金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『呼びたい科学者と、繋ぎたい猫』※ユニアイの二次創作

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 先日、とっても尊くて素敵なユニアイのイラストを、Twitterのフォロワーさんが公開されていました。

 

 そのイラストは「『夢の国』でデートするユニアイ」をテーマにしたものだったのですが、それを目にした瞬間、私の頭の中ではムゲンダイマジネーションが急膨張して、気が付いたらユニアイin夢の国の二次創作ができていました。

 

 和解後のアイワーンちゃんが、初めてユニのことを「ユニ」と呼んだときの話です。(視点が交互に切り替わります)

 

(ユニアイ/百合/5000字程度/全年齢向け)

 

<謝辞> 

 この話を思いついたのは、ユニアイin夢の国を描いてくださった神絵師・くら子さんのお陰です。かわいくてイマジネーションの溢れる素晴らしいイラストをありがとうございました。ユニがちょっと照れてるところも、アイワーンちゃんがニコニコなところも最高に尊いですし、服もオシャレで、ぎゅっと手を繋いでいるところがまた…もう、素敵過ぎます。深く深く感謝申し上げます。(ご本人から許可をいただきました)(2020年3月4日)

 

 

 

『呼びたい科学者と、繋ぎたい猫』

 

 どこにいるのか、見当もつかない。

 

 二人のネズミー星人が仲睦まじそうに手を繋いで歩いているのを、ユニは息を切らしながら眺める。二人はこの惑星のスーパースターだ。人々に手を振りながら、二人は門の奥に消えていく。閉ざされた門には、一枚のポスターが貼られている。

 

『ここは、夢が叶う場所』

 

  惑星シィズニーは星全体がテーマパークになっている。ある者はキャラクターとして、ある者はダンサーとして、様々な異星人たちがキャストとして働いている。星空界でも大人気のため、連日のように多くの観光客が訪れる。

 この日、ユニはアイワーンと一緒に惑星シィズニーに遊びに来ていた。アイワーンが"たまたま"チケットをもらったと言うので、一緒に行くことになったのだ。

 

 しかし――

 

「まったく……どこに行ったニャン……」

 

 ユニは呼吸を整えながら、額を流れる汗をぬぐう。

 はしゃぎ回るアイワーンは、ユニがちょっと目を離した隙にいなくなってしまった。あちこち探し回ったが、なにせ星全体がテーマパークである。範囲が広すぎて、とてもではないが探しきれない。 

 

 せっかく二人きりのお出かけだったのに、とユニは肩を落とす。だから惑星シィズニーは嫌だったのだ。この星はデートスポットとして有名だが、『デートが失敗するスポット』としても有名である。どこに行くにしても人は多いし、待ち時間は長いし、足は疲れる。

 

 いったん休憩しよう。

 ユニがベンチを探したとき、ふと、お店の横で一人ポツンと立っている小さな女の子を見つけた。ネズミー星人の子どもだ。その顔には、不安と憔悴、そして、諦念のようなものが浮かんでいる。

 

 アイワーンも、今頃、この子のような顔をしているのかもしれない。

 そう思うと、居ても立っても居られなくなり、ユニはその子に声をかける。  

 

「――ねえ、あなた、もしかして迷子?」

 

 ☆ ☆ ☆ 

 

 女の子はコクンとうなずく。

 やっぱり迷子のようだ。どうしたものか、とアイワーンは自分の頭をがりがりと掻く。気になって声をかけたのはいいが、続きの言葉を考えていなかった。

 しばらく逡巡して、アイワーンはその言葉を絞り出す。

 

「……じゃあ、あたいと一緒に探すっつーの?」

 

 すると、女の子は顔を上げて、

 

「え、いいの……?」

「あたいもちょうど、人を探してる途中なんだっつーの」

「そっか……あなたも迷子なんだね……」

「あたいは迷子じゃないっつーの! 確かに遠くの方でやってるショーが気になって走ったけど……って、違うっつーの! あたいが迷子なんじゃなくて、あいつの方が迷子になってるだけだっつーの!」

