金色の昼下がり

プリキュアについて割と全力で考察するブログ

スタートゥインクルプリキュア 47話 感想 全力考察 プリキュアは想いを重ねられない(後編)

 スター☆トゥインクルプリキュア47話の感想考察(後編)です。

 

※前編の考察はこちらから。

 

 

 

 

「ワタシだけのイマジネーション」は存在しない?

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

へびつかい座「トゥインクルイマジネーションがわたしたちの力だと? 何も知らされていないようだな。教えてやろう。この宇宙のいのち、すべてに宿るイマジネーション。その力は、プリンセスから分け与えられたのだよ」

 

 宇宙を創造したのは13星座のプリンセスであるのも衝撃的でしたが、そこからさらに畳みかけるようにして、この宇宙に生きるものたちが有するイマジネーションはもともとプリンセスたちの力だったということが明らかになります。

 

 また、12星座のプリンセスたちは「プリキュアの力」を次のように定義していました。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

へびつかい座「イマジネーションを与えるだと?
やぎ座「ええ。生まれてくる命に、我らの力、イマジネーションの力を」
へびつかい座「何故に?」
「見てみたいのです。この宇宙に生きる者たちが、イマジネーション…想像力を巡らして作る世界を」
へびつかい座「与えたイマジネーションが歪めばどうする? 宇宙の秩序がなくなるぞ!」
「歪みは、人々のイマジネーションが正してくれるでしょう」
「歪んだイマジネーションをただす、前へと戻すべく浄化するプリ…キュアの力が」

 

 この場面におけるpreは、「pretty(かわいい)」ではなく、「pre(『以前の』という接頭辞)」の意味で使われていると思われます。また、「cure」には「癒す」という意味のほかに、「(悪癖等を)矯正する」という意味もあります。

 

 つまり、ここでプリンセスたちが言っている「pre-cureの力」とは、「以前の状態に矯正する力」という意味であり、まさしく「前へと戻すべく浄化すること」を指していると考えられます。

 

 プリキュアの力は「前に進む」のではなく、「前に戻す」ための力であったわけで、この事実はメンバーたちにとって受け入れがたいものでしょう。なぜなら、彼女たちは1話から47話をかけて様々な経験を重ねることによって、星空連合たちとだけではなく、それまで敵対していたノットレイダーたちとも一緒に前に進んでいくのだと決意したばかりだったからです。

 

参考リンク:

preの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

cureの意味 - 英和辞典 - コトバンク

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

へびつかい座 「我は一人、反対し、力でねじ伏せようとしたが、多勢に無勢、我は追いやられ、大いなる闇をつくり、そこで力の回復を待った。その間、プリンセスたちは自分達のイマジネーションの力、その半分をいのちに与えた」
ひかる「わたしたちのイマジネーションは…」
ユニ「もともとプリンセスのもの…?」
プルンス「でたらめでプルンス!」
へびつかい座「そうかな? どの星にも、12星座の記憶があろう」

 

 プリキュアの力が「前に進むため」ではなく「前に戻すため」の力だと知って衝撃を受けるメンバーたちでしたが、ショッキングな真実はそれだけではありません。そもそも、宇宙に生きる者たちのイマジネーションは、プリンセスたちに分け与えられたものなのだということが明かされます。

 

 ここで今一度、スター☆トゥインクルプリキュアのキャッチコピーを思い返していただきたいのです。

 

宇宙(そら)に描こう!ワタシだけのイマジネーション!

 

 そう、ひかるさんたちが宇宙に描いてきたイマジネーションは、そもそもワタシのものではなく、13星座のプリンセスたちのものだったのです。

 

 まさにダブルパンチ。

 これまで頼りにしていたプリキュアの力は「前に進む」ためではなく「前に戻す」ためのものであり、「ワタシだけのイマジネーション」だと思っていたのは「ワタシのものではなかった」のです。

 

 

