この記事はスター☆トゥインクルプリキュア45話の感想考察(後編)です。ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
45話の考察は前編、中編、後編で3分割しています。
- 「きらめく星の力」とは?
- 「恐怖により思考を停止」していたのは誰?
- ひかるはカッパードの何を「知った」のか?
- 「宇宙に輝くキラキラ星」に手を伸ばす
- ダークネストとヤマタノオロチ(八岐大蛇)
- そして、星奈ひかるは宇宙を見つめる
- 蛇足:もしワープホールが出現していなかったら?
- スタプリ45話の小ネタ
- 終わりに:カッパードが欲していたもの
「きらめく星の力」とは?
「他」を知ったことで改めて「自分」を知ったひかるさんは、ついに自分にとってのトゥインクルイマジネーションを見つけ、「憧れのわたし」を描きながら、プリキュアに変身します。
ひかる「わたしはわたし、輝いていたいんだ!」
ここで、プリキュアが変身するときの歌詞を思い出していただきたいのです。
スタプリのメンバーたちは、「憧れのわたし」を描くことでプリキュアに変身する…というのはこれまでの考察でも繰り返し述べてきたことですが、彼女たちが変身するためには、もうひとつ必要なものがあります。
それは、「きらめく星の力」です。
「きらめく星の力で 憧れのわたし描くよ」
正直なことを言いますと、私は「きらめく星の力」が何なのか理解していませんでした。漠然と、フワやスタープリンセスたちの力を指しているのかな、何かの比喩になっているのかな、などと考えていました。しかし、45話を視聴して、ようやくそれが何なのか気付くことができました。
きらめく星の力とは、その人それぞれが持つ「輝き」に他なりません。
ひかるさんはひかるさん自身の輝きによって、他のメンバーたちは他のメンバーたち自身の輝きによって、憧れのわたしを描きながら変身する――それが、スタプリにおけるプリキュアです。
そして、ひかるさんは言いました。
ひかる「みんな星みたくさ、キラキラ輝いてる。その輝きが、教えてくれるの。輝きはそれぞれ、違うんだって」
星のように輝いているのは、何もプリキュアのメンバーたちだけではありません。
正座や宇宙の魅力を教えてくれた遼じいも、ちょっと高飛車なところがあるけどみんなのことを真剣に考えているクラスメイトの姫ノ城さんも、過去のトラウマから憎しみの焔に身を投じていたカッパードさんも――そして、テレビの前でプリキュアを応援している子どもたち、大人たちも、みんな同じなのです。
みんな星のような輝いていて、その輝きはそれぞれ違う。
フワがいなくても、スターカラーペンがなくても、不思議なパワーがなくても、その「輝き」があれば、誰だって、憧れのわたしに、なりたい自分になることができるのだと、スタプリは言っているのです。
「恐怖により思考を停止」していたのは誰?
ひかる「怖くない。あなたのことが少し、分かったから」
強大な力を手にしたカッパードさん相手に、恐怖から目をぎゅっと閉じてしまっていたひかるさんでしたが、トゥインクルイマジネーションを見つけた彼女は、「怖くない」と言い放ちます。なぜひかるさんが「怖くない」のかというと、それは「あなたのことが少し分かったから」です。
恐怖は思考を停止する、と1話のカッパ―ドさんは言いました。
1話のときのひかるさんは、未知なる存在であるカッパードさんに恐怖を抱くどころか、持ち前の好奇心で「カッチョイイ」と目を輝かせたり、まったく怖がっている様子はありませんでした。
しかし、それからカッパードさんから繰り返し攻撃を受けたり、その強大な力を目にすることで、いつしか心の針は「好奇心」から「恐怖」へと振れていました。たとえばスタプリ37話(仮装大会の回)では、悪さをするどころか写真撮影を一緒に撮ってあげていただけのカッパードさんに対して、ひかるさんは明確な「敵意」を見せています(※1)そして、今回のトゥインクルイマジネーションを見つける直前の怯えるひかるさんは、まさに「恐怖によって思考が停止していた状態」だったと言えます。
分からないから、怖い。
分かったから、怖くない。
もちろん、ひかるさんはカッパードさんの深い悲しみの本質を理解したわけではないでしょう。ユニやえれなさんは、それぞれの境遇がアイワーンちゃんやテンジョウさんと同じだったので、「あなたの気持ちが分かる」と言うことができましたが、前述したとおり、ひかるさんはカッパードさんと同様の経験はしていないからです。そのことは、ひかるさんも自覚しています。
ひかる「わたし、知りたい。宇宙のこと、みんなのこと、もっと知りたい! それに、カッパード、あなたのことも!」
カッパード「知るだと!? ぬるい環境で育ったお前に、何が分かる!?」
ひかる「うん…そうだよ。分からない。でも、だからわたし、あなたの輝きも、もっともっと、知りたいの!」
では、ひかるさんは何を知ったのでしょう?
