金色の昼下がり

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【スタプリSS・小説】『正しい温泉の入り方』ユニアイの二次創作

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 少し前にスター☆トゥインクルプリキュア(ユニアイ)関連でこんな妄想ツイートをしました。 

 

 

 いろいろ試行錯誤していたところ、気が付いたらユニアイの二次創作ができていました。

 

 正気を失いながら書いたので、正気を失っているうちに公開します。

 和解後のユニとアイワーンが、一緒に温泉に入る話です。

 全年齢向けのゆるい百合(?)コメディです。

 

(ユニアイ/全年齢/ゆるい百合(?)コメディ/8000字程度)

 

 

 

『正しい温泉の入り方』


「――ちょっとこれ、冷たいわよ!」
「すぐ温かくなるから我慢しろっつーの」
「勢いが強すぎるのよ! 目に入るニャン!」
「目をつぶってろっつーの」
「痛い痛い! ほら! 泡が目に入ったじゃない!」
「だから目をつぶってろっつーの!」
「このままだと失明するニャン! うわっ、苦っ……! 泡が口のなかに入った……! 何なのこれ、毒!? もうお風呂なんて嫌…….!」
「ああもううっさいっつーの! ちょっとくらい入っても大丈夫だっつーの!」

 

 ユニが騒ぎ立てるせいで、なかなか洗身が進まない。
 アイワーンはユニの頭をシャワーで流しながら、内心で愚痴る。

 

 ――ったく、何でこんなことになったっつーの?

 
 それは、思い返すこと1時間前に遡る。


☆ ☆ ☆


「――ねえ。ところで、お風呂って何なの?」

 

 ロケットの中に入ると、ユニとひかるは何やら風呂の話をしていた。

 アイワーンの存在に気付いた二人は、会話を中断させて一斉にこちらを振り向く。少し気まずそうな表情を浮かべているのを見ると、直前までアイワーンの話をしていたのかもしれない。内容は分からないが、どうにしたっていい気はしない。

 

「お、おはよー!」

 

 取り繕うようにひかるが声かけるが、ユニは意味深な視線をアイワーンに向けるだけで、会釈すらしようとしない。

 アイワーンは苛立ちを感じつつ、無言で椅子に座る。

 

「今ね、ユニとお風呂の話をしててね……」

「興味ないっつーの」

「……あっ、そうだ! アイワーン、アイスいる?」

 

 ひかるは虹色のアイスを見せながらいう。

 

「この前見つけたんだけど、このアイスの名前、『レインボーキャット』っていうだって! ユニみたいで、キラやば~じゃない!?」

「いらないっつーの」

 「そ、そっか……」

 

 ひかるは寂しそうにいうが、すぐに元の笑顔に戻ってユニに話しかける。

 

「ねえねえユニ。さっきの話なんだけど、もしかしてレインボー星人は体を洗ったりしないの?」
「そんなことないわよ。元の姿のときはブラッシングを欠かさないし、それにちゃんと毎日体は拭いてるわ」
「拭く……?」
「体拭きタオルでね。あなたもそうでしょ?」
「う、うーん……」

 

 ひかるは曖昧な笑みを浮かべながら、持っていたアイスを一口かじる。

 

「アイワーンはお風呂、知ってるよね?」
「……あ?」

 

 急に話しかけられたアイワーンは嘆息混じりに答える。

 

「風呂を知らないのは文化人じゃないっつーの。原始人だっつーの」
「げ、原始人? バカにしてるの?」

 

 ユニは頬を膨らませながらアイワーンのことを睨みつける。

 

「別に? 原始的な生活をする人間のことを原始人と呼ぶのは普通だっつーの。そもそも、原始人だといわれたことで屈辱を感じるんだとしたら、それこそ原始人に失礼だっつーの」

「あなたはごちゃごちゃと屁理屈を……」

「ま、まあまあ……」

 

 二人の間にひかるが入る。

 

