金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

【トロプリSS・小説】『洋酒入りチョコキスあすゆり泣き上戸百合』※あすゆりの二次創作

 洋酒入りチョコを食べて酔っぱらって泣き上戸になってしまった百合子さんをあすかさんがあやしてあげる話です。カッとなって書いてしまいました。

 

(あすゆり/百合・GL/2500字程度)

 

【追記】

 Twitterでお世話になっているマシーンさんからなんとマンガにしていただきました。

 

 

 ちなみに洋酒入りチョコキスあすゆりの話をしたのは昨日の深夜零時前で、午前二時ごろに私がこのssをアップしたところ、同日午前八時ごろにはこちらのたいへんすばらしい漫画がアップされていました。千手観音かな? あまりの嬉しさで変な声が出て爆発しそうになりました。マシーンさん本当にありがとうございます……(噎び泣き)

 

【追記終わり】

 

 

『洋酒入りチョコキスあすゆり泣き上戸百合』


「あすか~~~~~!! うっ……ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい………う゛っ……あっ、うわああああぁぁあああああああ」


 初めは誰だか分からなかった。顔を見たときは見間違いかと思った。
 トロピカる部の部室に入ったとき、あすかの元に飛びついてきたのは生徒会長の白鳥百合子だった。クールで頭脳明晰な優等生として知られる彼女が、顔を真っ赤にしながら号泣している。こんな事態は誰も予想していなかっただろう。実際、部室にいたまなつをはじめ、さんごも、みのりも、どうすればいいのか分からずパニックに陥っている。


「……すまん、みんな、ちょっと外に出てもらってもいいか」


 ただひとり、あすかだけは違った。
 テーブルの上にあるものを見てすべてを察したあすかは、他のメンバーを退出を促した。まなつたちは心配そうな表情を浮かべていたが、百合子のことは同じ三年生であるあすかに任せた方がいいと判断したのだろう。


「ほら。ここは任せて、わたしたちは出るわよ」


 マーメイドアクアポットから発せられたローラの一声もきっかけとなって、まなつたちは外に出て行った。


「……まったく。食べたらダメだって、分かってるだろ」


 テーブルからひょいと掴み上げる。やはり洋酒入りのチョコレートだ。あすかはため息をつく。
 百合子が壊滅的な下戸であり、わずかでもアルコール分を含むものを口にしてしまうと酩酊状態になってしまうのは昔からのことだ。しかも酔っぱらったあすかはいつも決まって泣き上戸になる。そのことを知っているのは、あおぞら中学では自分ひとりだけだろう。


「あすか……ひっく……わたしねっ……ひっく……」
「分かった分かった。大丈夫。大丈夫だから」
「でもわたし……あすかに酷いことを……ひっく……なのに……わたし……」」


 再び声を上げて泣き喚く百合子を抱き寄せ、幼い子どもをあやすように背中を優しく叩く。


「だから大丈夫だって。もう何とも思ってないから」
「ほんとに……? ほんとに何とも思ってないの……?」
「ああ……ほんとにもう何とも思ってない。わたしの方こそ悪かったな」


 いまだけだ。そう自分に言い聞かせながら、無理やり作った笑みを百合子に見せる。

 百合子との確執はいまもずっと胸の内に残ったままである。本当は自分を欺くようなことはしたくないし、あすかはそういうのが何よりも嫌いだった。

 ただ、いまはとにもかくにも百合子を落ち着かせなければまずいと思った。これ以上の醜態を晒させて他の生徒に見られてしまえば、百合子の生徒会長としての地位が失墜してしまうかもしれない。


「じゃあ、なかなおり、してくれる……?」


 潤んだ瞳を向けてくる。距離が近い。顔を離そうととしても、百合子は強い力でしがみついてくる。
 まつ毛が当たってしまいそうな至近距離で、あすかは百合子の吐息を感じる。甘い香りだった。酔っぱらいの息は臭いと聞いたことがあるが、ぜんぜん違う。なぜこんなにも耽美で、惹きつけられる香りがするのだろう。


「ねえ、あすか……」


 トロンとした目。乱れた制服。チラと顔を出している真っ赤な耳。そのどれもが、あすかの鼓動を速めていく。痛いくらいに暴れまわる心臓を意思の力でかろうじて抑えつけ、あすかは答えた。


「……ああ。仲直りしよう」
「ほんとに? また、まえみたいに、なかよくしてくれるの?」


 さっきから呂律もまわっていない。本当に幼い子どものようだ。
 もちろんだ、と答えると、百合子はぱあっと表情を明るくして、あすかの胸にぐりぐりと顔を押し付けた。


「えへへ……あすか……だいすき……」
「…………」
「ねぇ……あすかは……わたしのこと……すき……?」
「……ああ」

 

 どうせ次に目が覚めたときには何も覚えていないくせに。話しかけても冷ややかな眼差しを返してくるだけのくせに。

 その言葉を吞み込んでうなずくと、百合子はすっかり泣き止んで、テーブルからチョコをひとつ手に取った。


「こら、もう食べちゃダメだって」
「だめなの……?」
「これ以上酔っぱらったらダメだろ。生徒会長なんだから」
「べつにいいの。せいとかいちょうなんて、どうだって」


 んっ、とあすかは反射的に口を閉じた。チョコを食べされられたのだ。
 おい、と声に出して注意しようとしたときだった。
 今度は百合子の舌が強引に入ってきた。


「っ、あっ、んむっ、ぁっ……」


 熱を帯びた舌遣い。百合子は自分の口の中を、隅から隅まで堪能しつくそうとしている。舌先から伝る熱は、やがて頭を焦がしていく。
 あの日以来の久しぶりのキス。
 百合子の中は相変わらず気持ちいい。それは変わらぬ事実だった。
 しかし、いまのあすかは口の中にベタベタと広がる苦味をどうしても意識せざるを得ない。それは洋酒の苦味であり、過去という名の苦味だ。


「ねえ……あすか……」


 百合子は顔を離すと、痛々しいくらいに赤く染まった顔で言った。


「わたし……ほんとうに……あすかのこと……」
「……分かってるよ」
「でも……」
「ほんとに、分かってるから」


 そう。本当だ。分かっている。百合子が自分のことをまだ好きでいることも。自分もまだ百合子のことが好きでいることも。
 なのに、どうしてだろう。
 いまの百合子に好きだと言われるたびに、胸がじくじくと痛むのは。
 どんなに声を振り絞ろうとしても、いまの百合子に好きだと言うことができないのは。


 百合子が力なくもたれかかってくる。耳元で何か短い言葉を囁いたが、その声は小さすぎて聞き取ることができない。問いただそうにも、百合子はすでに寝息を立てている。


「……百合子」


 呼んでみたのはいいものの、続く言葉が思い浮かばず、けっきょくまた口を閉ざす。

 あすかはひとり、泣くこともできず、その細い体をぎゅっと抱きしめた。

 

 終わり

 

あとがき

 いったんあすゆりのことは忘れて他のことを妄想しようと思っていたんですが、無理でした。Twitterのフォロワーさんがつぶやく素敵なあすゆりツイートにどうしても脳が反応してしまいます。いつもありがとうございます。当分沼から足を抜けそうにありません。

 

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