12星座の価値観はプリキュア達と相容れない

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

へびつかい座「やつらのイマジネーションの名残り…案の定、イマジネーションは憤り、哀しみ、妬みと、あまたの歪みを見せ始めた。よって、我はこの宇宙を消すと決めた! 星を呑み、力を蓄えながら、ダークネストと名乗り、歪んだイマジネーションを持つ者たちに還元、ノットレイダーとして」
プルンス「パレスを襲ったでプルンスか!」
へびつかい座「ああ…宇宙創造と同様、宇宙の消去にも我ら13星座の力が必要。宇宙を消すためには、我と12星座のプリンセスの力、そして儀式で使う器を手にせねばならぬ」
ひかる「フワは器なんかじゃない!」
へびつかい座「器だよ。正真正銘。なあ、プリンセスたちよ? やつはプリンセスの力を入れる儀式の場、このスターパレスの一部!」
(中略)
プルンス「何言ってるでプルンス。どういうことでプルンス! プリンセス!」
おうし「フワと、トゥインクルイマジネーションで儀式を行うのです!」
おとめ座「プリキュアとフワで想いを重ね、彼女の闇を止めるのです!」
しし「止めねば、宇宙が消えます!」
えれな「止めるって…」
やぎ座「止めるには、プリンセスの力が必要!」
しし座「プリンセスの力の半分はフワの中!」
射手座「残りの半分は――」
おうし座「人々に授けたイマジネーション。その結晶こそが、トゥインクルイマジネーション!」
へびつかい座「闇を止めるか…フフフ。やつらがお前たちを動かしていたのは、我を消すため!」
ひかる「え? 消すって…」
おうし「すべては宇宙を守るため!」
フワ「…守る」
へびつかい座「言っておくが消えるのは我だけではないぞ。その力を使えば、器はこのパレスに戻る。存在は確実に消える」
ひかる「フワが…消える?」
フワ「消える…フワ…?」
おうし「プリキュア、早く! 宇宙を守るのです!

 

 12星座のプリンセスたちが目論んでいたのは、「フワを犠牲にすることでへびつかい座を消し去る」というものでした。12星座プリンセスたちの考え方は、3つの観点から、スタプリメンバーたちの価値観と相容れません。

 

①プリキュアの最大の目的は「フワを守ること」

 そもそも、プリキュアがダークネスト=へびつかい座との最終決戦に挑んだいちばんの目的は、「宇宙を守るため」ではありません。スタプリのメンバーたちは、47話において「宇宙を守るために戦う」といった趣旨の発言をしていません。では何と言っていたかというと、「フワを守るんだ」ということを繰り返し主張していました。47話におけるプリキュアの最大の目的は、「フワを守ること」だったのです。

 

 しかし、スタープリンセスたちの作戦では、フワを守ることができず、フワは犠牲になることが前提のものです。メンバーたちの最大の目的は、プリンセスの作戦に従うならばどう足掻いても果たされないのです。

 

②宇宙平和のためでも大切なものを奪っていい理由にはならない

 当ブログでも繰り返し話題に出しているエピソード、それがスタプリ8話のケンネル星の回なのですが、そこでプリキュアが主張していた内容は、47話まで来ても色濃く残っています。

 

 8話における命題は「宇宙平和のためなら、人の大切なもの(『聖なる骨』=スターカラーペン)を奪ってもよいのか?」というものでした。そして、えれなさんたちプリキュアは、その問いに対して「NO」を突きつけました。たとえ宇宙平和といった崇高な目的のためであっても、じっくり話し合うこともせずに人の大切なものを奪うことはいけないのだ、と言って。

 

 8話における命題は、47話にも形を変えて再び出現します。

 

 宇宙平和のためなら、大切なもの(フワ)を犠牲にしてもよいのか?

 フワを犠牲にしなければ、宇宙が消えてしまうとしても?

 

 また、この時の12星座のプリンセスたちの台詞があまりにもえげつないです。

 

おとめ座「プリキュアとフワで想いを重ね、彼女の闇を止めるのです!」

 

 いったい、どうすれば「想いを重ねる」ことができるというのでしょう?

