先日、スター☆トゥインクルプリキュア関連(ひかララ)でこんなツイートをしました。
図書館でひかララが夏休みの宿題の残りをやってましたが、ララはひかるさんが宿題終わっていないのを察してて、本当は全部終わっているのに数学だけ終わっていないと嘘を吐いてたんじゃないかという妄想が頭の中を駆け巡っていましたすみません
— 金色 (@konjikinohiru) September 22, 2019
あれからいろいろ妄想を膨らませていたら、こんな二次創作ができていました。
スタプリ34話の直後、図書室で夏休みの宿題をしながらイチャイチャするひかララの話です。
(ひかララ/コメディ/百合/全年齢/3000字程度)
『羽衣ララは宿題ができない』
わたしは、宿題を終わらせることができないでいる。
ちらと目の前に座るひかるに視線を移す。ひかるは一心不乱に問題を解き進めている。今日中に夏休みの宿題を提出しなければならないこともあり、相当追い込まれている様子だ。その集中力はすさまじく、完全に自分だけの世界に没入している。
「ひかる……」
小さく声をかけてみるが、返事はない。
こちらを見向きもしないひかるを見ていると少し寂しさを感じるが、一方で嬉しくもあった。どれだけ見つめていても、バレる心配がないからだ。
図書室にはわたしとひかる以外誰もいない。フワもカッパードとの戦いで疲れてしまったのか、トゥインクルブックの中で眠っている。わたしは心置きなくひかるの顔を見ることができる。
「――った」
と、不意に、ひかるが声を漏らす。
「終わった~! やっと終わったよ~!」
ひかるはペンを置いて嬉しそうに言う。
「もう終わったルン? ひかるすごいルン!」
「ありがとう~! やっと英語が終わったよ~!」
ひかるは両手を挙げてはしゃぎ回る。「わーい」「やったー」と口では言っているものの、その表情はどこか空々しい。
「......あと何教科残ってるルン?」
嫌な予感を覚えながら問いかけると、ひかるは急に真顔になる。
「......国語が残ってる」
「それだけルン?」
「あと……社会と、数学」
「終わったっていうのは?」
「……英語だけ」
「オ、オヨ......」
時刻はお昼の三時半だ。最終下校は六時半なので、それぞれの教科を一時間で終わらせる必要がある。これまでいくつもの絶望的な場面を乗り越えてきたが、今回ばかりは厳しいかもしれない。
「ララはどれくらい終わったの?」
「残りあとちょっとルン」
「ララは偉いね、ちゃんと宿題やってて......」
「そんなことないルン。AIにスケジュール管理をしてもらってたし、それに......」
「それに?」
「な、何でもないルン」
余計なことを言いそうになるのを慌てて誤魔化す。
ひかるは首を傾げるものの、「あ、そうだ」と何かを思い出したように呟く。
「あのね……ララに、頼みたいことがあるんだけど......」
「もしかして、答えを見たいルン?」
「違うよ~! ただ、どうしてもわからない問題があって、ララはどういうふうに考えたのかなって……ヒントが欲しいなって......」
そう言ってひかるが見せてきたのは、国語の小説の問題だった。
登場人物は二人の中学生で、いつも宿題を提出しないので、放課後に居残りをさせられている。二人は文句を言いながらもどこか楽しそうに一緒に宿題をするのだが、主人公の女の子は実は宿題をちゃんと終わらせている。なぜ彼女は宿題が終わっているのに居残りをしているのか、その理由を答えなさい......というのが問題だ。
「......これ、本当に分からないルン?」
「ララは分かるの?」
「ルン」
「すごい! さすがララ!」
「......ひかるの想像力はすごいけど、そういうところは鈍すぎるルン。頭がお星さまルン」
「頭がお星さま……?」
星だと言われたことが嬉しかったのか、ひかるは「えへへ」と笑いながら顔を輝かせる。いちいち突っ込む気にもなれない。
「……わたしは何も言わないルン。自分で考えるルン」
「え~! そんな~! ララ厳しいよ~!」
「自分で考えないと駄目ルン。そうじゃないと意味ないルン」
「……まあ、そうだよね」
しゅんとしながらも、ひかるは気を取り直したように宿題に向き直る。
そう、この問題は自分で考えなければ駄目だ。わたしが教えたら、意味がない。
ひかるはしばらく宿題と睨めっこしていたかと思うと、不意に口を開く。
「――でも、まるでわたしたちみたいだね」
その言葉に、目を見開く。
高鳴る鼓動を抑えながら、わたしはひかるに問いかける。
「ど、どういう意味ルン?」
「ほら、わたしたちも一緒に宿題をしてるから、ちょっとだけ似てるな~って」
「……それだけルン?」
「え? それだけって?」
「……ひかるに期待したわたしが駄目だったルン」
「ええええ~!」
やれやれルン、とわたしは嘆息する。
こういうことに関してはどこまでも察しが悪い。国語の問題ですら分からないのだから、ひかるがわたしの気持ちに気付くのは、まだまだ当分先だろう。
