この記事はスター☆トゥインクルプリキュア48話の感想考察(後編)です。
- 私たちはみな、「きらめく星の力」を持っている
- 消すわけないじゃん
- この世界は「キラやば」ですか?
- ノットレイダーは復讐しない
- たとえ、ミラクルなパワーがなくても
- AIの圧倒的な説得力
- そして、お別れの時
- 謝辞
私たちはみな、「きらめく星の力」を持っている
ひかる「イマジネーションはさ、消すよりも、星みたく、たっくさん輝いていた方が、キラやば~っ☆ だよ」
へびつかい座「なんだ、この光は…」
一同「プリキュア…プリキュア…プリキュア…!」
フワ「みんなの想い、重ねるフワ!」
ひかる「フワ! …うん!」
一同「イマジネーションの輝き! 想いを重ねて! スタートゥインクルイマジネーション!」
ひかるさんたちは、「きらめく星の力」によってプリキュアに変身するわけですが、「きらめく星の力」とはいったい何なのでしょうか?
これについては、以前、考察したことがあるので、ちょっと引用してみます。スタプリ45話、カッパードさんとの決着回を視聴したときに書いたものです。
きらめく星の力とは、その人それぞれが持つ「輝き」に他なりません。
(中略)
みんな星のような輝いていて、その輝きはそれぞれ違う。
フワがいなくても、スターカラーペンがなくても、不思議なパワーがなくても、その「輝き」があれば、誰だって、憧れのわたしに、なりたい自分になることができるのだと、スタプリは言っているのです。
つまり、「きらめく星の力」とは、その人それぞれの「イマジネーションの輝き」を指しているわけです。
クライマックスでは、これまで出会って来た数々のキャラクターたちがそれぞれの「イマジネーションの輝き」を重ねていきます。その中には、プリキュアたちと価値観を異にする者もいますし、過去には敵対していた者もいます(※1)(※2)
どれだけ価値観が違っていても、「想いを重ねる」ことはできる。そして、その「想い」が重ねられたとき、「大いなる闇」を打ち消す「大きな力」になるのだと、スタプリは示しているのです。
※1 それぞれの宿している「星」の色は、よく見るとそのキャラクターによって異なっていることが見て取れます。このことはまさに、みんながそれぞれの「ワタシだけのイマジネーション」を持っていることが示されています。
※2 ついでに言うと、ユーマ(映画に登場)もいれば、非生物のAIもいますし、宇宙ケルベロス等の人間ではない存在もいます。イマジネーションの輝きを持っているのは、何も人間だけではないことは、プリンセスたちも説明している通りです。
へびつかい座「イマジネーションを与えるだと?
やぎ座「ええ。生まれてくる命に、我らの力、イマジネーションの力を」
へびつかい座「何故に?」
「見てみたいのです。この宇宙に生きる者たちが、イマジネーション…想像力を巡らして作る世界を」
消すわけないじゃん
この宇宙に生きる者たちのイマジネーションの輝きにより、大いなる闇は消え、それぞれの生きる星に美しい流れ星が降りそそぎます。もちろん、その中にはノットレイダーのアジトとなっていた星も含まれています。この流れ星は、目をこらして見るとそれぞれ色が違います。この流れ星は、この宇宙に生きる者たちのイマジネーションの輝きの結晶なのです。
そして、ひかるさんたちの前には、へびつかい座が立っています。
48話の冒頭では、フワが消えたにもかかわらずへびつかい座が消えていなかったことに驚き、畏怖の念を抱いていたひかるさんでしたが、このときは違います。へびつかい座が消えていないのは、ひかるさんたちの――そして、この宇宙に生きる者たちの「想い」によるものです。「この宇宙に生きる者たちみんなの想い」が重なった結果、「へびつかい座を消さない」という結末に至ったのです。
プルンス「プルンスは、闇に呑まれて…」
おうし座「プリキュアが、儀式を…」
へびつかい座「なぜだ。なぜ、大いなる闇だけを消し、我を消さなかった?」
ひかる「消すわけないじゃん」
消すわけないじゃん。
この、圧倒的な、説得力。
つまるところ、「みんなの想い」というのは、この宇宙を、この宇宙に生きるみんなのイマジネーションを守りたいという想いであり、その中には、へびつかい座のイマジネーションも含まれていたのです。
※ ちなみに、上記の1番目のカットは、冒頭のフワが消えて絶望していたときのカットと対比になっています。いずれもロングショットでひかるさんたちの姿が映し出されており、構図はとてもよく似ていますが、受ける印象はまったく異なるものになっています。
この世界は「キラやば」ですか?
