金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『ユニのスペシャルライブ』※プルユニの二次創作

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 ちょっと前に、プルユニのこんな妄想をしました。 

 

 

 それから妄想を拡げていくうちに、プルユニの短編ができました。

 台風でマオのライブが中止になったプルユニです。

 

(プルユニ/コメディ/全年齢/3500字程度)

 

※トップ画像はfreestocks-photos氏によるPixabayからの画像(フリー)

 

 

『ユニのスペシャルライブ』

 

 まるで自分の感情を表しているようだ、とプルンスは思った。

 

 窓に叩きつけられる雨粒は悲しみによる涙だ。木々をへし折らんとする暴風は残酷な運命に対する憤怒だ。星ひとつ見えない漆黒の夜空はどん底の絶望だ。

 プルンスは憔悴しきった顔で、何度目になるか分からないため息をつく。その手には一枚のチケットが握られている。黄金色に輝くそのチケットには、『スペシャルライブ』の文字が印字されている。

 

「マオたん……」

 

 ロケットの中から、暴虐の限りを尽くす台風を眺める。己の無力さを噛みしめていると、不意に顔に冷たいものが押し当てられた。

 

「――っ!? な、何するでプルンスか!?」

 

 慌てて振り向くと、そこには両手に缶ジュースを持つユニが立っている。どうやら、それを顔に押し付けられたようだ。

 

「まったく、なんて顔してるニャン」

 

 ん、と差し出された缶ジュースを受け取ると、プルンスは半ば自棄になりながら一気飲みする。空になった缶をテーブルに置くと、声を上げて泣き始める。

 

「ううううっ……初めてマオたんがするはずだった、地球での公式ライブ……楽しみにしてたでプルンス……」

 

 自作のマオうちわを握りしめながら泣いていると、ユニは苦笑しながら言う。

 

「ちょっと、泣きすぎニャン」

「プルンスは……マオたんのライブを、楽しみに楽しみに楽しみにしてたでプルンス……この日のために生きてきたようなものでプルンス……」

「そう……残念だったわね。マオが観れなくて」

 

 プシュッ、と缶の蓋が開く音がする。見ると、ユニはどこかつまらなさそうな顔でジュースを飲んでいる。

 

「ユニも辛いでプルンスな。せっかくのライブが中止になって」

「んー、まあね。残念じゃないと言えば、嘘になるけど」

「い、意外と冷静でプルンスな……」

「あなたが興奮しすぎてるだけニャン」

「それは、まあ、否めないでプルンスが……」

 

 プルンスはうちわに張り付けたマオの写真を見つめながらつぶやく。

 

「プルンスは、嬉しかったでプルンス」

「え?」

「地球人たちにマオたんの魅力が伝えられるんだと思うと、嬉しくてしかたなかったでプルンス。だから、台風で中止になって、プルンスは悲しかったでプルンス。マオたんの素晴らしさを、みんなに知ってもらえないことが」

「……んー、まあ、マオだって、地球人に受けるかは分からないけどね」

「何言ってるでプルンスか!」

 

 プルンスは語気を荒げる。

 

「マオたんのかわいさは、全宇宙的でプルンス! 必ず通じるでプルンス! プルンスが、絶対に伝えてみせるでプルンス!」

 

 プルンスは真剣な眼差しでユニを見つめる。

 しかし、目が合うと、ユニはぷいっと顔をそむけてしまう。

 

「……プルンスプルンス、うるさいニャン。それに、あなたはいったい、誰ポジションなのよ」

「プルンスはマオたんファンクラブ会員番号1。マオたん伝道師でありマオたん命のプルンスでプルンスよ」

「嘘はやめてよ。あなたの会員番号は10111011番でしょ」

「うっ……バレたでプルンスか……」

「そもそも1番はわたしニャン」

「でも、心の中の番号は1番でプルンス。プルンスの心はいつもマオたんとともにあるでプルンス」

「まったく、調子がいいんだから」

 

 ユニは呆れながら笑う。

 

「……それにしても、台風、おさまらないでプルンスな」

「そうね」

 

 プルンスは外をぼんやりと眺める。

 

「――やっぱり、マオたんの歌、聞きたかったでプルンス」

 

  プルンスがつぶやいたとき、ガツン、とロケットの窓のあたりで音がした。風に飛ばされた何かがぶつかったようだ。プルンスはすぐさま窓に問題がないか確認しに行く。幸い、傷などは見受けられない。

 

 ほっと安堵して元の場所に戻ろうとした、そのとき。

 

 プルンスはとうとう自分の頭がおかしくなかったのかと疑った。台風対策による疲れから、幻想でも見ているのではないかと訝しんだ。己の目をゴシゴシと拭い、プルンスはもう一度、目を開く。

 

 そこには、マオがいた。

 

「……ユニ?」

「マオだニャン」

「え? あ……いや……え……?」

 

 唐突に現れたマオに、プルンスは言葉を失う。

 狼狽するプルンスをよそに、マオは持っていた缶を口元に運ぶと、大きく息を吸う。

 

 ――スキヨ、キライヨ、どっちがホンネ?

 

 マオは歌い始める。マイクもなければスピーカーもない。手に持っているのは缶ジュースだ。

 傍から見れば、なんてことのない、ただのアカペラである。

 

 ――謎が謎を呼ぶ、Cosmic Mystery Girl

 

 しかし、プルンスの目には、確かにプレミアムライブの会場が見えていた。

 

 ――だって私、ニャンバーワン! 宇宙一のアイドルだニャン!

