スター☆トゥインクルプリキュア41話の感想考察(後編)です。
- まどかはたった一人で立ち向かう
- まどかの「猛攻」がカッコよすぎる
- 香久矢まどかは「輝けない」
- 心の水面に広がる「想い」という名の波紋
- まどかの目にガルオウガは映らない
- 小さな一歩を踏み出す時:陰から光へ
- 冬貴の眼に映る若き頃の写真
- そして、まどかは『a』を書き足す
- スタプリ41話の小ネタ
- 追記:冬貴がララたち異星人を庇った説
- スタプリ41話の感想考察(後編)
まどかはたった一人で立ち向かう
ガルオウガ様との戦いが開幕してすぐ、まどかさん以外の4人はやられてしまいます。ガルオウガ様の圧倒的な力を前にして、ひかるさんたちは手も足も出ません。
早々に4人が退場することによって、
- ガルオウガ様の圧倒的な力を見せつける
- ガルオウガ様と対峙するのをまどかさん一人だけにする
という展開を実現しているわけですね。
ところで、スタプリは時に「執拗」とすら思えるほど「残酷」な描写をします(もちろん褒め言葉)。40話のララ回では、「これでもか」というくらいララを絶望の底に突き落としましたし、38話のユニ回では、ユニのトラウマを「これでもか」というくらい抉り出していました。
41話も同様です。
スタプリは、実に見事な手腕でまどかさんの心を絶望色に染め上げていきます。
まどかの「猛攻」がカッコよすぎる
猛攻。
そう、それは猛攻と言うほかありません。
何とか致命傷を免れたまどかさんは、自分の持てるすべての力を振り絞って、自分の有するすべての知力を使って、ガルオウガ様に攻撃していきます。
まずは1発目。
まどか「フワは…わたくしが、守ります!」
ガルオウガ「力なき者が…どう守る!」
このときの攻撃はあっさりとガルオウガ様に受け止められてしまいますが、主目的はガルオウガ様に攻撃を当てることではなく、フワを守ることでした。その証拠に、攻撃を防がれたまどかさんは、特に驚く様子もなければ、落胆する様子もありません。その目には、決して消えることのない「闘志」の炎が燃え上がっています。
そんなまどかさんの心をへし折るべく、ガルオウガ様は一瞬のうちに背後を取ります。
さて、ここから、まどかさんの猛攻が始まります。
まずは先ほどと同様に、ガルオウガ様に向けて矢を放ちます。
その矢は難なく瞬間移動によって回避されるわけですが、まどかさんの狙いは別にあります。ガルオウガ様がワープする先へと、まどかさんはすぐさま狙いを変えて矢を放ちます。
このとき、ガルオウガ様はまだ瞬間移動を終えていません。ガルオウガ様が現れる場所を予測して、まどかさんは矢を事前に放っているのです。
まどか「そこっ!」
相手が回避する場所を予測し、事前に矢を放つのは、スタプリ28話のカッパード戦でもありました(※1)。まどかさんは実践を経ながら成長しているのです。
しかし、ガルオウガ様は瞬間移動した先に待ち受ける矢に対して、まったく動じることなく防御体勢に入ります。
ガルオウガ「甘い!」
正直、さっきのまどかさんの攻撃が当たってたとしても、全然おかしくないと思うんですよ。でも、スタプリは戦闘についても一切手を抜きません。ガルオウガ様から言わせれば、そんな攻撃は「甘い」ものなのです。
ところが、まどかさんの攻撃はここで終わりません。防がれるかに思えた矢は、瞬く間に分裂し、四方八方からガルオウガ様を狙い撃ちます。
これにはさすがのガルオウガ様も「な…っ!」と驚きの声を上げています。
ガルオウガ「なっ…!」
しかし、数多の矢がガルオウガ様に的中するものの、ガルオウガ様は無傷です。
ガルオウガ様「無駄だと言っている!」
ここまでやってもダメージを与えられないのか…と鑑賞者が落胆する間もなく、その背後にはまどかさんの姿が現れます。先ほどガルオウガ様に背後を取られたまどかさんは、ここで逆襲を果たすのです。
背後からの、超至近距離で放たれた必殺技、セレーネアロー。
それは見事、ガルオウガ様に直撃します。
ここまで、まどかさんが取った戦略をまとめると、
- フワから注意を逸らすための牽制