 

 アイワーンが反論すると、女の子は首を傾げて質問する。

 

「あいつって?」

「あ、あいつは……あいつだっつーの」

「なんていう人なの?」

「いや、説明しにくいっつーか、呼び方がいっぱいあるっつーか、何て呼んだらいいか未だに分かんないっつーか……」

「あ、もしかして、仲の良い人を名前で呼ぶのが恥ずかしいって思っちゃう人? 面と向かって話してても、『あんた』とか『そっち』とかで誤魔化しちゃう感じ?」

「……お、大人の世界はややこしいんだっつーの」

 

 図星を指されたアイワーンが力なく答えると、女の子は笑みをこぼして言う。

 

「ふふ、素直じゃないんだね。それに『大人』って、わたしと同じくらいに見えるけど」

「う、うっさいっつーの! せっかくこの超天才科学者のアイワーン様が人探しを手伝ってやろうって言ってるんだから、あんたの方こそ素直に感謝しろっつーの!」

「自分で自分のことを超天才って言う人、初めて見た……」

「だだだ黙れっつーの! そんなに人のことを馬鹿にするなら――」

 

 もう知らないっつーの!

 そう言いかけて、アイワーンは口をつぐむ。女の子と目が合ったとき、アイワーンは気付いたのだ。その子の目が、赤く、充血していることに。

 今でこそ気丈に振舞っているが、この子も怖かったのだろう。迷子になって、不安だったのだろう。ひとりぼっちの哀しみを、アイワーンは誰よりもよく知っている。

 

「……ほら、早く探しに行くっつーの」

 

 アイワーンは声をかける。だが、女の子はなかなか歩き出そうとしない。怪訝に思ったアイワーンがもう一度口を開こうとしたとき、女の子はおもむろに手を差し伸べて言った。

 

「……ねえ、知ってる? こうすれば、迷子にならないんだよ」

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ユニが女の子の手を握り返すと、彼女はニコッと微笑みを浮かべる。

 

「最初からこうして手を繋いでいれば、友達とも迷子にならずに済んだんだけど……なんだか恥ずかしくて、どうしても言えなかったの。バカだよね、わたし。ちょっと恥ずかしがったせいで、せっかくのお出かけが、台無しになっちゃったんだもん……」

「……そんなことないニャン。あなたの気持ち、よく分かるわ」

「お姉ちゃんも、手を繋ぐのが恥ずかしかったの……?」

「べっ、別にそういうわけじゃないニャン!? 恥ずかしいとか恥ずかしくないとか、そういう話じゃなくて……ただ、わたしも、こうしておけば良かったって後悔することは、たくさんあるから」

 

 ユニは慌てて弁解する。

 

「でも、わたし、気付いたの。過去ばかり振り返るんじゃなくて、未来に進みたいって。そう思えてなかったら、そもそもわたしは今日、ここにいなかったニャン。もちろん、前に進む途中で転んじゃうときもあるけど――」

 

 歩いていれば、転ぶときだってある。

 くよくよしすぎてもしかたがないニャン、とユニは言う。

 

「……お姉ちゃんは、好きな人がいるの?」

「えっ!? 急に何!? わ、わたしとアイワーンは、そういうのじゃなくて……」

「アイワーンっていうんだ」

「今のは言葉の綾……! 言葉の綾ニャン……!」

 

 ユニがしどろもどろになっていると、女の子は遠くを指差して言う。

 

「ここから少し歩いたところに、縁結びの噴水があるんだよ。コインを投げて、真ん中の杯(さかずき)に入れば、神様が縁結びをしてくれるの。わたし、今日はそこに行きたかったの」

 

 女の子が顔を赤らめながら話すのを見て、ユニは察する。

 

「あなたは、今日いっしょに来た子のことが好きなのね」

「……うん」

「じゃあ、今から行ってみる?」

 

 ユニが優しく問いかけると、女の子は恥ずかしそうに、しかし、はっきりとうなずいた。

 

 ☆ ☆ ☆

 

