金色の昼下がり

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【ヒープリSS・小説】『ダルイゼンは助けない』※ダルのどの二次創作

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 風邪を引いて寝込んでいるのどかの口の中に、ダルイゼンが赤黒いもやを突っ込んでくる話です。

 

(ダルのど/コメディ/全年齢向け/2500字程度)

 

Michal JarmolukによるPixabayからの画像(フリー画像)

 

 

『ダルイゼンは助けない』

 

 だるい。しんどい。ぐあいがわるい。

 ベッドから動けなくなるのは久しぶりだった。入院していたときはこれが普通だったんだなと思うと、なんだかちょっぴり懐かしい感じもするけれど、もちろん嬉しいという気持ちはまったくない。

 

「みんな……大丈夫かな……」

 

 ため息交じりにつぶやく。

 部屋にはわたしひとりしかいない。お母さんもお父さんも仕事で、ラテやラビリンたちはメガビョーゲンの浄化に向かっている。今頃、ちゆちゃんやひなたちゃんたちはビョーゲンズたちと戦っているのだ。それなのに、発熱して動けない自分が、心底情けない。

 

「――他のやつらのことより、自分のことを心配したら?」

「っ!?」

 

 声のした方向に顔を向ける。

 いったい、いつの間に現れたのだろう。ドアの近くに、ダルイゼンが立っている。

 

「なっ、なんでここに……げほっ、げほっ……!」

 

 驚愕のあまり呼吸が乱れ、苦悶しているわたしを、ダルイゼンは蔑むようにして見下ろす。

 

「なんか、死にそうって感じじゃん」

「そ、そんなことなっ……ぐっ……げほっ……うぅ……」

 

 咳に邪魔されるせいで、ろくに声が出せない。起きようとしても、体が言うことを聞かない。目の前に敵がいることが分かっているのに、わたしは身構えることもできない。

 

「じゃあ逆に聞くけど、生きてるって感じ、するの? そんな状態で?」

「わ、たし……はっ……っ……」

 

 喉が燃えるように熱い。頭がぐらぐらと揺れる。

 それ以上は、何を言おうとしてもひゅーひゅーと音が鳴るだけだ。

 

「ホント、酷いざま」

 

 そう言って、ダルイゼンは手の中から赤黒いもやをつくり出す。以前、わたしの顔になすりつけたのと同じものだ。ダルイゼンはそのままゆっくりと近付いてくると、冷たい眼でわたしを覗き込む。

 

「楽にしてやるよ」

 

 ダルイゼンがわたしの顔に手をかざすと、力を入れていないのに、口が勝手に開いていく。ぎゅっと閉じようとしたけれど、無駄だった。大きく開けれられた口の中に、ダルイゼンが指を入れていく。

 ひんやりとした指の感触。

 呻くような、喚くような、言葉にもならない声を漏らしながら手足をじたばたさせて抵抗しようとするけれど、呆気なく押さえつけられる。ダルイゼンは口元を歪ませると、わたしの口の中にそのもやを落とす。

 

「――――っ!!」

 

 刹那、全身を駆け巡る衝撃に、頭が真っ白になる。

 縋りつくようにして、近くにあったものを握り締める。目からはとめどない涙が流れて、辛くて、苦しくて、惨めだった。

 もしかして、死んじゃうのかな。

 ぼんやりと薄らいでいく意識の中で、ダルイゼンの声を聞いたような気がしたけれど、何と言ったのか、わたしには分からない。

 

 ☆ ☆ ☆

 

 だるくない。しんどくない。ぐあいがいい。

 目が覚めると、それまで感じていた倦怠感は消えていた。呼吸も楽だし、頭もすっきりしている。

 何が起きたのか理解できなくて、ひとまず体を起こす。と、そこでわたしは、自分のベッドにダルイゼンが座っていることに気付く。

 

「だっ、だだだダルイゼン!?」

「やっと起きたんだ」

「いやっ、えとっ、何で!? 何してるの!?」

「何も」

「何もしてないの!? いや、何もしてないならそれでいいんだけど……! でも、わたしに変なことしてたよね? あの赤黒いやつ、口に入れてたよね?」

「入れた」

「きゃああぁぁあああ!!」

 

 パニックになりながら喚いていると、ダルイゼンはため息をついて、

 

「そんなことより、さっさと離してほしいんだけど」

「……えっ?」

 

 見てみると、わたしは力強く、ダルイゼンの腕を握っていた。

 

「あっ……ご、ごめん……!」

 

 ばっと手を離す。

 

「じゃ、じゃなくてっ。えっと……わたしを襲わないの……?」

「襲ってほしいの?」

 

 全力で首を横に振るわたしを見て、ダルイゼンはつまらなそうに言う。

 

「意識ないヤツを襲っても、面白くないだろ」

「お、面白くないって……。わたしは、あの変なもやのせいで……」

「もやのせいで?」

「…………」

 

 改めて自分の体を見る。

 パジャマは乱れているし、汗でびしゃびしゃになっている。顔が熱くなるのを感じながら、慌てて布団に体を隠して、ダルイゼンをじっと睨む。

 

「や、やっぱり……」

「待て。だから襲ってないって」

 

 ダルイゼンは顔を逸らす。血色の悪い頬が少しだけ赤くなっているようにみえるのは、気のせい、なのだろうか。

 

「…………」

 

 試しに深呼吸すると、体の隅々に空気が行き渡るようで気持ちがいい。気を失う前よりも、体調は明らかに良くなっているのが分かる。

 もしかして、とわたしはダルイゼンに尋ねる。

 

「わたしを……助けてくれたの……?」

「助ける? オレがお前を?」

 

 ダルイゼンは鼻で笑って、

 

「オレは、お前を蝕んでいたヤツらを、蝕んだだけ」

 

 そのとき、わたしはようやく理解する。信じられないけれど、ダルイゼンはあのもやを使って、わたしの体内のウイルスを退治してしまったらしい。

 でも――

 

「な、何で……?」

 

 尋ねると、ダルイゼンは顔を近付けてきて、もやに覆われた手でわたしの頬に触れる。

 

「分かってないなら、教えておく」

 

 耳元に、冷たい息がかかる。

 

「お前を蝕むのは、オレだってこと」

 

 予期していなかった言葉に、体が固まる。

 ダルイゼンは手を離してベッドを降りる。そのまま背中を見せて去ろうとするので、咄嗟に呼び止める。

 

「あっ、待って……!」

「じゃあな、キュアグレース。お大事に・・・・

 

 吐き捨てるように言うと、ダルイゼンは姿を消してしまう。

 

「……行っちゃった」

 

 誰もいなくなった空間を見つめながら、今のは夢だったんじゃないかと疑う。病気にうなされているときに見た、変な夢。そう考えた方が、よっぽど理に適う。

 

「…………っ」

 

 しかし、自分の頬に触れたとき、さっきのが夢でなかったことを思い知らされる。ベットリとした感触。見ると、触れたところが赤黒くなっている。

 窓の外からひんやりとした風が入ってきて、汗ばんだ体を程よく冷やす。

 相変わらずダルイゼンの考えていることは理解できなかったけれど、不思議なことに、前に感じたような恐怖心はない。

  手についたもやを見つめながら、わたしはポツリとつぶやく。 

 

「……言えなかったなぁ。ありがとうって」

 

 そして、もやが自然に消えていくのを、ちょっとだけ淋しい気持ちで見守り続けた。

 

 

 了

 

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