「宇宙には色んな星があるんでしょ? お風呂の文化のない人たちだっているはずだよ。それに、惑星レインボーでは水って貴重なんだろうし」
「それはそうよ。惑星レインボーでは、水はとても大切にされているわ」

 

 アイワーンは腕を組みながら口を開く。

 

「あんたがアイドルやってたときに泊まったホテルに、風呂はついてなかったっつーの?」
「だからお風呂って何なのよ」
「ホテルによってはトイレの横についてたり、バスタブはなくてシャワーだけがついてたり……」
「ああ、あれって物置じゃなかったの?」
「…………」

 

 アイワーンが呆れ顔でユニのことを見ていると、ひかるが何かを思いついた様子で、キラキラと目を輝かせながら口を開く。

 

「そうだ! そしたら、一緒にお風呂に入ってみようよ!」
「お風呂に? わたしが……?」
「そうそう! 一緒に入ると楽しいよ~!」
「楽しいの……?」

 

 ユニは何が何やらわからず、困惑している様子だ。

 

「いいからいいから! 決めつけはなしだよ!」
「ちょ、ちょっと……」
「ね、アイワーンも一緒に入ろうよ!」
「あ、あたいも……?」

 

 急に声をかけられたアイワーンは、思わず身を引く。

 

「どうせなら一緒の方が楽しいよ! 近くにいい温泉があるんだ!」
「あたいは別にいいっつーの……っつーか異星人だってバレるし……」

「この時間はいつも人がいなくて貸し切りだから大丈夫だよ! 向かってる途中も、これをつけてれば怪しまれない!」

 

 そういって、ひかるは頭をすっぽり覆う『宇宙人のマスク』を取り出す。

 

「宇宙人が宇宙人のマスクをつけるなんて、キラやば~!」

「......最悪だっつーの」
「それに観星町の温泉はね、お湯がぬめぬめ~ってしてて、とってもキラやば~なんだよ!」

「ぬ、ぬめぬめニャン……?」

 

 ひかるは食べかけていたアイスをひと呑みすると、困惑するユニと嫌がるアイワーンの手を引き、強引に連れ出した。

 

「そしたら、いざ温泉へ! レッツゴー!」


☆ ☆ ☆


 そういうわけで温泉に来たのだが、着替えている最中、ひかるは急激な腹痛に襲われたといい、トイレにこもってしまった。
 優秀な科学者たるアイワーンは、ひかるの腹痛の原因に薄々気付いている。

 

「あの子、まだ来ないわね……病気じゃなきゃいいけど」

「あれは病気じゃないっつーの」

「分かるの?」

「大方、アイスの一気食いで腹が冷えただけだっつーの」 

「ああ……そういえば食べてたわね、アイス……」

「温泉で汗を流しに来たのに、トイレの水を流してるだけじゃ世話がないっつーの」

「上手いこといったつもり?」

 

 と、ようやくユニの体を流し終えたアイワーンは、ほっと一息つく。

 

「やっと洗えたっつーの」

「ふぅ...これで終わりなのよね?」

 

 ユニも相当疲れたようで、ぐったりした様子で尋ねる。

 

「いやいや、全然終わりじゃないっつーの」
「えっ……?」

 

 戸惑うユニに、アイワーンはにっと口元を歪ませる。

 

「むしろ、温泉はこれからが始まりだっつーの」

 

 アイワーンは立ち上がると、ユニを露天風呂に連れて行く。

 ひかるのいっていた通り、他に客はいないし、来る気配もない。

 人が来たら逃げるかタオルで顔を隠すしかないと思っていたが、何とかそうせずに済みそうだ。

 

「これが露天風呂。外の空気にあたりながら風呂に入る……一見すると意味不明な文化だけど、実際やってみると結構ハマるっつーの」

 

 アイワーンは一人でずんずん進んでいき、温泉のなかに体を沈める。

 

「あ~……」

 

 その気持ちよさには自然と声が漏れ、疲れがじんわりと抜けていくような感覚に包まれる。

 

「研究者は肩と腰がやられがちだから、温泉は最高……って、何してるっつーの?」

 

