トロプリ10話のまなロラがやばすぎて書きました。
タイトル通り、まなつとローラがお風呂で洗いっこするだけの話です。
(まなロラ/百合/3000字程度)
『まなつとローラが初めてお風呂で洗いっこするだけの話』
浴室に入ると、人魚の悲鳴が響き渡った。
「まっ、まなつ!? なっ、なっ、何で入ってきたのよ!?」
「? 後でわたしも入るって言ったじゃん?」
「後って、わたしが入り終わった後じゃないの!?」
「ああ、そういうこと? でもわたしもすぐ汚れを落としたいし、いいじゃん、いっしょに入ろうよ」
ゼンゼンヤラネーダとの対決を終えた後、まなつとローラはとりあえず体を綺麗にしようという話になった。ローラの体は汚水の中に飛び込んだせいで臭くなっていたし、まなつもそんなローラと抱き合ったせいで汚れがついていたからだ。
「ローラはあと体を洗うだけ?」
パッと見た感じだと、髪の毛の汚れは取れている。
しかし、尋ねてみてもローラは浴室の隅に固まっているだけで答えようとしない。
「? どうしたの? なんか顔赤くない? ……あ、ローラ、背中もけっこう汚れてるね。洗ってあげようか?」
「~~~~~~!?」
近寄ろうとした途端、ローラは言葉にもならない叫び声を上げながらマーメイドアクアポットの中に消えていった。
「ちょっとローラ? どうしちゃったのー?」
「どうもこうもないわよ!? これが人間のやり方なの!? 信じらんない!」
「? 何が?」
「人魚の世界では他人と入浴したりはしないの!」
「あ、そうなの? 女の子同士でも?」
「そうよ! いっしょに入るのは、家族とかだけなの! ………あ、あとは、恋人同士とか……」
最後の方はゴニョゴニョしていてよく聞こえなかったが、どうやら人魚と人間の世界では入浴に対する考え方が少し違うらしい。
「人間の世界では、女の子同士で入るのは普通なんだけどな~。いっしょに洗いっこしたり、のんびりお喋りしたり」
「……ああそう」
「あ、でも家のお風呂に入るのは、仲のいい子同士じゃないとしないかな?」
「…………」
「ローラといっしょに入ったら、トロピカりそうだなって思ってたんだけどな~」
「…………」
「まあでも、ローラが嫌だったらしょうがないよね」
「…………」
まなつはシャワーの蛇口をひねる。嫌がっているのに無理強いするのはよくない。
そう思っていると、
「……ってやるわよ」
不意に、背中に柔らかい感触がした。
「え? ローラ? 何て?」
「洗ってやるって言ってんの!」
ローラがポットから出てきてくれたのだ。
しかしまなつが振り返ろうとすると、「こっち見ないで!」と強い口調で止められる。
やっぱり見られるのは恥ずかしいらしい。
「次期女王のわたしが洗ってやってるんだから、感謝しなさいよね」
そう言いながら、ローラは一生懸命に手を動かしている。
「あ、ありがとう、でも……」
「どこか痒いの?」
「ううん、そ、それは大丈夫なんだけど……」
「何よ。じゃあ何か不満でもあるの?」
「いや、せ、背中を洗ってくれてるのは嬉しいんだけど……」
「さっきから何なのよ! はっきり言いなさいよ!」
まなつは苦笑しながら答える。
「背中を洗うときには、タオルを使って欲しいというか……手で洗われると、ちょっとくすぐったいっていうか……」
後ろ手にボディタオルを差し出すと、やや間を置いた後、勢いよく奪い取られる。
「さっ、さっ、最初から言いなさいよ!? わたしだって人の背中を洗うの初めてなんだから! 無駄にドキドキしちゃったじゃない!」
「? 何でドキドキ?」
「~~~~~っ!? まなつのバカっ! アホっ! おたんこなすっ!」
「わ、わたしが悪いの~? あっ、痛っ、いたたたたた! ちょっとローラ、強くこすりすぎっ! 痛い痛い痛い!」
ぞりぞりと皮膚をえぐるかのようにボディタオルをこすりつけられて、思わず叫び声を上げた。
*
数分後、背中を洗ってもらい終わったまなつは、シャワーで泡を流しながらローラに尋ねた。
