金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

【トロプリSS・小説】『その声を聞かない日はない』※あすゆりの二次創作

 心臓が感情に耐え切れず爆発しました。

 Twitterでマシンさんのあすゆり百合漫画を見たときのことでした。

 

 

※ご本人から掲載の許可をいただいてます。

 

 あまりにも大大大好きすぎて、気付いたらノベライズしていました。

 寝起きのあすゆりがひたすらイチャイチャする話です。

 

(あすゆり/百合・GL/2000字程度)

 

 

 

 

『その声を聞かない日はない』

 

 声が聞こえた気がした。耳慣れた声。いまでは聞かない日のない声だ。
 あすかはゆっくりと目を開く。ぼんやりと光に滲んだ視界に映ったのは百合子の顔だった。 


「起きて。学校遅刻するわよ」
「……ん」


 唇に柔らかい感触が伝わる。百合子の唇だった。それはほんの少し触れるだけで、すぐに離れていってしまう。
 あすかは仰向けに寝たまま、短めの黒髪を親指でさらりと撫でる。かわいらしい耳がチラと顔を出した。


「ねえ、あすかってば……」
「ねみ~」


 百合子の首に腕を回してぐいっと引き寄せる。


「ちょっと……」


 何か言おうとするその口を塞ぐようにして、百合子の小さな唇にキスをする。昨夜のような激しいキスではない。小鳥のついばむような優しいキス。ただ、さっき百合子にされたような軽く触れるだけのものではない。生暖かい感触に体が反応して、寝汗で冷えていた体がじんわりと温かくなっていく。


「口臭い。顔洗って」
「酷いな」


 あすかは苦笑する。
 言葉こそ刺々しいが、本気で言っているわけではないだろう。キスしている最中から百合子はずっと自分の髪を撫でていたし、何よりもっと分かりやすい〈証拠〉がある。


 百合子の体を離して、二人して洗面台に向かう。鏡に映るのは、きっちりと制服を着ている女と、キャミソール姿で髪もボサボサな女。もちろん百合子が前者であり、自分が後者である。
 あすかは自分の首筋の表皮を撫でる。虫に刺されたような“痕”が残っていた。似たような痕は腕にも多数残っており、肩には獣に噛まれたような痕まである。


 隣に視線を向けたが、百合子は素知らぬ顔をしている。何か言おうとしたが、まあいいか、と思い直して歯磨きをしはじめる。別に責めたいわけではないし、服で隠せそうにないところは絆創膏でも貼っておけばいい。それに昨夜に関していえば、悪いのは自分だ。どちらかというと。
 シャコシャコと歯ブラシを動かしながら、服の中に手を突っ込んで胸のあたりを掻く。昨夜は昨夜でかなり汗をかいたからだろうか。やけに痒い。汗疹(あせも)にならなければいいけど。


 歯磨きを終えたとき、百合子は肩にかけたタオルの端で顔を拭いているところだった。前髪はヘアバンドで上げられていて、額と耳が露わになっている。
 別に耳フェチというわけではないが、あすかは百合子の耳が好きだった。というより、百合子の耳を見るのが好きだった。普段は髪に隠れているそれを、間近で気軽に見られるのは自分だけ。その事実が、あすかにちょっとした優越感を覚えさせていたのだ。


 まじまじと見ていたからだろうか。何、と百合子がこちらを向いた。
 すかさず、その唇にキスをする。
 寝起きのときは少し遠慮したが、もうその必要はないだろう。すでに歯磨きは終えている。
 初めは驚いたように硬直していたが、舌を入れると百合子の体は分かりやすいくらいに反応する。そうした反応が愉しくて、嬉しくて、無意識のうちに舌はさらに奥へと進行していく。動きに合わせて、時折熱っぽい、くぐもった声が漏れる。それは主に百合子の声だったが、あすかの声が混ざることもあった。
 数分後。百合子は唐突にあすかの体をぐいと離したかと思うと、唇を手の甲で隠した。


「……もう終わり」
「えー。何で」
「いい加減、遅刻するから」
「百合子はキス、嫌いか?」
「別に。嫌いじゃないけど。普通よ」
「ってことは、好きでもないってこと?」
「だから、普通だって」
「へーえ」


 ニヤニヤ笑いを浮かべて、百合子の耳元で意地悪く言った。


「その割には、耳、真っ赤だけど」


 慌てたように百合子は両手で両耳を隠すが、もう遅い。あすかはちゃんと確認している。寝起きに触れるだけのキスをしてきたときにも、こちらからキスを返して口が臭いと言われたときにも、そしてついさっき深めのキスをしたときにも、百合子の耳は真っ赤に染まっていた。


「……そのニヤニヤ顔やめて。苛立たしい」
「ごめん。でも、百合子があんまりかわいいから」
「だからやめてって」
「ごめんごめん」


 耳を隠したまま睨みつけてくる百合子を見ていると、ますます我慢ができなくなってくる。燃えるようなその感情を鎮めるための方法は、けっきょくのところひとつしかない。


「百合子ってさ」
「何よ」
「肝心なところ、抜けてるよな」


 耳を隠すのに両手を使っている百合子に、あすかの唇を阻む術はない。
 声が聞こえた気がした。耳慣れた声。それはやはり、いまでは聞かない日のない声だ。

 


 終わり

 

謝辞とあとがき

 前々からマシンさんの描く百合絵には串刺しにされていたんですが、このあすゆり漫画を読んだとき、いよいよ私の心臓は自らの感情の奔流に耐え切れず爆発し、気付いたら夢中でキーボードを叩いていました。

 

 マシンさんの漫画について語らせてください。

 まず一コマ目の破壊力から”強い”です。制服を着て整っている百合子さんと、いま起きたばかりのあすかさん。百合子さんが内心で何を思っているのかそのポーカーフェイスから読み取ることはできなくとも、百合子さんがあすかさんに顔を近づけている事実、そして青色の文字で書かれた「ちゅっ」などから、すべてを”理解らせられ”ます。

 

 魅力的な表情、端的かつ印象的な台詞回し、作中にさりげなく配置されている小道具、そして”語らない”ことによって紡ぎ出された至高の百合を読み終えたとき、目の前に愛と美と性を司るギリシア神話の女神アフロディテが現れたような気がしました。これが臨死体験…。

 

 マシンさん、とてもとても尊いお話を本当にありがとうございました。

 おかげさまで、めちゃくちゃトロピカってます。

 あすゆり結ばれてください。

 

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