 ユニは少し離れたところで体を縮みこませている。

 

「な……何でもないわ……」

「早く来いっつーの」

「い、嫌......」

 

 この期に及んで躊躇しているユニを見て、アイワーンはせせら笑う。

 

「プッ、もしかして、怖いっつーの?」
「ち、違うニャン! 怖いとかじゃなくて、溺れる危険があるし、そもそもわたしには必要ないの!」
「普通にしてたら溺れたりしないっつーの。待ってらんないから、とっとと来いっつーの」
「で、でもわたしは――」
「ああもう面倒くせぇなぁ……ほら」

 

 アイワーンは手を差し出す。

 

「掴まれっつーの」

 

 ユニは驚いたようにアイワーンのことを見つめる。
 が、それでもなかなか来ないので、アイワーンは苛立ちながら催促する。

 

「早くしろっつーの……ずっと手を出してるあたいがバカみたいだっつーの」

 

 じっと見られていると、だんだん恥ずかしくなってくる。

 

「……本当に良いものなのよね、それ」

「知らないっつーの」
「し、知らないって……」
「あたいは好きだけど、あんたがどうだかは知らないっつーの」

 

 そういって、アイワーンはユニのことを見る。

 ユニは温泉とアイワーンの手を交互に見ながら、まだ躊躇している様子だ。

 いい加減、伸ばしている腕に疲労がたまってくる。

 もう無理か、と諦めて手を引っ込めようとしたとき――

 アイワーンの手に、柔らかな感触が伝わった。

 

「…………」

 

 ユニは、恐る恐る――しかし、力強く、アイワーンの手を握った。

 

「……ゆっくりでいいから、足先から入れていくっつーの」
「……分かったわ」

 

 ユニは慎重に、足の爪先だけを入れていく。
 お湯の温もりが伝わったのか、ビクン、と体を震わせる。

 

「あ、温かいニャン……」
「そりゃそうだっつーの。もし冷たい風呂が良かったら、水風呂ってのがあるっつーの」

「そんなのもあるの?」

 

 大袈裟に驚くユニ。

 

「ここの水風呂の温度は十五度だっつーの。入りたけりゃ入ってくれば?」

「何が楽しくてそんな冷たい水に入るの……?」

 

 意味が分からないという表情をするので、アイワーンは思わず笑ってしまう。

 

「な、何がおかしいのよ」

「いや、あんたにこういう事を教えるのは初めてだから、なんか笑えるっつーの」
「教えるのはいつもわたしだったわね。あなた、何も知らないから」
「……お湯に沈めてやるっつーの」
「や、やめて! 本気でやめて!」

 

 普段のアイワーンなら、悪ふざけでユニの腕を引っ張っていただろう。温泉のなかに突き落として、ケヒャハハハと嘲笑していたかもしれない。

 しかし、どういうわけか、このときばかりはそういった悪戯心は息を潜めていた。

 

「……段差があるから、気を付けるっつーの」
「引っ張らないでよ……絶対引っ張らないでよ……」
「振りにしか聞こえないっつーの」
「な、何なのよ、『振り』って?」
「何でもないっつーの」

 

 ユニはまた一歩、反対側の足をゆっくりと入れていく。
 怖がりながらも入ってくるユニを見て、アイワーンは「いい調子だっつーの」と声をかける。
 ところが、ようやく二段目まで来たとき。
 勢いよく露天風呂のドアが開け放たれ、彼女がやって来た。

 

「――おっ待たせ~! ごめんね二人とも~!」

 

 大きな声で元気いっぱいにいうのは、星奈ひかるだ。
 トイレの地獄から抜け出し、ようやくこちらに来られたらしい。
 普段ならやかましいなと思うくらいで済むが、今回ばかりはタイミングが悪かった。


「――えっ、あっ……!」

 

 突然のひかるの声に驚いたのか、ユニは盛大に足を滑らせた。

 重心を失ったユニの体が、ゆっくりと、少しずつ、傾いていく。

 