 

 前述したとおり、プリキュアたちは「フワを守るため」にへびつかい座と戦っていました。そんな彼女たちにとって、「フワを犠牲にして宇宙を守る」という想いを重ねられるはずはなく、ただ愕然とする他ありませんでした。

 

③倒すんじゃなくて、みんなを守るために

 ひかるさんは前回の46話で言いました。

 

ひかる「この宇宙は、誰かのものじゃない。みんなの宇宙でしょ!」

 

 これは、この宇宙は渡さないと主張したトッパーと、この宇宙は我々のものだと主張したノットレイダーに対して、ひかるさんが言った言葉です。そして、へびつかい座にイマジネーションを歪められたノットレイダーたちに対して、ひかるさんはこう言いました。

 

ひかる「倒すんじゃない。みんなを…みんなを、守る!」

 

 この宇宙は誰のものでもない。

 倒すんじゃなくて、守るんだ。

 それがスタプリの主人公・ひかるさんの考え方です。

 

 しかし、スタープリンセスたちは、ひかるさんのその価値観に「NO」を突きつけます。彼女たちの言う「へびつかい座を止める」というのは、「へびつかい座を消すこと」を意味していたのです。

 

へびつかい座「闇を止めるか…フフフ。やつらがお前たちを動かしていたのは、我を消すため!」
ひかる「え? 消すって…」
おうし「すべては宇宙を守るため!」

 

 もちろん、スタープリンセスたちの考えにも、一理ないわけではありません。宇宙を消そうとしている相手から、宇宙を守るためにどうしたらよいか? その相手を消すのが、もっとも手っ取り早いのは確かです。

 

 しかし、ひかるさんたちが46話をかけて得た見識は、分かり合えないかもしれなくてもまずは分かり合うための努力をしてみようよということであり、人にはそれぞれ「星のような輝き」が宿っているということです。

 

 確かに、12星座のプリンセスやこの宇宙に生きる宇宙人からしてみれば、へびつかい座は宇宙を消すことを目論む「侵略者」ですが、侵略者だからって分かり合うことを最初から諦め、相手を倒すことをいちばんの目的にしてしまうと、 自分達もまた「侵略者」と同じ場所に立つことになります。そして、実際にそうなりかけたのがスタプリ46話の星空連合であり、そんな両者を止めたのがひかるさんでした。

 

 つまるところ、「12星座のプリンセスVSへびつかい座」という構図は、46話における「星空連合VSノットレイダー」という構図と似たものだと言えます。

 

「価値観の相容れない相手を倒したい」という想いが「大切なものを守りたい」という想いを上回ったのが46話における星空連合でした。それと同じように、12星座のプリンセスたちの「へびつかい座を消し去りたい」という想いもまた、「大切なものを守りたい」という想いを上回っているのかもしれません。そう考えれば、手段を選ばず、フワを犠牲することも厭わなくなっているのもある意味頷けます。

 

 星空連合とノットレイダーの関係から「VS」の文字を命がけで取り払ったひかるさんからしてみれば、12星座のプリンセスがへびつかい座を消し去ろうとしている事実は、そう簡単に受け入れられるものではなかったのです。

 

されど12星座のプリンセスの価値観は全否定できない

 さて、以上の3つの点から、12星座のプリンセスの価値観はひかるさんたちのそれに反すると書きましたが、だからといって12星座のプリンセスたちの価値観を全否定することは、スタプリの描いてきたテーマに反することになります。

 

 たとえ自分たちの価値観と相容れないように思えても、その星にはその星の良さがあるので、いきなり全否定したりせず、まずは相手の考えや素敵なところを知ろうとしたり、自分達の考えを知ってもらったりすることが大切なのだということは、作中でも繰り返し描かれてきました。

 

 たとえば、ひかるさんたちはララの尊厳を踏みにじっていた惑星サマーンの文化を一切否定していませんし、テンジョウさんの尊厳を踏みにじっていたグーテン星の文化も一切否定していません。惑星サマーンには惑星サマーンの良さ(高性能なAIとの共生社会)があり、そのおかげでスターカラーペンを1本見つけられましたし、グーテン星にはグーテン星の良さ(卓越した科学技術)があり、そのおかげでノットレイダーのアジトの座標を調べることができました。そのいずれかでも欠けていれば、宇宙はへびつかい座の力によって、既に失われていたかもしれないのです。

 

 12星座のプリンセスたちの価値観は酷に感じるところもありますが、宇宙を守りたいという想い=大切なものを守りたいという想い自体は否定されるべきものではないはずです。また、儀式をすればフワがスターパレスの一部に戻るようですが、「スターパレスの一部になると存在が消える」というのはへびつかい座の主張であり、それに対する12星座のプリンセスの説明はまだ行われていません。

 