その回答を考える前に、少しだけ寄り道をして、カッパードさんの台詞を見ていきましょう。
カッパード「ほざけ! お前らに、何が分かる!?」
お前らに何が分かる?
それは、カッパードさんの魂の叫びです。
45話ではこの問いが繰り返し提示されていましたが、11話でも同様の問いはありました。
カッパード「考えたこともなかろう…宇宙の最果て、暗くこごえる場所に追いやられ、闇に潜んで生きてきた我々を!」
「考えたこともなかろう」という言葉は、言い換えれば「お前らに何が分かる?」という問いです。11話におけるひかるさんは、カッパードさんの言うとおり、闇に潜んで生きてきた彼らのことを考えたこともありませんでした。だからこそ、それを鋭く指摘され、ひかるさんは己の「想像力の乏しさ」に初めて気付き、愕然としてしまったのです。
最終的にひかるさんは仲間からのエールを受けて立ち上がることができましたが、この問いに対するひかるさんの回答は、実はずっと保留されていました。というのも、11話で出したひかるさんの回答は、以下のものだったからです。
ひかる「宇宙のこと、わかってないかもしれない。けどわたし、大・大・大好きなんだー!」
そう、ひかるさんは、「お前らに何が分かる?」というカッパードさんからの問いに、真正面から回答していません。宇宙のことは分かってないかもしれないけど、大好きであることには変わりないのだと主張しているに過ぎないのです。カッパードさんの問いにとって、ひかるさんが宇宙を好きか否かというのは、本論ではありません。
まとめると、11話では次の2つの問答がされていたと言えます。
Q1「お前らにオレの何が分かる?」
A1「確かに分からない…」
Q2「お前らは何も知らないから宇宙が好きだと言っているに過ぎない」
A2「知らないかもしれなくても宇宙が好きな気持ちに変わりはない!」
しかし、45話のひかるさんは、昔のひかるさんとは違います。カッパードさんの「お前らに何が分かる?」という問いに対して、ひかるさんはハッキリと応じるのです。
ひかる「カッパード。他の星の人のこと、信じられないかもしれない。でもさ、わたしのことや、みんなのことも、分かってほしい。知って欲しいの!」
わたしのことや、みんなのことも、分かって欲しい。知って欲しい。
トゥインクルイマジネーションが発動した際には「あなたの輝きも知りたい」と叫び、今度は「わたしのことを知って欲しい」と言い放つひかるさんは、カッパードさんの問いに対して、ついに真正面から回答したと言えるでしょう。
あなたのことが分からない。だから、知りたい。
わたしのことが分からないなら、どうか、知って欲しい。
「他」との交流を拒み続けてきたカッパードさんの考えは、初登場の1話からずっと変わっていませんが、「他」と交流し続けてきたひかるさんの考えは、宇宙のように広がっていることが分かります。
また、異星人を信じられなくなったカッパードさんに対して、ひかるさんは「信じて」とは言いません。信じられないと言っている人に対して信じろというのは、いわば価値観の押し付けになってしまうからです。
当然、カッパードさんは「黙れ!」と声を荒げながらそれを拒否します。いつものクールなカッパードさんはどこにも見当たりません。そこにいるのは、かつて異星人たちに裏切られ、深い悲しみを負った一人の人間です。
カッパード「黙れ!」
ひかる「怖がらないで」
カッパード「くっ…オレが、恐れているだと!?」
もう百万回くらい言ってますが、カッパードさんだって最初は異星人と分かり合えると信じていたのです。それを証拠に、カッパードさんはララに対して「(地球人から)裏切られるぞ」と言っています(37話)。「裏切られる」という言葉は、元々信じていなければ使いません。信じていたのに裏切られたからこそ、カッパードさんは深い傷を負い、激しい憤りを覚えたのです。
そんなカッパードさんに、ひかるさんは「怖がらないで」と言います。
「恐怖は思考を停止する」
「異星人と分かり合えるはずなどない」
このとき、異星人に恐怖を抱いていたのは、カッパードさんだったことが判明します。異星人に恐怖を抱き、その恐怖によって思考を停止し、思考を停止したために分かり合えるはずなどないと決めつけていたのは、他でもないカッパードさんだったのです。
ひかるはカッパードの何を「知った」のか?