- 瞬間移動によって回避されることを前提としたフェイント
- 瞬間移動先を予測した攻撃を単体としてではなく分裂させることで注意を逸らす(恐るべきはこの攻撃すらもフェイントであるという点)
- 背後を取って必殺技のセレーネアロー
いや、もう、策士すぎて…。
※1 カッパード戦でも、まどかさんは頭脳戦をしていました。
香久矢まどかは「輝けない」
まどかさんの戦略は、その目論見通りに運びます。
しかし、知力と戦力のすべてを注ぎ込んだまどかさんの猛攻は、うまくいったにも拘わらず、肝心のガルオウガ様には傷一つ付けられずに終わります。
ガルオウガ「分かったか? これがダークネスト様のお力。宇宙を統べる者の力だ!」
まさに、圧倒的な絶望。
再び背後を取られたまどかさんは、ガルオウガ様の激しい攻撃を受けます。その最中、まどかさんの脳裏に浮かぶのは父・冬貴さんの言葉です。
ガルオウガ「何が守るだ! 自分を捨てる覚悟もない者が…! わたしは、ダークネスト様にすべてを捧げた。この身も、心も、すべてを!」
(回想)冬貴「香久矢のためにずっとそうしてきた。すべて、私に任せればいい」
冬貴さんの姿がフラッシュバックした直後、動きが止まったまどかさんは、ガルオウガ様の強烈な一撃を食らい、ついに地面に伏してしまいます。
ガルオウガ「感じるか…この圧倒的な力。まさに、神のごとき力。わたしは、自分自身を捨て、この力を手に入れた。宇宙を乗っ取るためならば、自分など、必要ない!」
さて、お気付きでしょうか。
このときのガルオウガ様は、雲間から漏れる輝かしい光によって照らされています。「神のごとき力」と言っていますが、まさにガルオウガ様には「後光が差している」のように見えます。
自分の意思では輝けない。
苦悩していたまどかさんに迫り行くのは、ダークネストという強大な存在の光を受けて輝く、ガルオウガ様です。自分の意思では輝けないまどかさんと、ダークネストの意思に従うことで輝くガルオウガ様が、残酷な対比として浮かび上がるのです。
自分の意思では輝けない。
ガルオウガ様に負けそうになったまどかさんは、一度は諦めようとします。そのことは、輝きを失ったまどかさんの眼がクローズアップされることと、まどかさん自身の言葉がリフレインすることによって示されています。
(回想)まどか「わたくしは、自分の意思では輝けない…」
また、このときに再び、父・冬貴さんの顔が浮かび上がるのですが、注目していただきたいのは、その「揺れ」です。なぜ回想しているときのカットがゆらゆらと揺れているのかというと、これは「水面の揺れ」が表現されているからです。
水面はまどかさんの心を映す「鏡」として機能している、と前編の考察でも述べたとおり、ここではまどかさんが自らの心と向き合っていることが示されているわけです。
(付け加えるならば、回想で流れるカットは全体的に光が弱く、「暗い」シーンばかりです)
心の水面に広がる「想い」という名の波紋
輝きを失いかけたまどかさんでしたが、そのとき、彼女の心の水面に、一滴の雫が落ちます。
それは、「言葉」という名の雫です。
あるいは、「想い」という名の雫です。
(回想)えれな「そうかな。眩しいけどね」
一滴の雫は、まどかさんの心に波紋を広げます。
そして、まどかさんの眼には、再び光が灯ります。
その光の正体は、まどかさんの「意思」です。
これは「想い」という名の光なのです。
えれなさんの台詞に合わせて、波紋は次々に広がっていきます。
(回想)えれな「どの自分がいちばんの笑顔になれるかで、進む道を決めればいいんじゃないかな」
このとき、次々に広がっていく波紋の解釈について、次の2つが浮かびました。
- えれなさんの言葉がまどかさんの心に響いていく様子を表している
- 生徒会長の自分、父や母の前での自分、ひかるたちといるときの自分…様々な人と交流する中で受けてきた、その影響を表している
どの時の自分が、いちばんの笑顔になれるのか。
まどかさんが顔を上げた先には、かつて、尊敬する父を騙ってまで守り抜こうとした大切な存在、フワの姿が映ります。
