金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

【ひろプリSS】『ダークスカイから戻れなくなったソラがましろと××する話』※ソラましの二次創作

 ダークスカイから戻れなくなったソラがましろと××する話です。

 

(ひろプリss/ソラまし/百合/コメディ/4000字程度)

 

 

『ダークスカイから戻れなくなったソラがましろと××する話』

 なんだかんだあってダークヘッドを倒したのはいいものの、見た目が戻らなくなってしまった。

「やっぱり、治りませんね……」

 鏡に映る漆黒の翼を見つめながら、ソラ・ハレワタールはため息をつく。服は着替えれば済むが、アンダーグエナジーで構成されたこの翼は完全に体と同化しておりどうにもできなかった。

 寝不足の目をこすり、リビングに向かう。

「あ……ソラちゃん……」

 先に起きていたましろは、ソラの変わり果てた姿を認めると、目を見開いた。

「あの、やっぱり、寝て起きてもこのままでした」

 ソラは努めて明るい口調で言った。返事はない。一人分の乾いた笑いが虚しく響くだけだ。やがてましろは無言のまま、逃げるようにリビングを出ていってしまう。残されたソラは、追いかけることも、声をかけることもできず、その場に立ち尽くす。

 昨日からずっとそうだ。翼の生えたソラに対して、ましろはよそよそしい態度を見せるようになった。悲しくないと言えば嘘になるが、とやかく言う資格はないとソラは思う。

 ――だってわたしは、ましろさんを裏切ったんですから。

 

 ※

 

「アンダーグエナジーに取り込まれたときも、ましろさんはわたしを信じてくれていました。わたしが正気に戻れたのはましろさんのおかげです。でも――わたしは、ましろさんの期待に応えられませんでした」

 力を込めて翼を掴むと、ズキリとした痛みが伝った。アンダーグエナジーの翼はすでに体の一部になっているのだ。その事実が、ソラの心をぎゅっと締め付ける。

「わたしはアンダーグエナジーを完全に打ち負かすことができませんでした。その結果が、これです。ましろさんは信じてくれていたのに……。こんなわたしは、ヒーロー失格です。だから、ましろさんがわたしを避けるのも、無理もないんです」

 涙を堪えながら言い終えると、隣のベンチから気まずそうな声がした。

「そんな重い話、なんでオレにするのねん……絶対相談する相手間違えてるのねん……」

「ザブトンさんなら、人に避けられるこの辛さを分かってくれるんじゃないかなと思いまして」

「ザブトンじゃなくてカバトン! あと遠回しにオレのこと人に避けられがちな可哀想なやつ扱いするのやめるのねん!」

「そうですよね……ザブトンさんはもともとそういうの気にしなさそうですもんね……」

「だからカ・バ・ト・ン! あと気にする気にしないの話してるわけじゃないのねん!」

 カバトンはひとしきり突っ込みを入れる。が、ソラが相変わらず陰鬱とした表情を浮かべているのを見ると、はぁ、と大きなため息をついて、

「まあ……こんなとこでガタガタ震えてメソメソ泣いていても仕方ないのねん。今すぐ行って、お前の考えてること全部、直接話してみるといいのねん」

「でも……怖いんです……こんな見た目になってしまったわたしを、やっぱりましろさんは受け入れられないんじゃないかって……」

 ソラを元気付けるように、カバトンはその背中を軽く叩く。

「オレが思うに、別に見た目が変わろうが、お前がヒーローであることは変わりないのねん」

「……うっ……ぐずっ……ぐずっ……」

「泣くのはやめるのねん。お前はみんなを救ったヒーローなのねん」

「い、いえ……今の言葉……ホントはましろさんに言ってもらいたかったのにって……後で同じことをましろさんに言ってもらえたとしても、カバピョンの顔が浮かんでしまうと思うと涙が止まらなくて……」

「カバトンだって言ってんだろ! あとお前さっきから失礼すぎだろ! 本当になんでオレに相談したのねん!?」

「わたしにとって話しやすい人と言えば、バリトンだったので……」

「カバトンな……いや自分で言うのもなんだけどどう考えたらオレが話しやすいポジションになるのねん」

「それは……その……言いにくいんですけど……わたしの中で一番なんです、カバトンは」

「え、一番……?」

 薄っすら頬を赤らめるカバトンに、ソラは真っすぐな目で言った。

「どう思われても気にならない人ランキング」

「お前なんか嫌い!」

 

 ※

 

 カバトンと別れたソラは、意を決してましろのいる家に戻ることにした。カバトンに勇気をもらったというわけではない。しかしカバトンを見ていると何となく自分も頑張ろうと思えるのだった。

 ましろの部屋のドアをノックする。返事はない。もう一度ノックをすると、バタバタと慌ただしい物音が聞こえた。失礼します、と言って、ドアを開けた。

「あの、ましろさんに、お話ししたいことが……」

「こっ、来ないでっ」

 丸々と膨らんだ布団の中から、ましろの悲痛な声がした。よほど会いたくないらしい。挫けそうになりながらも、ソラは必死に言葉を絞り出す。

「お願いです、ましろさん。聞いてください。わたしはましろさんを裏切ってしまいました。でも、そのままでいいので、わたしと顔を合わせなくていいので、聞いていただけませんか?」

「…………」

「わたし、ましろさんのことが好きです。こんな姿になっても、その気持ちは変わりません。ましろさんがわたしのことを嫌いになっても、わたしはましろさんが大好きです。今日は、それだけを伝えたくて」