「でもさ、ローラは何でそんなに汚れたの?」
「い、いろいろあったのよ」
「あ、わかった! 泥んこ遊びしてたんでしょ! たまにやりたくなるんだよね〜」
「違うわよ! まなつといっしょにしないで! まったく、わたしがまなつのためにどれだけたいへんな思いをしたか……!」
ローラはそこまで言いかけて、ハッとなって口をつぐんだ。
「わたしのために……って」
「……もう。言うつもりじゃなかったのに」
フン、とローラは鼻を鳴らす。
しかしそれは怒っているわけではなく、単に照れ隠しをしているだけだ。
そのことを理解しているまなつは、えへへ、と顔をほころばせた。
「そっか~、ローラはわたしのためにがんばってくれてたんだね!」
「……そ、そうよ。だからせいぜい感謝しなさい」
「うん! ありがと、ローラ! 大好き!」
「…………わ、わたしだって……」
「? いま何か言った?」
「なっ、何でもないわよっ!」
シャワーの音に紛れてしまい、よく聞こえなかった。
気を取り直し、まなつは肩越しに振り向いて言った。
「じゃあ、今度はわたしが洗ってあげるね」
「っ!? だっ、だからこっち見ないでって言ってるじゃない!!」
ローラは手で胸元を隠しながら叫ぶように言う。
「でも、見ないと洗えないし……」
「プリキュアなら見ないで洗うくらいやりなさいよ!」
「えぇ……? それ関係ある……?」
そんなことを言い合っているうちにもタオルで目隠しされてしまう。
まあでも、そこまで見られるのが恥ずかしいならしかたない。
目隠しをした状態で体ごとくるりと回し、ローラの方を向く。
すると、何やら息を呑む音がした。
「? ローラ?」
「……な、ななな何でもないわよ。人間の世界じゃこれが普通。人間の世界じゃこれが普通」
「何を言い聞かせてるの?」
「うっ、うるさいわね! いいから早く洗いなさいよ!」
「何で偉そうなの?」
まあいいかと思い直し、真っ暗な視界の中でボディタオルを動かしていく。
「どこか痒いところはある?」
「べっ、別に…………んっ」
「あっ、ごめん、くすぐったかった?」
「へっ、平気よっ、これくら……っ、んっ、っ、ひゃぁっ」
「…………」
何やら小動物の鳴き声のような声が聞こえる。
初めは気のせいかとも思ったが、そんなことはなかった。タオルを動かすたびにローラが変な声を出す。
そして、時折手に当たるこの感触。気のせいでなければ、これは――
「……あ、あのさ、ローラ」
「んっ、なっ、何よっ、止まってないで、手を動かしなさいよっ」
「いや……、もしかしてローラさ、こっち向いてる?」
「……? そうだけど?」
思った通り。自分が洗っているのはローラの背中ではなかった。
ローラの“前側”なのだ。
「……ええと、まあでも、いっか」
「最後まで言いなさいよ。気になるじゃない」
「いや、洗いっこっていうのは、普通は自分じゃ洗いにくい背中を洗い合うもので、胸とかお腹とかは自分で洗うものだと思ってたから。まあでも、ローラが洗って欲しいなら別いいかって、思い直したところ」
「…………」
「? ローラ?」
「まなつのバカっ! アホっ! おたんこなすっ!」
「わ、わたしが悪いの~?」
浴室に人魚の悲鳴が響き渡る。
その日、ローラはポットの中に引きこもり、いくらまなつが呼びかけても出てこなかった。
終わり
まなロラの雑感とあとがき
まなロラ良いですよね。
この二人は1話時点から好きだったんですが、その頃はいろいろ忙しくて妄想をあとまわしにしてたんですよね。いまも別に時間に余裕があるわけではないんですが、10話があまりにもまなロラすぎて我慢できませんでした。私にとって二次創作はどれだけ我慢していても我慢できずに出てしまうものなんだなとつくづく思いました。嘔吐かな?
ありがとう10話。ありがとうまなロラ。幸せになってください。
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