目の前で悲しみの表情を浮かべるフワを見て、まどかさんは地を掴むようにして拳を作ります。 41話で、私が毎回、号泣してしまうカットです。
ガルオウガ「なぜ立とうとする。この力には勝てぬ。たったひとりで何ができる?」
まどか「何ができるか、わかりませんでした。みんなと出会う前は。でも…今は、わかります」
まどかさんは、アームストロング船長が月面に足跡を残したように、地面に自らの「痕跡」を残します。この跡はまどかさんの「意思」の証です。まどかさんが「man(香久矢)」としてではなく、「a man(まどか)」として這い上がった証なのです。
そして輝く、まどかさんのトゥインクルイマジネーション。
まどか「わたくしは…みんなといっしょに、笑顔でいたい。だから、わたくしは、もう自分に嘘はつかない!」
しっかりとその足で地を踏み、まどかさんは静かに…そう、とても静かに弓を構えていきます。「ふざけるな!」と感情的に叫び散らすガルオウガ様とは対照的になっています。
ここからは、圧巻のクライマックスです。
まどかの目にガルオウガは映らない
まどかさんが弓を構えるとき、世界からは景色が消えます。そこにはガルオウガ様もいなければ、えれなさんやひかるさんたちの姿も見えません。弓を構えたときに背景が黒く塗り潰される演出は、スタプリ16話の弓道大会でもありましたが、まどかさんが自らの精神世界に没入していることを表しています。
ただし、まどかさんの背後には、一人の人間が立っています。
その人物は、まどかさんが尊敬していた人間であり、自分自身の意思よりも優先して従っていた父親――香久矢冬貴、その人です。
背後に現れた冬貴さんの影は、光とともに消えていきます。
しかし、その光はただ消えるだけではありません。よく見ると、 まどかさんの構えていた弓に重なっていることが分かります。
まどかさんの意思を縛る「香久矢」の影は消えても、冬貴さんがまどかさんに与えてきた「想い」の数々は、確かに、まどかさんの心に残っているのです。 回想シーンで、昔の冬貴さんの姿が次々に映っていくのは、まどかさんの心に冬貴さんの「想い」が受け継がれている何よりの証拠です。
まどか「お父様…わたくしは、自分で、自分の未来を決めます!」
スタプリがすごいところは、冬貴さんを「乗り越えるべき存在」として描きながらも、冬貴さんを「否定すべき存在」としては決して描かないという点です。
これは、まどかさんがメインとして登場したスタプリ5話から一貫して描かれています。たとえば5話では、まどかさんがフワを守ると決心した理由として、次のような台詞を述べていました。
まどか「お父様は、上に立つために、人々の気持ちを知るようにと仰いました。知ったからこそ、わたくしは、フワを…皆さんを、放ってはおけません!」
たとえば、スタプリ15話では、冬貴さんが背中で語ってくれた「オークションの極意」を受け継いだことにより、見事、ゼニー星のオークションでペンを手に入れることができました。
たとえば、スタプリ16話では、那須ゆみかさんとの頂上決戦で、まどかさんが最後に放った矢には、冬貴さんの「想い」がのせられていました。
父親・冬貴さんがこれまで伝えてくれた「想い」を込めながら、自らの「意思」をもって、まどかさんはその矢を放ちます。
まどかさんの放った矢は、ガルオウガ様をかすりながら、天高く突き抜けていきます。次の瞬間、一帯を覆っていた暗雲は瞬く間に消え失せ、空には眩しいばかりの晴天が広がります。
空を覆いつくしていた暗雲は、まどかさんの「心の迷い」の暗喩でした。まどかさんは、その「心の迷い」をついに晴らすのです。
このときまどかさんの放った矢が「ガルオウガ様を打ち抜かなかった」のは、天を晴らす演出を行うためという理由もあったと思いますが、あえて付け加えるならば、まどかさんがこのとき対峙していたのは、「ガルオウガ様ではなかった」からだとも言えます。
もう一度、背景が塗り潰された精神世界に没入するシーンを思い出していただきたいのです。あのとき、周囲の風景はすべて消えていましたが、その内にはガルオウガ様も含まれています。矢を放つ瞬間、まどかさんの世界にガルオウガ様の姿はなかったのです。