ひかるさんがカッパードさんに恐怖を抱く構図がくるっと入れ替わり、実はカッパードさんがひかるさんに恐怖を抱いていたのだというこの卓越した演出に私はボロボロ泣いてしまったのですが、涙をぬぐう間もなく怒涛の展開は続きます。
図星を指されて動転したカッパードさんは、かつてないほどの巨大な水の塊を集め、最大級のカッパードストライクを放ちます。
中編の考察で、巨大な水の塊はカッパードさんの憤りの象徴であると書きましたが、ひかるさんの言葉を借りるならば、それは「恐怖」の象徴であるとも言えるかもしれません。カッパードさんの異星人に対する「恐怖」が具現化したもの、それがあの巨大な水の塊なのです。
さすがのプリキュアたちも、この圧倒的な「恐怖」を前に、思わず怯んでしまいます。
…そう、ただひとり、ひかるさんだけを除いて。
ひかるさんはもう怖くありません。
なぜなら、ひかるさんはカッパードさんのことを、「少し」知ったからです。
ここで、先ほどの問いに向き直ってみます。
ひかるさんは、カッパードさんの何を「知った」のでしょうか?
私はこう思うのです。
ひかるさんは、カッパードさんが理不尽な怪物などではなく、理不尽という名の怪物によって大切なものを失い、再び大切なものを奪われてしまうことへの恐怖に慄く、自分と同じ人間であることを知ったのではないか、と。
そして繰り出される渾身のスターパンチは、カッパードさんの「恐怖」を打ち破ります。いつもは横向きで映されるスターパンチが真正面から映し出されることによって、まるで私たち自身が「星奈ひかる」と向き合っているかのような錯覚を起こします。
いつしかカッパードさんの「苦しみ」や「恐怖心」に深い共感を覚えていた私などは、カッパードさんもろとも、そのスターパンチに心を打ち抜かれるかのような衝撃を受け、かろうじて保たれていた涙腺の堤防はものの見事に決壊しました。
「宇宙に輝くキラキラ星」に手を伸ばす
そして、5人の必殺技・スタートゥインクル・イマジネーションがカッパードさんにぶつけられます。
空を覆っていた暗雲の隙間から差し込む光は、まるでカッパードさんの心情を表しているようです。怒りや悲しみ、そして恐怖によって閉ざされていたカッパードさんの世界に、「星奈ひかる」という眩しい光が差し込んでくるのです。
ここで、今一度ひかるさんの変身シーンの台詞を思い出していただきたいのです。キュアスターに変身するとき、ひかるさんはいつもこう言っていました。
ひかる「宇宙(そら)に輝くキラキラ星、キュアスター!」
闇に潜んで生きてきた、とカッパードさんは言いました。
分かり合えるはずがないと決めつけ、異星人のことを知ろうとせず、知らないからこそ異星人に恐怖を抱いていたカッパードさんは、とうとう、目の前の一人の異星人に――「宇宙に輝くキラキラ星」に、手を伸ばしたのです。
もう一度、信じてみようとして。
一連のシーンには、台詞は一切、ありません。カッパードさんが何を想い、ひかるさんが何を想っていたのか、私たちはそれを「想像」することしかできません。
しかし、それで十分です。
それでもう、十分すぎました。
ダークネストとヤマタノオロチ(八岐大蛇)
二人の手が繋がるよりもわずかに早く、ダークネスト様のワープホールが出現し、カッパードさんは再び闇の中へと戻されてしまいます。差し伸べた手が届かない演出は、43話のテンジョウさんの回でも同様のものがありましたが、カッパードさんの場合は手を差し伸べ返そうとしていただけあって、強烈な後味を残します。
その直後、カッパードさんは蛇に囲まれ、ダークネスト様の「計画」に移行させられたことが示唆されるわけですが、Twitterのフォロワーさんで、ここで登場する蛇が全部で「8頭」=「ヤマタノオロチ」だと気付かれた方がいました。洞察力がすごすぎてすごすぎます…!(語彙力)
というわけで、ノットレイダーのモチーフがすべて日本の妖怪であることからしても、ダークネスト様のモチーフのひとつがヤマタノオロチ(八岐大蛇)であることは確定的に明らかだと思います。ダークネスト様は、「蛇」を大きなモチーフにして、日本神話(ヤマタノオロチ)やギリシャ神話(へびつかい座)、そして旧約聖書(悪魔)のイメージから生まれた存在なのでしょうか。
※ダークネスト様は旧約聖書の「悪魔(サタン)」のモチーフにもなっているのでは? という考察です。
