
ひかるさんとララが帰っていると、二年三組のみんなとばったり出くわします。二年三組のみんなはララのロケットの興味津々で、詳しい話を聞こうとララに詰め寄ります。その勢いに負けたひかるさんは、みんなから離れたところに身を引きます。
すっかりみんなと仲良くなっているララを見て、ひかるさんはにっこりと微笑みます。…しかし、次の瞬間には、その笑みは消え去り、真顔になります。
アバンでの「トゥインクルイマジネーション…」というつぶやきを併せて考えると、この時のひかるさんが抱いていた感情は、自分だけがトゥインクルイマジネーションを見つけられずにいる「焦り」や「不安」だということが類推できます。
トゥインクルイマジネーションとは、「憧れのわたしを描き」「なりたい自分になること」であり、ララにとっての「なりたい自分」は「わたしらしいわたしでいること」だとスタプリ40話の考察でも述べました(※1)
二年三組のみんなと談笑するララは、まさに「わたしらしいわたし」でいる状態であり、この時のひかるさんは、ララが既にトゥインクルイマジネーションを見つけているという現実を改めて目の当たりにするわけです。
ここで時間を巻き戻し、もう一度、アバン(冒頭)の台詞を思い出して欲しいのです。
えれな「留学って、調べると大変でさ~」
ララ「まどかはどうするルン?」
まどか「まだ考え中です」
ララ「みんないろいろ考えてるルン。ユニもロケットに住むって言うし」
ユニ「惑星レインボーに戻るまでの間だけニャン」
そう、えれなさん、まどかさん、ユニについては、アバン(冒頭)の時点で、それぞれが自分のトゥインクルイマジネーション(=なりたい自分)に向けて動き出していることが示されているのです。
<えれなのトゥインクルイマジネーション>
- 「みんなを笑顔にしたい」→そのための一つの手段として通訳になりたい→通訳になるために留学したい
<まどかのトゥインクルイマジネーション>
- 「自分の未来を自分で決めたい」→留学をすべきか否か自分で考えている
<ユニのトゥインクルイマジネーション>
- 「みんなと一緒に未来に行きたい」→ロケットに住むことで、残された時間をみんなと一緒に過ごそうとしている
5人のうち、4人がトゥインクルイマジネーションを見つけ、4人ともがキラキラと輝いている現実を前にすれば、いくらひかるさんだって複雑な心境になるのは仕方ありません。
…仕方ない?
いえ、本当にそうでしょうか。ひかるさんといえば、自分の好きなものを人から馬鹿にされても「誰に何と言われようが好きなものは好き」だと言い放ち(スタプリ18話)、ひとりであっても苦を感じることなく好きなことをして過ごし(スタプリ26話)、「自分は自分」なのだという固い意思を持って生きてきたキャラクターです。そんなひかるさんが、なぜ45話にもなって、他人と自分を比較して思い悩むのでしょう? なぜ、45話にもなってひかるさんの価値観は「後退」してしまったのでしょう?
…いいえ。
おそらく、それは「後退」などではありません。ひかるさんはみんなと出会うことで、様々な影響を受けてきました。その結果、ひかるさんの価値観はアップデートが繰り返されてきたわけですが、同時に「迷い」も覚えるようにもなりました。たとえば生徒会長選挙回では、ひかるさんはまどかさんの推薦を受け、生徒会長に立候補しましたが、もしひかるさんがみんなと出会っていなければ、ひかるさんが立候補することはなかったでしょう(スタプリ35話)。
他人の価値観から影響を受けたとき、それまでの自分の価値観は「揺らぐ」ものです。しかし、その「揺らぎ」は決して「後退」などではなく、自分の価値観をアップデートしていく過程において少なからず生じるものでもあるはずです。そして、「迷い」があるということは、真剣に考えていることの何よりの証だとも言えます。
えれな「ひかるは?」
ララ「ルン? 用があるから先に帰っててって」
ここまで考えると、ひかるさんが「用がある」と言って一人で天文台に行った理由が見えてきます。ひかるさんは、自分自身と向き合い、自分にとってのトゥインクルイマジネーションとは何なのかを真剣に考えようとしていたのでしょう。
※1 ララがトゥインクルイマジネーションを見つけたスタプリ40話の考察です。ララのトゥインクルイマジネーションは何だったのか、二年三組に「異星人」はいないという考察をしています。www.konjikiblog.com
遼じいという「デネブ」
もともとひかるさんは父・陽一さんの影響でUMAが大好きでした。休日等には、幼いひかるさんは陽一さんと一緒にUMA探しをしていたようですが、そんな陽一さんはUMAを調査するため外国に行き、家を空けています(スタプリ18話)。この時にも、既に陽一さんは外国に行って不在なのでしょう。だからこそ、春吉さんと陽子さんがひかるさんの面倒を見ているのだと思われます。
陽一さんがいなくなってから、ひかるさんはその溢れんばかりの好奇心を少し持て余していたのかもしれません。そんなときに出会ったのが、「宇宙」であり、「星座」です。それを教えてくれたのは、遼じいでした。幼いひかるさんは、この時に初めて、星座や宇宙の魅力と「ファーストコンタクト」をしたのです。
(回想)遼じい「星と星との結び方。見方を変えることもあるさ。見る人の自由だよ」
ひかる「だからわたし、オリジナルの星座を作るようになったんだよね。年に一度、お父さんは七夕に帰ってくるでしょう? わたしがデネブで、織姫のベガがお母さん、彦星のアルタイルがお父さんだって。繋がってるって思えたり」