おうし座「彼女たちのイマジネーションは、我々の想像をはるかに超えて育ちました。へびつかい座のプリンセス、わたしたちとともに、彼女たちを見守りませんか?」
へびつかい座「いまさら戻れぬ。プリキュア、では見せてみろ。キラやば…な世界とやらを。もしその世界が誤っていれば、我は再び現れよう」
この宇宙に生きる者たちのイマジネーションの輝きを目にした12星座のプリンセスは、「我々の創造をはるかに超えて育ちました」と言い、へびつかい座に再び戻って得来ないかと誘いますが、へびつかい座はそれを断ります。
さて、視聴者の少なくない方は、12星座のプリンセスたちに対する好感度が下がっていることかと思います。それは、フワやひかるさんたちに対する「想像力」が不足していたことに起因するものでしょう。
47話を視聴したとき、私は、48話で12星座のプリンセスたちにも何らかの見せ場が挿入されるのではないかと考えていましたが、けっきょくそういったものはありませんでした。もう一度、宇宙に生きる者たちがプリキュアたちと「想い」を重ねたシーンを見ていただきたいのですが、一連のカットのなかにはノットレイダーやAIはいても、12星座のプリンセスはいません。あのとき、12星座のプリンセスたちはプリキュアと想いを重ねていなかったのです。
しかし、改めて考えてみると、それもそのはずです。
まず、13星座のプリンセスたちは、もともと自分達だけの限られたイマジネーションーーすなわち、「限られた価値観」の中で生きるのみであり、そこに「多様性」はありませんでした。「多様性が当たり前ではない」世界で生きていた13星座のプリンセスたちにとっては、多様性がいかなるものなのかを理解する術はありませんし、自らと異なる価値観と出会ったときにどうすればよいのかも分かりませんでした。
だからこそ、へびつかい座と12星座の間で価値観の違いが生じた際には、その解決策として、「相容れない価値観を打ち倒す」という選択をしてしまったわけです。それは力で強引にねじ伏せようとしたへびつかい座も、へびつかい座を消し去ろうとした12星座も同様です。
12星座のプリンセスたちは、自分達の「多様ではない価値観」=「画一的な価値観」に何かしらの限界を感じたからこそ、「宇宙に生きる者たちがイマジネーションを巡らせてつくる世界を見たい」と願い、命にイマジネーションを分け与えました。様々なイマジネーションが巡らされた「多様性のある世界」がいかなるものなのか分からないからこそそうしたわけであり、最初からそれを理解していたなら、そもそも「多様性のある世界がどんなものか見てみたい」と願うことすらなかったでしょう。
プリンセスたちが「多様性のある世界に生きる者たちのイマジネーションの輝き」を目にし、その輝きの美しさに圧倒された――それが今回の48話でした。つまり、12星座のプリンセスたちが「彼女たちのイマジネーションは我々の想像をはるかに超えて育った」と言い、これまで消し去ろうとしていたへびつかい座に手を差し伸べたのは、まさに12星座のプリンセスたちの価値観がアップデートされたことを表す描写だったとも言えます。
へびつかい座はおうし座の提案を拒否しますが、これもまた、「スタプリ」の描く決着としては素晴らしいものだったと考えます。個人的には12星座のプリンセスと仲直りするへびつかい座も見てみたいなという想いもまったくなかったわけではありませんが、ここで安易にへびつかい座が12星座のプリンセスたちと和解してしまえば、スタプリがこれまで一貫して描いてきた「分かり合うことの難しさ」が薄れてしまいますし、へびつかい座の「想い」が完全に間違っていたかのような印象を与えかねません。スタプリは「誰でも絶対に分かり合える」とは言いませんし、「へびつかい座の価値観は絶対に間違っている」とも言いません。そこには一定の含みを持たせているのです。
また、へびつかい座にはへびつかい座のイマジネーションがあることは、彼女の瞳に「星」が描かれていることからも示されています。そんなへびつかい座が、この宇宙に生きる者たちのイマジネーションの輝きを目にし、自らの価値観をアップデートしたのもこの場面ですが、彼女は「もしその世界が誤っていたら再び現れよう」と釘を刺すことで、ひかるさんの言う「キラやば世界」が、本当に素敵な世界なのかを問うています。
様々なイマジネーションが溢れるこの世界は、本当に素敵なものになっているのか?