それは16話を彷彿とさせます。弓道大会の最初のうちは、まどかさんの世界にはライバル・那須ゆみかさんの姿が映っていましたが、最後の一矢を放つとき、那須ゆみかさんの姿はまったく映っていませんでした。
では、まどかさんは誰と対峙していたのでしょうか。
このとき、彼女はガルオウガ様を前にして、冬貴さんに向けた言葉を叫んでいます。
まどか「お父様…わたくしは、自分で、自分の未来を決めます!」
この台詞を見ると、まどかさんが対峙していたのはお父様である冬貴さん、受け継がれてきた「香久矢」という家と対峙していたと言えるかもしれません。しかし、お父様の影はまどかさんの前ではなく背後に現れ、前述したとおり、その影は光となり消えてまどかさんの力になっています。つまり、この場面において、まどかさんは「香久矢」と対峙していたとも言い難いのです。
では、改めて、まどかさんは誰と対峙していたのでしょうか。
つまるところ、それは「自分自身」だったと考えます。
なぜなら、弓道に「敵」はいないからです。
弓道は、「自分自身と向き合う」武道なのです。
弓の世界に敵はいません。いるとしたら、揺らぎ、動揺する自分の心が、敵なのです。
自分と向かい合い、心を養い、常に平常心でいられる心を作ることこそが弓道の本来の目的なのです。
湖の水面にまどかさんの姿が映り、「鏡」としての役割を果たしていたのも、まどかさんが自分自身と向き合い続けていた証だと言えます。
ソレイユ「セレーネ…」
(回想)まどか「わたくしは、自分の意思では輝けない」
ソレイユ「輝いてるって」
なお、トゥインクルイマジネーションの正体は、「あこがれのわたしを描くこと」であり、「なりたい自分を想い描くこと」ではないか、とスタプリ40話の考察でも書きました。
まどかさんにとっては、「自分の未来を自分で決めるわたし」こそが、「あこがれのわたし」であり、「なりたい自分」だったのです。
※スタプリ40話の考察です。
www.konjikiblog.com
小さな一歩を踏み出す時:陰から光へ
戦いを終え、トゥインクルイマジネーションを輝かせたまどかさんは、ついに父・冬貴さんの前に立ちます。そのときのまどかさんの心理描写がまた最高です。次のカットをご覧ください。
一歩を踏み出すまどかさんの足元がクローズアップされています。この一歩は、まさに「a man」としての一歩であり、まどかさんが「影」から「光」へと進んでいることが表現されています。
まどか「わたくしは、ひかるたちと、交流を続けます」
冬貴「わかっていないようだな」
まどか「はい。わかっていないから、お父様に従ってきました。ですが、わからないからこそ、自分で見つけたいのです。観星中に行って、みんなを知ることで、わたくしは気付くことができました。これも、お父様のおかげです」
冬貴「そんな勝手が通るとでも? 留学はどうする!」
まどか「それも、どうするべきなのか、自分で、考えます」
まどかさんはお父様に「自分で考えます」と言い切るわけですが、この台詞の中で注目したいのは次の2か所です。
- 「これも、お父様のおかげです」
- 「それも、どうするべきなのか、自分で、考えます」
1つ目。
まどかさんは、「自分にとって何がいちばん大切なのか分からないからこそ、自分で見つけたい」のだと言う一方で、「それに気付くことができたのはお父様のお陰」なのだと言います。その根拠となるのは前半パートの下記の台詞です。
まどか「わたくしは、どう進むべきか、これまで、父の言う通り、観星中に通い、生徒会長にもなりました。素晴らしい経験をさせていただきました。すべて、父のおかげです」
冬貴さんがいなければ、 観星中に通い、生徒会長になることもなかったかもしれませんし、弓道を通じて自分自身と向き合うこともなかったかもしれません。今回、まどかさんはトゥインクルイマジネーションを見つけられたのが、「父のおかげ」だったというは、決して嘘ではないのです。
(繰り返すようですが、冬貴さんの「想い」がまどかさんの「力」になっているのことは、冬貴さんの影がまどかさんの弓に重なっていたことからもうかがえます)
