FXを勧めるブログは多数ありますが、私個人はFXをしていません。
過去にはスワップ狙いでやったこともありました。
しかし、FXは理論的には期待値がマイナスのゲームであり、己の技量で成績をプラスに持っていける自信も熱意もなかったため、きっかりやめました。
この記事では、FXがゼロサムどころかマイナスサムゲームであり、平均的には儲けるどころか参加すればするほど損をする理由について考察しています。
1.ゼロサムゲームとは?
ゼロサムゲームの意味は、辞書を読んだ方が理解が早いと思います。
ご存知の方は飛ばしてください。
参加者全員の得点の合計が常にゼロである得点方式のゲーム。一方が得点すると他方が失点するため、全部の持ち点の和が必ずゼロになるというゲーム理論。→ゼロサム
(出典:コトバンク)
たとえば、プレイヤーが2人のゼロサムゲームの場合だと、Aさんが10点獲得した場合には、Bさんは10点マイナスとなります。
2人の持ち点を足し合わせると、常にゼロとなりますので、2人ともがプラスになって終わることはあり得ないというのが特徴です。
私の得点は、相手の失点。
相手の得点は、私の失点。
パイを奪い合うゲーム、とも称されます。
2.為替は理論上ゼロサムゲーム
為替取引は、相手がいなければ成立しません。
私が1ドルを100円で購入できたということは、誰かが1ドルを100円で売却したということです。
為替で儲けようとしてみましょう。
分かりやすくするために、AさんとBさんだけの世界で為替取引をしてみます。
たとえばAさんが1ドルを100円で買ったあと、それを120円で売ることができれば、20円儲けたことになりますよね。
しかし、この取引の裏には、Bさんが1ドルを100円で売ったあと、その1ドルを120円で買ったということを意味しています。
Aさんは20円儲けたかもしれませんが、Bさんは20円損しています。
あなたの「稼ぎ」は誰かの「損失」であり、あなたの「損失」は誰かの「稼ぎ」となるのです。
上記の例では2人だけですが、現実の世界でも登場人物が多いだけで本質的には同じです。誰かの得は、誰かの損なのです。
これが、為替がゼロサムゲームである理由です。
3.FXはマイナスサムゲーム
では、FXはどうでしょうか?
FXも為替も一緒じゃないか、と思うかもしれませんが、FXは証拠金を会社に委託して、代わりに取引をしてもらいますよね。
FX会社は営利企業であり、ボランティア団体ではありません。
彼らはユーザーからスプレッドという名の手数料を取ることで経営をしています。
FXにて為替取引を行うと、手数料をFX会社に取られてしまうので、その分は確実にマイナスになります。
ただでさえ為替取引はゼロサムゲームだというのに、FX会社がそこから手数料を引いていくわけです。
いいえ、FX会社だけではありません。
国もまた、税金という形で、利益が出たらその一部を納めろと要求します。
これが、FXがマイナスサムゲームである理由です。
FXとは、参加者がそれぞれお金を出し合い、その中から場所代としてFX会社や国にお金を支払いつつ、残ったお金をみんなで奪い合うゲームなのです。
4.稼げる?スワップ目当てのトレード
FXにはスワップポイントというものがあります。
スワップポイントとは、通貨間における金利差から得られる(もしくは支払う)差額のことです。
私は過去に、「スワップ目当てでトレードを行えば、期待値はプラスになるのでは?」と考え、FXに手を出したことがあります。
しかし、この考えは誤りです。
スワップをもらうということは、別の誰かがスワップを支払うということであり、おまけにFX会社が手数料を取るため、けっきょくのところマイナスサムゲームであることには変わりありません。
また、金利が高い通貨というのは、高い分だけインフレ(お金の価値が減ること)が進んでいるということを意味します。
インフレが進むとその通貨の価値が下がりますよね。
価値の下がった通貨で、再び円を買い戻そうとすると、当然、その分だけ損失が発生します。
つまり、金利差によってお金を儲けた! と喜ぶ一方で、その通貨は下落していくわけです。
現実的・短期的には様々な要因から必ずそうなるわけではありませんが、理論的・長期的にはそうなる可能性が高いのです。
以上の理由から、やっぱりスワップ目当てのトレードも、期待値はプラスマイナスゼロ、いえ、FX会社や国から徴収される分だけマイナスになってしまいます。
5.それでも人がFXに手を出すのはなぜ?
1.実力が反映されるゲームは期待値を増やせる
競馬や麻雀、ポーカーに手を出すのと同じです。
平均的な期待値がマイナスであっても、己の実力があればそれを超えられる。
そう考えている人には、期待値が多少マイナスであったところで関係のない話です。
むしろ、宝くじなどと比べれば、FXの還元率はマシといえるかもしれません。*1
宝くじ 公営競技(競馬等) 45.7 %(当せん金率) 74.8 %(当せん金率) 45.7 %(実効還元率) 58.5%(実効還元率)
出典:総務省のデータを参考に作成。
実効還元率とは税引き後の還元率を指す。
たとえば、麻雀やポーカー(テキサスホールデム等)はギャンブルではなく、頭脳スポーツの一種です。
胴元が手数料を取るマイナスサムゲームであっても、実力のある者はプラスで終わることができます。
FXも、実力がある者にとっては、たとえマイナスサムゲームであっても、期待値がマイナスであっても、「勝つ」ことはできるかもしれません。
(FXが本当に実力が反映されるゲームなのか、単なる運ゲーなのかという議論んについては、話が長くなるうえに本筋から逸れてしまうため、いったん置いておきます)
もっとも、為替取引に参加しているのは素人だけではありません。
世界各国のその手のプロフェッショナルたちが集う、地獄のような決闘場です。
そこで勝てる自信と熱意は私にはありません。
だからやめました。
2.自己奉仕バイアスに気をつけよう
もしFXというゲームをプレイするならば、自己奉仕バイアスには気をつけた方がいいでしょう。
人は、成功は自分の実力によるものだと考え、失敗は他人や環境のせいだと考える、というバイアスです。
多くの人がFXにはまってしまい、沼から抜け出せずにいるのは、このバイアスのせいだと考えます。
もし新しくFXを始める方がいましたら、くれぐれもビギナーズラックを実力だと思い違えることのないよう、お気をつけください。
(まさに私はそれで痛い目に合いました)
6.まとめ
この記事をまとめると、下記の通りです。
- 為替は理論上ゼロサムゲーム
- FXは会社から手数料を、国から税金を取られるためマイナスサムゲーム
- FXの期待リターンはマイナス
- スワップ目当てのトレードをしてもマイナス
- ギャンブルの手数料としては良心的かもしれない
- やるなら自己奉仕バイアスに気を付けよう
あと、FXはロスカットがあってリスクは固定されているから安心、などという人もいらっしゃるかもしれませんが、それは嘘です。
FXには追証というものがあります。
万が一、大暴落や大暴騰などで相場が急変動したとき、ロスカットが発動せず、自分の預けていた保証金以上の損失が発生する場合があるというルールです。
FXで借金まみれということも十分ありえるので注意しましょう。
私はつみたてNISA(インデックス投資)で資産運用をしています。株式なので暴落したり含み損になったりすることはありますが、理論的には長期的にプラスになる可能性の高い投資法です。
*1:米ドルのスプレッドは0.3銭の場合、1万通貨で30円。
1ドル100円だとすると、1万米ドルが100万円です。
1万米ドルをレバレッジ1倍で取引する場合、
元金100万円から手数料が片道30円取られることになります。
したがって、安いといえば安い手数料かもしれません。
もっとも、宝くじと違って税金は取られますが。