スタプリ40話、めっちゃくちゃ良かったですね。ララがこれまで積み重ねてきた集大成ともいうべき回で、「良かった…」と涙をぬぐいながら視聴していました。ほんと良かった…。
この記事はスター☆トゥインクルプリキュア40話の感想考察をしたものです。40話のネタバレがありますのでご注意下さい。
- レインボー鉱石はレーダーを誤魔化せる
- 冬貴の登場の仕方が過去のまどかと同じ
- 心理描写がとにかく「すごい」
- 図書室での神演出
- 猜疑心の裏に潜む「守りたい」という想い
- ララは「分かってもらえなくてもいい」と叫ぶ
- スタプリ40話の感想考察(前編)まとめ
レインボー鉱石はレーダーを誤魔化せる
ララ「レインボー鉱石の指輪ルン?」
ユニ「そ。これで地球のレーダーを誤魔化せるニャン」
スタプリの好きなところは、39話のへんしんじゅといい、過去にさり気なく登場していたアイテムや設定が余すところなく活かされているところです。レインボー鉱石がレーダーを誤魔化すという設定も、19話で登場していました。
アイワーン「レインボー鉱石の出す電磁波のせいで、あたいのレーダーには反応しなかったみたいだけど…おかげでプリンセスの力、一気にゲットだっつーの!」
冬貴の登場の仕方が過去のまどかと同じ
ララのことを宇宙人ではないかと疑うまどかパパ・冬貴さんの登場シーンは、当初、同じくひかるさんたちに疑いの目を向けていたまどかさんの登場シーンとよく似ています。次のカットを比較してみてください。
どちらも、遠くの方の「陰」からぬっと出て来て、ひかるさんたちに近寄っています。キャラクターを陰から登場させることによって、そのキャラがどういうポジションの存在なのか(この場合においては「疑いの目を向けている存在」として描かれている)が示されているわけですが、親子そろって同じような登場の仕方をしているのは面白いですね。
フワたちの正体を知ったまどかさんは、葛藤を抱きながらも「守りたい」と力強く想い、今に至りますが、冬貴さんが宇宙人の存在やまどかさんがプリキュアである事実を知ったとき、果たしてどのような反応を示すのでしょうか?
今回は何とか誤魔化せましたが、次週以降はそうもいかないでしょう。
一難去ってまた一難。ぶっちゃけありえない事態に、まどかさんはどのような答えを出し、冬貴は何を想うのか、とても楽しみです。
アブラハム監督「だが…一難去ってまた一難。プリキュアだとバレることのないようにな」
心理描写がとにかく「すごい」
悲しみを伝えたいときには、悲しんでいる顔を見せるのがもっとも手っ取り早く、分かりやすく表現できます。しかし、スタプリ40話では、様々な手法によってひかるさんやララたちの心理を描写をしていました。
まず、みんなから遠ざけられたらララがゴミ捨てに行くときのことです。不安と焦燥に駆られて走るララの姿は、画面には映りません。音楽もなく、廊下を走る音だけが虚しく鳴り響く中、誰もいない廊下や階段が映るだけです。
ようやくララが現れたと思っても、その姿はロングショットで小さく映るだけであり、表情まではうかがえません。台詞もなければ音楽もなく、表情も見えませんが、それにより、ララの不安や焦燥を痛々しいほど表現されています。
また、Twitterのマシュマロで、こんな意見をいただきました。
あまりにも鋭すぎる考察で、雷に撃たれたような気分でした。
みんなから避けられていたときにごみ捨て(デブリ回収)をしていたのは、サマーンで認められてなかったときのララと重なっていたわけですね。すごすぎる…。
※スタプリ29話、惑星サマーンの考察です。私が大大大好きな回です。
図書室での神演出
後半パートの始まりのカットも心に来ます。
最初に映るのは真っ暗な本棚です。そこから右にスライドしていき、ロングショットで顔をうつむかせるララの姿が映ります。まるで一人で涙するララを盗み見てしまったかのような感覚に陥ります。あまりにも重苦しいく辛い光景に、目を逸らしたくなりますが、逸らすわけにもいきません。
そして極めつけはこれです。