さて、この時、ひかるさんは母・輝美さんのことを織姫の「ベガ」、父・陽一さんのことを彦星の「アルタイル」、そして自分自身のことを「デネブ」とたとえていましたが、このシーンは後半パートに向けての重要な意味を持つことになります。(詳しくは後述します)
遼じい「珍しいねえ。近頃、天文台に来るときは、ララちゃんたちと一緒だったろう?」
ひかる「一緒か…だよね…。わたしさ、いつも自分が楽しければ、ひとりでも平気だった」
遼じい「そうだねえ。ひかるは小さいころから、人は人、自分は自分って感じだったもんねえ」
ひかる「うん。でもね、いまは、ララたちが、みんなが、とっても気になるの。自分だけ進んでない、取り残されてるって思ったり、焦ったり…なんか、わたし、おかしいんだよ」
プラネタリウムを見て、満面の笑みを浮かべる幼いひかるさんと、眉をひそめて心配事を抱える現在のひかるさん。両者が対比となることで、自分が楽しければひとりでも平気だったひかるさんが、確かに「変わった」のだということが示されています。
それに対して、遼じいはこう返します。
遼じい「友達ができるということはそういうことさ。おかしなことなんてないよ」
(若き頃の回想)
春吉「叶ったな」
遼じい「ん?」
春吉「天文台ではたらく夢」
遼じい「春ちゃん、陽子ちゃん!」
陽子「おめでとう、遼ちゃん!」
春吉「おい、よせって。みっともない」
陽子「え~、そんなことないでしょ~」(回想終わり)
遼じい「友達と時には比較してしまうよ。時の移ろいとともに、まわりは変わる。焦りや戸惑いだってあるさ」
遼じいが春吉さん、あるいは陽子さんに恋心を抱いていたのかまでは想像するしかありませんが、いずれにしても、若き頃の遼じいが、結婚して幸せな様子の春吉さんと陽子さんと自分を比較していたことが読み取れます。
さて、ひかるさんは、「春吉さんと陽子さんが大好きだった遼じい」から、「遼じいの大好きな星座の魅力」を教えてもらいました。
確かにひかるさんは「遺伝子」という形で春吉さんと陽子さんの影響を受けているかもしれませんが、遼じいからも多大なる影響を受けています。遼じいから受け継いだものは、ひかるさんの心の中でキラキラと輝き続けているのです。
遼じい「時の移ろいとともに、まわりは変わる。焦りや戸惑いだってあるさ。夏と冬では、デネブのまわりで輝く星、星座は違う。デネブはおよそ8000年後には、北極の近くで輝く」
ひかる「確か、北極星になるんだよね」
遼じい「ああ、そのとおり。環境や状況が変わっても、デネブは変わらず、輝き続けるんだろうねえ」
周囲の環境が変わっても輝き続けるデネブ。
ひかるさんは自分のことをデネブと、両親のことをベガとアルタイルとたとえましたが、遼じいもまたデネブだったと言えます。デネブは、今からおよそ8000年後には北極星になると言われています。北極星は、昔から北半球を航海する旅人にとっての「道しるべ」でした。春吉さん(アルタイル)と陽子さん(ベガ)を見守り続けた遼じいというデネブは、長い年月をかけて、ついにひかるさんを導く北極星となったのです。
参考リンク:宇宙情報センター / SPACE INFORMATION CENTER :こぐま座
因縁の対決:星奈ひかるはカッパードと対峙する
カッパード「待っていたぞ。これも定めか…この冷たい雨、すべての決着に相応しい…お前との因縁もこれまでだ」
ひかるさんとエンカウントしたカッパードさんは、微笑を浮かべながら手にしていたレーダーを握り壊します。レーダーを破壊したのは、カッパードさんにとってこれが最後の戦いだからです。ダークネスト様から「鎧」をつけるよう言われた時、最後のチャンスを、と言って来たカッパードさん。プリキュアとの戦いに勝ったとしても、負けたとしても、いずれにしてもレーダーは不要になるのです。
そして、カッパードさんはついに自らの歪んだイマジネーションを吸い、最強の武器を完成させます。
カッパード「我ながらいい歪み。最高の武器の完成だ!」
ちなみにこの時のカッパードさんの武器は、『西遊記』に登場する沙悟浄の武器がモデルだと思われます。なぜ突然『西遊記』の沙悟浄の武器が出てきたのかというと、日本では沙悟浄=河童のイメージが強かったからだと考えられます(※1)
(※1)沙悟浄=河童のイメージは日本特有のものであり、『西遊記』の原本での表記とは異なるものです。なお、近年のテレビやアニメ、漫画に登場する沙悟浄は河童ではないことが増えているので、沙悟浄=河童という(誤った)イメージは、もはや過去のものとなりつつあると言えるかもしれません。
※カッパードさんのイケメンバンク、相変わらずイケメンでしたね。カッパードさんのイケメンバンクについてひたすらイケメンと叫ぶだけの記事です。
【参考にさせていただいたサイト】
西遊記の謎 沙悟浄はなぜ河童になったのか?: 世界の謎と不思議
スタプリ45話感想考察まとめ(前編)
- 雨、浮かないひかる、ユニの部屋
- 星奈ひかるは「一人」になる
- 遼じいという「デネブ」
- 因縁の対決:星奈ひかるはカッパードと対峙する
前回の44話の考察です。ダークネスト様は「悪魔」なのか? モチーフのひとつになっている(ように思う)旧約聖書等と照らし合わせながら考察しています。
スタプリ秋映画の感想考察です。映画という名の「祝歌」。私は3回映画館に行きましたが、本当に良い映画でした。大好きです。
後編の記事ではカッパードさんやカッパードさんのことについて書く予定です。
→書きました
以上、スター☆トゥインクルプリキュア45話の感想考察(前編)でした。