※ヤマタノオロチ(八岐大蛇)など、日本神話に興味がある方は、『古事記』も面白く読めると思います。日本神話の伝承のほとんどは『古事記』や『日本書紀』の記述によるものです。私が読んだ現代語訳は以下のものですが、読みやすくて面白かったです。(個人的には『日本書紀』よりも『古事記』の方が入りやすかったです)
そして、星奈ひかるは宇宙を見つめる
トゥインクルイマジネーションがすべて見つかったことを喜ぶ他のみんなとは裏腹に、ひかるさんの表情にはどこか陰りがあります。ワープホールの奥へと消えていったカッパードさんを思ってのことだと類推できます。ひかるさんは、宇宙の片隅にいるであろうカッパードさんを「想像」しながら、夜空を見上げているのです。
夜空に浮かぶその星は、他の星よりもひと際輝いていることからしても、1等星の中でもっとも明るいデネブだと思われます。では、夜空に浮かぶデネブがひかるさんだとすれば、カッパードさんの星はどれなのでしょうか? その星は、デネブと線を繋ぐことはできるのでしょうか? 宇宙の片隅にいるカッパードさんは、星奈ひかるという名の星と星座をつくることはできるのでしょうか?
思わずそんな「想像」をしてしまう、胸の締め付けられるようなシーンでした。
蛇足:もしワープホールが出現していなかったら?
ところで、もしカッパードさんの手がひかるさんに届いていたら、どうなっていたのでしょうか? 気になりませんか? 気になりますよね?
わたし、気になります。
というわけで、まずは作中描写をじっくり観察してみました。すると、面白い発見がありました。おわかりでしょうか?
そう、ひかるさんは右手を差し伸べているのに対して、カッパードさんは左手を出しているのです。
向かい合ったままの状態で右手と左手で握手をしようとすると、どちらかが手の甲を握ることになります。
つまり、もしダークネスト様から強制送還されなかったとしたら、慌てて反対の手を出し直すカッパードさんか、そのまま右手でカッパードさんの左手の甲を掴むひかるさんが見れたかもしれません。個人的には後者が好きです。まさに、生まれた星も違えばギャグのツボや文化も違う二人の手繋ぎっぽくないですか?
あるいは、右手を差し伸べたひかるさんに対して、カッパードさんが咄嗟に左手を出したことは、まさに二人の「すれ違い」、「分かり合えそうだったのに分かり合えなかったこと」 を表現していた…という解釈もできなくもなくもなくもないかもしれません(自分でもどっちだか分からない)。
スタプリ45話の小ネタ
このとき、カッパードさんは持っていた武器の形を変えます。沙悟浄の武器である「半月刃のついた杖」から、「鋤スキ(あるいは銛モリ?)」のようなものになるのです。なぜ「鋤」になったのかと調べてみたところ、沙悟浄の杖は「鋤」が元になっているという説もあるようですが、はっきりした出典や根拠が確認できませんでした。(ご存知の方がいれば教えていただけると幸いです)
いずれにしても、ここで武器を変えた(元に戻した?)のには何らかのワケがありそうです。根拠になりそうな描写が少ないので何とも言い難いのですが、私が考えたのは次の仮説です。
- 「鋤(銛?)」は素のカッパードさんを表す武器として描かれている
ダークネスト様の部下としてではなく、ノットレイダーの幹部としてではなく、カッパードさんという「個人」としてひかるさんに挑んだからこそ、武器は「鋤(銛?)」に変わったのではないかという説です(※1)
実際、カッパードさんは続く台詞で、組織人としての一人称である「わたし」ではなく、個人としての「オレ」を使用しています。 普段は自分のことを「わたし」と言っているカッパードさんが、「オレ」と口にしたのは、スタプリ37話以来…のはずです(37話以外にもオレと言っていた場面があれば教えていただけると幸いです)
<追記>
…と書いていたところ、読者の方のコメントで次のような情報提供をいただきましたので、掲載させていただきます。
沙悟浄の武器ですが、原作の第22回に、天界から追放された沙悟浄が、玉皇から賜ったこの武器も、今では「只好锄田与筑菜(ただ田を鋤き、菜を作るだけ)」と自嘲するフレーズがあるようです
となると、カッパードさんの武器が「鋤」になったのは、やはり彼が「素」の状態、「個人」としての状態になったことを意味していたのでしょうか。
はっぴーさん、教えていただきありがとうございました。勉強になります…!
