この記事は、貸株サービスを利用するかどうか悩んでいる人に向けたものです。
証券会社によっては貸株サービスを行っているところがあります。
このサービスを利用すると、銘柄によって異なりますが、いくらかの金利を得ることができます。
株式そのものの利益と、貸株による利益で、投資金額を増やすことなく、リターンを向上させることができるので、ぱっと見は夢のようなサービスです。
しかし、世の中には「うまいだけの話」は存在しません。
貸株をするのであれば、最低限のリスクとデメリットについては知っておくべきです。
さもないと、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになるかもしれません。
下記、貸株サービスの基本的な仕組みと、証券会社が破綻した場合のリスクについてまとめています。
1.なぜ貸株サービスで金利を得られるのか
貸株サービスとは、個人が保有している株式を、証券会社に貸すことで、金利を得ることができるサービスです。
証券会社は、借りた株式をどうするかというと、信用取引で空売りをしたい顧客に又貸ししています。
貸株サービスのプロセスを説明しますと、下記の通りです。
①貸株サービスの利用者(Aさん)が証券会社に株式を貸す
②証券会社が、信用取引で空売りをしたい人(Bさん)に、Aさんから借りた株式を貸す
③Bさんは、証券会社に金利を支払う
④証券会社は、Bさんから受け取った金利の一部を、Aさんに渡す
貸株サービスで得られるリターンの源泉が、Bさんが支払う金利にあることが分かりますね。
2.貸株サービスのデメリット 貸したものを返してもらえる保証はない
これはなんだってそうですが、ものを貸せば、返してもらえないリスクがあります。
証券会社は、顧客から預かった資産を、証券会社自身の財産と明確に分別して管理する義務があります。
これを分別管理義務といいます。
そのため、基本的には、証券会社が破綻したとしても、私たちの保有していた株式等がなくなることはありません。
もし証券会社が、義務を守らず、顧客から預かっていた資産を分別管理していなかったとしても、日本投資者保護基金が1000万円まで補償してくれます。
ところが、貸株サービスで貸していた株式については、この補償を受けることができません。
しかも、そもそも貸株サービスを利用していた株式は、証券会社に「どうぞお使いください」といって貸していたものであるため、分別管理義務の適用除外と考えられています。
なお、 金融商品取引業者が証券金融会社へ貸株を行ったときに、当該証
券金融会社から 保証金(貸株代り金)を受け入れる場合がありますが、 これは金融商品取引業者と証券金融会社との間の有価証券貸借取引に係るものですので、 分別管理義務の適用が除外されると考えられます。(「 金商法」 43 条の2 、「 施行令」 1 条の8 の6 、「 府令」 137 条、 137 条の2 参照)『顧客資産の分別管理Q&A(改訂第3版)』日本証券業協会 より引用*1
証券会社は、貸株サービスで貸し受けた株式を分別管理する義務を負いません。
つまり、貸株サービスで貸している株式は、証券会社が破綻した際、手元に戻って来ないリスクが高いのです。
3.まとめ
証券会社が破綻した場合のリスクをまとめると、下記の通りです。
- 貸株サービスにより貸していた資産は、分別管理義務の適用除外である
- 貸株サービスにより貸していた資産は、日本投資者保護基金の補償を受けられない
見方を変えれば、貸株サービスとは、保有する株式を担保にして、証券会社の社債を買うようなものともいえるでしょう。
個人的には、証券会社と一蓮托生になるのは嫌なので、貸株サービスは利用していません。
なお、株主優待目当ての投資をする際の注意点については、下記の記事でまとめているので、興味のある方はどうぞ。