 

 プルンスの脳裏には、これまでのマオとの思い出が走馬灯のように蘇っていた。初めてラジオで聞いたマオの歌。何度申し込んでも当たらないライブのチケット。天文学的な倍率を潜り抜けて、ついに手に入れた念願のプレミアムライブのチケット。そして、ゼニー星で知ることとなったマオの正体。

 

 プルンスにとって、マオは喜びであり、怒りであり、哀しみであり、楽しみだった。

 

 ――いつかはFall in Love!

 

 マオが口元から缶を離す。気が付けば歌は終わっていた。楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうと言うが、プルンスにとって、マオのライブはいつも刹那よりも短い。

 とめどなく零れ落ちる涙もそのままに、プルンスは思いの丈を拍手に込める。

 

「ありがとうでプルンス……ありがとうでプルンス……!」

「ちょっと、泣きすぎニャン……」

「プルンスは……幸せ者でプルンス~!」

 

 感極まったプルンスは、マオの胸に飛び込んでいく――が、ぺしっとはたき落とされる。

 

「ど、どさくさに紛れてくっつかないでよ!」

「ご、ごめんでプルンス! つい興奮してしまったでプルンス……」

 

 プルンスが平謝りしていると、マオの変化が解けていく。

 

「あっ……」

 

 変化が解けたのは、ユニにとっても無意識のことだったらしい。ユニ自身もびっくりした表情をしている。

 レインボー星人が変化を保つためには、平常心でい続けなければならないと言う。プルンスは自責の念に駆られる。ユニには、嫌な思いをさせてしまった。

 

「あ、あの……本当にごめんでプルンス……」

「……別にいいわよ。ちょっとびっくりしただけニャン」

 

 ユニは目を伏せながら言う。

 

「せっかく、プルンスのために歌ってくれたのにでプルンス」

「べ、別にあなたのためにってわけじゃ……」

「本当に悪かったでプルンス。握手会でもないときにアイドルに触ろうとするなんて、プルンスはファン失格でプルンス……万死に値するでプルンス……」

 

 プルンスは壁に頭を打ち付ける。

 

「いや、だから、大袈裟ニャン……」

「……外で頭を冷やしてくるでプルンス」

「え?」

 

 プルンスはAIを操作して外に出ようとする。贖罪のためではない。これ以上、冷静さを失ったままユニを傷付けたくなかったのだ。

 しかし、あと少しで操作を終えようとしたとき、プルンスの手が止まる。

 

 止めたのではない。止められたのだ。

 

「……頭を冷やすのは、勝手だけど、」

 

 ユニはプルンスの触手を握りながら言う。

 

「アンコールのひとつもないのは、ちょっと、寂しいんだけど」

 

 プルンスはぽかんと口を開けて、ユニを見つめる。

 ユニは顔を伏せたまま、目を合わせようとしない。耳はしおらしく垂れていて、尻尾はゆらゆらと左右に揺れている。

 何を言うのが正解なのか、プルンスには分からない。散々考えた末、けっきょく絞り出したのは、シンプルな言葉だ。

 

「――アンコール、でプルンス」

 

 気のせいではない、はずだ。

 そのとき、プルンスは確かに、ユニが笑う声を聞いた。

 

「……曲は、何がいいの?」

 

 ユニはポケットから香水を取り出す。

 が、今度は、プルンスがそれを止めた。

 

「プルンスは、ユニの歌が聴きたいでプルンス」

 

 プルンスが微笑みかけると、ユニは無言のまま手元に視線を落とす。触手と手が触れ合っている。ユニの手のぬくもりを感じ取ったプルンスは、慌てて離そうとする。

 

「……好きよ」

 

 ユニはプルンスの触手をぎゅっと握り返しながら言う。

 プルンスは待つ。ユニが歌を続けるのを待つ。スキヨ、キライヨ、どっちがホンネ? 謎が謎を呼ぶ、Cosmic Mystery Girl……

 

「……え?」

 

 いつまでたっても歌が始まらないことに動揺する。もしかして、とプルンスは己の心臓が高鳴るのを感じる。さっきの言葉は、歌詞ではなくて――。

 

「キライヨ、どっちがホンネ?」

「やっぱりそうでプルンスな~!」

 

 ユニが悪戯っぽく笑うのを見て、プルンスは自嘲する。そして、すぐに気を取り直して自作のうちわを振り上げる。今はがっかりしている場合ではない。ユニのスペシャルライブを、めいいっぱい楽しむのだ。

 

 窓に叩きつけられる雨粒は随喜の涙だ。外から聞こえる轟音は歓喜の声だ。プルンスは台風の渦ではなく、熱狂の渦に巻き込まれている。

 

 まるで自分の感情を表しているようだ、とプルンスは思った。

 

 

 了

 

その他のスタプリSS

 『猫にドーナツ』

 マオたんのことが大好きすぎるプルユニの話。コメディです。www.konjikiblog.com

 

『膝の上の猫』

 ひかるさんに膝枕してもらうひかユニの話。百合です。

www.konjikiblog.com

 

『塩味の紅茶』

 和解後のユニとアイワーンちゃんがめいいっぱいいちゃいちゃする話。百合です。

www.konjikiblog.com

 

 節操がなくて申し訳ないのですが、ユニ周辺のカップリングはどれも好きで、ひかユニ、ユニアイ、プルユニをくるくる妄想している気がします。プルユニは、この「相棒」みたいな関係が好きです。また何か思いついたら妄想したいです。

 

 以上、読んでいただき誠にありがとうございました。