終わりに:カッパードが欲していたもの
長い、長い、カッパードさんとひかるさんの因縁が、ついにひとつの決着をつけました。初めの方こそひかるさんのことを見下していましたが、いつしか無視できない存在となり、バトルが開幕すると、カッパードさんはいつもいつもキュアスターを追いかけていました。
45話ではそれが顕著で、ダークネスト様から「必ずや器を」と念を押されていたにもかかわらず、カッパードさんはフワを捕える動作はまったく見せていません。徹頭徹尾、カッパードさんはキュアスターを狙っていました。また、前述したとおり、戦闘中に自分のことを「わたし(組織人としての一人称)」ではなく「オレ(個人としての一人称)」と呼んでいました。要するに、カッパードさんは「組織としての行動」=「フワを手に入れること」よりも、己の感情を優先していたのです。
ガルオウガ「お前も次なる計画へ」
カッパード「…テンジョウは?」
ガルオウガ「既に計画に移行している」
カッパード「今一度、このわたしに機会を…」
ダークネスト「最後だ。必ずや、器を手に」
カッパード「…はい」
カッパードがフワを求めるよりも優先していたのはどういう感情だったのでしょうか? 憎しみや憤り、と言うのは表面的なものです。憎しみや憤りの裏には、「本当に欲していたもの」が隠れています。では、カッパードさんが本当に求めていたものは、いったい何だったのでしょうか?
アイワーンちゃんが真に求めていたものは「あたたかい居場所」でした。
テンジョウさんが真に求めていたものは「本当の笑顔」でした。
そして、カッパードさんが真に求めていたもの――それは、「知って欲しい」というものだったのではないでしょうか。
「お前らに何が分かる?」とい問いは、裏を返せば、「自分のことを分かって欲しい」という願望です。「自分の感じた苦しみや憤りを理解して欲しい」という切望です。本当は分かってもらいたい、でも、そんなことは叶うはずがない。なぜなら相手は異星人だから。異星人同士が分かり合えるはずなどないから。
ノットレイダーの挨拶は、まさに「他者との交流の拒絶」を示すサインにもなっていますが、カッパードさんは、「異星人同士が分かり合えるはずがない」という自らがかけた呪いによって、自分を理解してもらえるかもしれない相手をずっと切り捨ててきたのです。
( ↑ ノットレイダーの挨拶。バツ印は「拒絶」の意であり、互いに手を繋ぎ合ったりすることはない)
正直言って、無茶苦茶です。
交流を拒絶する相手のことなんて、分かるはずがありません。知れるはずがありません。にもかかわらず、カッパードさんは、「オレのことなど分からないだろう?」と詰問するのです。不条理にも程があります。
しかし、そんな無理難題に答えたのが、本作の主人公・星奈ひかるさんでした。
知らないから、知りたい。
それはどこまでも明快で、どこまでも鮮やかで、そしてどこまでもワクワクする、スタプリらしい素敵な回答だと私は思います。
スタプリ45話の考察(前編)です。「揺らぐ」ひかるの価値観。
スタプリ45話の考察(後編)です。星奈ひかるは「星」の外に足を踏み出す。
正直なことを言いますと、この考察を書いている最中、涙が浮かんでしかたありませんでした。思い出すだけで泣けます。45話、本当に最高でした。素晴らしい回でした。無限に見返したいです。最近泣いてばっかりな気がします。
以上、スター☆トゥインクルプリキュア45話の感想考察でした。
長々と読んでいただきありがとうございました。
<宣伝コーナー>
スタプリのボーカルベストが1/22に発売予定です。新曲も気になりますし、「ボーナストラック」というのも気になって仕方ありません…。