それはテレビの前の子どもたちに対する問いであり、私たち大人たちに向けられた問いです。そして、12星座のプリンセスたちがこの世界を見守り続けるのと同様に、へびつかい座はへびつかい座で、この世界が誤っていないかどうかを、これからずっと、見守り続けるのです。
ノットレイダーは復讐しない
ガルオウガ「待て」
ユニ「ガルオウガ…」
へびつかい座「すぐに力を失うが好きに使え。我を追い、恨みを晴らすもよかろう」
呼び止めたガルオウガ様に対して、へびつかい座はワープ機能を有する「腕輪」を渡します。ガルオウガ様にとっては、へびつかい座は自らの故郷と仲間のすべてを奪った宿敵です。これまでのノットレイダー(侵略者)としての価値観で言えば、へびつかい座の言うとおり、ガルオウガ様はその腕輪を用いて、恨みを晴らさんとするべく、へびつかい座を追いかけたことでしょう。
しかし、ガルオウガ様は復讐のためには腕輪を使いません。時系列を少し飛ばしますが、ガルオウガ様は、スターカラーペンダントの力を失ったプリキュアたちをそれぞれの居場所に戻すために、その力を使うのです。
ララ「ルン? ペンダントの光が…」
ひかる「消えていく…」
ガルオウガ「これを使え。…急げ」まどか「ガルオウガ…」
ガルオウガ「長くは持たぬ」
それはまさしく、「前向きな想い」が「後ろ向きな想い」を上回った瞬間であり、ノットレイダーが憎しみを力にする侵略者ではなくなったこと(NOT-RAIDER)が決定的に示された瞬間でした。
たとえ、ミラクルなパワーがなくても
ひかる「フワは、プリンセスのイマジネーションで生まれたんだよね。だったらさ、わたしの、この力で戻せないかな?」
おうし座「プリキュアの力を? それでも、完全な復活は難しいでしょう。おそらく記憶も、ワープの力も。確かなのは、それをすれば、我らと同じく、力を失います。プリキュアになることは、もう…」
ひかる「それって…もう、宇宙には…」
ララ「それでも、フワに会いたい。ひかるなら、そういうルン」
ひかる「ララ…でも、」
えれな「プリキュアになれなくても大丈夫」
まどか「ええ。この宇宙には、キラやば~なイマジネーションがありますから」ユニ「わたしも」
ここで注目したいのは、ひかるさんの「わたしの、この力で戻せないかな?」という台詞です。ひかるさんは、その力を「わたしの」と表現していることからも、改めて、今のペンダントに込められている力は、プリンセスたちに与えられた「前に戻すための力(pre-cure)」ではなく、ひかるさんたち自身の「前に進むための力」だということが示されています。
その考えにはユニも賛同するわけですが、そのとき、ずっとずっと待ち望んでいた「あのセリフ」が飛び出します。
ユニ「星のことなら大丈夫ニャン。アイワーンが、もとに戻す方法を研究したいって」
アイワーンちゃんが、惑星レインボーをもとに戻す方法を研究する――。
長い、長い、旅路でした。
もともとプリンセスに与えられたプリキュア(前に戻す)の力で惑星レインボーを救おうとしていたユニでしたが、いまではアイワーンちゃんといっしょに、自分たちだけの力で惑星レインボーを救うことを決意します。
それは、子どもたちにこう教えてくれているようです。
プリンセスたちから与えられた力がなくても、ミラクルなパワーがなくても、君たちのイマジネーションの力があれば、未来には無限の可能性が広がっているんだよ、と。
※惑星レインボーを救ったアイワーンちゃんがユニにいれてもらった「塩味の紅茶」を飲む二次創作です。
AIの圧倒的な説得力
ひかる「…フワ!」
フワ「フワ?」
おうし座「やはり、力が…記憶も…」