「は~......まだけっこう残っちゃってるし、今回はもう間に合いそうにないよ~......」
言いながら、ひかるはしょんぼりと肩を落とす。
計画的にやらないからルン。そう言うのは簡単だが、ひかるは一緒にサマーンまで来てくれたのだ。その間は宿題どころではなかったから、わたしにも責任がないわけではない。
「――ひかる、宿題が終わる確率がどれくらいあるか、AIに聞いてみるルン」
「え、AIさんに......? 何で? それに、グローブはロケットに置いてきたんじゃ......?」
「いいから聞いてみるルン」
「うん......じゃあ、AIさん、わたしが宿題を時間内に終わらせられる確率はどれくらい?」
「ちょっと待つルン。データを分析するルン」
わたしは意味ありげに触角をぐにゃぐにゃ動かす。
「オヨオヨオヨオヨ~」
「分析って、ララがしてるの?」
「オヨオヨオヨ~。ララAIの分析結果が出たルン。ひかるが時間内に宿題を終わらせられる確率は、」
「確率は......?」
わたしはひかるの方に触角をゆっくり伸ばしていく。そして、ひかるの唇にそっと触れた。
「0.000000012%ルン」
ひかるは無言で目をぱちぱちさせるが、しばらくすると意味を理解したようで、ふふっと笑い出す。
「ララがプリキュアになれる確率と同じだね」
「ひかるがプリキュアになれる確率とも同じルン」
ひとしきり笑い合うと、 ひかるは自分の頬をぺしぺし叩いて気合いを入れる。「よーし」と自分に声をかけ、宿題に取りかかる。再び集中モードに入ったひかるは、ものすごい勢いで鉛筆を走らせていく。
元気付けることができたようで、ほっと安堵する。
ひかるは決して頭が悪いわけではない。ただ、変なところで鈍感なのと、興味のない分野についてはやる気が起きないだけで、勉強ができないわけではないのだ。
頬杖をつきながら、ひかるのことをぼんやりと眺める。
ふと思い立って、わたしは自分の触角に視線を移す。
「…………」
念のため、もう一度ひかるの様子を確かめる。
ひかるは宿題に集中している。
わたしは胸がドキドキするのを抑えながら触角を動かし、その先端を自分の口許に近付けた。
「――ねえ、ララ」
「オヨっ!? なっ、何ルン!?」
ばっと手で口許を隠す。
「その手、ちょっとどけて?」
「こっ、これは別に、何でもないルン……! ちょっと気になっただけルン! やましい意味はないルン!」
「んーと……ごめん、何か都合が悪かった?」
「ル、ルン! ちょっと吐きそうになったルン!」
「え!? だ、大丈夫……!?」
「もう平気ルン! 全部飲み込んだルン!」
「それはそれで大丈夫なの……?」
わたしがごまかし笑いを浮かべながら手を下ろすと、ひかるは困惑したような顔をする。が、何かに気付いた様子はない。こういうときだけは、その鈍さに感謝したくなる。
「と、とにかく、もう問題ないルン! この通り元気ルン!」
「うーん……それならいいんだけど……」
「それより、どうしたルン? 何か言おうとしてたルン」
「あ、いや、別に大したことじゃないんだけどね、」
ひかるは指を差し出すと、わたしの方に伸ばしてくる。
そして、わたしの唇をぷにっと触った。
「えへへ。さっきのお返し」
「…………」
「って、あれ……?」
「……ひかるは、ズルいルン」
「えっ。何が?」
「何でもないルン! そんなことより、早く宿題やるルン! 待ってる方の身にもなるルン!」
「う、うん……? 待ってるって、どういうこと?」
「い、いまのは言葉の綾(あや)ルン! ほら、時間がないルン!」
ひかるは何か引っかかっている様子だったが、それ以上の追及はせず、再び宿題に取りかかる。
窓から風が吹きつけてくる。まだ夏も終わっていないはずなのに、その風がひんやりと感じるのは、たぶん、わたしの体が火照っているせいだろう。
ひかるの宿題が終わるまで、あとどれくらいかかるだろうか。
そんなことを考えながら、ひかるのことを見つめ続ける。
わたしは、宿題を終わらせることができないでいる。
了
スタプリの二次創作・小説
『触角と唇』
いつもやってるサマーンの挨拶は、実は恋人同士の挨拶で、その事実を隠したいがためにララはみんなをサマーンに連れて行きたくなった...という妄想をもとに書いたものです。ひかララ、コメディ。
『図書室で鳴いた猫』
図書委員になったユニのもとに連日ひかるさんが来て、騒がしいなあと思うんだけど、来なかったら来なかったで寂しくなる話。ひかユニ、コメディ。
『四度目の嘘、あるいは』
記憶が後退する病にかかったアイワーンちゃんがユニに対する憎しみもバケニャーンのこともすべて忘れていく話です。ユニアイ、シリアス。
自分でも節操がないことは重々承知しているんですが、35話の姫ノ城さんとひかるさんのドラマを見てからというものの、姫ノ城さんの頭の中がひかるさんでいっぱいになっているという、そんな妄想が脳内で繰り広げられています。さくひか、好きです。
以上、読んでいただきありがとうございました。