 というか、12星座のプリンセスの意見や考え方については、これまでずっと秘匿され続けていたため、まだ私たちの知らない事実がある可能性もあります。次回、ひかるさんたちは13星座のプリンセスの話をもう少し詳しく聞くことになると思いますが、そのとき、ひかるさんたちが、12星座のプリンセス、そしてへびつかい座の価値観に対してどのような回答を出すのか、私はドキドキしながら待っています。

 

 ※惑星サマーンは「ディストピア」ではないという考察です。

www.konjikiblog.com

 

「想い」は重ねられなかった

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

フワ「大丈夫フワ」
ひかる「フワ?」
フワ「フワが、みんなを、守るフワー!」
フワ「みんな、今まで、ありがとうフワ!」
ひかる「フワ、駄目ー!」

 

 ひかるさんたちが立ち尽くしていると、フワがプリキュアの力を強制的に集め、自らの意思でへびつかい座にぶつかっていきます。プリキュアの力を失ったひかるさんたちの変身は解除され、私服姿に戻ってしまいます。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 ここで注目したいのは、ひかるさんたちは「想いを重ねていない」ということです。また、ここでフワに回収された「プリキュアの力」とは、プリンセスたちの言う「前へと戻す力」であり、フワに回収されたのは「前へと戻す力」だけとも考えられます。

 

 ひかるさんたちの心に輝くもうひとつのイマジネーション、プリンセスたちの誰もが予期していなかった「前へ進む力」は、ひかるさんたちの中にまだ残っている可能性があります。だとすれば、それこそが、「闇を照らす希望」となるのかもしれません。

 

12星座のプリンセスとへびつかい座は何が違う?

 47話を視聴して感じたのは、へびつかい座も12星座のプリンセスも、実に人間らしいということです。彼女たちはさながらギリシャ神話に登場する神々のように、あるいは日本神話に登場する神々のように、憎しみ、争い、憤る、非常に感情豊かな存在です。私たちのイマジネーションに歪みが生じるのは、そもそも彼女たちのイマジネーションも歪み得るものだからだとも考えられます。

 

 たとえば、へびつかい座は、生命に自分たちのイマジネーションを与えた場合、いずれ歪みが生じて宇宙の秩序が乱れることを危惧しました。へびつかい座にとっては「宇宙の秩序(歪みのない宇宙)」が「大切なもの」であり、その秩序を乱す恐れのある「歪んだイマジネーション」や「秩序のなくなった宇宙」は「悪」なのです。

 

へびつかい座 「与えたイマジネーションが歪めばどうする? 宇宙の秩序がなくなるぞ!」

 

 しかし、へびつかい座は、自身の「大切なもの(宇宙の秩序)」を守るために、他者の「大切なもの(今ここにある宇宙)」を奪おうとしているわけで、それはまさしく「イマジネーションの歪み」だとも言えるでしょう。

 

 また、12星座のプリンセスたちを力でねじ伏せようとして返り討ちにあったへびつかい座は、大いなる闇の中で回復を待っていたわけですが、その姿は居場所を失い憎しみを力にしてきたノットレイダーたちの姿とも重なります。

 

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出典:スター☆トゥインクルプリキュア 第47話(C)ABC-A・東映アニメーション

 

 一方、12星座のプリンセスたちにとっての「大切なもの」は何かというと、これもまた、へびつかい座と同じ「宇宙の秩序(歪みのない宇宙)」です。12星座のプリンセスたちは、宇宙に生きる者たちのイマジネーションが歪み、宇宙の秩序が乱れてしまうのを守るために、「歪んだイマジネーションを正す」「前へと戻すべく浄化する」「プリ-キュア(pre-cure)の力」を準備していました。

 

 要するに、12星座のプリンセスもへびつかい座も、「歪んだイマジネーション」が「悪」であり、あってはならないという認識は同じで、その「悪」をどのように解消すべきか? という手法が異なるに過ぎません。

 

 また、12星座のプリンセスたちは、「宇宙」そのものを消し去ろうとしているへびつかい座に対抗するために、フワやスターカラーペンを創造しています。フワを儀式に使うことで、宇宙を消そうとするへびつかい座を消そうとしているわけですが、言うまでもなく、フワはひかるんさんやプルンスたち、それにフワ自身にとっての「大切なもの」です。

 

 12星座のプリンセスたちは、他者の「大切なもの」を奪うことで、自分にとっての「大切なもの」を守ろうとしています。それは「価値観の相容れないへびつかい座を消し去りたい」という想いが、「大切なものを守りたい」という想いを上回ったために生じた「歪み」なのかもしれません。だとすれば、歪みがあるという意味では、12星座のプリンセスたちもへびつかい座もやっぱり同じだと言えます。

 

終わりに:歪みとは「あってはならないもの」なのか?

