ヒープリ7話、初回に見たときはめっちゃ笑っていたんですが(グアイワルさんが面白すぎた)、繰り返し見ていると、なんだかつい涙ぐんでしまう、素敵な話でした。
この記事はヒーリングっど♥プリキュア7話の感想考察です。ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
- グアイワルが面白すぎる
- プリキュアの正体がバレるとまずい?
- 「益子道男」と「雨」――ネガティブからポジティブへの反転
- のどかはラテを庇いながら転ぶ
- シンドイーネではなくグアイワルが出撃した理由
- 終わりに:「雨上がりの蜘蛛の巣」とは何か?
グアイワルが面白すぎる
グアイワル「一緒にしてもらっては困る。オレとお前達とでは、まったく違う」
シンドイーネ「違う? どこが」
グアイワル「ここの出来が違うのだよ」
ダルイゼン「へえ。どう違うんだ?」
グアイワル「ふっ。……せい!」
シンドイーネ「何これ」
ダルイゼン「ただの石頭」
グアイワル「そこでオレが見事地球を病気にするのを、指を抱えて見ていることだ! ハッハッハ!」
ダルイゼン「指をくわえて、だし」
シンドイーネ「名前、グアイワルからアタマデワルに変えれば?」
(自分が取材されると思ってたら違った図)
グアイワルさん、見た目は筋肉ゴリゴリの「いかにも」な悪党ですが、茶目っ気がすごいですね。本人はいたって大真面目なんでしょうけれど、このギャップがたまらなくいいです。(めっちゃ笑いました)
前回の登場シーン(ヒープリ4話)でもそうでしたが、グアイワルさんは登場するたび、作中における「ギャグ要素」の役割を果たしています。シンドイーネ様も同様で、キングビョーゲン様への過剰なほどの傾倒っぷりなど、チャーミングな一面がしばしば見られます。
一方、ダルイゼン君に関しては逆です。
彼は今のところ、「ギャグ要素」がほとんど見受けられません。むしろ、前回のヒープリ6話(ラビリンとグレースの顔にモヤをなすりつける)など、敵としての「恐ろしさ」を見せる場面が目立ちます。
さて、「敵」は恐ろしければ恐ろしいほど、残酷であれば残酷であるほど、倒した時のカタルシスが大きくなるものです。しかし、プリキュアは時に敵と和解することもあります。残酷すぎる敵と和解するのは難しい、かといって、敵が残酷でなければカタルシスが弱くなる――その絶妙なバランスを支えているのが、ビョーゲンズたちの「人間味」です。グアイワルさんとシンドイーネ様がギャグ要因としての役割を果たすことによって、ビョーゲンズたちに「人間味」が生まれ、私たちはそこに「共感」することができるのです。
もっとも、ビョーゲンズが「人間味」に溢れすぎると、今度はその「恐ろしさ」が薄れてしまいかねません。そこで、ヒープリはグアイワルさんとシンドイーネ様に「おもしろ要素」を、ダルイゼン君には「シリアス要素」を多めに与えることで、全体としてバランスを取っているのかもしれません。
プリキュアの正体がバレるとまずい?
プリキュアの正体はぜったいに知られたら駄目なんだペエ
だ、だよね~
もしプリキュアって知られたら、それこそ一大事ラビ! そうなったら…
(重苦しい沈黙)
のどか「ど、どうなるの…?」
「さあ」
「さあって…」
ニャトラン「バレることなんて前提にないからな~」
ヒープリでは、「プリキュアの正体がバレると駄目」という設定が繰り返し描写されていますが、その理由は「不明」のようです。もしプリキュアの正体がバレると、えらいことになるのか、それとも、特段の不都合はないのか…いずれにしても、そのうちプリキュアの正体がバレるイベントは出て来そうです。というのも、下記の描写が続いているからです。
- 敵対するビョーゲンズが億面なく一般人の前に登場する
- メガビョーゲンを浄化したあとも、一般人は怪物のことをしっかり覚えているし、既に噂になっている
ヒープリは「正体バレ」をどのように調理するのか、楽しみですね。
※前作スタプリの「正体バレ」エピソードについての考察はこちら。
「益子道男」と「雨」――ネガティブからポジティブへの反転
物語において、キャラクターの心理を描写する際には、しばしば「自然」が用いられます。たとえば、主人公の身に不運や不幸、困難が立ちはだかったときには、「天気が崩れる」ことで、主人公の不安定な心理が暗示されたりします。逆に、不安が解消された時は、「虹」がかかったり、「雲が晴れ」たりするものです。(スタプリを視聴していた方は、「あれのことね!」と思い浮かぶかと思います)
ヒープリ7話でも同様です。
益子道男君に追いかけられていたのどかさんは、「また雨になるかな~」と不安げな声を漏らします。表情も浮かないものになっており、のどかさんは「雨」に対して「ネガティブ」な感情を抱いていることが分かります。
のどか「また雨になるかな~」
ここでは、益子道男君に追いかけまわされることへの不安が、「雲行きの怪しい天気」によって暗に示されているわけです。
しかし、ヒープリ7話が「うまい」のは、「雨」=「ネガティブ」という印象を途中で反転させたことです。
次のカットをご覧ください。
のどか「どうして煙たがられても、すこ中ジャーナルをやってるの?」
道男「雨上がりの蜘蛛の巣って、見た事ありますか?」
のどか「え?」