 「――根拠もないし、ぜんぜん科学的じゃないっつーの。そもそもコインが入るだけで縁結びになるんだったら、あたいだって苦労しないっつーの」

「……じゃあ、何でコインを十枚も買ったの?」

「十枚セットだと安かったからこれにしただけだっつーの! 合理的な思考に基づいた最適解だっつーの!」

 

 アイワーンは反論すると、「ん!」と言って、買ったうちの九枚のコインを女の子に渡す。

 

「……ほら、使えっつーの」

「え? わたしに……?」

「だから言ったっつーの。あたいは別に信じてないって。それに、超天才科学者のあたいにかかれば、一枚あれば十分だっつーの」

「……あ、ありがとう」

 

 女の子は顔を綻ばせる。

 その笑顔を見たアイワーンは、胸の奥から何かが湧き上がってくるのを感じる。それは、惑星レインボーの人々から感謝されたときに覚える感情と同じものだった。

 

「……九枚もあるんだから、外したら承知しないっつーの」

 

 とはいえ、素直に「どういたしまして」と言えないのも同様だ。

 目を逸らすアイワーンを見て、女の子はくすっと笑う。

 

「あなたの恋人って、大変そうだね」

「は、はあああああ!? あいつはまだ恋人でも何でもないっつーの! 何言ってんだっつーの!」

「……まだ?」

「言葉の綾だっつーの! いいからとっとと投げろっつーの!」

 

 女の子はひとしきり笑うと、ゆっくり歩みを進め、噴水の前に立つ。そして、深呼吸をして、大きく振りかぶってコインを投げた。

 

 九枚とも、一気に。

 

「いやいや何で一気に全部投げたっつーの!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまうが、投げられたものはしかたがない。アイワーンはコインの行く末を見守る。カン。チーン。チャポポッ。カラッ。入り乱れすぎていてよく分からない――が、アイワーンは確かに、そのうちの一枚が杯の中に入るのを見た。

 

 突如、軽快な音楽が流れ始める。

 それは、コインを入れた者に捧げられる祝福の歌だ。

 

「は……入った! 入ったよ~!」

 

 やったあ、と女の子はぴょんぴょん飛びながら喜ぶ。アイワーンは思わず口元が緩んでしまうのをおさえながら、女の子とハイタッチをする。

 

「じゃあ、次はアイワーンの番だよ」

「ま、一枚で華麗に入れてやるから、見てろっつーの。なんたってあたいは、」

「超天才科学者、でしょ?」

 

 その通りだっつーの、とアイワーンは不敵な笑みを浮かべる。

 噴水の前に立ち、深く息を吸う。そして、アイワーンは手に掴んでいたコインを思い切り投げた。

 

  ☆ ☆ ☆

 

 頭に何かが落ちてきた。

 ユニはそれを拾う。コインだ。噴水の方から飛んできたので、おそらく、下手くそな誰かさんが投げたものなのだろう。ユニはどうしたものかと悩んだ末、とりあえずスカジャンのポケットに入れた。

 

「あっ……!」

 

 声を上げたのは、女の子の方だ。

 彼女はユニから手を離すと、たたたっと噴水の方に走って行く。そこには彼女と同年齢くらいの女の子がいて、二人は互いに顔を合わせると、どちらからともなく抱き合った。

 

 その様子を見て、ユニは二人が再開できたことを察する。なら、自分はもうお邪魔虫だ。早いところいなくなった方がいい。ユニは踵を返すと、そのままこっそり人込みの中に紛れていく。

 

 と、そのとき。

 

「――――ッ!」

 

 誰かが、自分の名を呼んだような気がした。

 ユニは顔を上げたが、すぐに、そんなはずはないと自分に言い聞かせた。この星で、自分の名前を知っている者は一人しかいない。そして、この星で自分の名前を呼ぶ者は一人もいない。アイワーンは、その名前で自分を呼んでくれたことはない。

 

 だから、この声は、ただの幻聴に過ぎないのだ。

 

「おい! 無視すんなっつーの! ここだっつーの! あたいは! ここに! いるっつーの! おい! ――ユニ!!」

 