 前述したとおり、12星座のプリンセスたちもへびつかい座もイマジネーションの歪みは、あってはならない「悪」だと捉えており、その「悪」を消し去ろうとしている点は共通しています。

 

 ここで、私はひとつの疑問を覚えます。

 そもそも、「イマジネーションの歪み」とは「悪」なのか? 存在してはならないものなのか? ということです。

 

 イマジネーションの歪みについて、へびつかい座は次のように定義しています。

 

  へびつかい座「イマジネーションは憤り、哀しみ、妬みと、あまたの歪みを見せ始めた」

 

 憤り、哀しみ、妬み。

 それらの総称が、「イマジネーションの歪み」です。

 

 確かに、そうした感情が他者を傷付けたり、秩序を乱したりすることは否めません。実際、大切なものを奪われた結果、ノットレイダー達のイマジネーションは歪み、今度はノットレイダー達が別の人たちを傷付けるようになりました。

 

 へびつかい座の言うように、そうした「歪み」をイマジネーションごと消してしまえば、宇宙の秩序は元に戻るかもしれません。あるいは、12星座のプリンセスたちの言うように、そうした「歪み」を「正して」、「前へと戻すべく浄化」すれば、宇宙の秩序は元に戻るかもしれません。

 

 しかし、本当にそれでよいのでしょうか?

 憤りや悲しみ、妬みは、この宇宙に存在してはならないものなのでしょうか?

 

 異星人に裏切られて故郷を失ったカッパードさんの憤り。

 幼少期より家族や仲間をすべて失い居場所のなかったアイワーンちゃんの哀しみ。

 母星の人々から見下され続けてきたテンジョウさんの妬み。

 

 ひかるさんたちはそれらの感情を否定したでしょうか? 正すべきだとして正したでしょうか? 前へと戻すべく浄化したでしょうか?

 

 そうではない、と私は思うのです。

 

 確かに、カッパードさんも、アイワーンちゃんも、テンジョウさんも、ガルオウガ様も、そしてノットレイたちも、プリキュアと出会うことで歪んでいたイマジネーションの形は変わったかもしれません。

 

 しかし、それは決して「歪みが消え失せた」わけではないはずです。彼らのそれまで感じていた憤りや哀しみ、妬みといった「歪み」は、「前に戻った」わけでもなければ、「なかったことになった」わけでもありません。また、彼らはこの宇宙が「歪みのないキラキラと輝く素敵な宇宙」だと盲信するようになったわけでもありません。

 

 彼らは、この宇宙にある歪み、そして自分自身の中にある歪みを受け入れ、それでもなお力強く前に進むことを選んだ者たちです。そして、その「生き様」こそが、彼らにとっての「輝き」でもあると思うのです。

 

 彼らの、そして宇宙に生きる者すべての、そうした「生き様」は、決して、なかったことにすべき、元に戻すべき、愚かな「茶番」などではないはずです。

 

 最後にもうひとつだけ。

 13星座のプリンセスが目指す、憤ることもなく、悲しむこともなく、妬むこともない宇宙というのは、確かにとても理想的な宇宙なのかもしれません。誰も傷付くことなく、誰も憎しむことのない、秩序の保たれた宇宙なのかもしれません。

 

 しかし、それは本当に、キラやば~っ☆な宇宙なのでしょうか?

 

※47話前編の考察です。彼らの名は「NOT-RAIDER」

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※プリキュアドリームステージにいったら童心に返りすぎて胎児になった話(ネタバレなし)。まだ全国で公演しているので行ってない方はぜひ行ってください。

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※スタプリ映画の発売予定日は2020年2月19日です。あと1か月ですね。あの感動を再び味わいたいです。

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 以上、スター☆トゥインクルプリキュア47話の感想考察(後編)でした。

 長々と読んで頂きありがとうございました。

 

<2020年2月19日発売予定>