 このとき、アイワーンは視界に映るものすべてがスローモーションになっていることに気付いた。

 

 このままいけば、ユニは温泉のなかに頭を突っ込むだろう。

 驚きと焦りから、鼻から湯を吸い込むかもしれない。苦しい思いをすることで、温泉のことが嫌いになるかもしれない。もう二度と温泉には行かないといい出すかもしれない。

 

 ――どうでもいいっつーの。

 

 心のなかで、アイワーンはつぶやく。

 こいつがどうなろうが、あたいには関係ない。温泉が嫌いになろうが、知ったことじゃない。こいつのことなんか、どうだっていい。どうでもいい。

 

 その、はずだった。

 

「――バケニャーン!」

 

 気が付けば、アイワーン叫んでいた。

 動き出した世界で、掴んでいた手を一気に引き寄せる。

 

 ユニの体が、アイワーンのもとに飛び込んだ。

 

 温かくて柔らかな感触に、アイワーンは思わずドキリとする――が、それも束の間。

 ユニの重みと衝撃に耐え切れなかったアイワーンは、後ろ向きに倒れていく。そしてユニの下敷きになるようにして、ごぼごぼと温泉の中に沈んだ。

 

「ぶっ......はっ......げぇっ......!」
「えっ、あっ、アイワーン......!」

 

 ユニは慌てふためきながら、アイワーンの上からどいた。

 温泉から顔を出したアイワーンは、涙を浮かべ、ゲホゲホとせき込む。

 

「ご、ごめん……」

 

 しどろもどろになりながら、ユニは謝る。

 その様子を見るに、温泉のなかに頭を突っ込まずには済んだようだ。

 

「べ……別にいいっつーの……」
「だ、大丈夫……?」
「大したことない……っつーの」
「ほ、ホントに……? 涙が出てるように見えるけど……」
「お湯だっつーの」

 

 むせ込みながら、アイワーンは答える。
 するとひかるが慌てながら近づいてきて、ユニとアイワーンに頭を下げた。

 

「ご、ごめんね! わたしが驚かせちゃったから……」
「……そんなことより、お腹の調子はもう大丈夫っつーの?」
「うん! それはもう治ったんだ!」
「かけ湯はしたっつーの?」
「あっ! まだだった!」
「……温泉のマナーを守れっつーの」

 

 はーい、といってひかるは洗い場の方に戻っていく。
 
「何であたいがプリキュアにマナーを教えてるんだっつーの……」

 

 ったく、とアイワーンが頭をがりがりかいていると、ユニが愉快そうに笑った。

 

「ふふっ……」
「な、何がおかしいっつーの?」
「いや……アイワーンって、意外にしっかりしてるんだなって」
「意外は余計だっつーの……。それより、温泉はどうだっつーの?」
「あっ……そういえば……」

 

 ユニは手でお湯をすくい、自分の胸元にかけながらいう。

 

「なんだか……疲れが取れていくみたい……」

 

 ユニは頬を上気させながら、うっとりと表情を緩ませる。

 そんなユニのことをアイワーンはじっと見つめる。

 こうして見ると、やはりユニは整った顔立ちをしていると思う。

 ぼやっとしていると、不意に目が合った。

 ユニは柔らかな笑みを浮かべると、アイワーンに向かっていった。

 

「嫌いじゃ……ないわ」

 

 アイワーンの心臓が、小さく跳ねる。

 視線を縫い付けられたように、ユニから目を離せなくなる。
 その目は、かつてアイワーンのもとで働いていた執事のそれを思い起こさせる。
 色は違うし、形も違う。
 けれど、瞳の奥の輝きは、まったく同じものだった。

 

「あ、あたいも......」

 

 ごくり、と唾を飲む。

 それは、ずっといいたくて、いえなかった言葉だ。

 アイワーンは拳にぎゅっと力を込めながら、自分にいい聞かせる。

 

 ――何ぐずぐずしてんだっつーの。早くいえっつーの。

 