AI「忘れるはずがありません」
フワ「ひ…か…る…」
「忘れるはずがありません」とAIさんが言った瞬間、なんかもう色々と限界すぎて、臨界点を突破しました。声を上げて嗚咽していました。忘れるわけがない。そうです。AIさんだって、マザーAIとデータの共有をしても忘れなかったんです。ひかるさんたちとの記憶を。キラやば~な思い出を。いや、もう、あまりにも説得力がありすぎてズルすぎました。最高でした。
そして、お別れの時
おうし座「フワは、わたしたちが。フワには、パレスが必要です」
プルンス「大丈夫でプルンス。プルンスがついてるでプルンス」
フワ「フワ?」
ひかる「プルンス、お願い」
プルンス「任せるでプルンス」
もともとはプリンセスたちから任されてフワを守っていたプルンスですが、いまではフワを守り、フワとともに生きることがプルンスの「想い」になっていることがはっきりと分かります。
ユニ「みんなと一緒にいられて、とっても、キラやば…だったニャン」
ユニはユニで、もともとはみんなと一緒にいることを拒否していましたが、いまでは一緒にいられたことを「キラやば」だったと、ひかるさんの言葉を借りて言います。みんなと過ごしたことにより、ユニの心の宇宙が広がったことが改めて示されるシーンで、とても尊かったですね。
そして、いよいよこの二人もお別れのときです。
ララ「わたしも、サマーンに帰るルン。わたし、地球で学んだことを、サマーンのみんなに伝えたいルン」
ひかる「ララ…うん」
ガルオウガ「急げ、もう持たぬ」カッパード「さあ行け」
テンジョウ「元気で」
ひかる「わたし、また、きっと行くよ。自分の力で、宇宙に」
ララ「ひかる…ルンルルル! ル? ルルル?」
えれな「ペンダントの力が…もう…」
ララ「ひ…かる…。あり…がと…」
ひかる「うん…ありがとう…」
いや、もう、言葉など必要でしょうか…。
44話のクリスマス回では、今後のことについてひとりだけ何も意見を言っていなかったララは、サマーンに帰って、地球で学んだことをみんなに伝えたいのだと言います。その直後、ペンダントの力が消え、自動翻訳が解除されてしまいますが、ララはひかるさんに伝えます。
ありがとう、と。
おそらく、こっそり練習していた、地球の言葉で。
生まれた星が違っていても、異なる価値観を持っていても、不思議な力がなくても、想いを届け合うことができる、分かり合うことができる――その事実を、スタプリは48話をかけて、見事に、鮮やかに、最後まで、描き切りました。
ひかる「またね…」
最後に映るのは、宇宙に輝く5人の星、5人の星座です。
星と星のあいだを行き来するには、光の速度でも途方もない時間がかかりますが、それを一瞬で繋げてしまえるのが、私たちの「想像力」です。
またね、とつぶやいたひかるさんは、きっと、その約束を果たすのでしょう。いつの日か、プリンセスの力ではなく、自分自身の力で宇宙に行くのでしょう。
謝辞
最後に、最高の物語を届けてくれたスタプリに、最大級の賛辞と宇宙いっぱいのありがとうを贈り、本考察を終えたいと思います。
スタプリ大好きです。本当にありがとうございました。
48話の考察(前編)です。闇の中で瞬く光。余談ですが、スタプリもまほプリも、『風の谷のナウシカ』を思い出さずにはいられません。
スタプリが終わってしまう寂しさは当然ありますが、ヒープリも楽しみで、感情がぐちゃぐちゃです。
以上、スター☆トゥインクルプリキュア48話の感想考察(後編)でした。長々と読んで頂きありがとうございました。
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