「…………」

「すみません。こんな醜いわたしに言われても困ってしまうだけですよね。実は、ツバサくんが元の姿に戻るための研究をするって言ってくれたんです。どれくらい時間がかかるかは分かりませんし、元に戻れるかどうかも分かりません。でも、もし戻ることができたら、そのときはまた……」

「嫌だよっ!」

 突如、悲鳴のような声が部屋に響いた。続けて、痛々しい沈黙が舞い降りる。予想以上のましろの拒絶に遭ったソラは、目頭を熱くしながらうつむいた。

「……そうですよね。わたしの気持ちばかり言ってしまって、ごめんなさい。わたし、ましろさんの気持ちを、ぜんぜん分かっ」

「違うの」

 布団の中の声が、ソラの言葉を遮った。それは覚悟を決めた声だった。

「ソラちゃん……わたし、今から最低なことを言うね」

「えっ、あっ、はい……」

「わたしね……その……すごく、癖だったの……」

「へ、へき……?」

「だっ、だからそのっ……ソラちゃんの体から生えてる翼が……あと今は着てないけど、あの黒と赤を基調にした衣装も……燃えるような瞳も……すっごく……良くて……あっ、もちろん、もともとの姿もとっても素敵だったし好きだったし、ソラちゃんはなりたくてその姿になったわけじゃないって知ってるし、喜んじゃいけないって分かってるんだけど……でも、目の前にすると、どうしても、頬筋が緩むのを我慢できなくって……イケナイことだって分かってても、ずっとその姿でいてほしいって、その姿でぎゅってされたりしたらわたし、どうなっちゃうんだろうって……ぐずっ、あっ、想像したら泣いちゃいそう……だからその、わたし、自分で自分を抑えられなくて……」

「ましろさん……」

「ごめんね、ソラちゃん……こんなの、引いちゃうよね……」

 ソラはおもむろにベッドに近付くと、片膝を床につける。

「正直に言ってもいいですか」

「うん」

「引きました」

「だよね……」

「ドン引きです」

「ドンがついちゃうんだ……」

「なんかあれこれ悩んでいたことが全部ばかばかしくなりました」

 ソラはこの姿になってからのことを思い返す。ましろの様子がおかしかったのはすべて自分のせいだった。その事実は間違っていないが、ただ、どちらかというとおかしいのはましろの方だった。

「そうだよね……失望させちゃったよね……人の心を照らす前に自分の心をプリズムシャインしておけって思ったよね……こんなのプリキュア・アップ土下座の・シャイニングものだよね……」

「そこまでは思ってませんしプリキュア・アップ土下座の・シャイニングはさすがに酷いです。六十点」

「うぅ……やっぱりましろさんが一番グランプリのセンスはなかなか超えられないなぁ……」

 二人して思わず笑ってしまう。ソラは思い出していた。ましろと過ごしたこの一年間を。ああでもないこうでもないと、頭を捻りながらM-1グランプリの番宣をいっしょに考えたあの日々を。

 重苦しく曇っていた空気は、いつの間にかすっかり晴れ渡っていた。

「布団から出てきてくださいよ、ましろさん」

「でも、今のわたし、興奮のあまり酷い顔してるよ……? ソラちゃんの翼を見たら、最悪、かぶりついちゃうかもしれないよ……?」

「いいですよ」

 ゆっくりと、焦らすようにしながら布団を上にめくっていく。やがて、体育座りしていたましろが現れた。布団の中に潜っていたせいか、それとも癖のせいか、ましろの頬はじっとりと汗ばんでおり、朱色に染まっている。

 もしここにヨヨがいれば、とソラは思った。きっと、「結婚式のベールアップじゃないんだから」と言っていたことだろう。ヨヨはたとえツッコミを得意としていた。

 ソラはましろの顔を見つめて言った。

「一生いっしょに背負っていきましょう、癖という名の十字架を」

「こんなプロポーズは嫌だの大喜利じゃないんだから」

 ぎゅっと抱きしめると、ましろの温もりが伝わってくる。翼のあたりに生暖かいものを感じた。少しくすぐったい。が、いいよと言ってしまった手前我慢する。

 やがて密着していた体を少しだけ離して、改めてましろに向かい合う。窓から零れる陽光が、濡れた唇をキラリと輝かせた。

「ましろさん、大好きです」

「わたしもだよ、ソラちゃん」

 その日のキスは、アンダーグエナジー(羽付き)の味がした。

 

あとがきと反省

 ダークスカイ、ビジュアルめちゃくちゃ良くないですか???

 トワイライト様のときも思ったことですが、闇堕ち状態から元の姿に戻ったとき安心するのと同時に一抹の寂しさを感じずにはいられませんでした。だから、という訳ではありませんが……いや、完全にそういう訳なんですが、勢い余ってこんなものを書いてしまいました。すみませんでした。ましろさんはそんなこと言いません。

 日々が忙しく時々思い出したときにだけ浮上していますが、次のわんだふるぷりきゅあも楽しみです。またそのうち隙を見て何か書けたら書きたいです。

 

その他のひろプリSS

 続きを書くといいつつ書いた続きが↑でした。

 あとこのときはましソラだと思っていたのですが今回は悩みに悩みソラましとしています。(ソラましなのかましソラなのかは現在進行系で悩んでるんですがもうシリーズが終わりそう)

www.konjikiblog.com