 しかし、いいたいことは決まっているはずなのに、どうしても言葉として発することができない。その勇気が出ない。

 けっきょく何もいえないでいると、ユニの方が先に口を開いた。

 

「悪くないわね......お風呂って」

「そっちかっつーの!」

「そっち?」

「何でもないっつーの!」

 

 タオルを顔に押し当てる。

 アイワーンは猛烈に水風呂に入りたくなった。

 

「ねえ、アイワーン」

「何だっつーの……」

「さっきは、助けてくれてありがと」

「……何のことか分かんないっつーの」
「科学者って鈍いのね」
「あんたにはいわれたくないっつーの」
「え? どういう意味よ」
「何でもないっつーの」

 

 アイワーンは顔を上げると、一度大きく深呼吸をして、温泉のなかに肩を沈めた。

 それを見ていたユニは、真似をするように温泉に浸かる。

 穏やかな風が、アイワーンの顔を優しく撫でる。

 

「何だか信じられないわね。こうしてあなたと温泉に入るなんて」

「それはこっちの台詞だっつーの」

「まあ……全部、あの子のおかげね」

 

 ユニは露天風呂のドアの奥に視線を向ける。

 

「あの子がいなかったら、あなたと一緒に温泉に来ることもなかった」

「フン……何をいい出すかと思えば」

「だって、そうでしょ?」

「はいはい、そうだっつーの」

 

 アイワーンは大きく息を吐き、濡れた前髪をかき上げる。

 

「ちょっと、話聞いてる?」

「あんたと違って、人の話はちゃんと聞いてるっつーの」

「わたしだって聞いてるわよ」

「どうだか」

 

 アイワーンは再びため息をつく。

 やはり、覚えていないようだ。

 昔、アイワーンがまだノットレイダーにいたころ、『執事』をプルルン星の温泉に誘ったことがあった。しかし、せっかく予定まで立てていたのに、約束が果たされることはついになかった。

 すべては、『執事』がアイワーンのことを裏切ったせいだ。

 あの裏切りさえなければ、温泉なんてずっと前に一緒に行っていたのだ。

 

「ねえ、アイワーン」

「何だっつーの」

「ひとつ、思ったんだけど、」

 

 ユニはアイワーンの顔をじっと見つめる。

 アイワーンは反射的に目をそらしかける――が、ここでそらしたら負けのような気がして、高鳴る心臓を抑えながら睨み返した。

 ユニは続ける。

 

「あなたって、メイクを落とすと、けっこうかわいいのね」

 

 瞬間。

 アイワーンの心臓は、大きく飛び跳ねた。

 不意討ちだった。

 

「いっ、いきなり何いうんだっつーの!?」

 

 アイワーンは自分の顔を手で隠す。

 

「今度、かわいい感じのメイクをしてみたら?」

「うっさいっつーの! 余計なお世話だっつーの!」

「別に、いつものギャルメイクも悪いわけじゃないけど……って、顔赤いけど、大丈夫?」
「のっ、のっ、のぼせただけだっつーの!」

 

 アイワーンはバシャバシャと音を立てながら温泉を上がる。

 見ると、ユニは悪戯っぽく笑っている。

 

「ちょっと、どこ行くのよ?」
「先に出てるっつーの!」

「もしこの後もメイクするつもりなら、そのままにしといてよ。わたしがやってあげるニャン」

「いらないっつーの!」

 

 逃げるようにして、アイワーンはドアの方に駆けていく。途中で何度も滑りそうになりながらも、何とか洗い場のところにまでたどり着く。

 

「あれ、アイワーン? もう出ちゃうの?」

 

 内湯に入っていたひかるが、ひょっこり顔を出して声をかける。

 

「もうのぼせたっつーの」

「そっか~。確かに顔赤いもんね」

「赤くないっつーの!」

「な、何で怒ってるの……?」

「何でもないっつーの! っつーか、あんた、何で内湯に……?」

「かけ湯した後すぐ露天風呂に行ったんだけど、二人とも話し込んでたから、邪魔しちゃ悪いかな~って」

「……別に大した話はしてないし、今日はあいつに色々教えてたせいで、癒されるどころか疲れ果てたっつーの」

「色々教えてたんだ?」

「あいつ、何も知らないし水を嫌がるから苦労したっつーの」

「そっか……でも、良かった……」

 