2つ目。
留学はどうする、と問われたまどかさんは、「自分で考えます」と答えます。まどかさんは、「留学しない」とは言いません。まどかさんは「留学が嫌」なのではなく、「人の言うことにただ従うだけなのが嫌」なのであり、「自分の未来は自分で考えたい」のです。また、まどかさんは「ひかるたちと交流を続けます」と言っている通り、留学をしようがしまいが、ひかるさんたちの交流は続けることを明言しています。たとえ留学をして離れ離れになったとしても、交流をやめるつもりはないことがうかがえます(※1)
※1 まどかさんの留学について、ひかるさんたちが「寂しいから行かないで」といった発言を一切しないところも、スタプリらしいなと思います。「決断」はあくまでも本人がするものだというスタンスを貫いています。実際、思い悩むまどかさんに対してえれなさんがした助言も、「どの自分がいちばんの笑顔になれるかで、進む道を決めればいいんじゃないかな」というものでした。スタプリもメンバーたちは、その問いをし続けるのです。「あなたはどう想うの?」と。
冬貴の眼に映る若き頃の写真
自分の指示に反対し、自分のもとから去り行くまどかさんの背中を追いかけようとした冬貴さんの目に、一枚の写真が飛び込んできます。それは、若き頃の冬貴さんが弓道大会で優勝したとき、妻と幼い娘の3人で撮影した写真です(※1)
なぜ、この場面でこの写真がクローズアップされたのでしょう?(※2)
なぜ、冬貴さんはここで「ハッ」とするような表情を浮かべたのでしょう?
情報が少ないので憶測するしかありませんが、私が考えたのは次の通りです。
- 幼い頃のまどかさんの写真を見ることで、今のまどかさんがもう「子ども」ではないのだと気付いたから
写真のまどかさんは、冬貴さんが優勝したことに対して、まるで我が事のように満面の笑みを浮かべて喜んでいます。このころのまどかさんは、冬貴さんの言うことに何でも従ってくれていました。しかし、今のまどかさんはそうではない。今のまどかさんはもう「子ども」ではないのだと、昔の写真を見ることで、冬貴さんは察したのではないでしょうか。
美佳「大きくなって…」
冬貴「美佳、わたしが甘かったのか。まどかは、誤った判断を…」
母・美佳さんからの「大きくなって」という台詞も受けて、冬貴さんはまどかさんが「子ども」ではなくなりつつあることを自覚していることがうかがえます。ただし、冬貴さんは、「自分の育て方が甘かった」ために、まどかさんが「誤った判断」をしているのだと言います。
しかし、美佳さんは、そんな冬貴さんの言説を、そうではないと否定します。
美佳「誤りではないわ。これは、成長って言うのよ」
それ以降、冬貴さんの考えが描写されるシーンはないため、その心境がどのようなものになっているのかは現時点では分かりません。しかし、親は子に与えるばかりではなく、子からも大切なものを与えられるものです。スタプリ18話においても同様であり、ひかるさんの母・輝美さんは娘から大切な想いを届けられていました(※3)
なのできっと、冬貴さんの心にも、まどかさんの投じた「水切り」が波紋を広げていくんじゃないかなと思うのです。
※1 あと、この写真に写る家族3人はみんな「笑顔」を浮かべているんですよね。冬貴さんが笑っている写真は他になかったですし、まどかさんも小学校くらいになっていくと、満面の笑みを浮かべる写真はほとんど見られなくなっていくので(ピアノコンクールなどで優勝したときの写真のまどかさんはお人形さんみたいな笑顔で、満面の笑みとは言い難い)。だからどうしたという話ではないんですが、そう思ってこの写真を見ると、なんだか余計に込み上げてくるものがあるなあと。
※2 前半パートにおいても似たような写真が登場しています。その写真は、まどかさんが優勝したときの写真であり、那須ゆみかさんと握手をしているものです(詳細は前編の記事参照)
※3 スタプリ18話の考察です。
そして、まどかは『a』を書き足す
That's one small step for a man, one giant leap for mankind.