ララ「ひかる…教えてくれたルン。本はいろんなところに行けるって。想像の力で。本を読みたくて、がんばって字を勉強したルン。本は楽しいルン。地球人の考え方も分かったルン。でも…」
(回想)カッパード「今に…裏切られるぞ」
ララの手元には一冊の本があります。それは、地球人のことが知りたくて、がんばって字を勉強して読んでいた本です。最初は、「ただの想像ルン」と言っていたララは、ひかるさんたちの影響を受けて、自ら本を楽しむまでになりました。しかし、ララのそのキラキラした想いは、2年3組のみんなに一度は裏切られてしまうのです。
そんなララのことを想って、ひかるさんは大粒の涙をこぼすわけですが、ひかるさんの表情が映るのは一瞬だけです。流れとしては、「零れ落ちる涙」が映し出され、「ひかるさんの泣き顔」が一瞬だけ映り、すぐさま「ララを抱きしめる後ろ姿」に転換していきます。
ひかる「違うよ…異星人とか、地球人とか、関係ないよ…だって! ララは…ララだもん…」
また、構図として美しいのはこちらのカットです。
ひかるさんがララを抱きしめる姿は、少し離れた机の下からのロングショットによって映し出されます。至近距離からではなく、離れたところ、しかも「机の下」というアングルを用いることによって、二人の「寂寥感」を演出するのみならず、画面上に「ひかるさんとララの二人だけの世界」を作り出すことに成功しています。私たち鑑賞者は、「二人だけの世界」を覗き見ているわけです。
ところで、お気付きでしょうか。
一連のシーンにおいて、二人の表情はあまり映りません。映ったとしても、ララとひかるさんの顔が同時に映ることは「たった一度」もありません。どちらかの顔が映るときには、どちらかの顔が見えないようになっています。それは、ひかるさんに慰められ、ララが触角を伸ばしたときも同様です。
ララ「ひかる…苦しいんルン」
ひかる「あ、ごめん…」
ララ「ひかる…ありがとうルン」
けっきょく、ララとひかるさんの表情が同じ画面に映ることのないまま、場面は終わりを告げます。これらのことは、次の2つの効果を生んでいます。
- 深みのある心情描写を演出している
- 「心の引っかかり」を鑑賞者に与えている
1つ目。
前述したとおり、キャラクターの心情を伝える際には、表情を見せるのがもっとも手っ取り早いです。しかし、分かりやすい表現には「深み」が生まれません。あえて「表情」という一番の「情報」を控えめにし、「零れ落ちる涙」や「ララを抱きしめる後ろ姿」、「ひかるさんの手にタッチする触角」を見せることによって、深みのある心理描写を実現しています。
2つ目。
この場面で、ひかるさんとララの表情が同時に映り込むシーン(たとえば互いに向き合って抱き合うシーンなど)が挿入されていたとしましょう。鑑賞者としては、二人の表情を同時に見ることができれば、ある種の安心感を抱けます。ララがこの表情を浮かべているとき、それを見ているひかるさんはこの表情を浮かべているんだな、と分かるからです。
しかし、それが分からないため、二人の胸中については「想像」するしかありません。特に最後のカットでは、ララは感謝の言葉を述べていますが、その表情が見えず、ララを見るひかるさんの表情も曇ったままであるために、鑑賞者に安心感がもたらされることはないのです。
結論:めっちゃ泣いた
猜疑心の裏に潜む「守りたい」という想い
カルノリ「はぁ…ララルン、本当に宇宙人なのかな」
姫ノ城「わたくしだって、信じたくないですわ…」
カルノリや姫ノ城さんたちも、何の葛藤もなかったわけではありません。彼らだって、ララのことを信じたいとは思っています。しかし、状況が状況で、おまけに冬貴さんからの指摘もあり、疑心暗鬼に陥ってしまっています。要するに、彼らはみんな、「自分たちの大切なもの」がララに奪われてしまうのではないか、と不安を覚えているわけです。
ここで、前半パートの姫ノ城の台詞を思い返してみます。
姫ノ城「おっしゃっていましたわ。世界中で宇宙人によって連れ去られた人々が、記憶を奪われているって…アブダクション(※1)っていうのでしょう! 宇宙人が地球人を連れ去って、人体実験をするっていう!」
