数日前、スター☆トゥインクルプリキュアの妄想(ひかララ)でこんな呟きをしました。
惑星サマーンに到着した時、ひかるさんがいつもララとやってるようにサマーン人と触覚の挨拶をしようとしたら、顔を赤らめながら「それは恋人同士の挨拶ですよ」って言われて、思わずララを振り向くと、「だから連れて来たくなかったルン...」っていう#ひかララ
— 金色 (@konjikinohiru) August 22, 2019
明日(8月25日)になったら惑星サマーン編(スタプリ29話)に突入するので、そうなったらこんな妄想もやりづらくなってしまうかも? と慌てて書きました。
正気を失いながら書いたので、正気を失っているうちに公開します。
ただひたすら、ひかララがイチャイチャする話です。
(ひかララ/全年齢/百合/3000字程度)
触角と唇
もちろん、様子がおかしいことには気付いていた。
惑星サマーンに到着しても、ララの表情は浮かないままだった。
曇った顔つきで、ララはいった。
「ひかる、サマーンでは挨拶しちゃ駄目ルン」
「え? どうして?」
「何でもルン……」
ララはぷいっと顔をそむける。
「あ、もしかして、ヤキモチ?」
「ちっ、違うルン!」
急に声を荒げたかと思うと、ララはひとりで先に歩いていってしまう。
やっぱり様子がおかしい。ララを追いかけながら、わたしは考える。でも、理由が分からない。
公園のようなところに出たとき、誰かと待ち合わせをしている様子のお姉さんに「こんにちは」と挨拶をしてみた。ちらとララの方を見ると、「オ、オヨ……!」と何やら慌てている。
わたしはニッと笑って、お姉さんに向き直る。
「初めまして! わたし、星奈ひかる! 宇宙と星座が大好きな中学二年生!」
いつもララに対してやるように、両手の人差し指を前に出す。
しかし、どれだけ待ってもお姉さんの触角はこちらに来ない。
お姉さんは顔を赤らめ、唖然とした表情でわたしの顔をじっと見る。
「そ、その手……触角のつもりルン……?」
「わたしにはサマーンの人みたいに触角がないので!」
「そしたら、これの意味も知ってるルン……?」
「え? あ、はい……?」
意味って何だろうと一瞬思うけれど、あまり深く考えずにうなずいておく。
「ごめんなさい……わたしにはもう相手がいるルン」
「あ、相手……?」
お姉さんのいっていることが理解できず、ララに助け舟を求めようとする。
しかし、ララは顔をそらしてこちらを見てくれない。
「――ごめん、待ったルン?」
そうこうしていると、お姉さんのもとにかわいい格好をした女の子が来る。わたしよりは年上だけど、お姉さんよりは年下に見える。
「ううん、いま来たところルン」
お姉さんがにっこり笑って答える。
「ところで、この子、どうしたルン?」
「たまたま会った異星人の子で、名前は……」
「星奈ひかるです!」
そういって、わたしは諦めずにもう一度人差し指を出してみる。
女の子はむっと眉をひそめる。
「ちょっと、それ、意味分かってやってるルン?」
「え、あ、はい……」
「悪いけど、こういうことだから、他を当たるルン」
女の子はお姉さんに向かって触角を差し出す。
「ちょっと、こんな人前で……」
お姉さんはたじたじになりながらいうが、女の子は意に介さない。
「好きなだけ見せてあげればいいルン」
女の子は自分の触角をお姉さんのそれにタッチさせたかと思うと、そのままどんどん絡ませていく。
「ちょ、やっ……やりすぎ……!」
「ふふっ。たまにはいいルン」
「もう……っ」
二人は自分たちだけの世界に入りこんでいく。
顔を赤らめながら触角を絡め合う二人のことを見ていると、いくらわたしでも「それ」が何を意味するのか理解できた。
二人が手を繋いで歩き去っていくのを見届けると、ララの方を振り向いた。
ララは無言で足元を見つめている。髪の毛が邪魔で、表情が見えない。
「ね、ねえ……触角の挨拶って……」
おずおずと尋ねる。肩に触れようとすると、パシンと手で払いのけられる。
ララは顔を上げていう。
「だから……連れて来たくなかったルン……」
その顔は、痛々しいくらい、真っ赤に染まっている。
胸がキュッと痛む。ララの顔に、視線を縫い付けられてしまう。
「.......もう嫌ルン」
ポツリというと、ララは踵を返して逃げ出そうとする。
わたしは咄嗟にその手を掴んだ。
「や.......離すルン.......!」
「ララはわたしのこと、嫌い?」
「ち、違うルン.......。でも、嫌ルン.......」
蚊の鳴くような声でララはいう。
「何が嫌なの?」
「だって、こんなの、恥ずかしすぎるルン.......」