自室に戻ったまどかさんは、アームストロング船長の言葉に『a』を書き足します。『a』を書き足すことによって、まどかさんが「man(香久矢家)」としてではなく、「a man(一人の人間)」として、自分の未来を考える決意をしたことが示されています。
直後、まどかさんは窓を開けます。
窓を開けるという行為は、「香久矢」という家からの解放を意味しており、窓の閉まっていた前半パートやスタプリ5話とは対照的になっています(※1)
何より注目したいのは、まどかさんの表情でしょう。自分の未来は自分で決めるのだと決意したまどかさんは、晴れやかな笑顔を浮かべています。
そんなまどかさんは、アームストロング船長の明言とともに、月に向かって歩みを進めていきます。
まどか「これは、ひとりの人間にとっては、小さな一歩だが、人類にとっては、大きな飛躍である」
このときの月は「満月」です。41話の冒頭では欠けていた月が、ラストシーンでは美しい満月になっているのです。満月は欠けるところのない「正円」であり、まさに「まどか」の名が指すものでもあるわけですが、ここではまどかさんの「意思」がしっかりとかたまったことが示されているのです。
大きな飛躍を見せたまどかさんの物語は、ひとつの決着を見せました。
もちろん、まどかさんはまだ「自分の未来を自分で考える」ということを決めただけであり、「自分はどのような未来を望むのか」ということについては「分からない」状態です。
しかし、それでいいのです。
まどかさんのそれは、確かに「小さな一歩」 かもしれませんが、同時に「大きな飛躍」でもあります。「まどか」の物語は、ここから始まるのです。
スタプリ41話の小ネタ
学校のオブジェは香久矢家の寄付?
いまさらですが、このオブジェ、まどかさんちの家紋と似ていますね。香久矢家は立派なお屋敷を構えているので、昔から観星町に住んでいる一族だと思われます。このオブジェは、香久矢家の先祖が、観星中に多額の寄付をしたときに作られたものなのかもしれません。
香久矢家に掲げられている言葉は「一以貫之」
香久矢家の弓道場の壁に掲げられている言葉は「一以貫之」です。
意味は下記の通りです。
一つの思いを曲げずに貫き通すこと。
まさに、現在のまどかさんを表すような言葉ですね。
参考リンク:
No.1482 【一以貫之】 いちいかんし |今日の四字熟語・故事成語|福島みんなのNEWS
追記:冬貴がララたち異星人を庇った説
本記事のコメント欄にて、次のような考察を教えていただきました。
冬貴さんは、本当にララが異星人である証拠をつかめなかったのか? という考察です。
実際、冬貴さんは「プルンスとフワの映像」など、異星人の存在を示唆する証拠を持っていました。しかし、ララとクラスメイト、ララとまどかさんの固い絆を見て、それらを隠匿し、異星人と友好関係を結ぶよう上司に進言したものの、反対を受け、解任されてしまったのではないでしょうか。
冬貴さんがそのことをまどかさんに言わなかったのは、ララのために自分のキャリアを棒に振ったと知れば、ショックを受けると考えたからです。では、なぜ冬貴さんが「調査権を失った」ことをわざわざまどかさんに言ったかというと、「もうララについて心配する必要はない」ということを伝えたかったからだと考えれば、筋が通ります。
いや、この考察、涙が止まらないですね…。
コメントをいただいたはっぴーさん、素敵なイマジネーションをありがとうござました。(当該コメントは、この記事のいちばん下にあります)
スタプリ41話の感想考察(後編)
- まどかはたった一人で立ち向かう
- 心の水面に広がる「想い」という名の波紋
- まどかの目にガルオウガは映らない
- 小さな一歩を踏み出す時:陰から光へ
- 冬貴の眼に映る若き頃の写真
- そして、まどかは『a』を手に入れる
スタプリ41話の感想考察(前編)です。
スタプリ映画の考察です(ネタバレ有)。
本当に素晴らしい映画でした。本当に素晴らしい映画でした。
個人的な感想ですが、私は41話のような話が大好きです。すべての力を注ぎ込んだうえで敗北して、心をべきっとへし折られた人間が、それでもなお大切なもののために立ち上がる展開…もう涙なしには見られません。描写についても「すごい」以外の言葉が出てこないほどすごくて、いや、もうほんと何というか……スタプリ大好きです……。
以上、スター☆トゥインクルプリキュア41話の感想考察(後編)でした。
長々と読んでいただきありがとうございました。
<宣伝です>
スタプリの特別増刊号(アニメージュ)はもう手に入れましたか?
スタプリの裏話やインタビュー記事など面白い話が詰まっているので、まだ購入されていない方はぜひ読むことをお勧めします(ノットレイダーの記事で泣いた)