 ひかるは何かを確認するように、辺りを見回す。

 

「今日聞いたんだけどね。ユニ、昔アイワーンと温泉に行く約束をして行けなかったこと、気にしてたみたいなんだ」

「......えっ?」

「ユニがキュアコスモになる直前のことだったみたいだし、タイミング的には仕方なかったとも思うんだけど、それでもユニはアイワーンとの約束を破ったことを気にかけてたみたいで……あっ。今の話、ユニには秘密だよ!」

 

 人差し指を唇に当てて、ひかるはウィンクする。

 ひかるの意図に気づいたアイワーンは、思わず目を見開いた。

 

「今日、あたいたちを温泉に誘ったのは……」

「わたしが二人と温泉に行きたかっただけだよ。結局、お腹が痛くて一緒には入れなかったけど、でも、二人が一緒に入れたのなら良かった!」

 

 ひかるは微笑みながらいう。

 それはどう考えても真実ではなかったが、アイワーンにはもうひとつ気になることがあった。

 

「......もしかして、あんた、」

 

 いいかけて、アイワーンは口を閉じた。

 聞いたところで、またヘラヘラした笑顔で誤魔化されるのがオチだと思ったからだ。

 

『腹が痛いのも、嘘だったっつーの?』

 

 そんなことを聞いて、何になる?

 

「そういえば、出る前にシャワーで流さないの?」

 

 ふと、話題を変えるようにひかるが問いかける。

 

「シャワーを浴びたら温泉の成分が落ちるから、そのまま出るんだっつーの」

「へ~! そうなんだ!」

 

 実際のところどうなのかは知らない。地球にはそのように書かれている文献もあったが、なんせ文明の遅れている地球人の書いたものだ。信憑性は薄い。

 しかし、いずれにしても、そんなことはアイワーンにとって些末な問題だった。

 

 シャワーを浴びなかったのは、もっと単純な理由である。

 

 ひかると別れたアイワーンは、そのまま更衣室に向かった。

 水滴が垂れないようにざっと体を拭き、小走りでなかに入る。

 キョロキョロと周囲を見回し、誰もいないことを確認すると、アイワーンは自分の胸にそっと触れる。


 そこにはまだ、あの泥棒猫を受け止めたときの柔らかな感触が残っていた。

 

「……バケニャーン」

 

 アイワーンはぽつりとつぶやく。

 どれくらいの間、そうしていただろう。

 顔を上げると、視界の隅に自販機が映った。

 それはアイスの自販機だ。ひかるが食べていた虹色のアイスも売っている。あとで買ってみるか、とアイワーンは思った。

 

 着替えを済ませ、髪にバスタオルを巻く。

 メイク道具に手を伸ばしたとき、ふとユニの言葉を思い出す。

 

 アイワーンは鏡を見て、少し考えると、その手を引っ込めた。

 

 

 了

 

他のスタプリの二次創作

 

 ひかユニ(百合)です。小悪魔チックなひかるさんに遊ばれ続けるユニのお話。

www.konjikiblog.com

 

 プルユニです。マオたんへの愛が爆発しているだけかと思いきや、ユニへの愛も尋常ではなかったプルンスのお話。

www.konjikiblog.com

 

 バケアイ/ユニアイです。バケニャーンショックを受け、Twitterで書き倒したものをまとめたものです。

www.konjikiblog.com

 

 ユニアイ、今回はアイワーンちゃんが顔を赤くする話でしたが、ユニがもっと苛烈にアイワーンちゃんのことをいじめ倒すシチュエーションも好きですし、逆にアイワーンちゃんが魔性の笑みを浮かべながらユニを弄ぶシチュエーションも好きなので、また時間があるときに妄想したいなと思っています。