次週、スタプリ45話の妄想をしていると、知らず知らずのうちにカパひかの二次創作ができていました。
次週のスタプリ予告、雨が降ってて、ひかるさんが傘をさしてて、カッパードさんが登場していたので、「相合い傘だ!」と気付いてひとりで頭抱えていました#カパひか
— 金色 (@konjikinohiru) December 16, 2019
決着をつけたカパひかが、相合傘をする話です。
(カパひか/全年齢/1500字程度)
※トップ画像はSouvick Ghosh氏によるPixabayからのフリー画像です
『カッパと相合傘』
――馬鹿な異星人だ。
カッパードは雨でびしょ濡れの星奈ひかるを見つめながら独りごちる。傘がないのではない。持っているのに、それを自分で使わず、あろうことかカッパードに差し出しているのだ。
「……そんなもの、オレには必要ない」
「知ってるよ。だって、カッパードは水陸宇宙両生だもんね」
「じゃあ、なぜだ。なぜオレに差し出す。それが必要なのは、むしろ、お前の方だろう」
星奈ひかるの唇は青くなっている。
カッパードは苛立ちを隠せない。地球人にとって、真冬の雨は冷たすぎる――その程度のことは、いくらカッパードでも容易に想像がついた。
「ねえ、カッパード。今日はどんな天気?」
「……意味が分からん。突然どうした」
「地球ではね。今日みたいな土砂降りの日は、『天気が悪い』って言うんだ。わたしたちは、雨に濡れると、体調を崩したりするし、服も汚れちゃうから。……でも、カッパードにとっては、この雨はぜんぜん平気なんでしょ? それどころか、元気が湧いてくるんだよね。だったら、カッパードは、こういう天気のことを何て言うんだろうなって、気になって」
星奈ひかるは、真っすぐな目をカッパードに向けている。
カッパードは答えない。じっと、その目を睨み続ける。
――この小娘は、何を考えているか、まったく分からんな。
幼い頃。
カッパードの脳裏に、物心がついて初めて異星人と出会ったときのことが蘇る。
言葉は通じるが、見た目は全然違うし、何を考えているのかも分からない、同い年くらいの異星人だった。それは覚えている。しかし、そんな相手に自分がどう対応したのか、カッパードはもう、思い出すことができない。
雷鳴が轟く。稲妻が星奈ひかるの顔を照らす。彼女の目は、ひと時も逸らされることなく、カッパードを見つめ続けている。
「……お前は変な人間だな」
「うん。よく言われる」
「教えてくれ。その生意気な口を黙らせるにはどうしたらいい?」
「侵略以外のやり方で?」
ニッと白い歯を見せながら、星奈ひかるが軽口を叩く。
「……そうだな。オレはそれしか知らない。それしか、知らないのだよ」
カッパードは思わず苦笑する。
前に足を踏み出し、傘の中に入る。空から降り注ぐ雨粒が、傘の表面を叩く。
「さあ、傘の中に侵略してやったぞ」
「ふふっ。これは侵略って言わないよ」
「ほう。では、何と言う?」
「えーっとね、これはね、」
ぐい、と星奈ひかるも傘の中に入る。
その顔が、カッパードの顔に近付けられる。
「――歩み寄り、って言うのかな?」
同じ傘に二人で入ることを何と言うのか、カッパードは知らない。その行為が何を意味するのかも、理解していない。
この先、カッパードがその意味を知るかどうかは、彼が地球の文化を知っていくかどうかにかかっている。
「……お前はさっき、『天気が悪い』と言ったな」
「うん」
「だが、お前の想像通り、オレたちにとってこの天気は悪くない。オレたちから言わせれば、これは『良い天気』だ」
カッパードは空を見上げながら、故郷の風景を思い浮かべる。
あの美しい光景を、もう一度見たい。
長年、憎悪と悲哀、そして諦念の泥に埋もれていた望みが、久方ぶりに顔を出す。
「……わたし、もっと、知りたいな」
視線を下げると、キラキラ輝く目がこちらを見ていることにカッパードは気付く。その頬は、ほんのりと赤らんでいる。
「ねえ、カッパード――」
そのとき、カッパードは思い出した。
物心がついて、初めて同い年くらいの異星人と出会ったとき、何と声をかければいいのか分からなかった。幼いカッパードは、唇をぎゅっと結んで、無言で相手を見つめることしかできなかった。
すると、その子はカッパードに、こう言ったのだ。
「――あなたのことが、知りたいな」
目の前の少女のように。どこか気恥ずかしそうに、はにかみながら。
傘の中は窮屈で、雨に当たることもできない。だが、もう少しだけこうしているのも悪くないか、とカッパードは思った。
了
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これまでひかユニやひかララばかり書いており、節操がなくて申し訳ありませんが、カパひかも好きなのです…。また何か思いついたらカパひかも書きたいです。
読んでいただきありがとうございました。