『宇宙はなぜ「暗い」のか』津村 耕司 (著) を読みました。
なぜ暗いのかなんて、考えたこともありませんでしたが、確かにいわれてみれば不思議ですよね。もし宇宙が無限で、星(太陽などの恒星)の数も無限に散らばっているなら、夜空はどこを見ても明るいはずです。
でも、実際の夜空は暗い。なぜでしょう?
この記事は、『宇宙はなぜ「暗い」のか』の感想・書評をしたものです。
オールバースのパラドックス
突然ですが、無限に続く大きな森を想像してみてください。
あなたがその「森」のなかにいるなら、どこを見ても視界が「幹」にさえぎられるはずです。
次に、「森」を「宇宙」だと考えて、「幹」を「恒星」だと考えてみてください。
私たちが無限に続く「宇宙」にいるなら、どこを見ても視界に「恒星」が入る=どこを見ても明るいはずです。
でも、夜空を見上げたとき、実際には「恒星」はそんなに多くはないし、夜空は暗いですよね?
それはなぜなのか、というのがオールバースのパラドックスです。
恒星の光を宇宙塵が邪魔している説
恒星の光を何かが邪魔しているせいで、光が私たちのいる地球まで届かないのだ、とする仮説について考えてみましょう。
もっともらしい説のように思えます。
実際、宇宙には何もないように見えて、無数の宇宙塵が散らばっています。
この宇宙塵が恒星の光を遮っている、そのせいで光が届かないのだと考えれば、理屈が通るようにも思えます。
しかし、この説は次のような反論を受けます。
宇宙塵が恒星の光に照らされると、カンカンに熱されます。
熱された宇宙塵は超高温になり、その分だけ光を発します。
つまり、恒星の光を吸収した分だけ宇宙塵が光を発するようになるので、光の総量は変わらないということになります。
ブラックホールが光を吸収している説
ブラックホールが恒星の光を吸い込みまくっているために、宇宙は明るくないのでは? という説です。
これも、もっともらしい説のように思えます。
実際、ブラックホールに吸い込まれたものは、光ですら抜け出すことができません。また、ブラックホールは空想上の存在ではなく、実在していることも確認されています。
しかし、この説は次のような反論を受けます。
ブラックホールからは光すら抜け出せないというのは事実ですが、実はブラックホールの周囲は光で溢れているのです。
というのも、ブラックホールの強い重力に吸い込まれていくとき、吸い込まれた物体は猛烈な摩擦によって加熱され、明るく輝きます。
また、ブラックホールは、宇宙を暗くできるほど多く存在しているわけではありません。
つまり、ブラックホールの存在だけでは宇宙がなぜ暗いのかを説明することはできないのです。
夜空が暗い本当の理由
では本当の理由はなんなのかというと、それは「星の寿命があまりにも短すぎるから」というものです。
宇宙は「スカスカ」で、だだっ広い割にはぜんぜん星がありません。
もし「明るい夜空」を見ようとすると、私たちは1000垓光年先の宇宙まで見る必要があります。
むちゃくちゃです。
太陽の寿命は100億年といわれています。1000垓光年の足元にも届きません。
1000垓光年先にある恒星の光が私たちの地球に届くには、1000垓光年かかるわけですが、そのころにはとっくに地球は消滅しています。
そもそも、ビッグバンが起きてから138億年しか経っていないわけですしね。
ちなみに、138億光年より遠くに宇宙があるということを不思議に感じる方もいるかもしれませんが、宇宙の膨張速度は光速よりも速いため、このようなことが起きるわけです。
もっと詳しく知りたい方は、「観測可能な宇宙」で検索してみましょう。
そういうわけで、私たちが見上げる夜空は暗いわけです。
ちなみに、138億光年より遠くに宇宙があるということを不思議に感じる方もいるかもしれませんが、宇宙の膨張速度は光速よりも速いため、このようなことが起きるわけです。
もっと詳しく知りたい方は、「観測可能な宇宙」で検索してみましょう。
本書はこんな人にオススメ
- 宇宙の入門書を探している
- 宇宙がなぜ暗いのか気になる
- ある程度宇宙について勉強したけど人に説明できるほど理解できていない
- Wikipediaでオールバースのパラドックスの項目を読んだけど分かりにくい/もっと詳しく知りたいと感じた
まとめ
宇宙について考えるとスケールが大きすぎてわけがわからなくなるんですが、本書は入門書として書かれているため、物理や化学が苦手である私にとっても分かりやすく書かれていました。
宇宙の本をいくつか読んでいると、なんだかちょっとだけ分かったような気にもなるんですが、改めてこういった本を読むと「あっ私って無知だな…」と思い知れますね。
なお、この記事では相当な部分をはしょって書いています。
気になった方はぜひ本書『宇宙はなぜ「暗い」のか?』を手に取ってみてください。面白かったですよ。
SF漫画の超傑作短編集です。
頭蓋骨を弾丸で打ち抜かれるような衝撃を受けました。