 そう、思っていたのに。

 

 振り向くと、そこにはアイワーンが立っていた。よほど慌てて来たのか、息を切らし、肩で呼吸をしている。

 

「……アイワーン」

「ったく、どこに行ってたんだっつーの! あたいはあんたを探し回ってて大変だっつーの! 予約してたショーはとっくに終わってるし、ファーストパスの発券は終わってるし、行きたかったアトラクションはもう三百分待ち以上になってるし、お腹は減ったし、足は疲れたし、迷子になった生意気な子どもの世話をする羽目になるし、まあそれはもう見つかったからいいけど、あたいの投げたコインは入らないし、変なところに飛んでいくし、飛んでいった先を追いかけてたらあんたがいて、でも、あんたはなかなか気付いてくれなくて、このままだと、また、離れ離れになるかもしれないって、また、ひとりぼっちになるかもしれないって……っておい!? 聞いてるっつーの!? ユニ!」

「……聞こえなかった」

「はああああああ!? 聞こえてないってどういうことだっつーの!? ふざけんなっつーの! 耳垢たまりすぎだっつーの! 今度あたいが取ってやるっつーの!」

「ねえ、アイワーン。聞こえなかったから、もう一回、言ってよ」

「どこまで聞いてたんだっつーの!」

「『っておい!? 聞こえてるっつーの!?』までは聞こえたニャン」

「……全部聞こえてるっつーの」

「全部じゃないニャン」

「え……? ……あっ」

 

 アイワ―ンはそこでようやく悟ったようだ。

 さっきまでの威勢の良さはどこに行ったのか、気恥ずかしそうに口をパクパクさせる。アイワーンは上目遣いでユニを見ると、ユニのスカートの裾を掴んで、つぶやくように言った。

 

「……ユニ」

 

 ユニは頬が緩むのは何とか堪えようとするが、無理だった。体は熱くてしかたないし、尻尾もピンと立ってしまう。

 

「なに笑ってんだっつーの! 馬鹿にしてるっつーの!」

「ち、違うわよ」

「じゃあ何で笑ってるんだっつーの!」

「それは……」

 

 嬉しかったニャン、とユニは小さな声で言う。

 その声がアイワーンに聞こえたのか、聞こえていないのかは、よくわからない。

 コホンと咳ばらいをして、話題を変えるようにアイワーンが言う。

 

「……とりあえず、お腹が空いたからレストランに行きたいっつーの」

「いいわね。わたしも賛成」

 

 すると、アイワーンはそのまま人込みの中に突き進もうとするので、ユニは咄嗟に手を掴む。驚いたように振り返ったアイワーンに、ユニは何と言ったらいいのか分からず、けっきょく、言い訳でもするようにもごもごと言う。

 

「こうしていれば……もう、迷子にならないニャン?」 

「……まあ、確かに、そうだっつーの」

 

 その横顔は真っ赤になっているが、ユニはそれをからかったりしない。自分もまた、同じように赤くなっているのを理解しているからだ。

 ユニはアイワーンと並んで歩きながら、自嘲まじりにつぶやいた。

 

 ――ほんと、素直じゃないニャン。

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ――ほんと、素直じゃないっつーの。

 

 アイワーンはつぶやくが、その声は雑踏の中に消えていく。それがユニに向けた言葉だったのか、あるいは自分に向けた言葉だったのか、アイワーン自身もよく分からない。

 ふと、一枚のポスターが目に入る。そこにはこう書かれていた。

 

『ここは、夢が叶う場所』

 

 アイワーンはニッと笑う。

 コインが入らなくても問題ない。たとえ『神様』の力を借りなくても、自分たちは前に進んでいける。

 

「ユニ」

「なあに、アイワーン」

 

 言葉を紡ぐ代わりに、ぎゅっと、アイワーンはユニの手を握り返す。

 もう二度と、離れ離れにならないように。

 

 

 了

 

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※トップ画像は、Ricardo Guzman氏によるPixabayからの画像です(フリー画像)