心臓が高鳴る。
ララの顔が見たい、とわたしは思った。
もっと、もっと、近くで。
「.......ねえ、ララ」
わたしが一歩近付くと、何かを察したララは半歩だけ遠ざかる。
一歩、また一歩。
半歩、また半歩。
繰り返しているうちに、ララとの距離は、少しずつ、確実に縮んでいく。
やがてその距離が数センチにまで迫ったとき、ララはぎゅっと目を閉じた。目頭から、一筋の雫が流れ落ちる。
わたしはそれを指でぬぐい、ララの顔をじっと見つめる。
「泣かないで。こっちを見て」
声をかけると、しばらくしてから、ララが恐る恐る目を開ける。
「ララの瞳って、綺麗だよね」
「きゅ、急に何をいうルン……」
「ララを見てるとさ、わたし、宇宙とか星座を見てるときと似たような.......でも、それよりもずっと、温かい気分になるんだ」
「……意味が分からないルン」
「うーん、伝わらないか~……」
ララはぷくっと頬を膨らませ、上目遣いでわたしを見る。
「……ちゃんといってくれないと、分からないルン」
「え~……それはちょっとわたしも恥ずかしいな……なんて……」
「わたしはもっと恥ずかしい思いをしてるルン」
「まあ、それはそうだね」
「……ひかるなんか嫌いルン」
「ご、ごめんって~!」
謝りながらも、ララの態度があまりにも分かりやすくて、思わず笑ってしまう。
「ララ.......」
その名前を口にすると、胸のなかが温かい気持ちでいっぱいになる。
わたしは改めて、両手の人差し指を見せる。
「『挨拶』、しようよ」
「.......それは、ただの挨拶じゃないルン」
「うん」
「.......大切な人以外には、しないものルン」
「うん」
「.......本当に、分かってるルン?」
人差し指で、ララの頬をツンと触る。すべすべしていて、柔らかい。少しだけ濡れているのは、涙のあとだ。
わたしはララのことを真っすぐ見つめていう。
「全部、分かってるよ」
程なくして、ララの触角がわたしの指に絡みついてくる。何かを確かめるように、ゆっくりと。
そして最後に、触角の先端がわたしの指先に押し当てられた。
ぷにっとした感触だ。いつも当たり前のようにやっていたことなのに、その意味を知った今では、胸がドキドキして張り裂けそうになる。
「ララはいつも、こんな気持ちだったんだね」
こくんとうなずき、ララはわたしの顔を見つめる。
濡れたように煌めく瞳。
それはたぶん、わたしだけしか知らない表情だ。
これまでも、そして――これからも。
「ひとつ教えるとね、地球の『挨拶』は、触角じゃなくて、唇を使うんだ」
「唇ルン?」
返事をする代わりに、ララの触角を優しく持つ。顔を近付けて、そっと口付けする。
ララは「んっ」と声を漏らす。ピリッとした微かな電流が唇に伝わる。
「な、なんだか……変な感じルン」
ララははにかむように笑う。
「ねえ、ひかる。この『挨拶』、地球人同士なら、どうするルン?」
「え? そ、それは……その……」
「分からないから、教えて欲しいルン」
「え、えーと……」
答えられずにうろたえていると、ララはくすっと笑った。
「冗談ルン」
「な、なーんだ! えへへ……もう……急にそんなこというからびっくりし」
た。
と、最後までいうことはできなかった。
温かくて柔らかいものが、わたしの唇を塞いでしまったせいだ。
電流が走り、頭のなかが真っ白になる。
ララが顔を離してからも、しばらくのあいだ、わたしの頭は動かなかった。
「冗談じゃ……なかったの……?」
ようやく口にできたのは、そんな言葉だった。
「ルン。本当はこれくらい、知ってるルン」
「冗談って......そっちの意味......?」
ふふ、とわたしの口元を触りながら、ララは悪戯っぽく笑う。
急に恥ずかしさが込み上げてくる。手で顔を隠そうとするが、絡みつく触角に阻まれる。ララの腕が、するするとわたしの腰に回される。
「ひかる、大好きルン」
返事はできない。わたしの唇は、再びララの唇によって塞がれていた。
了
他のスタプリSS・小説
夜道を帰る途中で、ひかララがイチャイチャするお話。
和解後のユニアイが一緒に温泉に入るお話。
ひかユニです。小悪魔なひかるさんから弄ばれるユニのお話。
最初ひかララ沼にはまり込んだと思ったら、ひかユニ、ユニアイ、プルユニなどいろんな沼に手を出していて節操がないな~と自分でも思いますが、どれも本当に好きなんですよね…。えれまどやカパひかも好きですし、またいろいろな妄想をしたいなと思います。
読んでいただきありがとうございました。
<追記>(2019年8月25日)
サマーン人の語尾等を若干修正しました。