ひかる「そ、そんな…」
姫ノ城「わたくしたちの身の周りに異変が起きたのは、羽衣さんが現れてからですわ。本当に羽衣さんは…宇宙人なのではなくて!? 星奈さん…あなた、心当たりない? 記憶をなくしたり…」
ひかる「な、ないよ!」
姫ノ城「あ、あなた…羽衣さんに操られているのではなくて?」
ひかる「ララが、そんなことするわけないじゃん!」
姫ノ城桜子さんの声を演じている声優・大地葉さんも、Twitterでその胸中を吐露していましたが、姫ノ城さんたちの言動の本質は、「ララを攻撃したい」ではなく、「自分達の大切なものを守りたい」なのです。姫ノ城さんさんがひかるさん執拗に迫ったのも、姫ノ城さんにとってひかるさんが「大切な友達」だったからだと言えます。
ノットレイダーの抱く憎しみの裏には「悲しみ」が隠れている、と過去の考察では繰り返し述べてきましたが(※2)、猜疑心の裏には「大切なものを守りたい」という想いが潜んでいるのです。
それはきっと、国民を守るという強い責任感を帯びている冬貴さんにとっても同様のはずです。
※1 アブダクションについての詳細については、週刊ムーの公式ページをご紹介します。
参考リンク:週刊ムー語教室/UFOに誘拐される「アブダクション事件」前編 | ムー PLUS
※2 アイワーンちゃんの憎しみの裏に隠れる愛と悲しみについての考察です。
<余談>
(興味のない方はスクロールしてください)
ここで、少しだけスタプリと関係のない話をします。
こうした疑心暗鬼や猜疑心は、ときに、大きな悲劇を引き起こします。
たとえば、1923年、関東大震災朝鮮人虐殺事件では、関東大震災の混乱に乗じて朝鮮人が凶悪犯罪を企てているという「噂」が流れ、数百~数千の朝鮮人と、朝鮮人と間違われた人々が殺害されました。
たとえば、1994年に起きた「ルワンダ大虐殺」では、「ラジオ放送による扇動」が重要な役割を果たしていたとされています。このジェノサイドでは、最終的に100万人もの死者を出したともいわれています。
疑心暗鬼や猜疑心を侮ってはいけません。
それらは両者のあいだに決定的な断絶を生み、最終的には、人の命をも奪うのです。
<余談終わり>
ララは「分かってもらえなくてもいい」と叫ぶ
カッパード「ハッ…そんな些末なことで本当に分かり合えたとでも?」
ララ「分かってもらえなくてもいいルン! わたしのことは…くっ…分かってもらえなくても…わたしにとっては大事な友達ルン!」
カッパードさんから問われて、ララは答えます。分かってもらえなくてもいい、分かってもらえなくてもみんなは自分にとって大切な友達なのだと。
私は、このときララが見せた「くっ…」という台詞と表情が狂おしいほど好きです。ララは「分かってもらえなくてもいい」と言うわけですが、心からそう思っていないことは明らかです。
本当は分かってもらいたいけれど、それが叶わないのであれば、しかたない。でも、もし分かってもらえなかったとしても、わたしがみんなを大切に想うこの心は「本当」なんだ――。
声優・小原好美さんの素晴らしい演技によって、ララの心情が痛々しく、そして力強く描かれていた名シーンでした。
※「分かり合える」とは言い切らない点についても、スタプリは一貫していますね。ほのぼの回と見せかけて屈指のえげつなさを演出していた、34話の考察です。
スタプリ40話の感想考察(前編)まとめ
- レインボー鉱石がレーダーを誤魔化すのは19話で説明済
- 冬貴登場シーンが5話のまどか登場シーンと似ている
- 心理描写が神っている
- 図書室での演出が神っている
- 猜疑心の裏には守りたいという想いが潜んでいる
前回のスタプリ39話の考察(前編)です。
たまに二次創作も書いてます(小声)
ひかララがひたすらイチャイチャする話です。全年齢向けです。
以上、スター☆トゥインクルプリキュア感想考察(前編)でした。
後編の記事は明日(既に日付が変わっているので今日)にアップする予定です。
→書きました