金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

【わんぷりss】『真夜中のお散歩』※いろまゆの二次創作

 真夜中に誰かとこっそりお散歩にいくいろはをこむぎが追いかけると、そこにはリードを持ったまゆがいて……?

 

(いろまゆ/1700字程度)

 

『真夜中のお散歩』

  最近、いろはが自分抜きで散歩している。

 時間は決まって夜中だった。それも、家族の誰にもバレないようにこっそりと抜け出してはお散歩にいく。初めて気づいたときには自分もいっしょにいくと言ったけど、いろはは許してくれなかった。こむぎにはまだ早いからと言って。

 よく意味が分かなかったし、もちろん納得できなかったので、ぜったいについていくと言い続けていると、ついにいろはは誰かに連絡して、その日のお散歩自体をやめてしまった。そっか、強引に言うことを聞いてもらおうとしてもダメなんだ、と自分なりに反省して、次はもう少し慎重に行動することにした。

 

「……よし、こむぎは寝てるね」

 

 夜中、いろはの声が聞こえた。少ししてから、家を出ていく音がした。寝たふりをしていたこむぎは、急いでいろはを追いかける。姿は見えなくなっていたが、大丈夫。地面には匂いが残っている。他にも嗅いだことのある人の匂いがあったような気もしたが、今はいろはのことだけを考えればいい。

 そうしていろはの匂いを追いかけていくと、森の入口にたどり着いた。いろははこの中に入ったらしい。ズルい。いつも危ないから森にはひとりで入っちゃダメだよって言ってるのに。

 少しだけ怒りながら、いろはの匂いを追いかけていく。今のこむぎは犬だ。足音を立てずに歩くことは簡単だった。事前に知ってたとしても、夜の森の中にいる自分を見つけるのは難しいだろう。

 いろはを見つけたのはその数分後のことだった。こむぎは声をかけず、木の陰からそっと様子を見守った。そこにいたのが、いろはだけじゃなかったからだ。

 

「いろはちゃん、来てくれてありがとう」

「ううん、まゆちゃんこそ、夜中に抜け出すの大変じゃない?」

 

 ひろはといっしょにいるのはまゆだった。最近この街に引っ越してきた、いろはの新しい友だちだ。

 なんだ、いろはは友だちと遊びたかったんだ。でも、だったら何でこんな夜中に遊ぶんだろう。お昼の時間だけじゃ足りなかったのかな。考えていると、まゆがおずおずと口を開いた。

 

「じゃあ、あの、いつものこれ……」

 

 いろはが受け取ったのはリードだった。こむぎのリードではない。じゃあユキのかな? こむぎはすぐに考え直す。いや、ユキは猫だからこむぎみたいに散歩する必要はないって悟が言ってた。じゃあ誰の?

 答えはすぐに分かった。まゆの手には首輪が握られていた。”いろはが間違ってあげた首輪”だ。

 いろはがプレゼントしたおそろいのバッグ。あの中には本来、第二のサプライズとしてブレスレットも入れておくつもりだったらしい。ところがいろははブレスレットではなく犬用の首輪を入れてしまった。間違いに気付いたいろはは、すぐにブレスレットを届けにまゆの家に行った。そのとき首輪も回収したのだと思っていたが、どうやらまゆが受け取ったままのようだ。

 まゆが慣れた手つきで首輪を自分の首に着けると、二人して何も言わずにお互いのことを見つめ合う。

 不思議な光景だった。人間はリードをつけないっていろはは言っていたのに、今はまゆの首輪から伸びたリードをしっかり持っている。

 でも、何だろう。このとき、こむぎは自分でもよく分からない感情に直面していた。見てるとなんだか、胸がドキドキしてくる……。

 

「じゃあ、行こっか。……お散歩に」

 

 そう言って、いろはは森の中に消えていく。リードをつけたまゆを引いて。二人だけで。こむぎを置いて。

 ねえ、いろは。一声そう呼びかけたら、きっと、いろはは振り向いてくれた。そして森の中にいるわたしを見つけて、こむぎ、ってわたしの名前を呼んでくれる。どうしたのこむぎ、そんなところで。えへへ。いっしょにいたくて、追いかけてきちゃった。でもズルいよ、いろは。夜のお散歩に行くなら、わたしも連れてってよ。もう、仕方ないなぁこむぎは……。

 でも、こむぎにはできなかった。何となく分かっていたのだ。誰にも見つかっちゃいけない秘密事のように散歩する二人を見て、あの間に自分は入っちゃいけないのだと。

 

 

 次の日、いろはよりも早く起きたこむぎは、幸せそうな寝顔を浮かべるいろはの腕の中に入った。ペロリと頬を舐めると、いろはは寝ぼけながらこむぎの頭をゆっくり撫でた。

 その手には、まゆの匂いがはっきりと残っていた。

あとがき

 リードは信頼の証なんだな~と思うと居ても立っても居られずいろまゆのリード付き散歩百合を書いてました。リード付き散歩百合ってなんだ。ここで大正コソコソ噂話。SMは信頼がないと成り立たないらしいですよ。

 

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