道男「すごくきれいなんですよ! 雨のしずくが、光で巣をキラキラと輝かせて、それが、風に揺られて…。あんまり綺麗で、小学校の壁新聞で書いたんです。僕が初めて書いた記事でした。先生が褒めてくれて、それからずっと…! でも、つい取材に夢中になりすぎて、つい煙たがられて…」
のどか「夢中になることがあるって、素敵だと思う」
道男「え?」
のどか「初めて記事を書いたときに気持ちって、きっとその雨上がりの蜘蛛の巣と同じように、キラキラしてたんだね」
のどかさんは、益子道男君から「雨上がりの蜘蛛の巣」の美しさを教えてもらいます。そして、この瞬間、のどかさんの――そして私たちの世界の見え方は様変わりします。今まで陰鬱な空気を醸し出していた「雨」が、ポジティブな意味に反転するのです。(※1)
のどか「雨上がりの蜘蛛の巣、見てみたいなあ…」
また、これは益子道男君についても同様です。
それまではのどかさんを追いかけまわす「厄介者」であった彼は、走っている最中に転んでしまったのどかさんに手を差し伸べます。そして、のどかさんは、彼のジャーナリズムに対する「キラキラと光る想い」を知ります。これらの描写によって、「益子道男」という存在もまた、「ネガティブ」から「ポジティブ」な存在へと反転するのです。(※2)
道男「怪我はありませんか?」
※1 「雨」だけではなく、「蜘蛛の巣」もまた、一般的にはネガティブなイメ―ジを持つものです。が、ヒープリは「雨」と「蜘蛛の巣」を掛け合わせることで、かくも素敵な演出をしており、すごいな~と思います。
のどかはラテを庇いながら転ぶ
ところで、のどかさんは転んだとき、だっこしていたラテを庇うようにして倒れ込んでいます。細かい描写ですが、のどかさんの行動原理である「助けたい」が、こんなところでも表出しています。のどかさんが「自分よりも他人を優先して助けようとする」描写は、なんだかんだ毎回のように描かれているところにも注目です。(たとえば前回のヒープリ6話では、息切れが酷い状態になっても、お母さんを助けるために走り続けていましたね)。
これらの演出は、すべて「意図的」なものだと思われます。
ヒープリは、のどかさんの「助けたい」について、「100%素晴らしい行為だ!」と美辞麗句を述べるつもりは、おそらくありません。前作スタプリでは、「分かり合えるって素敵だよね」と言いつつ、「分かり合うって難しいよね」ということを描いていましたし、前々作のハグプリでは、「なんでもできる!」と言いつつ、「本当になんでもできるの?」という反証を作中で描いていました。ヒープリはヒープリで、「助けたいって気持ちは素敵だよね」と言いつつ、「助けるってどういうことなの?」ということを描ていくつもりなのでしょう。
シンドイーネではなくグアイワルが出撃した理由
前回ヒープリ6話の考察で、
- ダルイゼンの出撃時→「花」「木」「実り」
- シンドイーネの出撃時→「水」「泡」
- グアイワルの出撃時→「光」
となっていると書きましたが、今回は「グアイワル」と「雨のエレメントさん」の組み合わせでした。「雨」と言えば水、つまりシンドイーネ様…とも考えられます。これについては、ヒープリ7話では「雨上がりの蜘蛛の巣がキラキラと光る美しい情景」が描かれていたので、ある意味、「光」的な要素もあった、だからグアイワルさんが出撃したんじゃないかな…? と考えたり、考えなかったりしています。
終わりに:「雨上がりの蜘蛛の巣」とは何か?
前述した通り、ネガティブな意味として表出することの多い「雨」が、途中からポジティブな意味に反転しました。では、ヒープリはなぜ、「雨」や「蜘蛛の巣」といった、一般的にネガティブなイメージを抱きがちなものを、あえて題材として利用したのでしょう?
それは、ヒープリが「地球のお手当て」をテーマのうちのひとつにしていることと関係しています。
のどかさんたちが「お手当て」をしている「エレメントさん」たちは、その名が表している通り、「地球のもと」になっている存在です。
エレメント [1]【element】
①要素。成分。
②化学元素。
③素子。
今回は「雨」のエレメントさんが登場したわけですが、実際、「雨」は地球にとって非常に重要な役割を果たしています。「雨」をネガティブに捉えるのは、私たち人間の「都合」でしかありません。地球と向き合うヒープリが、「雨」をネガティブなまま捉え続けると、テーマとの間に齟齬が生まれてしまうのです。
「蜘蛛の巣」もまた、同様です。
蜘蛛はその見た目や毒性などから、人間からは嫌われることも多々ある生き物ですが、それもまた、人間にとっての「都合」に過ぎません。もし、蜘蛛の巣をネガティブに捉えてしまったら、人間の都合によって、地球に生きるいのちの尊さを選別することに繋がりかねません。犬や猫、ペンギン、ウサギは良くて、蜘蛛は駄目…というような描写を、してしまうと、やはりテーマとの間に齟齬が生まれてしまうのです。
そういうわけで、ヒープリは7話で、みんなから煙たがられることの多い「雨」や「蜘蛛の巣」、そして「益子道男」というキャラクターに焦点を当てつつ、そこに息づいている「キラキラしているもの」を描いたのだと考えます。
前回のヒープリ6話の考察です。のどかの頬になすりつけられたもの。
神アニメ・スター☆トゥインクルプリキュアで描かれていたことについてまとめて振り返っている記事です。
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